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第126回:「インドア Google マップ」で東京の百貨店めぐり、その精度は?


 今回は屋内のマップが使えるAndroidアプリ2本の体験レポートをお届けする。11月末から「モバイル Google マップ」のAndroidアプリ版で提供されている「インドア Google マップ」を、東京の百貨店など25施設に行って実際に表示。現在地認識・マップ表示の精度を検証した。また、ヤフーのAndroidアプリ「Y!ロコ 地図」において試験提供されている「駅構内地図情報提供サービス」についても、東京メトロの駅構内におけるナビゲーション機能を試してみた。

モバイル Google マップY!ロコ 地図

どの階にいるのかも表示する「インドア Google マップ」

 モバイル Google マップの今回のアップデートの目玉は、駅や百貨店、商業ビル、空港などのインドアマップ(屋内地図)が追加されたこと。今までは建物の形しかわからなかったのが、内部にどのような店や施設があるのかが詳しく表示されるようになり、複数階ある場合は各階のフロアマップも用意される。さらにユーザーがどの階にいるのかも表示される。

 インドアマップは、地図上で対応施設を拡大させると自動的に表示される。例えば新宿三丁目付近には伊勢丹や丸井などインドアマップに対応した百貨店がいくつか建ち並んでいるが、モバイル Google マップの画面を見ると、これらの施設だけほかと色が違うのがすぐにわかる。

 フロアマップは店舗がクリーム色、歩行スペースが白色で色分けされており、店舗名が記載されているほか、エレベーターやエスカレーター、トイレ、乳児スペースなどのアイコンも載っている。マップ右横にはフロアのリストが表示されて、階数をタップすると該当するフロアマップに切り替わる。

 右上の測位ボタンをタップすると、自分の現在地および誤差範囲を示すサークルが示される。また、自分が現在いるフロアにマークが表示されて、そのフロアの地図が自動的に表示される。Googleの発表では現在地やフロアを知るための方法には特に触れられておらず、従来のようなWi-Fiや3Gの基地局情報およびGPSを組み合わせた技術の延長のようだ。

 フロアマップの店舗名などをタップすると詳細画面になり、経路などを調べるメニューが表示されるが、屋内でのルート案内はまだ実現されていないようで、経路検索しても施設の外の道を使った経路が表示されてしまう。メニューには「通話」という項目もあるが、こちらもまだ使えないようだ。将来的には屋内でのルート案内や店舗に電話をかける機能なども追加されると思われる。

 それでは実際に都内のインドアマップ対応施設を巡ってみた感想をお届けしよう。使用したAndroidスマートフォンはNTTドコモのP-01Dで、GPS/Wi-Fi/3Gをオンにした状態での屋内測位の状況を記した。

1)東急百貨店 渋谷駅・東横店
フロア表示はまあまあ正確。ただし、南館や西館をつなぐ渡り廊下などを通るときに突然道路に出てしまうことがあった
2)渋谷109
エスカレーターで上に登ってもフロア表示が変わらず、ずっと1Fのまま動かなかった
3)109MEN'S
1F付近では全く違う場所の渋谷駅を指し示していたが、窓のある3Fに上がったら正確な位置を示した。その後もエスカレーターで上がるのに連動してフロアが切り替わる。ただし、6Fに行くとまた動きが鈍くなった。地下ではB1Fの奥に入ったらB2Fと表示された
4)新宿マルイアネックス
1Fを歩いていたらB1Fと表示された。エスカレーターを上がっていくと、2Fを表示してから一度外を指し示した後、6Fのときにフロアが正確に表示された。7~8Fでは反応せず、6Fのまま動かなかった
5)新宿マルイ本館
エスカレーターで上がっていっても1Fより上を指し示さない。途中、道路に出てしまうこともあった。最上階に行っても1Fのまま変わらない
6)伊勢丹 新宿店
1Fに入っても位置を正確に示さず、新宿駅を指し示したまま動かない。3Fに行ったらようやく伊勢丹を指し示し、4Fでフロア数が正確になる。ときどき挙動がおかしく、自分の位置を指し示すポイントが頻繁に外に飛び出る。B1Fでは正確に出ることもあるが、やはり頻繁に位置が飛ぶ。飛ぶ位置は九段下や曙橋など
7)新宿マルイカレン
入口前に立ち、まだ屋内に入っていないにもかかわらず5Fを指し示す。屋内に入ってしばらくすると正確になった。ただし窓際は良好だが奥に入ると不正確になる
8)小田急百貨店 新宿店
1F入口に入ったときから3Fを指し示す。そのままフロア表示は動かず、エスカレーターで8Fに上がったときに正確にフロアを表示する。13Fのテラスでは12Fを指し示す。頻繁に現在地を示すポイントが外の新宿駅西口ロータリーの位置に飛び出ることがあった
9)京王百貨店 新宿店
1F付近ではフロア示さず、上に行くほど位置が正確になる印象。最上階に着くとかなり正確になった。そのまま下に降りたらまた現在地の表示が消えた
10)新宿西口 ハルク
2F入口から入った直後では現在地を正しく表示したが、階を降りると反応しなくなった。B1Fに降りると1Fと表示されて、そのあとは反応しなくなった
11)ららぽーと豊洲
中央に吹き抜けがあり、屋根がガラス張りになっていてGPSの受信状況が良いせいか、ほとんどの位置でフロア数も位置も正確に指し示した。エスカレーターで上がっているときにもフロアがしっかり切り替わる。ただし5Fの駐車場では、屋外に出るとフロアが示されなかった
12)デックス東京ビーチ
2つの建物に挟まれた中庭で測位するが、狭いからか反応はにぶい。屋内に入ってもフロアをなかなか正しく示さない
13)日本科学未来館
エスカレーターで上がっていってもなかなか正しいフロアを示さない。ときおり正確に表示されることもあるが、頻繁に外に飛んでしまう
14)お台場ビーナスフォート
フロア表示はけっこう正確で、各階いずれも移動とともに正確に切り替わった。位置表示は少し不正確
15)日本橋タカシマヤ
1Fと2Fは正確にフロアを表示。2Fは位置もけっこう正確に出た。3F以上になると不正確になり、ときおり東京駅など関係ない場所を指し示した
16)大丸東京店
3Fまで全く反応せず違う場所を指し示すが、4F、8F、12Fでは正しいフロアを示す。ただし、離れた場所を指し示すことも多かった
17)東京駅地下街
八重洲側の地下ショッピングモールでは反応しなかったが、丸の内へ抜ける地下道からオアゾの地下にかけては正確に位置を表示した
18)丸の内オアゾ
2Fに上がったが6Fを指し示してしまう。全体的に反応がにぶかった
19)新丸の内ビルディング
位置はけっこう正確に出るものの、フロア数を全く示さなかった
20)丸の内ビルディング
新丸の内ビルディングと同様、フロア数が全く出なかった
21)丸の内ブリックスクエア
フロア数が正確に出た。エスカレーターで上がるのに連動してしっかり切り替わる
22)有楽町マルイ
最初は反応しなかったが、4F~5Fで正確にフロアが表示された
23)プランタン銀座
1F~2Fは正しく表示されるが、4Fに着くと現在地のポイントが外に飛び出してしまう。7Fに着くとまた正確になる
24)松屋 銀座
1F~2Fでは反応しないが3Fに着くと反応。ただし4Fを示してしまう。その後、エスカレーターで上がってもフロア数は4Fのまま変わらない。現在地のポイントがときどき外に出てしまった。余談だが、Googleの屋内地図が見られるようになったというポスターが店の中に何枚か貼ってあった
25)銀座三越
1Fに入っても現在地を示すポイントが外に飛び出したまま、建物の周りをグルグル回って中に入ってこない。エスカレーターで上がっても変化なし。8Fまで行って降りてくるときに一瞬正確な位置を示すが、また外に出てしまった。3Fまで降りてきて、ようやく正確なフロア数を指し示した
メニュー画面

測位精度は低く、ルート検索も不可

 レポートを読むとわかるように、現時点では屋内測位の精度は低いと言わざるをえないが、それでも一部の施設ではフロア数は正確に出る場合もあり、全く使えないことはない。ちなみにレポート中で一部、本来の場所からかなり離れた場所を指し示すケースがあったが、これはWi-Fiによる屋内測位でたまに見られる現象だ。

 そんな中、まあまあ精度の高い測位を体感できたのが「ららぽーと豊洲」だ。ここは建物の中央付近が吹き抜けになっていて、屋根がガラス張りになっており、屋内でありながらGPSの電波が届きやすいという特殊な環境となっている。ほかの施設に比べて自分の位置が正確に表示されるし、店から店へと移動する際も地図上のポイントがきちんと動くので実に面白い。

 残念ながらまだ屋内での経路探索はできないが、正しい位置がわかるだけでもかなり楽しいと思う。高精度な屋内測位を体験してみたい人は、ぜひAndroidスマートフォンを片手に「ららぽーと豊洲」を訪れてみていただきたい。

 ほかの施設でも、現在地は正しく示されないものの、フロアマップでショップやトイレの位置を調べられるだけでも便利だ。できれば今後はトイレのある階を検索する機能なども搭載してほしいものである。百貨店以外にも、例えば駅の構内などは詳しいフロアマップなどは配布されていないので、手元の端末ですぐに地図を見られるのは助かる。今後はAndroidだけでなく、iPhone用のモバイル Google マップやPC用Googleマップでも屋内地図が閲覧可能になることを期待したい。

ルート探索が可能な駅構内地図

 一方、Y!ロコ 地図の「駅構内地図情報提供サービス」については、現在、東京メトロの銀座駅と表参道駅の地図が試験的に用意されている。こちらはモバイル Google マップと違って駅構内に限られてはいるが、情報量が多く、経路探索も可能となっている。

表参道駅の構内地図ルート検索画面ルートの検索結果
銀座駅の構内地図フロア別の地図も用意

 駅構内地図には構内のショップやトイレ、エレベーター、Wi-Fiスポットの位置のほか、出口も書かれているのでわかりやすい。モバイル Google マップと違って駅構内のルート探索が行えるのも特徴だ。また、駅構内の施設情報や検索も可能で、幅広い使い方が可能となっている。

 現在地の測位はWi-Fiを利用しているようで、現在地は点ではなく円で示される。実際に両駅で使ってみたところ、現在地は円の端の方ではあるが一応、範囲内には収まっていた。フロア表示についてはモバイル Google マップよりもかなり正確に感じる。階段などでフロアを移動すると、それに連動してフロア表示が切り替わるので、実に便利だ。

 ルート探索はタブを切り替えて出発地と目的地を指定してから検索する。出発地は現在地のほか、施設名を指定して選ぶことも可能。通常の検索のほか、階段ではなくエレベーターを使う「バリアフリールート」も選べる。水平方向の現在地の精度が今ひとつなので、出発地を指定するときは測位結果ではなく、最寄りの施設を直接指定するほうが高精度なルート探索ができる。

 こちらの目玉はなんといっても屋内でのルート探索が可能なこと。トイレを探したり、乗換ホームの位置を確認したりするのにはとても便利だ。バリアフリーにも対応しているので、車椅子の人も重宝すると思う。今回リリースされた2駅のほかにも、このような構内地図の拡充を期待したい。


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2011/12/22 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。