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イーサリアムのスケーラビリティ向上へ、Polygonがゼロ知識証明活用のPlonky2をローンチ

2022年はイーサリアムのセカンドレイヤーの1年に

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

Polygonがスケーリングソリューション「Plonky2」を発表

 イーサリアムのサイドチェーンPolygonが、新たなスケーリングソリューション「Plonky2」をローンチした。ゼロ知識証明を活用したイーサリアム互換のインフラ技術になるという。

 今回ローンチされたPlonky2は、昨年12月にPolygonが買収したMirのチームが開発を牽引する。当時、わずか数名のチームが4億ドルで買収されたこともあり大きく話題となっていた。

 ゼロ知識証明を活用したイーサリアムのスケーリングソリューションには、Loopring、Starkware、zkSyncなどが存在する。これらと比較した時のPlonky2の特徴は、スマートコントラクトを使った複雑なトランザクションを検証可能な点だという。

 これまでは、フラッシュローンやアービトラージ(裁定取引)などの一度のトランザクションで複数回のアセット移動が伴う取引は、セカンドレイヤーでは検証することが困難だった。Plonky2では、MacBook Proを使ってこれをわずか0.17秒で実現できるようだ。

 今年は、サイドチェーンやセカンドレイヤーなど、イーサリアムのスケーラビリティを高めるソリューションの競争が激化することが予想される。

参照ソース

イーサリアムのセカンドレイヤーArbitrumが一時ネットワークダウン

 イーサリアムのセカンドレイヤーArbitrumが、ネットワークの一時ダウンを公表した。シーケンサーの不具合により、停止中のトランザクションが正常に処理されなかったとしている。

 Arbitrumでは、トランザクションを高速処理するためにオフチェーン領域を設けており、ここをコントロールするためにシーケンサーを使用している。そのため、シーケンサーの不具合はトランザクション処理の停止に直結するのだ。

 通常は、バックアップ用のシーケンサーが自動的に作動する仕組みとなっているものの、今回はソフトウェアのアップデートと重なり動作しなかったという。停止中に受け付けていたトランザクション数は284件あったといい、復旧後に正常に処理できるよう対応が取られていた。

 ただし、Arbitrumでは仮にシーケンサーが長期間にわたって停止したとしても、オフチェーンではなく通常のイーサリアムネットワークに直接トランザクションが書き込まれる設計となっているため、あくまで高速処理の場面でのみ今回のような不具合が生じうるとしている。

参照ソース


    Today’s Arbitrum Sequencer Downtime: What Happened?
    Arbitrum

今週の「なぜ」セカンドレイヤーはなぜ重要か

 今週はPolygonのPlonky2とArbitrumに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

サイドチェーンとセカンドレイヤーは別物
イーサリアムは単体でスケーラビリティを高めようとはしていない
ブロックチェーンはレイヤー構造と共に整備される

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

セカンドレイヤーとは何か

 イーサリアムには秒間あたりの処理性能に限界があり、需要過多の状況ではトランザクション詰まりが発生することで、結果的にガス代が高騰するといった一連のスケーラビリティ問題を抱えている。

 これを解消するためにいくつかのアプローチが出てきているが、その中の代表例がサイドチェーンやセカンドレイヤーといった取り組みだ。よくサイドチェーンをセカンドレイヤーの一部として言及しているものも見受けられるが、両者は根本から異なっている。

 セカンドレイヤーは、文字通りイーサリアムブロックチェーンの上に構築されるネットワークであり、トランザクションの検証をイーサリアムに対して行う。一方のサイドチェーンは、自らのブロックチェーンを集権的に運用しており、トランザクションの検証も自らのブロックチェーンで行っている。定期的にトランザクション情報をイーサリアムにまとめて記録していることから、横にチェーンを並べているようだと表現され、サイドチェーンと呼ばれるようになった。

2022年はセカンドレイヤーの1年に

 先週公開した2022年の業界予測でもメインに取り上げたが、今年はセカンドレイヤーの1年になると考えている。去年はサイドチェーンやその他のブロックチェーンが台頭したことでイーサリアムのシェアが薄まったものの、セキュリティの高さやエコシステムの充実度合いではイーサリアムが抜きん出ているため、今年はこのエコシステムがさらに拡張すると予測した。

 加えて、今年はイーサリアム2.0の大きなマイルストーンであるThe Mergeの実装が予定されているため、これもセカンドレイヤーの追い風になることが期待できる。

 今回のArbitrumの一件は当然ネガティブなニュースだが、開発企業のOffchain Labsは、現状はあくまでアルファ版であるとして今後分散化に向けて開発を進めることで今回のような不具合は生じにくくなるとしている。

ブロックチェーンのレイヤー構造はOSI参照モデルに類似

 冒頭でイーサリアムにはスケーラビリティ問題があると言及したが、今後のイーサリアムは、それ単体でスケーラビリティを高めようとはしていない。イーサリアムの最大の強みは分散性であり、これに並ぶのはビットコインだけであることから、他のブロックチェーンには再現できない特徴があると言える。

 イーサリアムは、スケーラビリティをセカンドレイヤーに任せることで、自身は分散性によるセキュリティの高さを維持することに専念する意向だ。そのため、今後のイーサリアムエコシステムが発展するにはセカンドレイヤーが欠かせなくなってきたと言えるだろう。

 昨今は、セカンドレイヤー以降のサードレイヤーやフォースレイヤーまで言及されており、ブロックチェーンがマスに広がる未来が少しずつ見えてきたように感じている。

 インターネットにおいて、いくつかのプロトコルがOSI参照モデルという形でまとめあげられたように、ブロックチェーンのレイヤー構造も徐々に積み重なっていくのではないだろうか。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami