5分でわかるブロックチェーン講座
三大メガバンク含む国内大手30社で民間発のデジタル通貨を発行へ、CBDCとの関係性は?
ブロックチェーン業界からまたしてもユニコーンが誕生
2020年11月24日 12:47
民間発のデジタル通貨
日本でも中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)が話題を集める中、民間発のデジタル通貨発行の取り組みが明らかとなった。
国内暗号資産取引所のディーカレットは、事務局を務めるデジタル通貨勉強会を通してデジタル通貨フォーラムの設立を発表している。民間発のデジタル通貨は、このフォーラムより発行される予定だ。
デジタル通貨フォーラムには、三大メガバンクやNTTグループ、野村HD、KDDI、電通といった国内の著名企業が名を連ねる。オブザーバーは金融庁や総務省、財務省、経済産業省、そして日本銀行といった顔ぶれだ。
民間発でデジタル通貨を発行する狙いとしては、乱立する決済サービスの基盤を統一し、利便性を高める点にあるという。デジタル通貨は、参画企業の持つ現預金を裏付け資産として発行され、銀行口座と同様の役割を持つ専用のウォレットにて管理される予定としている。
2022年の実用化を目指すという今回の取り組みでは、二層型デジタル通貨の発行が検討されている。二層型とは、上層に相互互換性を実現する「共通領域」を、下層にカスタマイズ性を実現する「付加領域」を備えたものだ。
既存の日銀決済インフラもこのような二層構造となっており、現在議論が進んでいるCBDCでも同じ設計が採用されることが予想される。CBDCの場合は、現時点では明確にブロックチェーンを使う意図は示されていないが、今回の民間発のデジタル通貨はブロックチェーンを使用する方針を明らかにしている。
なお、デジタル通貨は民間銀行を通して発行され、2021年4月より小売や製造業、物流、電力といった領域ごとに実証実験を開始する予定だ。
Chainalysisがユニコーンの仲間入り
ブロックチェーンの透明性については以前こちらの記事で解説したが、主にエンタープライズ向けにブロックチェーン関連データの分析サービスを提供するChainalysisが、ユニコーンとしての評価額で資金調達を予定していることが明らかとなった。
暗号資産・ブロックチェーン業界では、近年ユニコーンが続々と誕生している。あくまで主観的な意見だが、暗号資産のイメージがまだあまり良くないため世界的になかなか上場承認がおりないのだろう。
ブロックチェーンの文脈では、GAFAによって集権化されてしまったWebを本来に戻そうとする概念を総称して、Web3.0と読んでいる。Web3.0では、個人のデータは個人のものであり特定の誰かによって管理されるものではないと考える。そこで重要なのが、データの透明性だ。
ブロックチェーンに記録されたデータは透明性が高い状態で保持される。Chainalysisは、透明性の高いブロックチェーン上のデータを集計・分析するサービスを提供している企業だ。上記の記事内で紹介した「Etherscan」や「DappRader」、「DeFi Pulse」とは違い、Chainalysisは対象をエンタープライズに向けている。
特にAML/CFTの文脈から各国の政府が主要顧客となっており、中でも米国政府は年間で数百万ドルを支払っているといわれている。他分野の類似企業としては、2020年9月30日に時価総額150億ドルでニューヨーク証券取引所への上場を果たし話題を集めたPalantir Technologyがあげられるだろう。
Chainalysisも、顧客数はさほどではないが1件あたりの売上が非常に大きいビジネスモデルを採用している。ビットコインをはじめとする暗号資産は悪い使われ方をするイメージが強いかもしれないが、実際は他のあらゆる決済手段よりも透明性に長けているのだ。
Palantir然りChainalysis然り、デジタル化が進むほどにこういったデータ分析企業への需要は高まり続けるだろう。なお、Chainalysisには日本からもMUFGが出資している。
参照ソース
Bitcoin Investigation Giant To Raise $100 Million At $1 Billion Valuation
[Forbes]
今週の「なぜ」CBDCを含むデジタル通貨の必要性
今週は民間発のデジタル通貨に関するトピックを取り上げた。ここからは、デジタル通貨の必要性について筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
CBDC発行の懸念は民間市場の圧迫
CBDC肯定派の意見はブリッジ通貨としての役割
日本は国際金融センターになり得る
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
CBDC発行の懸念は民間市場の圧迫
FacebookのLibraをきっかけとして、中国の国家プロジェクトであるデジタル人民元によって議論が加速したCBDCだが、今や世界の約8割の国々が発行を検討しているといわれている。
このCBDCは、米国や日本などの多くの先進国では発行が見送られている状況が続いている。理由は多岐にわたるが、その1つが民間の決済システム市場を圧迫しないかという点だ。これに関しては日銀副総裁の雨宮氏も、仮にCBDCの決済コストが民間のそれを下回る場合、多くの小売店は民間マネーではなくCBDCを選択することになるだろうと言及している。
ブリッジ通貨としてのCBDC
CBDCを発行すべきとする民間側の意見としては、異なる決済サービスの橋渡しとなる可能性に言及するものが多い。〇〇ペイが乱立している現状において、CBDCがそのブリッジ通貨としての機能を果たすのではないかという意見だ。
これに関しては、私も確かにCBDCがブリッジ通貨としての役割を果たせると考えているものの、それだけのためにCBDCは発行されないと言い切れる。〇〇ペイによって確実にキャッシュレス化の波は到来したが、現状その市場規模は数兆円にとどまっているからだ。
一般的なビジネスの市場規模としては確かに大きいが、クレジットカードの市場規模が約70兆円であるのと比べると、取るに足らないものになってしまう。この小さい市場のためだけに、国家規模の共通通貨を発行するとはとても考えられないだろう。
香港国家安全維持法と日本のCBDC
それでもやはり、CBDCを含むデジタル通貨は必要だ。私個人の考える理由としては一つ、世界がそうするからである。背景には、香港で制定されてしまった国家安全維持法の存在がある。
米中冷戦の最中、国際金融センターであった香港が実質的に中国となったことにより、その機能を失ってしまった。一部で、今後世界はグローバル化ではなく米国と中国の「ブロック化」に進むといわれているが、私もこれに賛成だ。そして、ブロック化の時代に重要になるのが日本だと考えている。
なぜなら、日本は米中に次いでGDP第三位であり第四位以下の多くがEUであること、立地的にも米中の間に位置していることが理由としてあげられるからだ。そのため、これまで香港ドルが担ってきた米中貿易の仲介点が日本になると考えている。
中国ブロック圏で中国発のCBDCが基軸通貨として使われ、米国ブロック圏でも同じことが起こる場合、それらを繋ぐ日本でもCBDCが必要になるのではないだろうか。これが日本でCBDCないしデジタル通貨が必要になる理由だ。
CBDCの強みは、デジタル化による流動性とインターオペラビリティ(相互互換性)だと考えている。この二つが必要になる時代において、現金ではとても対応しきれないだろう。