先週は目を引く新サービス・ソフトのニュースが相次ぎました。「Windows Vista SP1」と「Safari 3.1」が特に大きな目玉で、YouTubeの高画質対応もありました。国内の大手ポータルに目を向けると、ヤフーが「Yahoo!ログール」と「Yahoo!ファンクラブ」を発表。gooもシニア向けの「gooマスターズ」を発表したほか、「goo 地図」「モバイルgoo」の新機能追加がありました。
季節の話題としては、桜の開花予測情報にも注目。東京のお花見は今週末あたりが狙い目のようです。
◆米Microsoft、Windows Vista SP1リリース
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/19/18862.html
3月18日、米Microsoftは「Windows Vista SP1」をWindows Update上でリリースしたと発表。日本語版もリリースされており、手動でWindows Updateを行なうことで適用できる。自動ダウンロードは4月中旬の見込み。
◆米Apple、"世界最速Webブラウザ"「Safari 3.1」発表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/19/18864.html
3月18日、米AppleはMac版とWindows版の「Safari 3.1」を発表。「世界最速ブラウザ」を謳っており、同社発表のデータによるとInternet Explorer 7の1.9倍、Firefox 2の1.7倍速い。Web標準規格への対応が進み、従来バージョンよりも多くのサイトを正常表示できるようになり、安定性も増している。
◆通信業界団体が帯域制御の指針案、P2Pトラフィックなどの増大に対処
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/17/18823.html
3月17日、日本インターネットプロバイダー協会など通信業界4団体は「帯域制御の運用基準に関するガイドライン(案)」を発表。4月14日まで意見を募集する。帯域制御はあくまで例外的なものとしつつ、帯域占有の判別法やその正当性などが焦点となる。詳しくは後半で解説します。
◆YouTube、高画質動画の再生を開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/17/18822.html
3月14日、YouTubeは高画質動画の再生開始を公式に発表。「マイアカウント」で高画質動画の再生方法(回線速度に応じて自動選択/高画質再生をしない/常に高画質)を変更できる。
◆「Google」日本語版のトップページがリニューアル
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/19/18880.html
3月19日、Googleは日本語版のトップページをリニューアルし、主要サービスへのリンクをアイコン付きで表示するようにした。「各種サービスへの入り口がわかりづらい」という声に対応したものと同社は説明しており、「おすすめ」「いろいろな検索」など4つのタブで各4~5のサービスを紹介しているほか「サービス一覧」へのリンクも設置している。
● ISPの帯域制御が行なわれる? 通信業界団体がガイドライン案を発表
3月17日、日本インターネットプロバイダー協会、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟の通信業界4団体は、「帯域制御の運用基準に関するガイドライン(案)」を公表。この案についての意見を4月14日まで募集します。
ここでの「帯域制御」とは、ISPを利用するユーザーに対して利用可能なネットワークの帯域を制限すること。このガイドライン案が作られた背景には、2007年6月に総務省の「ネットワークの中立性に関する懇親会」が発表した報告書案があります。この報告書案では、ネットワークのコスト負担の公平性と、利用の公平性の確保という2つの課題についての提言を行なっており、P2Pファイル交換ソフトを利用する一部ヘビーユーザーが帯域を占用していることが問題視されていました。
この報告書を受けて、2007年9月に前述の通信業界4団体による「帯域制御の運用基準に関するガイドライン検討協議会」が発足。17日のガイドライン案の公表となりました。
ガイドライン案では、帯域制御の必要性を一定の枠内で認めつつも、実施については慎重な内容となっています。その理由としてまず第一に、トラフィック増加に対してはネットワークの増強によって対応するのが本筋であることがあります。一方で、例外的状況への対応としての帯域制御を認め、それに対するコンセンサスの共有が重要であるとしています。
第二に、どのような利用状況が問題になるかはISPによって異なるため、具体的な基準や定義を設定しにくい、という問題があります。
そして第三に、「通信の秘密」を保障しつつ帯域制御を行なうためにはどのようにすれば良いか、という問題があります。仮にP2Pソフトを利用しているユーザーの帯域制御をしようとすれば、ユーザーがP2Pソフトを利用しているかどうかを確認する必要があり、そのためには「通信の秘密」の侵害にあたる行為をすることになるためです。
なお、P2Pソフトは違法コピーの温床として問題視されていますが、著作権侵害を理由にISPの立場から帯域制御をすることは合理的な理由として認められがたいとされています。
現在すでに、帯域制限に類する機能を提供しているISPはいくつかあります。DTIではトラフィックの量を見て、1日に15GB以上のトラフィックを発生させたユーザーの利用制限を実施しています。ぷららでは、Winnyのものとみなされる通信を遮断する「Winnyフィルタ」をユーザー自身で有効・無効の設定が可能な形で提供しており、ユーザー保護機能の意味合いもあります。これはWinnyの完全遮断機能に対し総務省から「通信の秘密」侵害の可能性の指摘があり、内容を変更したものです。
ガイドライン案の発表と同じ3月17日に、総務省は帯域制御に関する実態調査の結果を公表しました。これによると、約25%の事業者が帯域制御をすでに実施している一方で、過半数の事業者は実施予定がないと回答しています。
このような議論がある一方で、P2P業界ではP2P事業者向けガイドライン策定の動きがあります。発表されたガイドライン(第1版)は対ユーザー向けの内容が主となっていますが、社会に受け入れられるP2Pを目指す方針とのことですので、「帯域制御の運用基準に関するガイドライン(案)」を受けて、何らかの動きがあるかもしれません。
2008/03/24 11:38
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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