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固定IP、萌えドメイン、そして“異世界VPN”――マニアがよろこぶサービスを提供し続けて30周年!

インターリンクはなぜ、“上級者向けISP”の道を行くのか?

 「上級者向け(使う人のあまりいない)の特殊な(微妙な)サービスを提供する」――そんな奇妙なキャッチフレーズを掲げる株式会社インターリンクが30周年を迎えた。同社は日本のISP(インターネットサービスプロバイダー)の草分けの1社だ。しかし、知る人ぞ知る……というか、分かる人にしか分からないISPと言えるかもしれない。

インターリンクを語るのに欠かせないのが“固定IP”だ。各種サービスで前面に押し出すようになった経緯とは?
萌えるドメイン「.moe」キャラクターの萌ちゃん。インターリンクが“オタクの味方”を自認する根底にある思いとは?

 インターリンクは1995年8月にISP事業を開始。以来、インターネット接続サービスを提供しているわけだが、早い時期から固定IPアドレスのサービスを提供し、モバイル回線やVPNにも固定IPアドレスを組み合わせるなど、こだわりがある。

 そのVPNサービスも、現在は利用形態に合わせて複数のメニューをラインアップ。また、取り扱いトップレベルドメインが1000種類以上というドメイン名登録サービス「ゴンベエドメイン」など、パワーユーザー向けに特色のあるサービスを展開している。

 さらに2014年には、自らがトップレベルドメインを管理・運営するレジストリ事業者となって、“萌えるドメイン”の「.moe」や地球ドメイン「.earth」を提供開始。

 2006年からは「あなたが選ぶ オタク川柳大賞」を毎年開催しているほか、2023年には衝撃の「異世界VPN」も発表するなど、そっちの意味でも上級者向けのことを次々に打ち出している。

 この8月でインターリンクのISP事業開始からちょうど30周年ということで、同社の歴史も交えつつ、独自路線を進み続けるISPの異色の取り組みを紹介しよう。

30年 沼にハマれば 上級者

~インターリンクはこんなISP~

 インターリンクの社風を物語るものの1つとして、まずは“社歌”を紹介しておきたい。といっても、ただの社歌ではない。2011年、同社15周年にちなんで「インターリンク社歌作曲コンテスト」を実施したのだ。

 これは、同社の横山正社長が作詞した「あついハートのインターリンク」と、「オタク川柳」の作品を連ねた歌詞の「オタクノミカタ」に曲を付けてもらうかたちで一般から募集したもの。最終選考を通過した6曲は、カラオケ店「カラオケの鉄人」で歌われた回数や、着うたサイト「カラオケの鉄人モバイル」のダウンロード回数、ウェブ投票、審査員の投票によって競われ、2曲が社歌に採用された。

「あついハートのインターリンク」
「オタクノミカタ」

 「あついハートのインターリンク」の歌詞には、「名前解決 逆引き設定」「リモートログイン VPN完了」といったサービス内容に関連したフレーズや、「ハートはいつもオーバークロック ペルチェ素子でも冷却不可能」といった分かる人には分かるフレーズが並んでいる。そしてサビは「リアルとバーチャルつなぐ あついハートのインターリンク」と来る。

 こうした社風の中で、インターリンクの「上級者向け(使う人のあまりいない)の特殊な(微妙な)」を謳うサービスが生まれているわけだ。

 この独自路線について同社は「1995年のプロバイダー業務開始以来、常に“ニーズの一歩先”を見据え、誰もがインターネットをもっと自由に、もっと面白く使えるようにという信念のもと、独自のサービスを展開している」と説明する。

 ただし、横山社長は「最初からニーズの少ないところを狙って生き残れたのなら先見の明があったということになるが、実際には逃げ回っていたら小さな市場にけっこうニーズがあった」と、謙遜とも自虐ともとれる言葉で補足。

 インターリンクがプロバイダー業務を開始した1995年から2000年ごろまでは、アナログ固定電話回線を使ったダイヤルアップ接続の個人向けISPが新興企業によって多数立ち上がった時期だった。しかし、やがて大企業が参入し、さらにADSLやフレッツ網などの常時接続回線が主流になるにつれて、淘汰されていったISPも多い。

 「みんなが小さな漁船で漁をしていたら、大きなトロール船が来て根こそぎ持っていった。その中で当社は、大海原から川のほうに追いやられて、小さな池に逃げていったところ、少人数の当社にとっては、社員全員が生活できる分の魚がいた――というイメージです。」(横山社長)

 実際、後述する同社の固定IPアドレスサービスや、VPN型固定IPアドレスサービスは、ちょうどそのころから始まっている。

必要な機能・期間で契約できるプラン体系、2カ月間の無料体験期間も

 インターリンクのサービスの特徴として、ユーザーが必要とする機能を、必要とする期間だけ契約できるプラン体系で提供している点もアピールしている。フレッツ光回線とセットにしたり、契約期間の“縛り”を設けたりしていないため、例えば光回線はそのままで、ISPだけを好きなタイミングで乗り換えやすいというわけだ。

 「基本的に、私はどんな買い物でもセット販売は好きじゃない。好きなものだけ買いたいんです。あとは、もっといいものがあれば乗り換えたい。オタクな趣味の1つかもしれないけど」と、横山社長は説明。そうしたISPが少ないため、逆にそれがインターリンクの価値となっていると語る。

 加えて、各サービス(ドメイン名登録サービスとLTE SIMを除く)には、最大2カ月間の無料体験期間が設けられている。ユーザーに実際に使ってもらうことで、品質や安定性に満足できれば継続し、ダメなら違約金なしでやめられる、という判断を支援する考えとのことだ。

 ちなみに、同社が想定していなかった無料体験期間の利用目的として、他社ISPで障害があったときに一時的に使うというケースがあったという話も教えてもらった。そう言ってしまうと商売としては不利になりそうだが、そんな話をあっけらかんと紹介するのも大胆なところだ。

インターリンク公式サイト。トップページで「固定IP」「VPN」「ゴンベエドメイン」など同社の特徴的なサービスを前面に押し出すとともに、最大2カ月間の無料体験期間も大きくアピールしている

 そのかわり、インターリンクでは電話サポートを提供せず、セルフサポートツールで対応するという方針をとっている。これなどは、ストレートに「上級者向け」のサービスに割り切っている部分だ。

 インターリンクはこのように、一般的なISPとは異なる道を選びつつ、30年もの間、利用され続けてきたわけだ。

俺だけの IPアドレス ずっと固定

~インターネット接続サービスは「固定IPアドレス」にこだわり~

 インターリンクが1995年8月にISPサービスを開始したころの個人向けインターネット接続は、アナログ固定電話回線によるダイヤルアップ接続の時代だ。

 当時、比較的小規模なISPは、大手ISPのネットワークに接続し、その下で自社ユーザー向けにダイヤルアップ接続サービスを提供していた。ISPは通常、複数の電話回線に接続する集合型モデムと呼ばれる製品を使うところを、一般用モデムを何台も並べることでサービスを提供していた小規模事業者もいたような、ISP草創期だ。

 インターリンクも当時、独立系大手ISPだったベッコアメ・インターネットに専用線接続するかたちで、月額1000円のダイヤルアップ接続サービスを開始した。「最初は10回線程度で始めたからよかったんですが、電話回線を増やそうとしたら、NTTが道路工事が必要ということで回線がなかなか手配できなくて……。その結果、テレホーダイの時間帯にユーザーさんが繋がらなくて評判を落とすということの繰り返しでした」と横山社長は苦笑交じりに振り返る。

 ちなみに現在は、インターネットへの上流ネットワークとしては、NTT PCとインターネットマルチフィードの回線で接続している。

現行のインターネット接続サービス全てが「固定IPアドレス」対応。フレッツ光向け3サービスと、モバイルLTE SIMでも

 その後、ISDNでのダイヤルアップを経て、常時接続サービスはZOOT(ズット)シリーズとして提供。2000年5月にISDN常時接続の「ZOOT NEXT for フレッツ・ISDN」、2001年1月にADSL常時接続の「ZOOT for フレッツ・ADSL」、2001年8月に光回線による常時接続の「ZOOT for Bフレッツ」というように展開していった。ちなみに「Yahoo! BB」のADSLサービスの開始が2001年9月だ。

 現在、インターリンクが提供している固定回線向けのインターネット接続サービスとしては、フレッツ 光ネクストに対応した「ZOOT NEXT」、フレッツ 光ネクスト/光クロスに対応した「ZOOT NATIVE」を用意。同じくフレッツ 光ネクスト/光クロスに対応し、大量データ通信制御なしのヘビーユーザー向け「ZOOT PREMIUM」も2024年にスタート。ZOOT(ズット)シリーズとして、3つのサービスを用意している。

 こうしたインターネット接続サービスにおいて、インターリンクが初期からこだわって提供しているのが、固定IPアドレスだ。最初の常時接続サービスである「ZOOT NEXT for フレッツ・ISDN」ですでに、全ユーザーに標準で固定IPアドレスを提供していたという。現在は3つのサービス全てで標準または有料オプションで固定IPアドレスに対応し、IPアドレス逆引きサービスもあわせて提供している。

ZOOT NEXT

  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個~128個付きプランを用意
  • IPアドレス逆引き:任意ホストへの逆引き設定可能(固定IP付きプランの無料オプション)
  • 通信方式:IPv4 PPPoE、IPv6 PPPoE(無料オプション)
  • 対応回線:フレッツ 光ネクスト
  • 通信速度(ベストエフォート):最大1Gbps
  • 利用料金:初期費用なし。固定IPなしプラン月額1100円(ファミリー/マンションタイプの場合)~、固定IP 1個付きプラン月額1320円(同)~

ZOOT NATIVE

  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個付きプランを用意
  • IPアドレス逆引き:逆引きホスト名は固定(任意のホストへの変更不可)
  • 通信方式:IPv6 IPoE(DS-Lite方式、固定IP 1個付きプランではIPIP方式)
  • 対応回線:フレッツ 光ネクスト/光クロス
  • 通信速度(ベストエフォート):最大10Gbps
  • 利用料金:初期費用なし。固定IPなしプラン月額1100円(+ホームゲートウェイオプション月額110円)、固定IP 1個付きプラン月額2200円(同)

ZOOT PREMIUM

  • 通信方式:IPv6 IPoE(IPIP方式)
  • 固定IPアドレス:標準でIPv4固定IP 1個付き
  • IPアドレス逆引き:任意ホストへの逆引き設定可能(無料オプション)
  • 対応回線:フレッツ 光ネクスト/光クロス
  • 通信速度(ベストエフォート):最大10Gbps
  • 利用料金:初期費用なし。月額1万780円
「ZOOT NATIVE」の標準サービスと、有料オプションによる固定IPアドレス1個付きサービスの違い

 さらに、モバイル接続サービスにおいても、標準で固定IPアドレス付きという点が特徴のLTEデータ通信専用SIM「インターリンクLTE SIM」を提供している。

 NTTドコモのモバイルネットワークを利用しており、定点観測・計測機器や監視カメラなどを遠隔制御するための固定IPアドレス付きインターネット接続回線として利用されることが多いという。もちろん、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器を固定IPアドレスで使用することも可能で、社内ネットワークへの接続に固定IPアドレスによるアクセス制限を実施したい場合にも活用できるとしている。

インターリンクLTE SIM

  • 通信回線:NTTドコモの5G/LTE(4G)/FOMA(3G)ネットワーク
  • 固定IPアドレス:全プランで標準でIPv4固定IP 1個付き
  • IPアドレス逆引き:任意ホストへの逆引き設定可能(無料)
  • 利用料金:初期費用3300円。月額料金は、「128kbpsで使い放題プラン固定IP1個」1100円、下り最大150Mbps/上り最大50Mbpsで、30GB以降は上下最大200kbpsとなる「30GBまで高速プラン固定IP1個」7480円など、全8プラン

※このサービスは、最大2カ月間の無料体験の対象外。1カ月間の最低利用期間もあり。

「インターリンクLTE SIM」のサービス紹介ぺージで挙げられている、同サービスの主な用途

固定IPアドレスの「品質」ってどういうこと!?

「固定IP(IPv4)が使えるサービス」のぺージ

 インターリンクのウェブサイトにある「固定IP(IPv4)が使えるサービス」のぺージには、「固定IPならインターリンク」という言葉が掲げられており、「固定IPアドレスには品質があります」と述べられている。

 同社によると、この「品質」とは、回線速度・安定性・セキュリティ・サポート体制など、複数の要素によって評価されるもので、「インターリンクが提供する固定IPアドレスは高品質」とアピールしているとのこと。

 インターリンクが固定IPアドレスサービスを始めた理由について、横山社長は一言で答える。「自分が自宅サーバーをやりたかったから」。

 2000年代前半ごろのパワーユーザーの中で、自宅サーバーを立てるのは比較的ポピュラーな楽しみ方だった。自宅サーバーをフル機能でインターネットに公開するには、固定IPアドレスが必要となる。

 当時、インターネットへの上流ネットワークとして接続している通信事業者から、「インターリンクは上りのトラフィック(ユーザー側からインターネット側へのデータ送信)が多い」と言われたという。その傾向からすると、実際に自宅サーバー用にインターリンクのインターネット接続サービスが使われていたことが伺える。

 なお、固定IPアドレスサービスは、インターネット接続サービスのほかにも、後述するように、固定IPアドレスを利用できるVPNサービス「マイIP」や、固定IPアドレスを割り当てられたVPNサーバーをグループで利用できる「グループ専用VPN」といったVPN系のサービスでも提供されている。

 「市場規模が小さかったり、対応が面倒だったりして他社がやらないような、しかしながら一定数のユーザーがいるサービスを提供する」――ISPとしてインターリンクが最も大事にしているポイントについて尋ねると、横山社長はそう答えた。

今はなき「KAP」というサービスが画期的だった!?

 すでに提供を終了しているが、「ケータイアドレスポータビリティ(KAP)」というサービスがあった。

 2006年、国内の携帯キャリア各社で「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)」がスタートするのを見据えて開始したサービスで、「携帯キャリアを移行しても、キャリアメールのアドレスをそのまま使える」ことを売りにしていた(2006年2月付プレスリリース)。

「KAP」の転送設定画面

 通常はMNPを行うと、携帯電話番号はそのまま引き継げても、キャリアメールのメールアドレスは変わってしまう。これに対し、インターリンクでは独自ドメインによるメールアドレスを提供し、MNPの前後で同じメールアドレスを変わらず使えるようにした。一種の転送メールによるものだが、当時の他社の類似サービスではウェブメールや専用アプリを使う必要があったのに対し、インターリンクは通常の携帯メール送受信操作がそのままで使える仕様だったという。

 「現在ではメール認証の要件が厳格になって無理になったんですが、当時は自分でも面白いサービスだと思いました。」(横山社長)

海を越え 異世界転生 VPN

~多彩な「VPNサービス」、趣味からリモートワークまでカバー~

 固定IPアドレスと並び、もう1つのインターリンクのサービスの柱と言えるのが、VPNサービスだ。大きく分けて3つのカテゴリーにおいて、計6つのサービスメニューを提供している。

「マイIP」シリーズ

 カテゴリーの1つ目は、VPNを使ってどこからでもグローバル固定IPアドレスが利用できる「マイIP」シリーズだ。サービスメニューとしては、対応するプロトコルの違いによって「マイIP」と「マイIPソフトイーサ版」がある。

「マイIP」では、インターリンクのVPNサーバーに接続することで、接続元の端末に固定IPアドレスが割り当てられる。固定IPアドレスが提供されないISPやネットワークでインターネットに接続している環境であっても、固定IPアドレスで通信できる仕組みだ

マイIP

  • VPNプロトコル:PPTP、L2TP、IKEv2(IPsec)、WireGuard
  • 対応OS:Windows、Linux、FreeBSD、macOS、iOS、Android、Chrome OS(利用できるVPNプロトコルはOSによって異なる)
  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個
  • 逆引き:任意のホスト名への変更可能
  • 料金:初期費用なし。月額1100円

マイIPソフトイーサ版

  • VPNプロトコル:PacketiX VPN、L2TP、MS-SSTP、OpenVPN
  • 対応OS:Windows、Linux、macOS(利用できるVPNプロトコルはOSによって異なる)
  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個~128個
  • 逆引き:任意のホスト名への変更可能
  • 料金:初期費用なし。固定IP 1個で月額1320円、固定IP複数個利用の場合は月額1320円×固定IP数

 「マイIP」シリーズの用途としては、例えば社内システムなどにリモートアクセスするのに、登録したIPアドレスからしかアクセスできないよう制限が掛かっている場合が考えられる。ここで、マイIPの固定IPアドレスを登録しておけば自宅や出張先などどこからでもアクセスできるようになる。もちろんVPNなので、端末からマイIPまでの間の経路でのデータ漏えいリスクも避けられる。

 インターリンクでは2つのサービスメニューの棲み分けとして、「マイIP」のターゲットを「個人ユーザー/SOHO/フリーランス」とし、想定用途を「リモート接続/自宅サーバー/クラウド制限IPアクセス」としており、どちらかというと個人向けのようだ。一方、「マイIPソフトイーサ版」のターゲットは「法人・システム管理者・EDI関連業務者」とし、想定用途を「業務システムへのIP制限付きアクセス/EDI/VPN経由の監視操作」としており、どちらかというと企業向けと言えそうだ。

「グループ専用VPN」シリーズ

 カテゴリーの2つ目は、グループで使える固定IPアドレス付きのVPNサーバーを1台まるごと提供する「グループ専用VPN」シリーズ。サービスメニューとしては、対応するVPNプロトコルの違いにより「グループ専用VPN」と「グループ専用VPN WG」、さらにNTT東西のNGNにも接続して高速化を図った「グループ専用VPN WG+NGN」がある。

言ってみれば、異なる場所からリモート接続しているグループメンバーが仮想社内LANを作るようなサービスだ。メンバー数は標準で10アカウントまでバンドル、オプションで10アカウント単位で追加できる。これら複数のメンバーが、VPNサーバーに割り当てられた1個の固定IPアドレスでインターネットと通信するかたちだ

グループ専用VPN

  • VPNプロトコル:PPTP、L2TP、OpenVPN、IKEv2(IPsec)、グループ専用VPNブラウザ拡張機能
  • 対応OS:Windows、macOS、iOS、Android(利用できるVPNプロトコルはOSによって異なる)
  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個(日本)
  • 料金:初期費用なし。標準10アカウントで月額5500円、オプションで10アカウント追加につき月額5500円(上限200アカウント)
  • 最大セッション数:1アカウントにつき1セッション

グループ専用VPN WG

  • VPNプロトコル:WireGuard
  • 対応OS:Windows、Linux、FreeBSD、macOS、iOS、Android
  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個(日本)
  • 料金:初期費用なし。標準10アカウントで月額5500円、オプションで10アカウント追加につき月額5500円(上限250アカウント)
  • 最大セッション数:1アカウントにつき1セッション

グループ専用VPN WG+NGN

  • VPNプロトコル:WireGuard
  • 対応OS:Windows、Linux、FreeBSD、macOS、iOS、Android
  • 固定IPアドレス:IPv4固定IP 1個(日本)
  • 料金:初期費用なし。標準10アカウントで月額8800円、オプションで10アカウント追加につき月額5500円(上限250アカウント)
  • 同時接続端末数:1アカウントにつき1台

 これら3つのサービスメニューの棲み分けとして、「グループ専用VPN」のターゲットを「小規模法人/リモートワーカー」、想定用途を「複数人拠点間通信/在宅勤務/VPN経由でのグループ内通信」としている。また、「グループ専用VPN WG」のターゲットを「ITリテラシーの高いチーム/エンジニア」、想定用途を「セキュア・高速な社内リソースアクセス/拠点接続」としている。「グループ専用VPN WG+NGN」のターゲットは「技術志向法人/IPv6通信を重視する事業者」、想定用途を「IPv6リモート監視/IPv6先行対応クラウド利用」としている。

「セカイVPN」シリーズ

 カテゴリーの3つ目は「セカイVPN」だ。世界10カ国に設置したVPNサーバーに接続することで、その設置国の共有IPアドレスで各種インターネットサービスに接続できる。

「セカイVPN」の仕組み

セカイVPN

  • VPNプロトコル:PPTP、L2TP、OpenVPN、IKEv2(IPsec)、OpenConnect、HTTPS
  • 対応OS:Windows、macOS、iOS、Android、Chrome OS(利用できるVPNプロトコルはOSによって異なる)
  • VPNサーバー設置国・地域:日本、米国、ドイツ、台湾、韓国、フランス、英国、タイ、インドネシア、ベトナム
  • 最大セッション数:3セッション(1契約で最大3台まで同時接続可能)
  • 料金:初期費用なし。月額1100円

世界どころか、異世界にもVPNで接続可能!?

 このカテゴリーの異色サービスとして「異世界VPN」がある。異世界に設置したVPNサーバーに接続することで、異世界のIPアドレスで異世界へのアクセスを可能にするIP共有型のVPNサービスだ……という説明から分かると思うが、これは2023年のエイプリルフールで発表されたネタで、プレスリリースも出された。手の込んだジョークではあるが、「セカイVPN」がサービスとして確立されていればこその遊びだろう。

「異世界VPN」の仕組み

 ちなみにエイプリルフールには2009年から嘘を発信しているが、「あくまで、自社サービスに関連する嘘だけをつくようにしている」という。例えば「異世界VPN」のように本当にあったら面白いことをネタにしたうえで、それはエイプリルフールの嘘だけど、ある意味で異世界に接続できる「セカイVPN」というサービスは本当に提供していますよ、と知ってもらうかたちだ。「ぺージビューを集めたいだけのエイプリルフールにはしない」という。

 以上のように、用途に合わせて、利用形態と接続技術との2点から細かくサービスが用意されているところが、インターリンクならではの上級者向けサービスだと言えるだろう。

 特に、固定IPアドレスとVPNの仕組みを組み合わせた「マイIP」は特徴的だ。同サービスの開始が2002年。横山社長によると「ちょうど固定IPアドレスがインターリンクの看板だと意識し出したころで、ユーザーにVPNの仕組みでグローバルIPアドレスを割り当てられることに気付き、サービスとして開始したもの」だという。

ドメインの 癖強すぎて 語彙力消失

~萌えるドメイン「.moe」と、名物「オタク川柳」コンテスト~

ドメイン名登録サービス「ゴンベエドメイン」、取り扱いTLDは1000種類以上

2025年8月下旬時点で、取り扱いドメインは「1101種類」とのこと。一覧ぺージでは、いきなり癖の強いIDNが並ぶ

 インターリンクのドメイン名登録サービス「ゴンベエドメイン」では、1000種類以上のトップレベルドメイン(TLD)を取り扱っている。

 他社で取り扱いが少ないTLDや、グローバルに展開したい個人・企業向けに、ccTLD(国コード別トップレベルドメイン)やIDN(国際化ドメイン名:アルファベット・数字などのASCII文字以外の多言語文字を使えるドメイン名)を用意することで差別化を図っているという。

 なお、インターリンクは2006年10月、日本で8社目となるICANN認定レジストラとして資格を取得している。これにより、各TLDのレジストリと直接、SRS(Shared Registry System:共有登録システム)を使用した登録管理業務が可能になり、リセラー以上の迅速かつ安全なドメイン名登録体制が整ったとアピールしている。

インターリンク自身が創設した新gTLD、萌えるドメイン「.moe」と地球ドメイン「.earth」

 中でも特徴的なTLDの1つが「.moe」だろう。これは単にドメイン名登録サービスで扱っているというものではなく、インターリンク自身がTLDを管理・運営するレジストリ事業者となって、2014年3月、新gTLDの1つとして創設したものだ。

 「『.moe』は、日本発の“萌文化”を背景に生まれたTLDであり、アニメ/マンガ/ゲーム/コスプレといったジャンルに親しむファンやクリエイターが、自らの個性や活動を表現するためのオンライン上の拠点としています。」

 同じくインターリンクが管理・運営する新gTLDとして「.earth」がある。これは、インターリンクが2009年に実施したコンテスト「WDC(ワールドドメインカップ)」において、ネットユーザーの公募・投票により選ばれた文字列を、インターリンクがICANNに申請して新gTLDとして創設したものだ。

 「地球を支える一員として活動するインターネットユーザーが オンラインコミュニティを形成するためのプラットフォームになること」をミッションとしており、現在、自然や環境に関するウェブサイトでニーズが大きいようだ。

3月15日は「ドメインの日」、10月10日は「萌の日」インターリンクが“記念日”制定

 ドメイン関連のインターリンクの取り組みは、2つの“記念日”を制定するまでに至っている。3月15日が「ドメインの日」、10月10日が「萌の日」とのことで、いずれもインターリンクが一般社団法人日本記念日協会に申請し、それぞれ記念日登録されているものだ。

 「ドメインの日」は、1985年3月15日、コンピューター製造会社の米Symbolicsが申請した「symbolics.com」が、正式なDNS管理手順に則って世界で初めて登録されたドメイン名になったことに由来。「まだよく知られていない新しいドメインや世界各国に割り当てられているドメインの認知度の向上が目的」だとして、1000種類以上のTLDを取り扱う「ゴンベエドメイン」ならではの活動を展開している。

インターリンクによると「オタク文化の中で好意を表す『萌』は、海外でも親しみを持たれている漢字」なのだとか

 「萌の日」は、「.moe」の普及促進と、二次元(アニメ・漫画のキャラクターなど)や、三次元(アイドル・動物・フィギュア・電車・城など)に「いつも以上に愛情を注いで推し活する日」とのこと。10月10日としたのは、「十月十日」を並び替えると「萌」の字に見えるからとの理由。インターリンクが開設している「十月十日.moe」では、同社が厳選した「世界萌サイト100選」が紹介されており、サムネイルがタイル状にずらりと並んでいる。

ccTLDの「島」に実際に行ってみるのもインターリンクの業務!?

 「ゴンベエドメイン」では多数のccTLDを取り扱っているが、これにちなんでインターリンクが公開しているコンテンツが「ドメイン島巡り」だ。

 これは、「.cc」(ココス諸島)や「.tv」(ツバル)をはじめとする、太平洋やカリブ海などの“島のドメイン”約50種類に焦点をあて、実際にその島々に行き、島の魅力をレポートするという取り組み。現地の暮らしなどを、バックパッカー的な感じで見て、写真を多数使ってレポートしている。ほとんどISPの業務とは無関係の内容だが、毎回最後に、現地のSIMを購入して通信状況をチェックしている。

 基本的には同社のドメイン事業部・広報部のメンバーが現地を訪問してレポートしている。「島によっては1カ月に1往復の船しか行く手段がないところもあって、帰りの便に乗れないと1カ月待たなくちゃならなくなっちゃう」らしい。

「オタク川柳大賞」を毎年開催

 インターリンクの個性的な活動として、「あなたが選ぶ オタク川柳大賞」を毎年開催していることも挙げられる。もともとは2005年に、同社の創業10周年記念企画として「IT川柳大賞」を開催したのが最初。5・7・5の形式を使って、“ITあるある”を表した川柳を募集した。

 これが2008年の第4回より、テーマをより広くオタク文化全般へと拡大し、名称も「オタク川柳大賞」にリニューアル。作品性と参加層が一気に広がり、応募数・投票数とも倍増して、反響が飛躍的に増大した。

 「インターリンクは技術力を軸にしつつも、自社運営の『.moe』ドメインやオタク川柳を通じ、『年齢層高めの熱量あるオタク層』にリーチすることで、オタク的共感が深まる文化土壌を強化したい」というのが、このコンテストの狙いだ。

 その活動は国内にとどまらず、オタク文化を世界に広める活動として、フランス・パリを中心に開催されている日本文化を紹介するイベント「Japan Expo」にもインターリンクとして出展(2012年~2015年)している。

 こうした“オタクの味方”の活動に力を入れる理由を尋ねたところ、横山社長は「自分がオタクだから」とシンプルに答えた。

 また、こうした数々の異色の活動は、横山社長が企画したものが多い。それに対する社内の反応は「また社長が変なこと始めた……」という感じだと横山社長は苦笑しつつ、「最近はほかの社員も面白い企画を出してくれる」という。それを受けて広報担当者も「社長が奇抜なアイデアをいろいろ出すことにより、自由なアイデアを出しやすい雰囲気になっている」と語った。

仮想空間で社会貢献活動!?

 インターリンクが取り組んでいる社会貢献活動としては、「グラジェネ向け無料iPad教室」や、保護猫活動団体の支援などがあるが、特に注目されるのは、仮想空間「セカンドライフ」の中に、環境保護団体や人道支援団体などNPOへの支援をする目的で開設した「八国山アイランド」だ。仮想空間内での赤い羽根共同募金を2007年から18年にわたって毎年実施しており、その募金総額が64万797リンデンドル(23万9603円)に上るとの報告がつい先日あったばかりだ。

 この活動を現在も継続している理由について聞くと、「当社は基本的になんでも『継続』を大事にしています。社員もできるだけ長く働いてもらう。テック系の会社は、飽きっぽいというか、流行りに飛びついてすぐに手放すので、その点でも逆の道を行っています」とのこと。

 こうした社会貢献活動は同社にとって「ITを通して社会を良くする、という使命感の現れ」だという。「特に高齢者にとってITは味方であるべきところ、敬遠される傾向がある」と考え、無料iPad教室は、まずグラジェネ向けに開始したとしている。

会社ごと リモートアクセス ありよりのあり

~インターリンクの企業文化/働き方、そして次の30年に向けて~

 インターリンクでは2020年6月よりオフィスを完全撤廃し、全社員が在宅+WeWorkでのフルリモート勤務に移行した。

 もともと同社は、毎年12月24日をリモートワークのみの「ノー出勤デー」とする実験的な試みを、すでに2010年に開始していた。そうした新しい働き方への関心とリモートワーク自体の成熟、さらにはオフィス維持のコスト見直しといった背景から、フルリモートへ移行したという。「単に新型コロナ禍を受けた働き方に対応したものではなく、会社の理念としてロケーションフリーな働き方の先進事例とする意図がありました」。

安全なリモートワークを実現するのを後押しするツールとして、固定IPアドレスサービスを挙げている

 さらに2022年5月からは、給与体系はそのままで週休3日制を導入。同社はすでにフルリモート体制が定着していたため、「働く時間そのものを見直せないか」という経営上のチャレンジとして、週休3日制の導入に踏み切ったという。

 一方で、リアルの場では、社員同士の交流促進や健康意識向上を目的に、「1年分の運動不足を1日で解消する」というコンセプトのもと、年1回の社内運動会を2009年に開始し、現在も継続(2020年~2023年はコロナ禍で中断)。また、月1回の誕生会も実施しているという面もある。

 そのほか、業務については前述したように、電話サポート窓口を2006年に廃止している。インターリンクの自社調査によると、電話サポートを実際に活用する顧客は全体の約5%だけで、多くのユーザーは導入時以外は電話サポートを利用していないという結果に基づくものだ。以降、FAQと個別問い合わせシステムを組み合わせたセルフサポートというかたちで対応している。

インターンシップの学生は、シリコンバレーに1カ月間滞在可能!?

インターンシップ生が企業訪問先のGoogleを訪問したときの様子

 インターリンクでは、2011年より「シリコンバレーインターンシップ」を毎年開催してきた。日本の学生を募集して、シリコンバレーで1カ月間のインターンシップを実施するというものだ。滞在中は、開発合宿が行われるほか、シリコンバレーのIT企業へも訪問する。渡航費や現地での宿泊費用などはインターリンクが負担する(現在は終了)。

 「自分が学生だったら、こんな夢のようなインターンシップがあったらいいなを実施したもの。学生だけでなく、自分にとっても引率社員にとっても貴重な体験になった」と横山社長。10年間で約50人が参加し、「みな活躍しています。1人くらい当社に入社してくれないかなと思っていますが、いまだゼロ」とのこと。

 インターリンクのこうした企業文化には、横山社長の人となりが反映されているようだ。

 同社広報担当者によると、横山社長は「文武両道を体現し、技術と人間性の両面で組織に信頼と安定をもたらす、“粋な思想家型エンジニア経営者”」とのこと。この「文」はシステムやネットワークの技術を、「武」は事業や市場への感覚を意味し、両方を持っているという意味だという。そして、フルリモートワークなどの時代を先取りする革新的な側面と、運動会や社員旅行といった会社の結束を高める行事を大切にするという「古き良き」価値観を重んじる側面を持っているとの説明だった。

 このようなインターリンクが、今後どのような役割を果たしていこうと考えているのか、最後に横山社長に質問した。以下、いただいた回答を全文掲載する。

 「全体から見たら少数のオタクに支えられ、その少数のオタクの欲するサービスを提供してきました。

株式会社インターリンク代表取締役の横山正氏

 ただ、よく言うんですが、『スマホを手放せない今の自分を20年前に想像できましたか?』と聞けば、ほとんどの人は『想像できなかった』『20年前は、それはオタクの領域と思っていた』と答えると思います。つまり、オタクが少数派から多数派になろうとしているというか、一般人がオタク領域に踏み込んできたというか、そういう時代になってきています。

 そんな時代の流れの中で、『Librettoの聖地』『東芝パーツならなんでもそろう』と言われ、私も通った秋葉原のチチブデンキが閉店したように、オタク向けビジネスが転換点を迎えていると思います。当社はこれからさらに、オタクの中のオタク、オタク領域を深掘りしていこうと考えています。」