中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/11/5~11/12]

マイナンバーカードの機能をスマートフォンに――セキュリティへの懸念も指摘 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1.「Zoom映え」や「テレワーク」も――新語・流行語大賞候補にインターネット関連語がエントリー

 年末の恒例イベントとなっている「新語・流行語大賞」の候補が発表された(ITmedia)。「Zoom映え」「テレワーク/ワーケーション」「AI越え」など、情報通信のサービスや技術と関連する語がいくつもエントリーされている。もちろんこれはコロナ禍でのリモート生活から生まれたものが多い。それだけコロナ禍を乗り切るための工夫やそこから生まれる文化が情報通信という技術の上にあったということで、それが社会に急速に定着をしていることを表している。年間大賞とトップ10は12月1日に発表される。

ニュースソース

  • 新語・流行語大賞の候補に「Zoom映え」「テレワーク」 「PCR検査」などコロナ関連も多数[ITmedia

2.「バーチャル資料共有」や「同時通訳」も――Zoomの新機能を紹介

 ビデオ会議システム「Zoom」の年次国際カンファレンス「Zoomtopia 2020」の日本版「Zoomtopia Japan Session」がオンラインで開催された(INTERNET Watch)。そのなかで「バーチャル資料共有」「同時通訳」「基本設定&ビデオフィルタ」という新機能が紹介されている(INTERNET Watch)。

 「バーチャル資料共有」は、ローカルの資料を背景として投影する機能だ。「同時通訳」はオリジナル音声と同時通訳の音声を切り替えられる機能で、このオンラインカンファレンスでも利用された。「基本設定&ビデオフィルタ」は肌補正や明るさ自動調整、ビデオフィルタによる背景に効果を加えたり、顔に髭を付け加えたりすることもできる。これまで、顔なじみでない人とのミーティング、例えば、面接や営業などでは映像の印象をよくするための工夫を重ねてきた人も多いと思うが、そうした場面でのさらなる助けになる機能だ。

 さらに、在宅勤務疲れを防ぐためのZoom社内で運用されているガイドラインも示した。すでに、コロナ禍が長くなり、収束も不透明であることから、リモートワークによる精神的なストレスなども指摘されつつある。リモートワークを導入するための社内制度、技術だけでなく、利用者のメンタルをケアする上での取り組みも行うべき時期に入りつつある。

ニュースソース

  • 「テレビ会議以外の」日本でも提供へ、“Zoom疲れ”を防止するデバイスも紹介[INTERNET Watch
  • Zoomに「バーチャル資料共有」「同時通訳」などの新機能、“在宅勤務疲れ”防止のガイドラインも紹介[INTERNET Watch

3. マイナンバーカードの機能をスマートフォンに――セキュリティへの懸念も指摘

 行政のデジタル化の検討が急速に進むなか、すでに健康検証と運転免許証をマイナンバーカードと一体化するという方針が示されている。今週の話題はそのマイナンバーカード機能をスマートフォンに入れようという検討が進んでいるということだ(ケータイWatch)。武田良太総務大臣は「令和4年度(2022年度)中にマイナンバーカード機能のスマートフォン搭載を目指す」とコメントしている。社会のデジタル基盤を整備するという意味では当然ともいえる流れではあるが、急速な動きに対して、セキュリティに対する懸念を指摘する人もいる。そのセキュリティを担保するために、ユーザー側の運用や技術に対する理解をいかに高めるかも重要だ。

 そして、もう1つは「個人の年金額の見通しの試算等を行うための『年金アプリ(公式)』を開発し、同アプリで読み込むためのQRコードを『ねんきん定期便』に記載する方針が示された」ということも報じられている(ZUU online)。今後、検討がさらに進んでいくことになりそうだ。

ニュースソース

  • 年金アプリ(公式)と定期便のQRコード-年金改革ウォッチ2020年9月号ポイント解説[ZUU online
  • 総務省、2022年度にマイナンバーカード機能をスマホ搭載の方針[ケータイWatch

4.「ウェブの軌道修正を実現する」――ティム・バーナーズ・リー氏

 「ユーザーが自分の個人情報をそれぞれ個別に保存し、各種サービスにアクセスする場合に限り、必要な情報のみを共有する」という理念のもと開発されたのがプライバシー技術「Solid」の企業版リリースとなる「Inrupt」である(CNET Japan)。この技術を推進しているのがワールドワイドウェブ(WWW)の発明者で、ワールドワイドウェブコンソーシアム(W3C)の会長も務めるティム・バーナーズ・リー氏だ。同氏はこれまでも折に触れて現在のウェブが「堕落」していると指摘している。つまり、ユーザーは各自のプライバシーのコントロールを失い、さらには個人情報と引き換えなければインターネットのサービスを受けられないという現状に対し、大きな課題であると指摘してきた。それに対して、ただ懸念を表明するだけでなく、自らがアーキテクチャーの設計に関わったのがこの仕組みということだ。記事中では「われわれが今日公開する技術は、待ち望まれているウェブの軌道修正を実現するための1つの要素だ」と同氏が述べたことが紹介されている。

 一方で、現在ある多くのビジネスモデルは個人情報の蓄積とその利用にあり、すぐには同氏が指摘する課題の解決に結び付くわけではないと思われるが、今後はサービスの内容などによってそれぞれのビジネスモデルが使い分けられるようにするための技術の選択肢の1つになる可能性はあるだろう

ニュースソース

  • バーナーズ・リー氏創設のInrupt、プライバシー技術「Solid」の企業版をリリース[CNET Japan

5.「Internet Week 2020」がオンラインで開催、11月17日~27日

 一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が主催する年次カンファレンス「Internet Week 2020」が11月17日~27日にオンラインで開催される。参加費は5000円(税込)で、会期中の全てのセッションを聴講できる(INTERNET Watch)。テーマはIPv6、DNS、ネットワーク運用管理、サイバーセキュリティなどのこれまでから続く重要な話題をはじめ、「社会変容とインターネット~100年に一度の大禍とデジタル社会の初めての遭遇」というセッションには、台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タン氏の登壇も予定されている。インターネットはそれを運用する技術者らの協調によるところが大きい。そのため、インターネットの黎明期から続くこのイベントは重要な意味を持つ。

 そして、Internet Weekも他のイベントと同様、オンラインで開催されるということで、開催地(首都圏)とは離れている人が参加がしやすいということ、そして参加者数が会場の物理的な席数に縛られないというメリットもある。

ニュースソース

  • 年に一度の“巨大オフ会週間”もコロナ禍で…「Internet Week 2020」オンライン開催、11月17日~27日 参加費5000円で、全セッションが見放題[INTERNET Watch

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。