● いろんな検索エンジンで「初音ミク」探してみましたか?
「初音ミク」画像検索問題がヤフーの決算説明会で話題になるなど、先々週の出来事の影響を引きずったニュースもちらほらみられた先週。ライブドアホールディングスの社長交代や、Mac OS X Leopard関連のニュース(Google Desktop、ATOK)も話題になりました。
後半の解説では、アマゾンジャパンが物々交換サイトへのデータ提供を停止した件について、その背景と今後の影響について考えてみましょう。
◆Amazonの商品データベース提供打ち切りで物々交換サイトに影響
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/24/17281.html
Amazonの商品データベースを利用して運営されていた物々交換サービスに対し、アマゾンジャパンがデータベースの提供を打ち切り。物々交換サービス側はサービスを休止したり内容を変更するなど、深刻な影響を受けている。
◆Yahoo! JAPAN新トップページを10月中にβ公開、10人中1人に表示
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/25/17296.html
2008年1月に正式公開予定のYahoo! JAPANトップページのβ版を公開。リニューアルのテーマの1つに「掲載情報の裾野の拡大」があり、CGM系など従来よりも幅広い情報を掲載していく。β版はランダムに抽出した1割程度のユーザーに対して表示され、反応を見ながらさらに改良を行なっていく。
◆「Gmail」でIMAPのサポートを開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/25/17297.html
24日、GoogleはWebメールサービス「Gmail」でIMAPのサポートを開始したと発表。順次対応していくためアカウントにより利用可能になるタイミングが異なる。従来も対応していたPOP3に対し、IMAPはGmail本体と未読情報が共有できることなどが特長で、PCやモバイル端末など複数のクライアントを使い分ける際の利便性が高まる。
◆「Yahoo!ニュース」に読者が書き込めるコメント欄を設置
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/23/17270.html
ヤフーは「Yahoo!ニュース」の記事に、読者が書き込めるコメント欄を設置した。同社が進めるソーシャルメディア化の一環で、既に実装されていた「みんなの感想」やソーシャルブックマークへのリンクに次ぐもの。コメントは400字までで、内容をチェックして誹謗中傷や記事と無関係なものなどは削除する。
◆BitTorrent日本法人に角川が出資、P2P動画配信サイトを2008年に開設
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/22/17264.html
BitTorrentは22日、角川HDの資本参加とデジタルコンテンツ事業の共同展開を発表。P2Pの動画配信サイトを2008年7~9月にプレオープンし、同年内に正式オープンすると述べ、同社が持つP2P技術で動画配信サービスのコストや回線負荷が軽減ができるとアピールした。
● Amazonが物々交換サイトへのデータ提供停止、その影響は!?
2007年前半、次々と物々交換サービスがオープンしました。ユーザー同士が持っているCDやDVD、ゲームソフトなどを交換できるサービスで、商品のデータベースとしてAmazonの商品データベースを利用していました。これは「Amazonアソシエイト・プログラム」および「Amazon Webサービス」に了承されて提供を受けていたもの。アマゾンジャパンはこれらのサービスがデータベースを利用することをOKしていたわけです。
ところが最近になって、これらの物々交換サービスにアマゾンジャパンはデータベースの提供を打ち切りました。サービスの中核となるデータベースを失って、物々交換サービスを提供する企業ではサービスを休止したり、代替のデータベースを利用するなど対応に追われました。
提供打ち切りの理由について、アマゾンジャパンは「運営規約に違反」「個別の事例についてはコメントを差し控える」と、具体的な理由は公表していません。
2005年末頃から起きた「Web 2.0」ブームの中で、Webサービスが提供しているAPIを利用して独自のサービスを作る「マッシュアップ」がもてはやされるようになりました。個人や小さなグループでも大規模なデータを使ったサービスを短期間で開発できるのが魅力で、GoogleマップのAPIを利用した地図で遊べるサービスや、AmazonのAPIを利用した本棚サービスといったものが典型例です。Amazonのデータベースを利用した物々交換サービスも、典型的な「マッシュアップ」によるサービスです。
無料であるかわりに提供元の裁量であっさり打ち切りもできてしまうAPIを、自社サービスの根幹となる部分に利用するのは非常にリスクが高い、という「マッシュアップ」の弱点を浮き彫りにした事例として、今回の件は記憶に残ることになるでしょう。
APIの問題とは少し異なりますが、2007年2月にはニコニコ動画がYouTubeからアクセスを遮断されたことがありました。この理由も公式に表明されてはいませんが、ニコニコ動画がYouTubeに対して負荷をかけすぎたため、つまり、YouTubeにとってプラス面よりもマイナス面が大きい相手と判断されたため、という見方があります。
Googleが地図のAPIを公開したり、Amazonが商品データベースのAPIを公開するのも、マッシュアップによって新しいサービスが生まれ、利用者が増え、といった中で自社に何らかのプラス効果があることを期待してものです。ですから、マッシュアップサービスの開発者といわゆる「Win-Win」の関係が築けていれば、提供を拒否される理由はなくなるのではないでしょうか。
物々交換サービスはAmazonにとってマイナス面が大きいと判断されたため、データベースの提供が停止された、ということであれば、納得のいくストーリーです。Amazonでは誰でも不要になった本を出品できる「マーケットプレイス」というサービスを行なっていますが、物々交換サービスはこれの競合となる、と判断されたのではないか? という想像もできます。
マッシュアップによるサービスを開発するときには、現状の利用規約に反しないか、ということに加えて、APIの提供側にとってこのサービスがどう見えるか、ということも考えておくべきかもしれません。自分の作りたいサービスが、APIの利用規約がまだ想定していない“嫌な”サービスである、という可能性もあるわけですから。
2007/10/29 12:13
|
小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
- ページの先頭へ-
|