中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/9/19~9/26]

EC事業の主戦場はファッションへ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. EC事業の主戦場はファッションへ

 ヤフーによるZOZOの株式公開買付、および業務提携の発表、そしてZOZOの前澤社長退任の話題はいまだ記憶に新しいところだ。コマース市場でのシェア獲得を狙うヤフーとのシナジーにより、ファッション分野での事業拡大が狙いと思われる。

 一方、楽天は「Rakuten Fashion」という構想を発表した。記事によれば「楽天グループのアセットを活用し、需要予測、受注管理、決済などのシステムや、物流フルフィルメントサービス、海外販売支援サービスなど、商品の企画・生産から販売までを効率化するデジタルソリューションを、ファッション関連事業者がワンストップで利用できる、よりオープンなプラットフォーム構築を進めていく。これにより、日本国内のファッション関連事業者のデジタル化やEC化を支援し、ファッション産業のさらなる活性化に貢献することを目指す」(Markezine)としている。

 また、別の記事によれば「(楽天の)ファッション分野での流通額は現在6000億円ほど。18年の同社国内EC流通額は3.4兆円なので、2割弱を占める『稼ぎ頭』だ。一方、ヤフーが買収を発表したZOZOのZOZOTOWN事業における商品取扱高は3113億円(19年3月期)。ヤフーが10月にスタートするECモール「PayPayモール」の目玉と評されるZOZOTOWNだが、楽天が大きくリードしている状況だ」(ITmedia)と指摘している。

 それに加え、先ごろ、ユニクロもスマートフォンのカメラで体を自動採寸する機能の提供を開始していて(ITmedia)、ある意味では現実的な技術を使うことで、店頭での試着をしなくてもオンラインからの注文がしやすくなる工夫も始めている。

 今後、これらの企業をはじめとする各社間の競争が激しくなることも予想され、ファッション分野がEC市場における主戦場となりそうだ。

ニュースソース

  • ZOZOTOWNで買った服を即時ポイント化。ZOZOの「いつでも買い替え割」[Impress Watch
  • 楽天、新構想「Rakuten Fashion」を発表 ファッション関連事業者のデジタル・EC化を支援[Markezine
  • ゾゾ買収の裏側「ヤフーの焦りと孫正義の野心」 丁寧に経営風土を調和させられるか[プレジデントオンライン
  • ヤフー・ZOZOに追われる楽天 「ファッション事業強化宣言」も具体策は見えず[ITmedia
  • ユニクロ、スマホカメラで自動採寸 正面と側面の写真でサイズ推定[ITmedia

2. ECの最大の課題はラストワンマイルの配送

 いうまでもないことだが、ECはいまや消費者にとって、そして事業者にとって、欠かせないチャンネルとなっている。2019年5月に経済産業省が発表した統計によれば「平成30年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、18.0兆円(前年16.5兆円、前年比8.96%増)に拡大」している。また、すべての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を示す「EC化率は、BtoC-ECで6.22%(前年比0.43ポイント増)、BtoB-ECで30.2%(前年比0.8ポイント増)と増加傾向」にあるとしている(経済産業省)。

 そのようななか、最大の問題はラストワンマイルの物流だということを再認識させる報道があった。数年前、取扱量の増加と人件費などのコスト増大により、アマゾンの主力配達網であったヤマト運輸が配送料金の値上げを実施したことから、同社がアマゾンの配達網の主力から降りたことは記憶に新しいところだが、その後に出てきているさまざまな取り組みも解決策の決定打とはなっていないようだ。コンビニ店頭での荷物受け取りはいいアイデアのようだが、ここでも「店員の疲弊」が指摘されたことから、無人での受け渡しが可能なアマゾンロッカーが配備されつつある(日経XTECH)。コンビニだけでなく、顧客が毎日利用する交通インフラである鉄道会社との提携なども進んでいる(ITmedia)。しかしながら、十分な数が用意されるまでにはいましばらく時間が必要そうだ。また、アマゾンでは「置き配」を標準の配送方式とするよう積極的に進める実証実験もしている(ネットショップ担当者フォーラム)。すでに顧客が選択することにより「置き配」で対応する地域もあるが、ある程度「慣れる」までは、内容物によっては破損や盗難などを考えると二の足を踏む人も多いと思われる。ドローンや自動走行ロボットによる配送は研究や実証実験も進みつつある(ケータイWatch)が、市中で一般に使われるようになる配送手段として考えると、次世代の方式という印象もある。しかし、この問題を早急に解決しないことには、ECの市場拡大(あるいはEC化率の上昇)にとってはブレーキとなる可能性もある。

ニュースソース

  • 駅やコンビニで荷物受け取り 再配達解消へ アマゾンが小田急などと提携[ITmedia
  • アマゾンロッカーが日本上陸、ファミマが受け入れた理由は「店員の疲弊」[日経XTECH
  • 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました[経済産業省
  • 楽天と西友、自動走行ロボットによる配送サービス[ケータイWatch
  • Amazonが「置き配」の標準配送方法をめざす実証実験を実施へ[ネットショップ担当者フォーラム

3. アマゾンが新ハードウェア15種類を発表

 米アマゾン・ドット・コムが、アレクサ搭載の無線イヤフォンやメガネ、Echoシリーズの新モデルなど、合計15の新しいハードウェアを発表した(ITmedia)。全てが日本ですぐに発売されるわけではないようだが、なかなか意欲的な取り組みの製品もある。

 そのなかで注目したいアイデアは、スマートディスプレイ「Echo Show」の視覚障害者向け新機能「Show and Tell」だ(ITmedia)。記事によれば「この機能は文字通り、Echo Showのカメラに向けて食品のパッケージなどを見せ『Alexa、私が持っているものは何?』と聞くと、その食品の名称を言う」ものだ。技術的にはパッケージに表示されているテキストを読んでいるようだとコメントされている。いずれこの機能は障害者の支援目的だけでなく、パッケージを見せることでそこに記載されていないような情報を付加価値として提供することも利用できそう。

ニュースソース

  • Amazon、無線イヤフォン「Echo Buds」や新型「Echo Dot」など15の新ハードウェア発表[ITmedia
  • Amazon、「Echo Show」にモノを見せると説明する視覚障害者支援機能「Show and Tell」[ITmedia
  • Amazon、切替可能な音声アシスタント実現へ、MS、Boseら30社と協力[Impress Watch

4. スマホ決済アプリの課題は継続率

 まもなく、消費税の増税が実施され、それとともにキャッシュレス決済によるポイントバックの仕組みなども開始される。

 これまで、いくつもの新たなスマホ決済アプリが登場し、都度、派手なキャッシュバックやポイントバックのキャンペーンが行われたことからインストールをした人も多いに違いない。しかし、このたびのMMD研究所の調査では、「スマートフォン決済アプリをインストールした人のうち62.8%が、その後アプリを利用していない」ということが明らかになっている(ITmedia)。その内訳としては、「全く利用していない人が46.8%、会員登録は済ませたが使っていない人が10.8%、銀行口座やクレジットカードを連携させたが使っていない人が5.2%」だという。

 その理由としては「スマホ決済を利用する人の45.3%が、3000円以上の支払いに抵抗がある」とし、さらに「使いすぎてしまいそう」「チャージが面倒」「個人情報の流出が不安」「購入履歴から(広告などを)ターゲティングされそう」などのセキュリティやプライバシー問題が指摘されている。消費者のあいだでも、徐々にマーケティング手法やリスクについての理解が進んでいそうだ。

 また、あまりにも支払い方法が多すぎて、どの店でどれが使えるのか、ポイント還元があるのかどうかも分かりにくいということも課題であるだろう。経済産業省は専用のアプリの配布を始めたが(Impress Watch)、消費者がキャッシュレスの利便性を感じ、長期的にもキャッシュレス化へ向かうかどうかが今後の焦点となろう。

ニュースソース

  • スマホ決済アプリをインストールした人の6割超が利用せず 継続率に課題か[ITmedia
  • 「キャッシュレス・ポイント還元事業」に公式アプリ。地図から店舗検索[Impress Watch

5. イベントカレンダー:いよいよCEATEC開催――10月15日~18日

 いよいよ2019年のCEATECの開幕が迫ってきた。その事前情報が各媒体で報じられ始めている(INTERNET Watch)。会場周辺では、公道を使った来場者も乗車可能な自動運転の実証実験なども予定されている(INTERNET Watch)。

 この自動運転に限らず、2020年の東京オリンピック・パラリンピックというビッグイベントをマイルストーンとして、各社では積極的な技術、製品、サービスの開発への取り組みも活発であることからも、最新の進捗状況についての情報を得たり、より具体的なイメージをつかんだりするために最適なイベントとなりそうだ。

ニュースソース

  • CEATEC 2019は「超スマート社会」を目指して規模拡大、基調講演も毎日実施 ゼネコン各社や関西電力、DeNAも出展、基調講演は米MicrosoftやANA、さらには広島県も……[INTERNET Watch
  • CEATECで自動運転の実証試験、来場者も乗車可能 公道を使った1,500mコース[INTERNET Watch

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。