5分でわかるブロックチェーン講座

2022年のブロックチェーン業界予測。イーサリアムはセカンドレイヤーが成熟化、DeFiは2.0時代へ

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

 今回は2022年初回ということで、今年1年の業界動向を予測したい。「イーサリアム」と「DeFi」に分けて考察していく。



2022年のイーサリアム:セカンドレイヤー、イーサリアム2.0「The Merge」

 2021年は、イーサリアムのスケーラビリティ問題とそれに伴うガス代の高騰が一層浮き彫りとなった1年だった。その結果、業界は「マルチチェーン時代」へと突入し、Solana、Binance Smart Chain(BSC)、Avalanche、Terraといったイーサリアム以外のブロックチェーンが大きく成長を遂げている。

 2022年も引き続きこれらのブロックチェーンは成長を続けることが予想されるが、一方でイーサリアムエコシステムも順調に拡大することが期待できる。2022年はセカンドレイヤーの1年と言っても過言ではないかもしれない。

 ブロックチェーンの世界では、プロトコルに近づくほど可視化される価値が高くなる。イーサリアムエコシステムの場合、最も価値を持つのがイーサリアム(ETH)であり、それ以降はセカンドレイヤーが価値を持つことになるということだ。これを「Fat Protocol理論」という。

 実際、暗号資産の時価総額ランキング上位を見ても、イーサリアムのETH、BSCのBNB、SolanaのSOL、TerraのLUNA、AvalancheのAVAXが全てランクインしている。

 こういったマルチチェーン化の中で、イーサリアムはスケーラビリティ問題の解消に向けてセカンドレイヤーの整備を進めている。イーサリアムだけで全てを賄おうとせずに、Optimistic Rollupなどの他のプロジェクトを育てているのだ。

 2021年時点で一定の成長を見せたセカンドレイヤーは、2022年にいよいよ本格化が期待されている。これらが順調に成熟化すれば、2022年は再びイーサリアムの年になる可能性が高いと言えるだろう。

 加えて、今年はイーサリアム2.0における最重要マイルストーン「The Merge」が予定されている。現行のPoWチェーンをPoSチェーンへ統合することでマイニングを廃止するのがThe Mergeだ。これにより、イーサリアムは電力消費が99.9%削減されるとの試算も出ており、サステナブルなブロックチェーンへと進化する。最新のロードマップでは、2022年の第一四半期末にThe Mergeが実装予定だ。

The Mergeまでのタイムライン

 The Mergeのタイミングでは、ETHの発行量が一気に90%減少する「The Cliffening」も予定されている。これは、ETHの価格を上昇させることが狙いであり、エコシステムの拡大という観点でも重要なマイルストーンとなるだろう。

 注意すべきは、The Merge実装後すぐにPoWチェーンが廃止されるわけではない点だ。PoSチェーンは2020年12月1日より稼働しており、The Merge後も並行稼働は続く予定となっている。

 The Mergeの実装後は、いよいよスケーラビリティ問題の直接的な解決に向けて開発がスタートする。それがシャーディングの実装だ。シャーディングが実装されることで、イーサリアムのブロックチェーンが何倍にも処理性能を高めることができる。

 2022年は、イーサリアムのスケーラビリティ問題の解決およびガス代の下落に向けた本格的な取り組みがスタートする1年にもなりそうだ。

参照ソース

2022年のDeFi:DeFi2.0、GameFi、ステーブルコイン

 2021年のマルチチェーン化を加速させたのがDeFiだ。DeFiの需要過多によりトランザクションを処理するイーサリアムの性能が追いつかず、ガス代が高騰した結果他のブロックチェーンへと資産が流れ込んだのが実態である。

 ブロックチェーンはもともと金融の技術であることからDeFiとは相性が良く、2022年もDeFi市場は大きく盛り上がることが予想される。中でも、DEXやレンディングといった従来のシンプルなDeFiアプリケーションに加え、DeFi2.0と呼ばれる新たな領域の拡大が期待できるだろう。

 DeFi2.0では、従来のDeFiサービスを拡張する形でより複雑化したものが登場している。具体的には、将来DeFiで発生するであろう利回りを先んじてトークン化したり、レンディングで得た債権をトークン化して他人に貸し出したりといった具合だ。複雑さが増し利用できるユーザーも絞られているが、その分資本効率が高まり、動く金額も大きくなっている。

 「Play-to-Earn」として2021年に多くの注目を集めたGameFiも、2022年に引き続きの拡大が予想される。GameFiは、ゲームに金融を組み込んだというよりも、金融にゲーム性を取り入れたと表現した方が適切だ。そのため、純粋にゲームとしてプレイする分には物足りず、ユーザー層も従来のゲームプレイヤーとは少し違ったように感じる。

 今年は、GameFiがよりゲームとしてのおもしろさをつけていくのか、引き続き金融味を増していくのか注目していきたい。個人的には後者だと考えている。

 「DeFi2.0」「GameFi」といった注目のトピックを抑え、2022年の主役になりそうなのがステーブルコインだ。

 2021年は、米国をはじめとしてステーブルコインの規制が大きく進んだ1年となった。ステーブルコインの発行体にラインセス制を導入したり、担保資産を100%現金にするといった案が現在進行形で議論されている。日本でも、ステーブルコインの発行体を銀行・資金移動業者のみに限定する方針で、今年の通常国会へ提出される予定となっている。

 こういった動向を受けて、発行体を設けず担保資産も必要としない「アルゴリズム型(無担保型)」のステーブルコインが台頭している。Terraがその筆頭格であり、2022年も引き続きこの領域が盛り上がることが予想される。担保資産は存在するものの、発行体は存在しないDAIはこれまで通りDeFiを中心に盤石なシェアを維持するだろう。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami