清水理史の「イニシャルB」【特別編】

高性能マイク+アプリ連携で、話者の判別や写真入り議事録作りまで買い切り2万円台! iFLYTEKのAIボイスレコーダー P1 Pro

iFLYTEK AIボイスレコーダー P1 Proをレビューする

 会議の文字起こしや要約、インタビューのまとめ、外国語のプレゼンの翻訳と、ビジネスシーンでは音声が重要な意味を持つシーンが少なくない。筆者もインタビュー時には必ず録音を行い、たびたび「この発言誰だっけ?」「あのとき彼は何て言ってたっけ?」と聞き返して確認する。

 そこで今回は、録音だけでなく、話者認識したうえで要約したテキスト化まで行えるiFLYTEKのAIボイスレコーダー P1 Proを実際に試してみた。動画収録の様子を文字起こししたデータなども見ながら、その実力を検証してみよう。

「音声→テキスト化」の悩み

 筆者は、昔から、機能の少ないシンプルなボイスレコーダーを愛用している。家電量販店でよくみかける数千円のものだ。利便性というよりは、取材先でのトラブルを極力減らすことを重視して購入した製品で、出先でもすぐに入手可能な乾電池で動き、長時間録音できて話が弾みすぎても問題なく、細かいことを気にせず使えることが気に入っている。

 しかし、この昔ながらの方法の欠点は、録音した音声の扱いが面倒な点だ。PCに取り込み→生成AIにアップロード→文字起こしデータを検索や要約しながら情報を探す、と複数ステップの作業が必要になる。また、単純な文字起こしでは、発言者が誰なのかを文脈から判断する必要があったり、重要な発言を探すのに手間取ったりと、「後処理」に時間がかかるのが課題だった。

 オンライン会議なら録音も文字起こしもデータとして残る時代になったが、残念ながらホストがデータを共有してくるとは限らないうえ、対面の会議やイベントも増えてきた。しっかり自分で録音の準備をしておかないと後で困ったことになるわけだ。

 ちなみに、昨今は、AI文字起こしサービスやアプリもあるため、スマホを使って録音を試したこともあったのだが、これはこれで精度が課題になる場合があった。

 スマホで録音したデータなどは、話者が誤認識されるケースも珍しくない。スピーカーフォン用に近距離の音声に最適化されたスマホのマイクだと、録音された音声のレベルが低くなることがあって、話者を区別できるだけの十分な音声の特徴を得られないケースがある。特に広いテーブルで何人かが遠い場所で話すケースは苦手な印象で、そうした状況に年間1万~2万円ほどのサブスクコストをかけることに躊躇してしまう。

 結局のところ、自前で録音環境を用意すること、ボイスレコーダー専用機のような高性能なマイクを使ってしっかり声を集めることと、音声データをテキスト化して話者も認識することなど、要件が整っていないと、音声をデータとして活用しにくい状況だ。

 そこで気になったのが、録音機としての基本性能を高めつつ、毎月一定量の文字起こしを追加料金なしで使えるiFLYTEKのAIボイスレコーダー P1 Pro(以下、P1 Pro)だ。

正面
背面

3つのマイクで遠くの声まで拾う

 P1 Proは、一般的なボイスレコーダーと同等か、それよりも少しコンパクトに感じるサイズのAIボイスレコーダーだ。重量は55gで、アルミ合金製のスリムな本体に3.2インチのタッチ対応OLED、64GBのストレージを搭載している。

 製品情報ページを見るとスマホから操作するマイクデバイスのようにも見えるが、単体でも利用可能で、本体の画面を見ながら録音を開始したり、状態を確認したりできる。

スマホと連携して文字起こしをリアルタイムに確認。ただし、単体でも利用可能

 この製品のポイントとなるのはマイクの構成だ。周囲360°の音を集める2基の全指向性マイクに加え、向けた方向の声を集中的に収録する指向性マイク1基が搭載されている。

上部に搭載されている指向性マイク

 つまり、会議テーブルの中央に置いて複数人の声を拾うこともできるし、プレゼンやインタビューで話し手の方向へ向けて使うこともできる。環境や録音スタイルに合わせて使い方を変えられるわけだ。

 しかも、録音は96kHz/24bitのハイレゾに対応し、AIノイズキャンセリングも搭載する。従来のボイスレコーダー専用機も96kHz/24bitのリニアPCM/FLAC対応製品は存在するが、実売価格は安くても2万円、高級品だと4万円前後する場合がある。これに対して、本製品は後述するAI機能も含めて、実売価格は2万9800円(タイムセールなどで2万3800円前後になる場合もある)だ。つまりボイスレコーダーとしての性能は高級品に匹敵する(ちなみに筆者の手元の安い製品はPCMで44.1kHzまでの対応だった……)。

 録音性能は、最終的な品質に大きく影響する。現状のAIサービスは文字起こし精度ばかりに注目されがちだが、そもそも元の音声が不明瞭だと、その後の認識精度は上がらない。

 P1 Proの発想は、マイクとAIの両輪をしっかり回して最終的な品質を上げようというものとなる。マイクで周囲や遠くの声を明瞭に記録し、その音声をAIで処理すれば、誤認識されやすい単語を減らし、声質が似ている人の話者認識もしやすいというわけだ。もちろん、ハイレゾだから話者認識が必ず正確になる、と単純には言い切れないが、複数の声を聞き分けやすい状態で残せることは、多人数の会議やインタビューなどでのメリットが大きいだろう。

話者認識と要約で、聞き直す範囲を絞れる

 使い方は簡単だ。初期設定でP1 ProとスマホのアプリをBluetoothでペアリングする必要はあるが、あとは個別の操作で録音を開始できる。このあたりの使用感は、動画のほうが伝わりやすいと思うので、ぜひ下記のイニシャルBチャンネルの動画を参照してほしい。製品紹介の動画を撮影しながら、その様子を録音、文字起こしている様子が分かるようにしてある。翻訳や遠距離の録音なども試しているので参考になるはずだ。

iFLYTEK AIボイスレコーダー P1 Proの文字起こし性能がスゴい!? その実力を動画でまるっと検証してみた

 対面インタビューや囲み取材なら本体を手に持って側面の録音ボタンを2秒長押しすれば録音が開始すればいいし、会議なら本体を机の上のいい場所に設置しておきスマホのアプリから録音を開始すればいい。

本体を録音しやすい場所に置いて録音スタート。文字起こしは手元のスマホに自動的に表示される

 文字起こしにも特別な操作は不要だ。録音中の音声は、スマホのアプリにリアルタイムで文字表示される。目の前で文字が次々と表示される様子は分かりやすく、日本語もしっかりと認識されていることに感心する。

 ボイスレコーダー専用機の場合、録音が開始されているかが心配になって、何度もLEDやスイッチを確認することがあるが、本製品はスマホのアプリに表示される文字で、「声がきちんと届いている」ことを、その場で確認できるわけだ。

 なお、リアルタイムでの文字起こし中は話者認識は行われない。前述したように、話者認識は声の質を分析する必要があるため、録音を停止した後、音声をクラウドへ送り、「高精度文字起こし」を実行する必要がある。つまり、録音中は内容を素早く確認し、終了後に話者認識を含む整理されたデータを作る、という2段階の使い方になる。

録音した音声はクラウドに転送することで高精度文字起こしが可能

 結局2段階になるなら、専用ボイスレコーダー+AI文字起こしサービスと変わらないじゃないか? と思うかもしれないが、そうではない。

 P1 Proで録音後、P1 Proとスマホアプリを連携させると、録音データをスマホに転送できる。アプリ側で「アプリに自動同期」を有効にしておけば、録音データは自動的にスマホへ転送される。自動転送を設定していない場合は、手動で同期することも可能だ。

 クラウドへのアップロードはスマホから行われるので、Wi-Fi環境があるなど、通信環境が整ったタイミングでアプリから「文字起こし」を選べば、クラウドにアップロードされ、高精度文字起こしが自動的に実行される。つまり、数ステップ必要だが、画面上でサッサッサと流れで操作できるのがメリットだ。

 P1 Proからスマホへのアップロードは、標準ではBluetoothで実行されるが、Wi-Fi転送機能を有効にすると、ダイレクトにP1 Proとスマホを接続して短時間でファイルを転送することができる。長時間の録音でファイル容量が大きくなったときにも、高速にファイルを転送することができる。録音後の同期もスムーズかつ迷わないようにできている印象だ。

Wi-Fiでスマホと本体を接続し高速に転送することも可能

 高精度文字起こし後は、全文要約に加え、キーワード抽出、話者ごとの要点、ToDoの抽出、内容に対するQ&Aなども利用できる。複数人の取材では「この発言は誰のものか」を追いやすく、会議では決まったことや次の作業を整理しやすい。文字起こしを作るだけで終わらず、原稿や議事録に使える形へ近づけてくれるのが、従来のレコーダーとの大きな違いだ。

録音終了後に高精度な文字起こしを実行すると、文字起こしにくわえてAIによる要約が生成される
こちらはAI議事録。さらにこの内容を元に回答してくれる「AI質問」もある
文字起こししたデータはクラウドに保存したり書き出して共有することも可能
実際に本稿にも埋め込んでいるイニシャルBチャンネルの収録シーンを文字起こしした結果。かなり高い精度での文字認識が行われているのが分かる

ハイライトと写真が、音声の目印になる

 録音中、重要そうなコメントが出たら、アプリのマーカーをタップして、文字起こしデータにハイライトを付けられる。

 この操作はテキスト化された音声を後から確認するときに非常に便利だ。

マーカーでハイライトを付けることができる

 試しに本製品を取り上げたイニシャルBチャンネルの収録中に試してみたが、文字起こしと同時進行で、マークした場所が黄色で表示された。何か処理が止まるとか、会話の流れが遮られることはない。インタビューの印象的なコメント、会議の結論や宿題、こうした発言を耳にした瞬間に、ハイライトボタンを押せば、その場でマークし、後から簡単に振り返ることができる。長い録音を最初から聞き直さずに済むので、議事録を作るときなどに、地味ながら便利だ。

 さらに、録音の途中でアプリのカメラボタンをタップすると、スマホのカメラを使って写真を撮影できる。この写真は、高精度文字起こしの実行後、会話の時間軸と同じ位置に自動的に挿入される。

カメラで撮影後、高精度文字起こしを実行すると、文字起こしのテキストの写真を撮ったタイミングの場所に貼り付けられる

 発表会で表示された表やグラフ、取材先で見せてもらった資料を撮影しておけば、「あのスライドを説明していた部分」という視覚的な手掛かりから、見たい音声を探し出せるわけだ。会議などでは、「ここ」「この数字」といった指示語が使われることも珍しくないが、「ここ」がどの資料のどの部分なのかを写真と音声のリンクで明らかにできるわけだ。

文字起こしと翻訳を同時に確認できる

 P1 Proは、翻訳も可能となっている。アプリの画面上で言語を選択すると、文字起こしする言語として日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語など11言語を選べるだけでなく、さらに翻訳することもできる。この機能も既存の処理や会話の流れを遮ることがない。例えば、英語の会話であれば、上の画面に文字起こしでリアルタイムに英語を表示しつつ、下の画面にその文字起こしに対応する翻訳(例えば日本語)が表示される。

多言語対応で文字起こしする言語を選択可能
日本語の文字起こしと同時に翻訳も可能

 外国語の会議やインタビューでは、その場で会話の意味をつかむために翻訳が必要になる一方で、後で文書に発言を引用するために原文も必要になる場合がある。P1 Proは、この原文文字起こしと翻訳を同時に、ほぼリアルタイムに実行できるわけだ。クラウドを利用する機能なので、若干のタイムラグがあるうえ、機密性の高いデータの扱いに注意する必要があるが、海外の発表会やプレゼンを記録する用途では便利だ。

 指向性マイクの性能もチェックしてみた。あまり雑音がないスタジオでの検証だが、本体の「指向性」アイコンをタップし、録音するマイクを切り替えてから、話者が約7m離れた場所まで移動しても発言をクリアに文字起こしできた。動画でもその様子を確認できるのでぜひ参考にしてほしい。

 会議やプレゼンのように、一人の人物が前方で話すケースでは特に相性がいい。実用上は部屋の反響や周囲の騒音にも左右されるが、メーカー資料では最長10mの遠距離集音となっているので、活用の幅は広いだろう。

スタジオの端でしゃべっている声を指向性マイクで収録してみる
実際に文字起こしした結果。遠くの声でも高い精度で認識できている

買い切りで月300分まで無料

 AIボイスレコーダーは高価なイメージがあったが、本製品は価格も性能や機能を考えるとコスパがいい。

 P1 Proの本体価格は2万9800円だ。前述したようにハイレゾ録音対応ボイスレコーダーとしては専用機と価格的に大差ない。それでありながら、月300分までの文字起こしを追加料金なしで利用できる。60分の会議なら月5回分なので、週1回程度の会議や、短めの取材を何本か処理する用途なら無料枠で十分となる。筆者も長時間のインタビューが続く月でなければ、月300分で十分に対応できそうだ。

 文字起こしを大量に使う場合は有料プラン(月間プラン:2000円、年間プラン:1万4000円)も用意されていて、そちらであればさらに月1800分(計2100分)の文字起こしが可能となる。

 だが、最初からサブスクリプションを契約しなくてもAI機能を試せるのは大きい。高性能な3マイク構成、ハイレゾ録音、5分の充電で2時間の収録が可能なバッテリー性能、タッチ液晶、64GBのストレージを備えた通常のボイスレコーダーとして見ても十分に実用的で、そこに話者認識や要約、翻訳まで付くと考えるとコストパフォーマンスは高い。

 スリムで軽い本体は持ち運びやすく、胸ポケットなどに入れたまま音声を記録することもできる。

意外に便利だった動画収録の「撮影ログ」

 使ってみて意外だったのが、動画の収録でも役立ったことだ。動画では、シーンを撮り直したり、後から別のカットを追加したりすることがある。その際、前のカットから自然につなげるには、直前にどのような動作をして、どの言葉まで話したのかを確認しなければならない。

 これまでは収録済みの動画を再生し、動作やセリフを覚え、つながるように続きを演じていた。

 しかし、P1 Proで撮影中の音声も記録しておけば、わざわざカメラから動画を取り出して再生しなくても、その音声を流しながら直前の場面を再現できる。

 セリフを間違えていなかったか、どのタイミングで説明を区切ったかも、映像を開かずに確認できる。いわば撮影ログとして利用でき、撮り直しカットの前後を合わせる作業が音声だけで完結する。

 音声=言動がデータとして可視化されると、思わぬ用途につながる可能性がある。アイデア次第では、いろいろなシーンで、新しい活用できそうだ。

音声を「残す」から「使う」へ

 以上、iFLYTEKのAIボイスレコーダー P1 Proを試してみたが、コスパの良さに感心した。

 遠くの声まで明瞭に録音し、話者を分け、要点をまとめ、ハイライトや写真を手掛かりに必要な場面へ戻る。これらが一連の流れでできるのに、実売価格は2万円台に抑えられている。

 現状、専用ボイスレコーダーやスマホを使っているケースで、「ココが改善されれば……」と思ったことがある人は使ってみることをおすすめする。特に、参加者が増えやすいインタビューや会議、距離のあるプレゼンでは、P1 Proのマイク性能とAI機能が威力を発揮する。

 録音した音声を保存して終わりにせず、原稿、議事録、翻訳、撮影の次の作業へすぐにつなげたい人にとって、実用性の高い1台と言えるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中