5分でわかるブロックチェーン講座

「Web 3.0」を目指すブロックチェーン特化ファンドが5億ドルで組成、NASDAQはブロックチェーン企業と提携

国内は2度目の法改正で市場の転換点に

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1. 3年ぶりとなる法改正が施行

 今週(4月28日から5月4日までの1週間)は、3年ぶりとなる法改正の話題が大きく注目を集めた。5月1日、改正資金決済法および改正金融商品取引法が施行され、国内の暗号資産市場は次のフェーズへ向かうことになる。

 今回の施行は、2017年4月1日に初めて法規制が施行されて以来2度目にあたる。実態とは裏腹に、最も多くの話題を集めたのが呼称の統一だ。5月1日以降、これまで「仮想通貨」と呼ばれてきたものは「暗号資産」として正式に定義されている。また、昨今注目を集めるセキュリティトークンについての枠組みも整備された。

 前者は改正資金決済法にて、後者は改正金融商品取引法にてそれぞれ規制対象となっている。少し具体的にみていこう。

 改正資金決済法では、先述した呼称変更に加え、顧客資産の管理について規制が強まった。これまでの枠組みでは、法定通貨(円やドル)と暗号資産の換金を行う場合にのみ、暗号資産交換業の免許が必要になる。しかし今回より、ウォレットサービスのような顧客の資産を預かるだけの事業を運営する場合にも、交換業の免許が必要になったのだ。そのため今回の法改正が可決されて以降、小規模事業の撤退が相次いだ。個人の価値を売買するSNS「Valu」のサービス終了も、この法改正に耐えうる事業体制を構築できなかったことが背景にある。

 一方の改正金融商品取引法では、「電子記録移転権利」が新たに創設された。これは、セキュリティトークンに対する規制を整備するための枠組みであり、今回の法改正で最も注目を集めた項目だといえる。

 セキュリティトークンとは、暗号資産(トークンともいう)のうち証券性を持ったものを意味する。そのため証券のデジタル化ともいわれており、このトークンを使って実施される資金調達をSTO(Security Token Offering)と呼んでいる。今回の施行により、セキュリティトークンに関する規制が明確化されたため、今後STOを含む様々な新興市場の盛り上がりが期待できるだろう。

 また改正金融商品取引法には、暗号資産のデリバディブ取引についても規制項目として追加された。これまで暗号資産のデリバティブ取引については規制が存在していなかったが、今後事業を運営する場合には、金融商品取引業への登録が必要になる。

 なお、今回の施行をうけて金融庁は、日本STO協会と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の2団体を「認定金融商品取引業協会」として認定すると発表した。

参照ソース


    仮想通貨は暗号資産に、セキュリティトークンのビジネスが始動へ──改正資金決済法・金商法きょう施行
    [CoinDesk Japan]
    STO協会とJVCEAが金融庁の認定団体へ
    [あたらしい経済]

2. 大手海外取引所が日本市場から撤退

 最大100倍までレバレッジをかけられることで人気を集めていた海外の暗号資産取引所BitMEXが、日本の居住者に対する利用を制限すると発表した。

 公式ブログによる声明では、5月1日に施行された改正資金決済法および改正金融商品取引法の影響による撤退と説明されている。BitMEXは、暗号資産のデリバディブ取引で多くのユーザーを獲得していたため、今回の法改正の影響が特に大きかった取引所の1つだといえる。

 なお、今後は日本の規制当局と協議を続け、サービス提供の再開など進展がみられた場合には、改めて声明を出すとしている。

参照ソース

3. 「Web 3.0」などを目指したブロックチェーン特化のファンドをa16zが組成、5.15億ドル

 大手ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)による暗号資産・ブロックチェーン特化の2号ファンド「Crypto Fund II」が4月30日、最終募集をクローズした。ファンド規模は、当初予定されていた4.5億ドルを上回る5.15億ドルとなっている。

 a16zは、大手取引所Coinbaseへの出資を皮切りに、2013年より暗号資産・ブロックチェーン領域へ注力する姿勢をみせている。2018年には「a16z Crypto」の1号ファンドを組成し、これまでにMakerDAOやDapper、DFINITY、dY/dXといった、各領域をリードするプレイヤーを多数サポートしてきた。

公式ブログでは、今回の2号ファンドで主に次の領域を投資対象にすると説明されている。

・次世代決済(Next Generation Payments)
・SoV(Modern Store of Value)
・DeFi(Decentralized Finance)
・新たなマネタイズモデル(New Ways for Creators to Monetize)
・Web3.0

 いずれもブロックチェーンを活用した未開の領域であり抽象的な概念が多くみられるが、多くの新興市場をリードしてきたa16zの戦略には、今後も大きな期待が寄せられそうだ。

参照ソース


    Crypto Fund II
    [a16zブログ]
    米大手VC仮想通貨ファンド「Crypto Fund II」が最終募集を完了、550億円規模に
    [CoinPost]

4. NASDAQがデジタル資産プラットフォームを開発

 米国の大手株式市場NASDAQ(ナスダック)が、ブロックチェーン企業R3との提携を発表した。今回の提携により、ブロックチェーンを活用したデジタルプラットフォームの開発を加速させるという。

 新たに開発されるデジタル資産プラットフォームは、R3の開発したブロックチェーン「Corda(コルダ)」によって構築されるという。このプラットフォームを通して、デジタル資産の発行から取引、決済や保管などの機能がサポートされる予定だ。

 Cordaは、金融領域への活用が進んでいるコンソーシアム型のブロックチェーンだ。一般的なパブリック型とは異なり、ブロックチェーンに記録するデータを完全には公開せず、一部の運営者でのみ管理する方式だ。こうすることで、システムに汎用性を持たせることができるため、パブリック型よりも多分野での導入が進んでいる。

 今回のNASDAQだけでなく、これまでにHSBCなどの大手金融機関でも導入が発表されてきた。また日本では、SBI R3 Japanという名称でSBIホールディングスを筆頭株主とした合弁企業も設立されている。

 NASDAQのデジタル資産責任者を務めるJohan Toll氏によると、今回のR3との提携は非独占的なものであり、R3以外にもブロックチェーン企業との協業を引き続き模索していくという。

参照ソース


    ナスダックがR3と提携 「デジタル資産市場プラットフォーム」構築へ
    [CoinPost]
    Why Nasdaq is working with R3 to issue digital tokens
    [Decrypt]

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec