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5月末で終了!Google フォトの「⾼画質・容量無制限」、NASを使って安価に解決︕

「自動転送」や「URLで共有」ももちろんイケる!

Synologyの2ベイNAS「DiskStation DS220j」

 すでに予告されている通り、Google フォトの写真・動画の無制限アップロードサービスが5月末で終了する。

 すでに保存済みの写真や動画は大丈夫だが、今後アップロードする写真はストレージの容量を消費していくため、「無料」を前提に使う場合は、遅かれ早かれ容量の15GBを使い切ってしまうだろう。

 有料のプランや他のクラウドストレージを検討している人も多いと思うが、そこで一考してほしいのが「自宅にNASを導入する」というやり方だ。

 数万円の初期費用はかかるものの、一度導入してしまえばあとは電気代がかかるだけ。きわめてリーズナブルな価格で、数TBの「クラウドストレージ」が手に入る。最近は、スマホで撮影した画像の自動アップロードや、AIによる自動分類も行えるし、だれかに写真を共有する、といったことができるNASもあるのだ。

 そこで今回は、「Google フォトから写真データを移行する」ことをテーマに、NASの導入方法と機能のポイントを紹介してみたい。


Google フォトに写真が保存できなくなる!?

 まず、そもそものGoogle フォトの状況を説明しておこう。

 Googleの無料アカウントでは15GBのストレージを利用できるが、これまではGoogle フォトに、「高画質」モードでアップロードすると容量にカウントされず、無制限に保存できた。この機能が5月末で利用できなくなる。

 対策として、まず考えられるのが、Googleの有料プランを契約し、ストレージ容量をアップさせることだ。Google Oneの価格は100GBで年額2500円、200GBで年額3800円。大きなコストではないが、今後ずっと発生し続けるのが気になるところ。

 しかも、何年も大量に写真を撮りまくったり、動画を撮ることが多い人なら、200GBを超えていることもあるかもしれない。さらに容量の多い2TBプランだと年額1万3000円といった具合だ。

有料契約すればストレージの容量を増やすことができる。

 では、「ほかのクラウドストレージサービスは?」というと、例えばAmazon Photosが有力だろう。Amazonプライム会員なら、追加料金なしで写真を無制限にアップロードできるのだ。Amazonプライム会員は年額4900円もしくは月額500円かかるので、Amazon Photosのためだけに入会するならお勧めできないが、すでに入会している人にとってはアリだろう。

 しかし、残念ながら動画は無制限ではない。動画をアップロードすると、Amazon Driveの容量を消費してしまい、こちらの容量はたったの5GB。容量アップは100GBで年額2490円、1TBで年額1万3800円かかるので、それだとGoogle フォトを増量してもあまり変わらなくなる。

 そして、Googleと同様、無制限サービスの終了リスクはある。そもそも、イチ企業が提供しているサービスなので、サービスそのものの終了だってあり得るわけだ。

 筆者は経験がないが、Googleアカウントを突然停止される可能性だって考えられる。ブログやSNSでは、プライベートから仕事までGoogleサービスに依存していた人が、何らかの理由で突然アカウントを止められ、復旧できないのでダウンロードできず、これまで蓄積した貴重な思い出をすべて失ってしまった、という例はいくつも見かける。


大切なデータは手元で管理しよう

SynologyのDiskStation DS220j。HDDを2台搭載できる個人向けモデル。個人向け/プロ向けの写真管理機能も搭載している。

 そこでお勧めなのが、ローカル、つまり自分の手元ですべてのデータを管理することだ。

 ご存じの読者もいると思うが、NAS(Network Attached Storage)というデバイスを自宅に用意することで、数TBの容量を自宅で管理でき、クラウドサービスのようにどこからでもアクセスでき、何かトラブルがあってもデータが破損しないよう、データの冗長化やバックアップも行える。

 NASはUSBではなく、LANケーブルでネットワークに接続し、単体で動作する外付けのストレージデバイス。PCに内蔵されておらず、ネットワークに接続できる複数ユーザーがアクセスできるのが特徴だ。だから、書斎にあるメインPCの電源が入っていなくても、リビングのノートPCでも、テラスでスマホを使っていても、NASに保存しているファイルにアクセスできる。

 NASには複数のHDDを搭載できる製品が多く、その場合はHDDの故障時にもリカバリーできるRAIDという機能を利用できる。例えば、RAID 1に対応していれば、2台のHDDに同じデータを同時に読み書きすることで、どちらが故障しても片方にデータが残るというわけだ。

 今回は、台湾の大手NASメーカー、Synologyの個人向けモデルDiskStation DS220jを利用して、Google フォトからの移行と、活用のポイントを紹介していきたい。


手順1:Google フォトの写真をまるごとダウンロードする

 Google フォトにアップロードした元データがPCに保存されているなら、NASにコピーするだけで済むが、「すべての写真をGoogle フォトに集約している」という人も多いだろう。

 その場合、最初の手順はGoogle フォト上のすべての写真と動画をダウンロードすることになる。ありがたいことに、Googleはすべてのデータのダウンロード機能を備えているので利用しよう。

 今回はPCのウェブブラウザーでの作業手順を見ていこう。

 まず、Googleアカウントにアクセスし、「データとカスタマイズ」をクリック。「データをダウンロード」をクリックしたら、Google フォトのみにチェックする。

 続いてダウンロード形式を選ぶ画面が開くが、通常は初期設定のまま「1回エクスポート」「Zip」「2GB」を選んでおくのが無難だろう。ダウンロード準備が完了したらメールが来るので、「エクスポートを表示」をクリックして、Zipファイルをダウンロードする。

 データが大きい場合は、指定したファイルサイズ単位で分割される。筆者の場合、約16万の写真と動画があり、ファイルサイズは合計180GBになったので、90個のファイルに分割された。

【ダウンロードの手順】
Google フォトのメニューから「Googleアカウントを管理」をクリックする。
「データとカスタマイズ」の設定から「データをダウンロード」をクリックする。
「選択をすべて解除」を選んでから「Google フォト」のみにチェックする。
下にスクロールし、「次のステップ」をクリックする。
さらに下へスクロール。エクスポートの設定は初期状態のままでいいので、「エクスポートを作成」をクリックする。
しばらく待つと、ダウンロードの準備が整うので、「エクスポートを表示」をクリックする。
「ダウンロード」をクリックしてすべてのファイルをダウンロードする。

 すべてのファイルをダウンロードしたら、まずZipファイルを解凍する。もし、すべて解凍する空き容量がない場合は、「一部を解凍しNASに転送して削除」という作業を繰り返せばいい。

一旦、ローカルにZipファイルを解凍する。
Google フォトの全データがローカルに保存できた。


手順2:ダウンロードした写真をNASに転送する

SynologyのDiskStation DS220j。
HDDはWestern DigitalのNAS向けHDD「WD Red WD40EFRX」

 さて、ここからはDiskStation DS220jの設定方法になる。

 DiskStation DS220jは2台のHDDを内蔵できる製品で、HDDは自分の好みのものを用意するタイプ。自分のニーズに合わせて、HDDのタイプや容量を選べるのがメリットだ。手持ちのHDDが余っているなら、流用する手もある。Synologyでは、推奨するHDDのリストを公開しているので、この互換性リストから自分の好みのものを選ぶのがよいだろう。

 なお、NASはPCと違って24時間365日稼働させておくのが普通。そのため、HDDも信頼性の高い製品を選ぶほうがよい。「NAS向け」を謳っている製品を選ぶようにしよう。通常のPC向けのHDDは「業務時間中の稼働」を想定して設計されているが、NAS向けのHDDは24時間365日の常時稼働を想定されており、アクセス特性もNASを想定してチューニングされている。今回選んだのは、Western Digital製のWD Red WD40EFRXで、容量は4TB。

 HDDの用意ができたら、HDDを自分でNASに組み込む。言葉としては難しく感じるかもしれないが、実際の作業は「カバーを開いてHDDを差し込む」だけ。簡単だ。

カバーを開いて、HDDをセットする。

 NASの設定は、DiskStation DS220jをPCと同じネットワークに接続、ウェブブラウザーを開いて「http://find.synology.com」と入力するだけで行える。アプリのインストールさえ不要で、極めて簡単に設定できる。

 その後、ウェブブラウザーで「Web Assistant」を開くのだが、これはウェブサイトというよりはPCの操作画面のようなデザインになっている。まずは、「DSM」というNAS上で動作するOSをインストール。その後、アカウントを作成したり、基本的なアプリパッケージをインストールするが、基本的には画面の指示に従えばいい。

【初期設定の流れ】
「Web Assistant」を開くと簡単に接続できる。
OSのような操作画面がウェブブラウザーに表示される。

 NASのセットアップが終わったら、早速写真をアップロードしよう。まずは、DSMの「パッケージセンター」からMomentsをインストールする。初期設定で選んでいれば、インストールされているはずだ。アプリメニューからMomentsを起動し、解凍した写真をドラッグ&ドロップする。

 ただし、1度にドロップできる枚数に制限がある(1回あたり2000枚まで)ので、大量に写真があるときはフォルダーを分けてアップロードする。複数回ドロップして2000枚を超える分には問題ないので、繰り返し作業すればいい。ただし、写真をドロップすると、NAS側で写真整理用データの自動作成が始まるため「NASのCPUがこれにかかりきりになる場合がある」(Synology)とのこと。これを避ける意味から、Synologyの推奨は「最初から2000枚をドロップするよりは、ちょっと少ない枚数にして、NASのCPU負荷を制御画面で見つつ、徐々にアップロードする枚数を増やしていくこと」だそう。負荷の具合は写真データやNASの使われ方にもよるのと思われるので、一概には言えないが、気にしておくといいだろう。

 通常のHDDと異なり、NASはネットワーク経由でデータを転送するので、PCに内蔵していたりUSB 3.0で接続している時よりも遅いのは仕方がない。大量のデータを転送する場合は、何時間もかかるケースもある。とは言え、その間でもPCやNASは自由に使えるので、他の作業をしていればよい。

【Momentsを設定する】
「DSM」の左上のボタンでメニューを開き、Momentsを起動する。
ウェブブラウザーの別のタブにMomentsが表示されたら、写真をフォルダーごとドラッグ&ドロップする。
写真がアップロードされる。一度にドロップできるのは2000枚までとなる。

 すべての転送が終われば、ひとまず「データの置き場所」としては準備完了。続いて、外出先から写真を見たり、だれかに写真を共有したりする方法を紹介しよう。


NASを使えば「ローカルとクラウドのいいとこ取り」

 さて、外出先からNASの写真を見るには、NASに接続するためのQuickConnectという機能と、iOS/Android用のスマホアプリ「Synology Moments」を利用する。

 前者は、NASにアクセスするための設定機能。「Synology QuickConnect」のウェブサイトにアクセスし、QuickConnect IDを入力するだけで自宅のNASに接続できるというものだ。作成したユーザーとパスワードを入れれば、家の外からでもNASの管理OSである「DSM」の画面にアクセスできる。Synologyアカウントを作成する必要があるが、ファイアウォールの設定なしに、遠隔操作できるのはすごい。

 後者の「Synology Moments」アプリでは、スマホで写真の閲覧やアップロードができる。これを起動し、QuickConnectにログインすることで、外出先からNASに入っている写真を見ることができるようになる。

【QuickConnectを使えば、家の外からNASをフル制御できる】
QuickConnectを有効にする。
Synology QuickConnectにQuickConnect IDを入力する。
遠隔地から自宅のNASにアクセスできた。
DSMを遠隔操作し、NASのMomentsを起動して写真を閲覧できる。


スマホから写真を見るには「Synology Moments」アプリ

 さて、Synology Momentsアプリで写真を見ることができるようになったわけだが、写真アプリというと、閲覧速度が気になるところ。これについては、普通の写真で確認する限り、特に遅いということもなく、Google フォトと変わらない印象。また、もちろん動画も再生できる。

【Momentsで写真を見る】
Momentsアプリを起動し、QuickConnect IDとDSMのユーザー名、パスワードを入力する。
Momentsアプリを利用することで、外出先のスマホからNASの写真にアクセスできる。
遠隔操作でも動画を再生可能だ。


「撮った写真を自動転送」もOK

 スマホアプリのSynology Momentsは、自動バックアップ機能も備えており、スマホで撮った写真を自動でNASに転送してくれる。いちいちアップロード操作する必要がないのは便利。アプリの設定画面から「画像のバックアップ」を開き、「画像バックアップを有効にする」をタップしておけばいい。

 たくさん写真を撮ると容量が大きくなるので、Wi-Fi接続時にアップロードする設定をオンにするといいだろう。動画は自動アップロードしないといった設定も用意されている。

【Momentsで写真の自動転送】
Momentsアプリの設定画面から「画像のバックアップ」を開き、「画像バックアップを有効にする」をタップする。
自動アップロード機能の動作を細かく設定できる。


AIで写真を分析、「登場人物別」「場所別」の自動分類も

撮影場所での分類も可能

 さて、Google フォトは写真を撮影場所でまとめたり、映っている人の顔を分析して分類する機能がついている。実は、Momentsでも同じことができるのだ。

 Momentsの設定画面から「アルバム」を開き、「自動的に作成されたアルバム」で表示する項目をチェックする。「人々」は人の顔をAIが判別して分類、「場所」はジオタグで撮影場所を分類してくれる。

「人々」や「場所」を有効にする。
分析が終わると人物ごとに分類される。
人の顔をタップすると、その人が映った写真を一覧できる。


「URLで手軽に共有」ももちろんできる

 Momentsで管理している写真を友だちと共有することもできる。

 サムネイルの左上のチェックボックスをクリックすると共有する写真を選べる。複数の写真を選ぶことも可能だ。また、日付の横のチェックを入れると、その日の写真すべてをまとめて選択できるので便利。

 写真を選択したら、「共有」アイコンをクリックする。設定画面が開いたら、まずは「無効化された共有リンク」のスイッチをオンにする。閲覧だけでなく、ダウンロードされてもいいなら「ダウンロードを許可」にチェックを入れる。

 アカウントを持っていない友だちに渡すなら、「プライバシー設定」は「公開」を選んでおく。あとは、URLをコピーし、「OK」を押して画面を閉じる。メールやメッセージなどで友だちにURLを渡そう。

 URLを受け取った人は、ウェブブラウザーで開けば、写真にアクセスできる。サムネイルが表示されるだけでなく、クリックすれば大きく表示されるし、許可されていればダウンロードすることもできる。PCのウェブブラウザーだけでなく、スマホでも閲覧することが可能。

Momentsの写真を選択して「共有」をクリックする。日付のチェックをオンにすると、その日付の写真すべてを選択できる。
「無効化された共有リンク」のスイッチをオンにする。
「公開」を選択し、URLをコピーしたら「OK」をクリックする。
共有URLを受け取った人はウェブブラウザーでアクセスする。
アカウントを持っていない人でも遠隔地からNASの写真を閲覧できた。


さらに「プロ向け」の写真管理アプリも用意、将来は統合も

プロ向けのアプリPhoto Stationも用意されている

 ちなみに、DiskStation DS220jでは、他にもPhoto Stationという写真管理アプリも利用できる。

 Momentsは画像認識技術を使い、人や場所などで自動分類してくれるが、Photo Stationは元のフォルダー構造で管理するのが特徴。柔軟なアクセス権限を設定でき、共同作業に向いている。さらにPhoto Station向けのスマホアプリ「DS Photo」では、「特定のエリアでWi-Fiの通信が可能になったら自動で写真をバックアップ」という非常に強力な機能を備えている。要するに「家に帰ったらWi-Fiで写真を自動バックアップ」ということができるというわけだ。

 全般的に見えると、Momentsが個人ユース、Photo Stationがビジネスユースというイメージだ(違いについて解説されたページも用意されている)。

 とは言え、二つあるのもわかりにくい。そこでSynologyは次世代の写真管理アプリ「Synology Photos」を提供する予定。フォルダーとタイムラインを自在に切り替えるなど、両者のいいとこどりをした機能を搭載する。すでに「DSM 7.0」のベータ版は利用できる状態で、近いうちに正式版もお目見えすることだろう。

 なお、Synology Moments、Photo Station、Synology Photosの違いを簡潔にまとめたページも用意されている。さらなる使いこなしを考えているのなら、こうしたページも見てみるとよいだろう。


HDDを含めても3年で元が取れる?

様々なアプリが用意されている

 以上、個人向けのMomentsをメインに、Google フォトからの移行のポイントを見てみたが、DiskStation DS220jは他にも、多くの便利機能を搭載している。

 大量の音楽ファイルをNASに保存、外出中にスマホでストリーミング再生することもできるし、ExcelやPowerPointのファイルやフォルダーを友人や取引先と共有することもできる。さらに、PCの自動バックアップを行うこともできる。

 これらは必要なアプリをNASにインストールする仕組みで、不要な機能で動作が遅くなる、といったこともないし、特定用途向けのようなかゆい所に手が届くアプリが用意されていることもある。NASを導入するのであれば、こうした機能を活用していくこともできるだろう。

 最後に、価格と料金の比較をしてみたいのだが、今回使ったDiskStation DS220jは実売価格2万1000円前後。HDDの容量はさまざまだが、Google Oneのサービスに合わせて2TBのHDDを利用するなら、1台当たり8500円前後なので、合計の導入コストは3万8000円前後。そして、Googleのストレージを2TB契約すると、年額1万3000円の料金かかるので3年でおおむね元が取れる計算だ。RAID 1を利用すれば、どちらかのHDDが故障しても、データを失われずに済む。故障したHDDを交換すれば、またRAID 1の環境を構築できる。

 「大切なデータは自分の手で安全に管理しつつ、クラウドサービスのように便利に活用したい」そうした使い方をしたいなら、ぜひ今回紹介したような使い方を検討してみてほしい。