中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/9/26~10/3]

より理解が深まりつつあるブロックチェーンの意義――「b.tokyo」関連記事まとめ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. より理解が深まりつつあるブロックチェーンの意義――「b.tokyo」関連記事まとめ

 2019年10月2日~3日、ブロックチェーンコンファレンス「b.tokyo 2019」(主催:N.Avenue、メディア協賛:CoinDesk Japan)が都内で開催された。以下のニュースソースにはそれに関するレポート記事を紹介する。

 このコンファレンスを通じて感じることは、だんだんとブロックチェーンという技術やそれを応用した暗号資産に関する考え方が深まり、かつ広がりつつあるということだ。基調講演に立った慶應義塾大学の村井教授が述べている(仮想通貨Watch)ように、TCP/IPやワールドワイドウェブが作り出したグローバルな情報空間のなかに、新たにグローバルに価値のやりとりができるファイナンスのレイヤーが加わったとする捉え方に納得できた人も多いだろう。

 また、フェイスブックの子会社カリブラのビジネス開発ディレクターであるキャサリン・ポーター氏が来日してこのコンファレンスに登壇し、「リブラはテキストメッセージを送るのと同じぐらい、国際送金をシンプルにする。10年後には、世界中の人がこの通貨を使い、スマートフォンを用いて金融サービスを受けられるようにする。数億の人に新たに金融サービスを提供すれば、新しいレベルのGDPが生まれるだろう。この事業を進めた先に金融包摂があると我々は信じている」(仮想通貨Watch)と述べたことや、リブラへの日本からの参加に期待をしていることが明示されたことも、報じられている懸念ばかりではない側面に対する理解にもつながったのではないか。

ニュースソース

  • 100社がリブラ協会にそろって初めてガバナンスが実現。日本企業の力が必要 ~Facebook子会社カリブラ幹部がb.tokyo2019で登壇[仮想通貨Watch
  • bitFlyer Blockchain、ブロックチェーン活用のIDシステム開発を発表=b.tokyo2019 ~個人情報入力の手間を削減。ポイントカードをスマホで一括管理する仕組み[仮想通貨Watch
  • LINEの仮想通貨取引サービスを開発したシンプレクスが考える「STOのメリットを生かすために必要なこと」【b. tokyo】[coindesk
  • トヨタ、ユニクロはリブラを活用できるのか?──Facebookのカリブラ幹部が東京で講演[coindesk
  • ブロックチェーンが革命的である3つのポイント=b.tokyo2019 ~技術的問題より“人間系”の方が難題か。bitFlyer創業者の加納氏らが議論[仮想通貨Watch
  • 村井純教授「インターネットの三大発明はTCP/IP、ウェブ、公開鍵暗号」=b.tokyo2019 ~暗号技術によって作り出されるインターネットの発展とつぎの基盤[仮想通貨Watch
  • なぜ企業のブロックチェーンの取り組みは「実証実験止まり」で「実運用」に進まないのか──KPMG東海林氏[coindesk

2. フェイスブックの仮想通貨「リブラ」の最新動向

 リブラに対して、各国の金融当局が懸念を示していることはこれまでも多く報じられてきている。それに対して、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏は「(リブラへの)反発はほぼ想定内」と述べたことが伝えられている(MIT Technology Review)。

 一方で、リブラへの参加を表明していたビザやマスターカードが今後の参加について再考をしているとも伝えられている(ロイター)。本業に対する規制当局からのプレッシャーに対し、懸念をしているなどの判断もあろう。

 リブラプロジェクトを進めるフェイスブックの子会社カリブラのデビッド・マーカスCEOはこれまで、リブラに対する懸念を持つ議会や中央銀行とのやりとりを踏まえ、あらためて現状の決済システムの問題点を整理したとして、「既存のマネーネットワークの限界」「既存の決済サービスやウォレットの限界」「時間とコストの浪費」という3点を挙げた(仮想通貨Watch)。先進的な技術によるイノベーションを推進するサイドから、それに対する理解が十分に追いついていない社会に対する説明すべき論点がより明確になってきたように感じる。

ニュースソース

  • リブラ、規制懸念で導入に遅れも=協会トップ[ロイター
  • 暗号資産「リブラ」への参加、ビザやマスターカードが見直しも=米紙[ロイター
  • 「リブラへの反発はほぼ想定内」ザッカーバーグ、社員総会で語る[MIT Technology Review
  • Facebookの仮想通貨リブラ、2020年6月ローンチの遅れ示唆 ~Libra協会幹部「1・2四半期の遅れは問題ではない」[仮想通貨Watch
  • Facebookの仮想通貨リブラ責任者、現在の決済システムの3つの問題点指摘 ~「Libraの意義が規制当局に理解されない理由が分かってきた」=デビッド・マーカス氏[仮想通貨Watch

3. 日本版インターネットアーカイブスの必要性

 サイバーエージェントが運営するブログサービス「Ameba」に掲載された元フリーアナウンサーの小林麻央さんなど42人のブログが、国立国会図書館のウェブアーカイブ(WARP)に保存されたことが発表された。国立国会図書館は「現代社会の生の情報を記録する資料として、後世に伝える意義が大きい」としている(ITmedia)。

 今後、このようなデジタルコンテンツの保存の意味はさらに高まってくるだろう。話題になったブログのみならず、商業的なウェブメディアでも、事業主体の経営上、その継続が困難になると、コンテンツはインターネット上からアクセスできなくなることはしばしばあり、いわゆる「リンク切れ」となってしまう。こうしたコンテンツもどこかに保存がなされているべきではないかと感じている人もいるだろう。

 これを実現するにはさまざまな制度や資金も必要になるわけだが、新しいコンテンツを作り出すだけでなく、いかにそれを将来に向けて保存するという観点での積極的な検討が、社会的関心としても高まり、関係組織でのアクションとしても進んでいってほしい。

ニュースソース

  • 小林麻央さんなど42人のAmebaブログ、国会図書館が保存 「後世に伝える意義が大きい」[ITmedia

4. ユーザー調査結果:フードデリバリー/キャッシュレスの意向動向

 消費にまつわるユーザー調査結果を2つ紹介しよう。

 まず、MMD研究所とコラプラが「インターネットでのフードデリバリーサービスに関する調査」の結果を発表している(MMD研究所)。最も利用するフードデリバリーサービスとして、定番であるピザなどの直営店や出前館に次いで、Uber Eatsが3番目に名前を連ねている。また、フードデリバリーの経験を性年齢別に見ると、成人女性は年代を問わずに利用している一方、男性は30歳代が突出しているところが興味深い。

 また、日本生活協同組合連合会(生協/コープ)と生協総合研究所が「消費税増税 直前アンケート調査」を共同で実施し、その結果を公表している(Web担当者フォーラム)。そのなかにはキャッシュレス決済手段として今後利用したいものという項目があり、注目のスマホ決済(QRコード、2次元コード決済)は20歳代、30歳代での関心が高いことがうかがえる結果となっている。ただし、クレジットカードや電子マネーの利用意向が強く、新しい決済手段に対する「インストールへのハードル」、そして「慣れ」や「習慣化」が課題と思われる。

ニュースソース

  • インターネットでフードデリバリーサービスを1年以内に利用したことがある人は約3割、 最も利用されているフードデリバリーサービスは「直営店」、「出前館」、「Uber Eats」[MMD研究所
  • 増税対策としてのキャッシュレス決済、20代はバーコード決済やデビットカードに注目[Web担当者フォーラム

5. イベントカレンダー:開幕迫る「CEATEC 2019」、そしてその後の東京モーターショー

 「CEATEC 2019」は10月15日~18日、幕張メッセ(千葉市美浜区)にて開催される(公式ページ)。それに関する予告記事が増えてきた。

 そのなかで気になるのはパナソニックが出展をしないという報道だ(日経XTECH)。一方で、そのパナソニックはその後すぐ10月24日~11月4日に開催される東京モーターショー(東京モーターショー公式ページ)へは初めて出展をすると報じられている(日本経済新聞

 すでに米国のCESでは自動車メーカーの出展が積極的になっていて、産業間の融合が進んでいることを象徴するような動きもある。この流れのなか、日本でもいよいよ基幹産業における融合がこうしたところでも象徴的に現れ始めたか。そうした観点から見ていくと、今年の秋のコンベンションシーズンはより面白そうだ。

ニュースソース

  • CEATECH 2019[CEATEC2019公式ページ
  • 東京モーターショー[東京モーターショー公式ページ
  • CEATE2019にて、ベンチャー必見の知財戦略セミナー開催[ASCII.jp
  • Webの改ざん検知を遠隔監視とハッシュ値で JNS株式会社【CEATEC 2019/東京ビジネスフロンティア注目ブース紹介】[INTERNET Watch
  • パワーデバイスの特性を試験&評価、「材料だけ」でも評価OK 株式会社ケミトックス【CEATEC 2019/東京ビジネスフロンティア注目ブース紹介】[INTERNET Watch
  • 医療検診の「言葉の壁」をITで打破、多言語+手話まで対応 株式会社アイエスゲート【CEATEC 2019/東京ビジネスフロンティア注目ブース紹介】[INTERNET Watch
  • 動き始めた「Society 5.0」を夢で終わらせないために 「CEATEC 2019」で「Society 5.0」に関する冊子を無償配布[INTERNET Watch
  • 保育園の「お昼寝チェック」をIoTで省力化 Hoimin (ホイミン)【CEATEC 2019/東京ビジネスフロンティア注目ブース紹介】[INTERNET Watch
  • CEATEC去るパナソニック、「来場者が明確な展示会に注力」[日経XTECH
  • 東京モーターショー、「オープン化」に活路―パナソニックなど初参加[日本経済新聞

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。