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著作権保護期間、「死後70年」への延長論議を巡る動向(1)

保護期間延長はなぜいま議題となったのか

「著作権問題を考える創作者団体協議会」の議長として共同声明を発表する作家の三田誠広氏(2006年9月22日)
 現在、日本の著作権法では、著作権の保護期間を原則として「著作者の死後50年」までと定めている。これに対して、著作権関連17団体からなる「著作権問題を考える創作者団体協議会」が2006年9月、保護期間を欧米並みの死後70年までに延ばすべきであるという要望書を文化庁に提出した。

 一方、クリエイターや研究者、法律家などからなる「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」は、保護期間の延長にあたっては慎重な議論が必要であるとする要望書を2006年11月に提出。著作権の保護期間についての議論が注目を集めている。

著作権関連16団体、著作権の保護期間を「死後70年」に延長を求める共同声明
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/09/22/13380.html
クリエイターら、著作権保護期間延長の議論を呼びかける国民会議発足
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/11/08/13870.html

 要望を受けた文化庁では、文化審議会著作権分科会に「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」を設置。2007年3月に第1回会合を開催し、関係者のヒアリングなどを経て、保護期間の延長について議論を進めている。

 保護期間の延長を巡る動きについて、これまでの記事と関係者の意見から論点や今後の方向性をまとめてみる。

文化庁、著作権の保護期間延長問題など議論する小委員会設置
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/03/13/15056.html
著作物の保護期間延長などを審議、著作権分科会の小委員会が初会合
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/03/30/15266.html
著作権の保護期間等を検討する小委員会、関係者ヒアリングを実施
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/04/27/15585.html
著作権保護期間延長への反対意見が多く挙がる、文化審議会小委
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/17/15728.html
保護期間延長の是非を問う議論がスタート、文化審議会小委
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/06/26/16164.html
著作物のアーカイブ事業と意思表示システムについて議論、文化審議会小委
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/07/27/16480.html
著作権保護期間の延長を巡る本格的な議論が開始、文化審議会小委
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/09/04/16786.html


「欧米並みの死後70年に」「延長の影響を考えれば現状が妥当」

「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」の世話人として声明を発表する津田大介氏(左)と福井健策弁護士(右)(2006年11月8日)
 これまでに開催された小委員会や、保護期間延長をテーマとしたシンポジウムなどで挙がった意見としては、延長賛成派の主張は主に「欧米では著作権の保護期間は死後70年となっており、日本もそれに合わせるべき」という意見に集約される。

 一方、保護期間の延長に反対する主張としては、「著作権に関する国際的な基本条約(ベルヌ条約)では保護期間を死後50年としており、延長による影響を考えると現状(死後50年)のままで良い」という意見が挙がっている。

「著作権法改正案で何が変わる?」文化庁吉田氏が著作権の課題を語る
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2006/11/29/14070.html
著作権保護期間の延長について賛成派と反対派が議論、JASRACシンポジウム
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2006/11/29/14075.html
ネット時代の著作権保護期間延長問題〜公開シンポジウム開催
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2006/12/11/14206.html
著作権保護期間、死後50年から70年への延長を巡って賛成・反対両派が議論
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2006/12/12/14210.html
著作権保護期間の延長をめぐり賛成・反対双方が参加の公開トーク
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2007/03/13/15061.html


 延長反対派が危惧する保護期間延長の影響とは、延長により過去の著作物の利用が阻害されることだ。作品のデジタルアーカイブ化事業や、小説を映画化するといった二次利用をする場合には、著作権が存在する限りは著作者やその遺族など著作権者の許諾が必要となる。著作者の遺族が不明であったり、雑誌などに掲載されている原稿は著作者そのものが不明な場合、利用ができないケースがある。現在の「死後50年」でもこうした問題が存在するのに、さらに20年延ばせばますますこの問題は悪化するという危惧だ。

 著作権が消滅した作品をインターネット上で公開している「青空文庫」では、保護期間の延長は死蔵作品を増やすことにつながりかねないとして、延長に反対する署名活動を開始。また、日本弁護士連合会(日弁連)も、保護期間の延長には様々な弊害が生じる恐れがあり、一度延長されれば既得権の関係から短縮は極めて難しいとして、延長の検討には慎重な議論が必要であるという意見書を文化庁に提出している。

 一方、この問題に対して延長賛成派は、権利者団体の側で権利者データベースを構築し、権利者の所在や許諾する範囲を明示することで、利用者が容易に許諾を得られるようにしていくと説明。また、著作権者が不明な場合などは、文化庁に対して利用の許諾を求める「裁定制度」があるが、現行の制度は煩雑な手続きや手数料が必要となっている点を改め、データベースに記載されていない著作者の著作物や、非営利用途などについては簡易な手続きで利用できるようにすることで、利用を阻害する要因を減らすことができると主張している。

 また、延長賛成派は、欧米などは既に保護期間が死後70年となっていることから、「国際協調の観点からも日本も死後70年に揃えるべき」「海外の著作者に比べて、日本の著作者は20年分だけ損をしている」といった主張をしている。

 これに対して延長反対派は、「基本条約であるベルヌ条約では保護期間を死後50年としており、死後70年としているのは欧米など一部の国のみ」として、欧米に合わせる必要はないと主張。また、米国の日本に対する要求をまとめた「年次改革要望書」の中でも、日本に対して保護期間の延長が求められているが、こうした要求は米国が自国の国益を考えて出しているものであり、日本は日本の国益を考えて検討すべきであるとしている。


日弁連、著作権保護期間の延長に反対する意見書を提出
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/12/27/14388.html
青空文庫、著作権の保護期間延長に反対する署名活動
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/01/09/14399.html
著作権保護期間の延長までに権利者データベースを構築、創作者団体協議会
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/01/25/14582.html
著作権問題、外圧ではなく「日本モデル」の模索を
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2007/08/24/16689.html


「十分に議論を尽くした上で結論を」、文化庁・前著作権課長の甲野氏

文化審議会著作権分科会の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」第1回会合(2007年3月12日)
 そもそも、著作権の保護期間延長はどこから話が始まっているのか。文化庁の著作権課で7月まで課長を務めた甲野正道氏に話を伺った。

――保護期間の延長はどういった経緯で議題になったのでしょうか。

甲野氏:以前から権利者団体などからは、死後70年への期間延長の要望が寄せられていました。2005年1月には、著作権分科会において今後の著作権制度上の課題をまとめていますが、その中にも検討すべき課題として入っています。ただ、他にもIPマルチキャスト放送の同時再送信の問題など、緊急の課題があったために、これまで検討がなされていませんでした。

――それを今回議論しようとなったのは?

甲野氏:2006年9月に創作者団体から要望書が寄せられ、それに対して慎重に検討すべきだという要望書も寄せられたことから、文化庁としては小委員会(過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会)を設置して検討を始めたというのが経緯です。

――米国の日本に対する「年次改革要望書」でも保護期間の延長を求めていますが、その影響はあったのでしょうか。

甲野氏:確かに米国からの要望もあります。ただ、それに従わなければ何か仕返しを受けるといった性質のものではありませんし、米国の圧力があるから何かしなくてはいけないということは、少なくとも著作権制度ではそういったことはありません。米国からの要望は要望として認識していますが、それがあるから検討を始めたということは、私個人の意識としてはありません。もちろん、国際的な調和といったような話も議論の中には含まれていますが、この問題は国内の権利者団体から要望の出ている、国内の課題だという認識です。

――これまでの小委員会での議論を見ていますと、まさに賛否両論という状況で、結論は出るのだろうかとも思うのですが。

甲野氏:保護期間の問題ももちろんあるのですが、著作権制度全般から見ると過去の著作物の利用を活性化しようという課題もあり、小委員会の名前にも「保護」と「利用」が入っています。議論については、延長に賛成の立場の方も反対の立場の方も、とにかくまず意見を言っていただくことが必要で、その上でどうするのかを検討することが重要だと思います。


――小委員会ではいつまでに結論を出す予定なのでしょうか。

甲野氏:小委員会の設置にあたっては、特にいつまでに結論を出すといったことは決めてはいません。見通しがあるわけではないのですが、たとえば保護と利用に関する施策をパッケージとしてまとめて、これでどうでしょうかという形で広く意見を募集するというようになるかもしれませんが、やはり1年で全体を議論し尽くすというのは容易なことではないと思っています。

――いずれかのタイミングで中間まとめを行なって、パブリックコメントを募集するといった形でしょうか。

甲野氏:どこかのタイミングでやることになるでしょうが、とにかくまずは議論を尽くそうということで、たとえば今年度中といったような期限は設定していません。権利の問題は、関係する誰もが満足できるという形にはなかなかなりませんが、できるだけ多くの人が納得できる所に向けて議論を進めています。審議会というのは裁判ではありませんので、どちらが勝った負けたということではなく、メリットとデメリットをきちんと見た上で、それをどう判断するかということになると思います。

――メリットやデメリットというと、たとえば延長による経済効果がいくらになるというような数字の話になるのでしょうか。

甲野氏:数値化といってもいろいろな側面で見なければいけません。権利を持っている側からすれば、たとえば20年延ばすとこれだけの収入が見込めるといった話はまだ計算しやすいかもしれませんが、それによって利用しにくくなる作品の影響といったものは数値化が難しいでしょう。欧米はどのような趣旨で期間を延長し、その結果どのような影響が出たのか。そうした点も踏まえて議論する必要があるでしょう。いずれにしても、保護期間の問題は著作権のことを考えていただくいい機会になったと感じています。


保護期間延長議論の行方は

 著作権保護期間の延長を巡っては、延長に賛成・反対の双方の立場からの意見が挙がっているが、文化庁としてはまずは双方の意見を聞いた上で、十分に議論を尽くした上でこの問題について結論を出したいという姿勢のようだ。

 次回は、著作権保護期間の延長を求めている創作者団体の議長を務める、日本文藝家協会副理事長で作家の三田誠広氏に話を伺う。


関連情報

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著作権保護期間、「死後70年」への延長論議を巡る動向(2)(2007/09/20)
著作権保護期間、「死後70年」への延長論議を巡る動向(3)(2007/09/21)


( 三柳英樹 )
2007/09/19 11:38

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