中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/1/1〜1/9]
IoTは“Internet of Things”から“Intelligence of Things”へ――CES 2020の注目話題 ほか
2020年1月10日 12:05
1.【CES 2020】IoTは“Internet of Things”から“Intelligence of Things”へ
2020年1月7日から米国ラスベガスで開幕した全米最大コンシューマーテクノロジーショー「CES 2020」については、一般メディアを含めて数多く報道された。
その中で、例年、会期の前には主催者団体であるCTA(Consumer Technology Association)のリサーチ部門がこれからのトレンドについて解説をしている(CTA)。
まず、その冒頭で語られたのが「IoTはInternet of ThingsからIntelligence of Thingsへ」というメッセージである。これまではネットワークに接続されるだけだったデバイスが、エッジやクラウドで当たり前のように人工知能(AI)技術が導入されることで、デバイスが知性を持つということを表している。そのための基盤として、とりわけ大容量、低遅延という特性を持つ5Gネットワークは重要な役割を担う。こうした通信基盤技術、そしてセンサー、ドローン、ロボティクス、人工衛星などを駆使することで家庭での電子機器はもちろん、産業分野、例えば農業の現場での作業やその生産性に大きな影響が及ぶとする例も示された。
また、コンテンツ分野においては、SVOD、すなわち、NetflixやHuluに代表されるサブスクリプション型ビデオオンデマンドサービス市場の伸長傾向についても指摘をしている。Apple TV+やDisney+などの参入も相次ぎ、この分野の競争は激化している。ここの分野では、いかにして早期にシェアを握るかが重要と思われる。
さらに、VRやARのヘッドセットなどのハードウェア、自動運転技術、ウェアラブルデバイスによるヘルスケア、ロボティクスなどについても今後の注目分野であるという指摘がなされている。
こうした分析は、この1年、そして今後の10年を見据えるときの1つの基準点として捉えるにあたり分かりやすい。
ニュースソース
- 当たり前のAIと“知性”に向かうIoT、巨大化するテレビ[Impress Watch]
- 2020 Trends to Watch Presentation[CTA]
2.【CES 2020】トヨタがスマートシティ「Woven City」構想を発表
CESでトヨタがネットにつながる実験都市「Woven City(ウーブンシティ)」の構想を発表した。「2020年末に閉鎖する東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を利用し、21年初頭に着工。将来的に約71万平方メートルの街を作る計画だ。自動運転・ロボット・スマートホーム技術などを試験的に導入し、有用性を検証する」(ITmedia)としている。これまでもソフトバンクと東急不動産が東京都港区竹芝地区においてスマートシティの構築計画を発表しているが、それに続くものであるとともに、規模としてはそれを超えるものとなりそうだ。
これまでもトヨタはCESでモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)のコンセプトを発表したり、この数年間にいくつものIT企業への出資や協業を発表したりしてきたが、そこでの成果の実装場所としての位置付けか。また、従来の車という概念の商品や技術を越えるためには、こうした具体的な場所がなければ机上の空論になってしまうという課題もあったのではなかろうか。特区での実証実験を散発的にしているだけでは体系としての検証が困難だ。ただ、具体的なスケジュールや計画内容は発表されていないことから、今後の発表を待つことになる。
いずれにしても、これが具体化するとなると、新しい都市のイメージを具体化していく上での大きな一歩となることは間違いなさそうだ。
3.【CES 2020】ソニーが自動車「VISION-S」を発表!
CESの会場で、ソニーが「VISION-S」という電気自動車を発表した。「ソニーのイメージセンサーやセンシング技術を搭載し、レベル2相当の自動運転に対応。さらに、オーディオやエンターテインメントの技術も投入する」(Impress Watch)としている。しかし、ソニー自身は自動車メーカーになろうというわけではないようだ。自動運転で利用されるイメージセンシング技術、さらにや車内のインフォテインメントシステムなどをはじめとする要素技術を実装し、将来的な自動車のコンセプトを示したものという。
これもトヨタのスマートシティ構想と共通するのは、こうして具体的な実装をすることで、消費者への高いプレゼンテーション効果としてはもちろんのことだが、開発側でも課題を理解したり、方向性を共有したりする上でも効果が期待できることだ。とりわけ、既存の自動車メーカーからは出てこないようなユニークなアイデアも満載であることから、こうした要素技術が将来的にどう商品化されて発売されるのかが楽しみだ。
ニュースソース
- ソニーがクルマを作る理由。「VISION-S」に乗った[Impress Watch]
- 【CES 2020】 ソニーが語るスマホのイメージセンサー、多眼化や大判化が進む先にあるものは?[ケータイWatch]
4.【CES 2020】生活を大きく変えるウェアラブルデバイスとプラットフォームハウス
CESに関する記事で多く取り上げられているものにデジタルヘルスケアの分野がある。デバイスとしてはウェアラブルデバイスが高度化し、さまざまなバイタル、そして異常値を検出するものが多い(ケータイWatch)。それに加え、今回は積水ハウスが「プラットフォームハウス」を発表している。記事によれば「住宅内に設けたセンサーで居住者の脈拍、血圧、体温といった生体データを取得・解析し、急性疾患発症の可能性がある異常を検知した場合に、緊急通報センターへの通知、安否確認、玄関の解錠、救急への出動要請、救急隊の到着、玄関の施錠を一貫して実行する仕組み」(ASCII.jp)だという。とりわけ、日本では高齢者の一人暮らしも増加傾向にあるといわれていて、こうした技術によって適切な通報が行われて、いち早い治療につなげることができるだろう。
5. ハードウェアメーカーからサービス企業へと進みつつあるアップル
2020年1月8日、アップル社は同社が提供する各種のサービス事業、例えばコンテンツやアプリの配信事業などの進捗について発表をしている。それによれば「2019年は、Appleの歴史始まって以来のサービス事業が大躍進した年」(Engadget)だったとしている。
アップル社はハードウェアの販売事業が基幹とされてきたが、コンテンツやアプリなどの配信事業へとかじを切りつつあり、昨年はApple Arcade、Apple TV+、Apple News+、 Apple Cardといった新サービスを開始した(日本ではサービスされていないものもある)。その戦略が大きな成果を上げつつあり、他の競合サービスとの比較しても、高い競争力を持ちつつあるといえそうだ。ネットワークインフラやハードウェアの機能や容量の拡大とともに、コンテンツやサービスの事業はこれからの各社の主戦場であり、今後の注目点である。
ニュースソース
- アップルが「サービス新時代」のニュースリリース発表。年末App Storeは14億ドル以上の売上[Engadget]