中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/7/4~7/11]

「漫画村」元運営者らがついに逮捕 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 「漫画村」元運営者らがついに逮捕

 市販の漫画作品を違法にデジタル化し、無償で閲覧できるようにしたサイト「漫画村」の元運営者とされる人物がフィリピンで逮捕され、日本へ送還されるというニュースが報じられた(ITmedia)。さらに「漫画村」へコンテンツをアップロードしたとして、日本国内でも男女2名が逮捕されたことも報じられた(ITmedia)。

 ちょうど1年前、内閣府では「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」を招集し、その対策について話し合っていた。しかし、解決策としての1つで挙がったのが、IPSがDNSを操作することで違法サイトへのアクセスを制限しようとする、いわゆる「サイトブロッキング」という手法だったが、これを中間報告書に盛り込むかどうか、つまり法制化への道筋を作ることになるかどうかということについて、委員の間でも大きく意見が分かれ、ついには中間報告書の採択そのものが棚上げになったというできごとが記憶に新しい。そして、今春、議論のテーブルを総務省に移し、「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」を招集し、違法サイトへアクセスしようとしたとき、サイトをブロックするのではなく、この先には違法コンテンツがあるということを警告するメッセージを表示する「アクセス警告方式」についての議論が始まっていたところだ。

 犯人逮捕はコンテンツ業界にとっては問題解決に向けた大きな一歩であることには間違いないが、当時から、「漫画村」の運営者や関与者について、当局では目星はついていたのではないかとも思われ、なぜ逮捕に至るまでにこれほどまでの時間がかかったのだろう。ここまでの大規模な違法サイトだったのだから、会議室で技術的手法を検討する前に、今回のように現行法で十分に取り締まることもできたのではないだろうか。

 さらに、講談社は海賊版リーチサイトの「はるか夢の址」運営者に対して、損害賠償請求を求める民事訴訟を起こしたことも報じられているとおりである(ITmedia)。こちらも進展が見られた。

 そのようななか、次は音楽が問題として浮上している。「Music FM」というアプリ(と、それに類似するアプリ)が「音楽の漫画村」のような状態になっているようだ(ケータイWatch)。そもそも、こうしたアプリをアプリストアで扱っていること自体も疑問だ。さらに、こうしたアプリが若年層に人気だとされていて、教育現場などにおいて、せめても交通ルールと同程度には情報リテラシーの向上の教育も進める必要があるだろう。

ニュースソース

  • 「漫画村」元運営者とされる星野ロミ、フィリピンで逮捕 地元メディア報道[ITmedia
  • 「漫画村」無断アップロードで2人逮捕 運営者に続き事件進展[ITmedia
  • 講談社、海賊版リーチサイト「はるか夢の址」運営者に損害賠償請求[ITmedia
  • 「AppleはMusic FMの監視強化を」、日本レコード協会などが訴え[ケータイWatch

2. 7pay不正使用事件のまとめ――乱立するコード決済市場は他山の石とすることができるか

 7payのアカウントを奪い、不正に使用しようとした2人が逮捕された(ITmedia)。一方で、他のQRコード決済システムはセキュリティ上、安全なのかと考えるのは普通の感覚だろう。事件が起きてすぐに行われたセブンペイ社長の会見でのやりとりが報じられるとともに、インターネットのソーシャルメディアはもとより、各専門誌とも「ITオンチ」度についての指摘を一斉にしているが、問題はこの1社だけに限る局所的な問題ではないように思う。

 他のペイメントシステムでも多かれ少なかれそのリスクは内在していると考える方が自然だろうし、セブン-イレブンのような大手企業がQRコード決済市場の盛り上がりのピーク時に事件を起こしたということは、いいほうに考えれば、少し冷静になるチャンスを与えてくれたのかもしれない。

 多少、数は多くなるのだが、ニュースソースには各誌の指摘をまとめておくが、そもそも何が問題なのかについて、設計・開発側だけでなく、ユーザーも含めて考察を深めるうえで大きな「ケーススターディ」になったのではないだろうか。

ニュースソース

  • 7pay不正使用、詐欺未遂容疑で中国籍の男2人逮捕 電子たばこ20万円分購入しようとした疑い[ITmedia
  • 7pay不正アクセス問題で、経済産業省がガイドライン遵守を要請[Impress Watch
  • 7pay、二段階認証導入へ。セキュリティ対策プロジェクト発足[Impress Watch
  • 「7pay」社長の驚愕発言が、笑いごとでは済まないほんとうの理由[現代ビジネス
  • 「7pay緊急会見」で露呈した3つの大問題。なぜ脆弱なセキュリティ対策で開始したのか[BUSINESS INSIDER
  • 「原因が不明」という最大の問題。7payのセキュリティ問題を考察する[Impress Watch
  • 7pay以外は大丈夫か?主要Payログイン時の安全性まとめ[TechCrunch日本版
  • 7pay開発の内部資料。「セキュリティー不備」は急な開発と“度重なる仕様変更”が一因か[BUSINESS INSIDER
  • 7pay事故で判明、日本の「キャッシュレス化」がじつは危ない理由[現代ビジネス
  • 7pay不正利用、経営陣に技術を見る目とビジョンはあったか[日経ビジネス
  • 7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」[ASCII.jp
  • 7pay問題、運営側の「無知を笑う」前に企業が振り返るべきこと[ビジネス+IT
  • 7pay問題「ITオンチ」のトップを生む日本企業〈技術軽視の病〉[現代ビジネス
  • セブンペイの不正アクセスはなぜ起きたのか[東洋経済オンライン
  • ファミペイと7payが本当に目指していたもの。コンビニPayはなぜ必要だったか[Impress Watch

3. 乱立するQRコード決済――キャンペーンへの参加と支払い方式としての習慣化は別の話?

 毎週のように発表されるコード決済を利用した場合の割引やキャッシュバックキャンペーン、新規取扱店舗の情報に加え、7payの不正使用事件などがあいまって、日本のペイメント市場はなかば祭り状態ともいえる。ここのところ、コンビニ店頭での会計時にも「お客さま、○✕payはインストールしてますか」とかいちいち聞かれる(その半面、ポイントカードの有無を聞かれなくなっているような気がするのは気のせいか)。

 そんな“決済祭り”のおかげでもあり、QRコード決済の認知度は85%まで上昇したものの、実際の利用経験は20%にとどまるという調査がMMD総研から発表された(CNET Japan])。また、認知はしていても、まだまだ普段の支払いは現金が圧倒的で、2番手に挙がったのもクレジットカードという状況だ。

 これを見ると、QRコード決済各社のローンチに合わせたお得なキャンペーンに乗っかり、何度かは試してはみた人が一部にはいるものの、広く社会には浸透してなく、さらに試した人にも、日常の支払い手段として習慣化させるのはなかなか難しそうだという印象だ。実際、使ってみても、交通系カードで慣れてきたように、非接触ICカードでタッチするだけではないところから、それを超えるだけのメリットがないと、支払いの段階で消費者に面倒だと思わせたり、考えさせたりする「スキ」が発生してしまう。

 これからの課題は長年の支払い習慣をどう変えさせるか、変えるだけのメリットを提供し続けられるかということではないだろうか。

ニュースソース

  • QRコード決済の認知率は約85%ながら利用経験は約20%にとどまる--MMD調査[CNET Japan

4. フェイスブック社の独自仮想通貨「リブラ」への懸念表明が相次ぐ

 フェイスブックが発表した独自の仮想通貨「リブラ」に対して、各国の金融政策の関係者もコメントを出し始めている。ただし、いまだ「リブラ」が“何者なのか”という点について、十分な調査・研究が進んでいないことからか、懸念点のみが先行して表明されているように思う。

 各社の報道によれば、日本の雨宮日銀副総裁は「潜在利用者は巨大、運営者は責任ある行動が必要」だと述べた(ロイター)。欧州中央銀行(ECB)のブノワ・クーレ専務理事は「彼らが規制の空白で金融サービス活動を発展させていくのを許すことは論外である。それはあまりにも危険だからだ。今までよりも迅速に行動する必要がある」(coindesk)と述べた。また、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「“深刻な懸念”が対処されるまで前進させるべきではない」と述べた(ロイター)。さらに、中国人民銀行は「北京大学などの国内大学とともにデジタル通貨への研究体制を強化し、独自通貨の発行なども視野に入れた研究を進めていく姿勢を固めている」(BTCN)とされている。

 それに対し、フェイスブックにおけるリブラの責任者デビッド・マーカス氏は、リブラの発表後に挙がっている多くの疑問に回答をし始めている。それによれば「発展途上国などにおける基本的金融サービスへのアクセス問題を解決する」(Gigazine)とともに、「リブラがフェイスブックに与える恩恵として、リブラの構想が順調に進めば、フェイスブックのエコシステム全体での商取引が活性化されることをあげている。そして、商取引数が増えれば、広告効果が高まり、その結果、企業が広告に投じる金額が増える」(coindesk)としている。

 ただし、既存の金融システムへのインパクトやプライバシー問題のように、新しい技術の理想や理念だけでなく、現実問題としての課題への対応も検討を進め、世界各国との合意を得る必要もあるだろう。

ニュースソース

  • Facebook仮想通貨リブラに関する有識者座談会をBCCCが開催。三者三様の分析と期待 ~「将来性感じない」「世界中の人が電子財布を持つ」「金融イノベーション促進」[仮想通貨Watch
  • 「リブラ」潜在利用者は巨大、運営者は責任ある行動が必要=雨宮日銀副総裁[ロイター
  • ECB専務理事、リブラは規制当局への「ウェイクアップコール」[coindesk
  • Facebookの仮想通貨「Libra」にインド政府が懸念との報道[CNET Japan
  • FB仮想通貨リブラ、懸念対処まで導入すべきでない=FRB議長[ロイター
  • Libraに対応して中国中央銀行も研究強化へ[BTCN
  • 「フェイスブックを信用する必要はない」リブラの責任者、これまでの疑問に回答[coindesk
  • Facebookが発表した仮想通貨「Libra」に対する疑問に公式が回答[Gigazine
  • フェイスブック、規制上の問題からインドでの仮想通貨ローンチを断念[coindesk
  • 暗号通貨でどう儲ける? FB「リブラ」の責任者が疑問に回答[MIT Technology Review
  • フェイスブック・リブラの可能性を探った──莫大なリターンを生むか[coindesk
  • リブラは仮想通貨ではなく、新しい資産クラスの兆し[coindesk
  • 仮想通貨「Libra」を生んだフェイスブックの大志と野望[WIRED日本版

5. 「進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0」――令和元年版情報通信白書から

 今年も、総務省から「情報通信白書」がリリースされた(総務省)。この白書で使用されている定量調査のデータは「情報通信利用動向調査」としてすでに5月にリリースされているが、それに加え、定性的な分析や今後の展望について論じている。今年の特集テーマは「進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0」で、これまでのICTのサービス、技術、産業、グローバル経済の進化や変化を踏まえつつ、Society 5.0がその先にあるデジタル経済の姿であると位置付けている。

 総務省のホームページ(総務省)では、すでにPDF形式が無償で閲覧でき、さらに8月にはHTML形式での閲覧もできるようになる。なお、フルで読むのが大変な方には、「ポイント」(総務省)と「概要」(総務省)という要約版も用意されている。また、EPUB版が主要な電子書籍書店で無料ダウンロードでき、スマホ向けアプリ版は各プラットフォーム向けアプリストアからダウンロードできる。

 この際、情報通信技術やそれを利用する産業の方はご一読されることをお薦めする。

ニュースソース

  • 令和元年「情報通信に関する現状報告」(令和元年版情報通信白書)の公表[総務省

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。