中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/7/30~8/6]

この夏休みは「新しい日常」で文化財をより身近に感じよう ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 新型コロナ接触確認アプリのダウンロード数は計1127万件に

 新型コロナウイルス感染症接触確認アプリ「COCOA」は累計のダウンロード数が1127万件となり、着実にユーザー数を積み上げてきている(ケータイWatch)。

 また、平将明内閣府副大臣らが記者とのグループインタビューに応じている(ケータイWatch)。記事では、インストール手順の簡略化、プライバシーへの配慮などへの考え方が詳しく述べられている。その上で「6割の人がインストールしないと意味がない」と言われていることは誤解であるとし、あらためてこれが国の目標ではなく、そういう研究があるということを紹介しただけだとした。

 そして、同時期には日本大学生産工学部マネジメント工学科の大前佑斗氏と豊谷純氏、電気工学科の原一之氏、医学部の權寧博氏らにより、接触確認アプリ「COCOA」による、新型コロナウイルス感染者数の削減効果のシミュレーション結果が公表されている(ケータイWatch)。接触確認アプリの利用率と外出の自粛度合いの2つの要素を使い、感染者の数を減少させる可能性があることを示している。

 さらに、大塚商会では会社支給のスマートフォンに6500台に接触確認アプリを導入するとしている(ITmedia)。国が強制するものではなく、あくまでもひとりひとりが自主的に利用することを前提としているものだが、この例のように会社支給のスマートフォンで一気に導入するというのは1つの考え方として広まるかもしれない。

ニュースソース

  • 新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」、DLは計1127万件、DL増加数は7日連続20万件を超える[ケータイWatch
  • 「接触確認アプリ」開発の舞台裏とは――平将明副大臣ロングインタビュー 個人情報なし、位置情報なし、インストールも陽性報告もユーザー任せになった理由[ケータイWatch
  • COCOA利用率が4割+6割の外出自粛で感染半減??日本大学生産工学部がシミュレーション[ケータイWatch
  • Android 11では濃厚接触通知システムをOSに標準搭載へ[ケータイWatch
  • 大塚商会、会社支給の全スマートフォンに接触確認アプリ導入 6500台超[ITmedia

2. この夏休みは「新しい日常」で文化財をより身近に感じよう

 新型コロナウイルス感染症は収束の気配は見えない。残念ながら、今年は夏休みも予定も立てられなかったり、キャンセルをせざるを得なかったりする人も多いようだ。そのようななか、本格的なデジタルアーカイブを使って、足が遠のいてしまっている博物館、美術館、寺院などに所蔵されている文化財に触れてみるというのはどうだろうか。

 デジタルアーカイブなら、わざわざ収蔵元に出向かなくてもよいだけでなく、普段は公開していない作品を高精細の画像をクローズアップし、普段の展示ケースよりも細部まで鑑賞することができる。そればかりか、学芸員らによる解説も読むことができる。さらに、検索システムによっては関連作品にも触れるチャンスもある。近い将来、現物を目にしたときにはさらなる理解も深まることだろう。

 まず紹介するのは内閣府知的財産戦略本部が中心的な役割をして立ち上げたのが「ジャパンサーチ」(JAPAN SEARCH)だ。すでにβ版として公開されていたが、8月25日に正式版として本格運用が開始される。国会図書館をはじめとし、日本の18機関、71データベースのメタデータ1990万件を検索することができる(カレントアウェアネス)。

 さらに、8月1日には「カルチュアルジャパン」(Cultural Japan)が立ち上がった(朝日新聞)。これは国立情報学研究所の高野明彦教授をはじめとし、東京大学の研究者らが開発したもので、日本の陶磁器や浮世絵といった美術品や書籍など約100万件を楽しめる電子博物館と言えるものである。国内の美術館など約40機関が公開している画像のほか、海外37カ国、約550機関の所蔵品も閲覧できる。技術的にはメタデータの集約・共通化や日本語への機械翻訳などが導入されている(システム関係図)。さらに、3Dで表現される展示室に自分の気に入った作品を配置できる「私のコレクション」機能や、地図から所蔵機関を調べることなどもできるようになっていて、これまでのデジタル化資料群とは一線を画している。

 そして、もう1つは、7月22日から公開されている「法隆寺金堂壁画写真ガラス原板 デジタルビューア」(法隆寺金堂壁画)も興味深い。これは法隆寺や奈良国立博物館などが企画した特設サイトだ。不慮の火災により焼損してしまう前の法隆寺金堂壁画の姿が記録されているガラス原板のデジタルデータを使い、実際の建物の内部を模した3Dモデル内部にそれぞれの画像を配置し、高解像度で閲覧することができる(朝日新聞)。

ニュースソース

  • ジャパンサーチ正式版の公開日が2020年8月25日に決定[カレントアウェアネス
  • ジャパンサーチβ版[JAPAN SEARCH
  • 日本の美術品、国境超え鑑賞 電子博物館、100万件検索可能 今日から無料公開[朝日新聞
  • カルチュラル・ジャパン[Cultural Japan
  • 法隆寺金堂壁画、デジタル化で緻密に蘇る ウェブで公開[朝日新聞
  • 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板 デジタルビューア[法隆寺金堂壁画

3. トランプ政権がTikTokの売却を命じる――マイクロソフトが買収を進める

 この数週間、米国政府はTikTokにより個人情報が中国政府へと流れているのではないかと懸念を表明している(日本経済新聞)。こうした懸念を受け、マイクロソフトは米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでTikToKの事業をTikTokの運営をするByteDance社から買収する方向で交渉を進めていることが明らかになっている(TechCrunch日本版)。米国政府はサービスを停止させるのではなく、米国の管理下において事業を継続させることを意図しているように見える。しかし、背景には複雑な米中の政治的な思惑も見え隠れしている。

 そのようななか、インスタグラムにTikTok対抗の動画投稿機能「Reels」が付加された(PC Watch)とも報じられている。これによって、不安を感じた顧客の移行先となり得るか。

 こうした動きを受け、日本においても対岸の火事というわけにはいかなくなってきた。神戸市と埼玉県(ITmedia)、そして大阪府(NHK)はTikTokの運用を停止した。理由として、市民からの不安の声があったことを挙げている。一方、広島県、東京とは継続をするとしている。TikTokは日本でも人気のアプリとなっていることから、今後の動向からは目が離せない。

ニュースソース

  • トランプ政権、TikTok売却命令か Microsoftの買収浮上[日本経済新聞
  • 神戸市と埼玉県、TikTokの利用を中断 市民から不安の声 広島県、東京都などは継続[ITmedia
  • 大阪府 運用中の「TikTok」停止 “安全保障上の課題”[NHK
  • InstagramにTikTok対抗の動画投稿機能[PC Watch
  • マイクロソフトが9月15日までにTikTok買収へ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事業が対象[TechCrunch日本版
  • TikTok買収「国に仲介料払え」 トランプ氏発言が波紋[日本経済新聞
  • マイクロソフトのTikTok買収計画から見える4つのこと[ZDnet Japan
  • マイクロソフトの賭け、TikTok買収は「もろ刃の剣」[ニューズウィーク日本版

4. 総務省が令和2年版の「情報通信白書」を公開――5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築

 総務省が令和2年版の情報通信白書を公開した(総務省)。これは、さまざまなICT関連ビジネスの場において参照される基本的な年次情報である。今年のテーマは「5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」としている。5Gの技術進展状況、移動体通信サービスの契約数やIoTデバイス数の推移をはじめとし、産業のワイヤレス化、デジタルデータの利活用などについても言及をしている。さらには新型コロナウイルス感染症による社会的への影響と情報通信技術による取り組みについても触れている。

 プリント版の出版物は有料で販売されるが、電子書籍版、ウェブ版、専用アプリ版などは無料でダウンロード可能。

ニュースソース

  • 情報通信統計データベース(情報通信白書)[総務省

5. また一歩、上空のブロードバンドインフラが現実に近づく

 7月30日、ソフトバンクの傘下で成層圏通信プラットフォームを手掛けるHAPSモバイルは米国ニューメキシコ州で無人航空機「サングライダー」の基本的な飛行試験を行ったことを発表した(ITmedia)。飛行高度の維持、速度の変更、急旋回、バランス制御などを実験し、今後は成層圏空域での飛行試験に移るとしている。なお、ソフトバンクはグーグルの親会社であるアルファベット社の傘下にあるLoonの協業をしている。

 また、アマゾンも低軌道衛星によるブロードバンドインフラの構築事業を進めているが、米国時間7月30日に「3236基の衛星群を配備して運用する」計画について米連邦通信委員会(FCC)の承認を得たことを発表した。この計画では「100億ドル(約1兆600億円)」を投じて、「『個々の世帯』に加え、『信頼性の高いブロードバンドが利用できない場所で運営されている学校、病院、企業などの組織』にもインターネットを提供する」ことを目指すとしている(CNET Japan)。

 発展途上国はもちろんのこと、普段は人が少ない海上、山岳地、そしてインフラが途絶えた災害地など、モバイル通信の基地局を建てることが難しい地域に対して、ブロードバンドインフラを提供することは価値のある事業だ。しかし、にわかには信じられないような計画と感じていたが、いよいよ現実味が出てきた。

ニュースソース

  • 成層圏通信のHAPSモバイル、無人航空機の飛行試験を完了 今後は成層圏空域でのテストに移行[ITmedia
  • アマゾンの衛星ブロードバンド計画、FCCが承認--3000基超の衛星を投入へ[CNET Japan

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。