中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2019/10/3~10/10]
実証実験が進む自動運転と交通システム ほか
2019年10月11日 16:00
1. 実証実験が進む自動運転と交通システム
10月15日から幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される「CEATEC 2019」、その翌週24日から東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「第46回東京モーターショー2019」と、秋の大型展示会がめじろ押しであるが、そのいずれも自動運転、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス:サービスとしてのモビリティ)ということが大きな話題になりそうだ。多くの人にとっては、こうした分野の話題はメディア上で知ることは多くても実感するチャンスは少なかったと思われるが、この秋の展示会や来年のオリンピックに向けて、いよいよ体験するチャンスが増えそうだ。
また、今後の具体的な実証実験の計画も続々と発表されている。1つはNTTドコモ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、横浜市が共同で行う横浜MaaS「AI運行バス」実証実験(ITmedia)、そして東京空港交通やJTB、三菱地所など7社によるは空港と丸の内間における自動運転モビリティを活用したMaaS実証実験(CNET Japan)、さらに、トヨタ自動車が2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村で運行する自動運転の大型電気自動車「eパレット」の東京モーターショーでの展示である(朝日新聞デジタル)。
一方、実用化に向けた技術的なハードルの高さも認識されるようになってきているようだ。つまり、長期的には完全な自動運転は実現するのだろうが、当面の目標ではレベル3を実現する上でのコストとそれによって得られるメリットのバランスが取れないという指摘のようだ(日経XTECH)。ドイツのコンチネンタル社も「レベル3」の自動運転は普及しないというシナリオでの戦略に移りつつあるという(日経XTECH)。
ニュースソース
- AIやビックデータを利用したタクシービジネスの課題解決、DeNAが「CEATEC 2019」で展示[ケータイWatch]
- トヨタとデンソーが参画、アームが完全自動運転の業界団体を発足[日経XTECH]
- Continental、レベル3普及せずエンジンは終焉[日経XTECH]
- 自動運転技術の成熟と社会実装には、レベル3ではなく「レベル2+」が必須か[日経XTECH]
- ドコモら、横浜都心臨海部で「AI運行バス」の実証実験 時刻表を気にせずリアルタイムに配車[ITmedia]
- 空港と都心を結ぶMaaS実証実験の一般公募を開始--世界初の3ソリューション連携[CNET Japan]
- 五輪選手村を自動運転で走る 「eパレット」トヨタ公開[朝日新聞デジタル]
- Waymo、米ロサンジェルスでマッピング開始。「自動運転車が大通りを走れる」可能性を高めるため[Engadget日本版]
2. フェイスブックの仮想通貨「リブラ」の最新動向:PayPalがリブラ協会から離脱
リブラ協会のローンチメンバーであったPayPalがリブラ協会から離脱した(ITmedia)。それ以外にも、ビザやマスターカードが逡巡しているということがここのところ報じられている。その理由は各メディアにおいても分析が試みられているが、米国上院議員の2名がこれらの企業にリブラから手を引くように求めたと報じられている。この記事によれば、この議員らは「リブラへの参加の結果として、規制当局による全体的な監視の強化に見舞われるかもしれない」(coindesk)と述べたとされ、本業に対しても、明らかな政治的なプレッシャーを与えているともいえそうだ。
そのようなか、米議会下院金融サービス委員会はフェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が23日の公聴会で証言すると明らかにした(ロイター)。その発言内容には注目が集まる。
ニュースソース
- Facebookのデジタル通貨「Libra」協会からPayPalが撤退[ITmedia]
- リブラ協会「1500社が関心」14日会合で新たな加盟企業を決定か ~Facebookリブラ開発子会社CEO「加盟企業の追加は数週間以内」[仮想通貨Watch]
- EU、「リブラ」など仮想通貨を規制へ=欧州委員[ロイター]
- Facebookによる暗号化計画に司法長官が「バックドアが必要」と中止要請[Gigazine]
- フェイスブックCEO、米下院で23日に証言 リブラ計画巡り[ロイター]
- リブラの「閉じたエコシステム」を懸念、欧州委員会の大物委員[coindesk]
- 欧州委員会、LibraのリスクについてFacebookに質問への回答を要求[Engadget日本版]
- 米議員ら、決済大手へリブラ離脱を要求——ビザ、マスターカード、ストライプ[coindesk]
- PayPal、Facebookの仮想通貨リブラから撤退。直前に中国進出を表明 ~現時点で中国市場以外を取るよりも中国市場が優先の見方か[仮想通貨Watch]
- ペイパルのリブラ計画脱退は何を意味するのか[東洋経済オンライン]
3. 聞く読書=オーディオブックが急成長
株式会社オトバンクのオーディオブック配信サービス「audiobook.jp」の会員数が、2019年9月に100万人を突破した(hon.jp)。これは2018年末時点で60万人だったことと比較すると、1年足らずで2倍になるという急成長である(hon.jp)。
同社の調査による「オーディオブック白書」によれば、利用シーンは「移動中」61%、「家事中」38%、「就寝前」24%、「運動中」21%などとなっている(オトバンク)。とりわけ首都圏では通勤時の利用が多いと思われる。
コンテンツ数も増加しつつあり、今後は「聞く」読書というスタイルが定着していくことが見込まれる。
4. 流れが変わりつつある? ――「デジタル米ドル」の必要性
米国での仮想通貨の議論は非常に保守的であるように見えていたが、ここにきて「デジタル米ドル」についての必要性について言及され始めているようだ。
まず、米国下院議員2名が米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に宛てた書簡において、「他国や民間企業が広く使われる仮想通貨を開発する場合、米ドルにリスクが生じるのではないか」という指摘をし、FRBが独自の仮想通貨開発を検討しているかどうかを尋ねたという(coindesk)。
また、フィラデルフィア連邦準備銀行総裁のパトリック・ハーカー氏が「FRBも含めて中央銀行はデジタル通貨の発行を『避けられない』」と語ったことが伝えられている(coindesk)。
そのようななか、アップル社最高経営責任者のティム・クック氏は「仮想通貨の発行に興味がない」と明言するとともに、「通貨は国の管理下に置かなければならないと強く信じている」と述べたとされている(CNET Japan)。
一連の記事を読んでいると、インターネットの普及を止めようがなかったように、SNSのようなメディアの普及を止めようがなかったように、やはり仮想通貨の存在を世の中が求めていた場合、それを止めることはできないと考えるなら、懸念ばかりを表明するよりは健全化目指した規制・ルールを策定したり、そのなかでの影響力の維持をする方法を模索したりすべきというように風向きが変わりつつあるのかもしれない。
ニュースソース
- デジタル米ドルは「避けられない道」:連邦準備銀行総裁[coindesk]
- 米議員「デジタル米ドル」の開発をFRBに要請[coindesk]
- アップルのクックCEO、仮想通貨を作る計画なし--「通貨は国の管理下に」[CNET Japan]