イベントレポート
Zoomtopia Japan Session
Zoomの「テレビ会議以外」、日本でも提供へ
2020年11月11日 07:00
Zoomの年次国際カンファレンス「Zoomtopia 2020」の日本版「Zoomtopia Japan Session」が10月中旬にオンラインで開催され、国際版Zoomtopiaでの発表の紹介や、日本独自のセッションが行われた。
本記事では、ZVC Japan株式会社のカントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏と、米Zoom Video CommunicationsのグローバルCIOのハリー・モズリー氏による基調講演をレポートする。
日本で提供できているのはビデオミーティングだけ?
佐賀氏はZoomtopia 2020のテーマ「Epic Environment -Courage-」を紹介し、壮大なビジネス環境とその変化に勇気を持って取り組むという意味を説明した。
同氏は「日本で提供できているのはビデオミーティングだけ。もっと多くの機能を提供していきたい」として、Zoomtopia 2020で発表された内容について、新機能を中心に紹介した。
まず、B2BやB2C、B2D(Business to Developer)について語られたことを紹介。「B2Cにとどまらず、お客様がその先のお客様に提供してZoomでビジネスを展開するB2B、さらに製品やサービスにZoomを組み込んで提供するB2Dについても投資をしていくことをお話しした」と報告した。
セキュリティについては、今年春に90日間のセキュリティ改善活動が行なわれたことの報告や、E2EE(エンドツーエンド暗号化)が全てのユーザーで利用可能になったこと、セキュリティレベルに応じてチャットをタグ付け、待機室で参加希望者の顔を確認して承認する機能などを紹介した。
快適なコミュニケーションの分野では、まずギャラリービューで参加者の位置を固定して表示する機能を紹介。さらに「日本ではなぜか上座・下座の機能をZoomが実装したと報道されたが、弊社にそういった意図はない」とコメントした。
そのほか、参加者のリアクションをアニメーションで確認する機能や、ホワイトボードの付箋などの機能、音声のノイズ削減や、音楽を認識して最適化する機能などを紹介した。
続いて、“Zoom疲れ”を防ぐものとして、リモートワーク向けのデバイス「Zoom For Home」を取り上げ、専用端末のほか、Echo ShowやNest Hub Maxなども対応することを紹介した。
最後に、Zoomを使ったイベントの告知や支払い、参加者への連絡を1カ所でできる「On Zoom」についても紹介した。
それに付け加えて佐賀氏は、APACセッションでは、日本でもいよいよ「Zoom Phone」に取り組むとして、「まずは050番号との接続について楽天コミュニケーションズとアライアンスを組んで電話番号を提供することを発表した」と語った。
コロナ後「Zoomなら乗り越えられる3つの壁」とは?現場へのさらなるリモートワーク導入も
次に佐賀氏は、Zoomの日本ビジネスがこの1年で飛躍的に成長したことを報告した。10以上のビジネスライセンスを契約している企業顧客数は、以前は2500社あまりだったのが2万社を超えた。パートナー数は5社から300社以上に、社員数は20名から65名に、売上は約10倍になった。「営業の人数が3倍になったのに対し、売上が10倍になったのは、パートナーのおかげ」と佐賀氏。また、ウェブ会議でのシェアは10%未満から35%になったというMM総研の5月発表の調査も引用し、ウェブ会議利用率が33%から64%に急激に増えていることも紹介した。
こうした成長の背景にはコロナ禍があるが、佐賀氏は「だんだんとみなさんがオフィスに戻り始めているが、事態が収束したあとも、Zoomなら乗り越えられる3つの壁がある」と語った。
1つめは、地域の壁。本社の会議にリモートから参加すると本社が中心になるが、Zoomで会議をするならどこからでも平等になるという。
2つめは、時間の壁。育児や介護などで9時~5時でオフィスで働くのが難しいために仕事を求職や退職することがあり、「誰でも人生にそのような時期がある」(佐賀氏)が、Zoomを使ってリモートワークがどんどん進めばキャリアをあきらめなくてよくなると語った。
3つめは、言葉の壁。海外とのミーティングで、Zoomの同時通訳機能を使えば、同時通訳を手配するだけで会議やセミナーができるという。
一方で、「Zoomによる問題も顕在化してきた」と佐賀氏。「医療や介護、スーパーマーケット、宅配など、現場に行かなければならない、リモートワークできない人が取り残される世界では不十分。移動しなくてもいい人が移動しなくなることで、現場に行かなければならない人が行きやすくなるというのを促進する一方で、現場にもっとリモートワークを導入するという発想力が求められていると思う」と語った。
最後に佐賀氏は「Zoomはいわばインフラ」として、商談や会議だけでなく、名刺交換、スポーツ教室、音楽、医療、教育など、あらゆる場面でZoomを利用する可能性があると説明。日本ではまだビデオミーティングしか提供できていないが、Zoom Phoneなど大きな市場がまだあるとして、「社員を倍増させ、パートナーとともに、こういったソリューションを提供していく」と語った。
Zoomで開催される会議は1カ月に30兆分、“ニューノーマル”ではなく“ネクストノーマル”の働き方とは
続いて登場したモズリー氏は、「“ニューノーマル”ではなく“ネクストノーマル”と言っている」として、コロナ禍以後の働き方について論じた。
モズリー氏も、まず、この10カ月のZoomの急成長として、1カ月あたりの会議の時間が約1000億分から約30兆分になったことを紹介した。
その上で、コロナ禍により、オフィスで働いていたのがリモートワークになり、出張はなくなるなど、「いまわれわれは未来にいる」と語った。
これまでは、仕事場と私生活が分けることができていたが、いまは融合している。それにより、仕事中に気が散ることがあるのがニューノーマルになった。また、これまでは、職場でチームの人間関係を築いたり、チーム横断でプロジェクトを進めることがしやすかったが、それができなくなった。その代わりに、デジタルイベントでチームの結束を高めるようになり、その例としてZoom社内ではオンラインでヨガイベントなどを開いていることをモズリー氏は紹介した。
「今後はハイブリッド社員になっていく」とモズリー氏。これまで自宅で働くには許可が必要だったのが、オフィスに行くのに許可が必要になる。リーダーはハイブリッド社員の扱いを学ぶことになり、社員の管理から仕事の結果の管理に変わる。そして、スケジュールも上司でなく本人が管理するようになる。そこでは、セキュリティも鍵になるとモズリー氏は付け加えた。
さらに、接触を避けるようになることで、自動化が進むことも氏は挙げた。体温を計って入館許可するのも、ロボットによって自動化される。
こうした予測に向けて、モズリー氏は「家から仕事するのは効率が悪いと言われていたが、それは過去の神話」として、「多くの場合はだが、家からでも効果的に仕事できる」と語った。家から仕事するようになることで、ワークライフバランスが改善し、リース機器やオフィス面積を減らせ、雇うときに地理に依存しなくてよくなり、文化を超えてコラボレーションができるようになるとモズリー氏は言う。
最後にモズリー氏は、こうした動きと予測を「われわれは“ネクストノーマル”の中にいる」とまとめた。