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来年のPC環境はAIで大きく進化? 「ハードが進化したら、次はソフトの番」
インテルとITジャーナリストが語る、そのポイント
- 提供:
- インテル株式会社
2024年12月25日 07:30
生成AIが世の中に普及してきて、AIで仕事が変わる、そしてAIでPCが変わると言われるようになりました。2024年にはインテルのCore Ultra シリーズ2 CPU(Core Ultra 200V、コードネームLunar Lake)が登場し、PCメーカー各社から続々と搭載製品が登場しています。ただし編集部では、これはまだ始まりであり、2025年はもっと大きな波が押し寄せていろいろなことが変わってくると考えています。
そこでYouTubeのImpress Watchチャンネルにて、インテルの上野晶子氏(執行役員 マーケティング本部 本部長)とITジャーナリストの笠原一輝氏をお招きし、弊誌編集長の鈴木光太郎が話を聞く「2025年、PCは大変革の時代に?「AIを本当に取り込んだPC」が見せる新しい仕事の形とは?」が12月12日ライブ配信されました。現在、アーカイブ動画を見られるようになっています。
この記事では、配信の中で語られた中から、ポイントをご紹介します。興味を持った方は、ぜひYouTubeで見てみてください。
「鶏と卵」なAIの普及問題に、Copilot+ PCがポンと登場
まずは、現在のAIとPCがどうかについて語られました。最初のテーマは「Copilot+ PCの販売が本格化」。
Core Ultra シリーズ2の登場など、Microsoftが提唱する「Copilot+ PC」の要件を満たすPCが一般的に発売されるようになりました。
これについて笠原氏は、AIのテクノロジーと普及が“Chiken-and-egg(鶏が先か、卵が先か)”の関係にあるところに、「Copilot+ PC」という鶏がポンと出てきたと表現して、非常い良いニュースだったと感想を述べました。
それを受けて上野氏も、「新しいものはなかなか続くのが難しいと言われるが、Core Ultraがシリーズ2まで来ているので、これが普通のPCになっていく世界が来年かと思っています」と自負を語っています。
続くテーマは「NPUとかAIとか分かったつもりになってないですか?」。鈴木編集長によると、メディアがNPUとAIの解説記事をたくさん掲載したことでNPUの知名度が上がったが、これからはちゃんとわかる必要もあるという意図だそう。笠原氏も、「NPUが大事だと書きすぎたが、GPUもNPUも大事だと理解してほしい」とそれに同意。
詳しくは動画を見ていただくとして、笠原氏は、CPU、GPU、NPUのそれぞれの特性と役割分担について説明。上野氏も、GPUやCPUは人間にたとえると筋肉で大きな力を使うようなもので、常にフル回転していると疲れるので、そうでない仕事はNPUにやってもらおう、という例を挙げています。
AIハードの次はAIアプリケーション、AIエージェントが自分の記憶を高度化する未来がやってくる
このようにCopilot+ PCが登場しましたが、PC上のAIを実用的に活用するには、もっとソフトが必要になります。そこで次のテーマは「ソフトウェアが作られることでPCの地平は開かれてきた」。
笠原氏は、これまでに起きたCPUの進化、例えばMMX命令の追加や64bit化のときのように、ハードウェアが出てからOSやアプリケーションが対応するというスパイラルで進化しており、AI PCもこれからアプリケーションが出てくるというとば口に今はあるという説明をしました。
上野氏もそれを受けて、今できることだけでAI PCを判断するのではなく、まだ入口の入口であり、今後どう作っていくかというフェーズにあると語りました。つまり、鶏ができたから卵を作ろう、というフェーズです。
では今後、何ができるようになるのか。その一つとしてテーマとなったのが「『AIによるデータの構造化』とは何か?」です。
いままで意味をもってデータを探すなどの処理をするときには、データベースなどのようにデータの構成要素が整理された「構造化データ」が対象でした。しかし笠原氏によると、構造化データは会社などの中でも10%程度だそうで、それそれ以外の文書や画像などの「非構造化データ」は対象になっていませんでした。
この大量の非構造化データに対してAIを使って自動でメタデータをつけていくというのが笠原氏の話です。たとえばこれまで取材で集まった大量のPowerPintやPDF、写真などを意味的に検索できるようになります。しかも、これまではクラウドにデータをアップロードする必要がありましたが、AI PCであればローカルで処理できます。これにより、「MJさん(インテルのMichelle Johnston Holthausさん)がLunar Lakeを持っている写真」と聞けば出てくるようになるわけです。
笠原氏のところには、1990年代からの取材資料が数十GBあるそうで、たしかにそれを簡単に検索できるなら、宝の山になりそうです。これを上野氏は、PCの中に司書つきの図書館ができるようなイメージだと表現しています。
それに関連して次のテーマは「AIエージェントはどこまで進化する?」。笠原氏が想像する未来はズバリ、SFドラマ「スタートレック」に登場する、話しかけると答を返す「コンピューター」だそうです。
さらに、OpenAIのサム・アルトマン氏の言葉として、今はLLMがクラウドの向こうにあるが、将来は1人1人が持ち歩くようになるという話を引用して、AI-PCはその未来への第一歩だと論じました。
上野氏もその話に乗り、だからこそ大事になるのがアプリケーション開発だと強調しました。それは待っていれば降ってくるものではなく、今こうなったらいいというのを想像しながら作っていくのが重要で、NPUが普及していく今がビジネスチャンスなんじゃないかと話しました。
鈴木編集長も、「コーラが欲しいと言うと、前の消費ペースを元に2箱頼んでくれるエージェント」という例を出して、自分のデータを自分より賢く整理してくれる記憶の高度化だという話をしました。
そして3人の期待は「これは10年先の未来ではなく、きっと数年でできるようになるだろう、そして日本人に最適化されたアプリケーションを作るビジネスチャンスもあるだろう」ということ。そして改めて、いまは入口であり、スタートにいるから楽しい、という指摘も。
代替されたのは本業ではなく「それ以外」10時間が5分に
次のテーマは「注目のAI活用術」です。笠原氏が自分の活用術として挙げたのが、取材のときの文字起こしです。特に英語のインタビューだと、30分の録音を文字起こしするのに10時間かかることもあるそうです。
それが現在では、スマートフォンのアプリがその場で文字起こしする技術が当たり前に。さらにWordの翻訳機能を使うことで英語が自動で日本語になり、そこまでやってもいままでの10時間が5分になったとのことで、「超幸せ」というのが笠原氏の感想です。
ただし職種によってはデータをクラウドに出せない人もいるので、そのためにもローカルのAIで処理できるAI PCが福音になるだろうとも語られました。
さて、これだけ生産性が上がるとなると心配されるのが、次のテーマ「仕事を奪われる時代が来るのか?」です。
これについて笠原氏はマイクロソフトの人の言葉として「AIは人の仕事を奪うのではなく、AIを使わない人の仕事を奪う」というのを紹介しました。さきほどのインタビューの文字起こしでいうと、10時間が5分になったぶん早く同じクオリティの記事が書けるのが、競合の人に対するアドバンテージになるというわけです。
鈴木編集長がそれをまとめて、笠原氏の本業は記事を書くことで、AIはそれ以外の時間を短縮するものであって、AIが仕事自体を代替しているわけではないと述べました。3人共通の認識は、「議事録や請求書作成などの“本業以外”はAIにまかせて、本来の仕事に時間を使えるようにしたい」ということでした。
Core Ultra 200V搭載ノートPCの注目ポイント
次のテーマは「Core Ultra 200V搭載PCはここが違う」。
2024年に発表されたCore Ultra 200VはCPU・GPU・NPUの3つを積んでおり、NPUが48TOPSの性能を持つだけでなく、GPUが66TOPSを実現している点に笠原氏は注目しているとのこと。そのため、GPUを使う演算にもCore Ultra 200Vが効くそうです。
またCPUについては、PコアもEコアも電力効率がよくなっており、特にアクティブでもアイドルでも消費電力が減って、ノートPCのバッテリー駆動時間が飛躍的に伸びた点がポイントと指摘。
消費電力については、上野氏もパフォーマンスだけを追い求めるだけではなく電力効率も重視している点に自信を見せました。
ここで、各社から出ているCore Ultra 200V搭載PCについて、軽量さやデザインなどもまじえて紹介がなされました。
vProでIT管理者もやらなくていい仕事をテクノロジーに任せる
次のテーマは「2025年、PCの管理はどうなる?」。さまざまな業界で人手不足が言われる中でも、IT管理者は人手が足りないうえに、ランサムウェアなどのセキュリティ問題がより重要度を増しており、セキュリティアップデートや障害対応などに追われることになります。
特に2024年7月には、世界的に企業のWindows PCがブルースクリーンになるという事件もありました。Windowsが動いていればIT管理者がリモートデスクトップで操作することもできますが、ブルースクリーンなどでWindowsが動く前だと手がでません。
そこで、インテルのvProプラットフォーム対応のPCであれば、Windowsが動いていないブルースクリーン状態やBIOS画面の状態でも、遠隔操作できます。
緊急事態以外でも、電源オフのPCをリモートから電源オンにすることもでき、たとえば笠原氏は別の部屋にあるテスト用PCのWindowsが固まってもリモートでリセットできる、といった使い方をしているそうです。
また企業では、Intel EMA(Endpoint Management Assistant)という管理サーバーでvPro対応PCを集中管理できるので、たとえばWindows UpdateされていないPCをリストアップしてコントロールしたりという使い方もされています。
vProについても上野氏は、IT管理者が本当に人間がやらなくてはいけないことだけをやって、やらなくてもいいことをテクノロジーに任せることが本当にやってほしいことだと説明しました。
「いまはまだ蒸気機関ができたところ、産業革命の本番はこれから」
最後に笠原氏は、いまのAI利用は産業革命でいえば蒸気機関ができた入口にいて、これから産業革命の本番が来るようなものだという大学教授の話を紹介しました。そして、来年になったらもっととんでもないことが起きている可能性が高いということで、PCもAIもどんどんよくなると語りました。
また上野氏は、まだAI PCは一丁目一番地に立ったところで、みなさんに使ってもらうことが一番大事だと強調しました。そして、みんなで使ってみんなで育てていこう、いまどんなアプリケーションがあったら世の中が豊かになるんだろうと考えながらAI-PCを使って欲しいと語りました。