中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/10/29~11/5]

総務省による携帯電話市場の競争促進策を受けた各社の動向 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 総務省による携帯電話市場の競争促進策を受けた各社の動向

 これまでも報じられてきたように、総務省は携帯電話事業者間の競争を促進し、通信料金を下げる方向での政策を打ち出している。そして、先ごろ、総務省は「携帯電話・PHSの番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」の改正案を公開した(ケータイWatch)。12月8日まで意見を受け付け、2021年4月1日から適用される予定になっている。骨子としては、通信事業者間での乗り換え(MNP:モバイルナンバーポータビリティ)に際し、転出手数料の原則無料化、MNP予約番号を受け取るときの引き留め施策の禁止、一連の手続きのわかりやすさの向上である。

 こうしたことを受け、携帯通信事業者各社は決算発表などの場において対応を表明している。

 すでにソフトバンクはMNP転出時の手数料を2021年春にも無料化を発表している(ケータイWatch)。また、価格については「2015年度までのホワイトプランは最大7GB。その後、ギガモンスター、ウルトラギガモンスターと大容量化した。動画・SNS見放題を実施し、たくさん通信する方がいっぱいいる。ギガ単価(1GB)も80%以上値下げした」(ケータイWatch)と、これまでの取り組みを説明した。また、ソフトバンクブランドの値下げは「考えていない」とし、ワイモバイルブランドで対応をしていくという意向を示している(ケータイWatch)。

 KDDIもauを使い放題で徹底的に5Gにこだわるフラグシップ的なポジションとし、シンプルでお手頃価格を求めるユーザーにはサブブランドとなったUQ mobileを提案するという戦略だ。その上で、「シンプルでわかりやすいプランはUQ mobileが適しているだろう」と述べたと報じられている(ケータイWatch)。それに加え、eSIMを活用して、手続きの全てをオンラインで進められたり、ニーズに合わせたサービス内容と料金にカスタマイズしたりできるMVNO型の携帯電話サービスを提供する「KDDI Digital Life」と発表した(ケータイWatch)。

 楽天モバイルでは、eSIMを利用し、さらにeKYCによる本人確認による契約を進めるとともに、MNP転出手数料を撤廃する「ZERO宣言」を発表し、三木谷浩史CEOは「いつでもキャリアを乗り換えられる時代に」するという方針を示した。

 一方、ドコモの吉澤和弘社長は総務省の案に対して一定の理解を示したものの、「ドコモとして意見を言っていかなければならないものも含まれている」と述べたと伝えられている(ケータイWatch)。MNP転出手数料無料化について、オンライン手続きを無料化することには賛同できるとしつつも、「窓口や電話でも無料」とするのは難しいという。また、ドコモは現状ではサブブランドを持たないため、安価な料金プランを提示することができていない。いまの段階では各社と同様な施策は発表されなかったが、手をこまねいていることはできず、早晩、何らかの対抗プランを打ち出すことになるのではないだろうか。

ニュースソース

  • 総務省、正式に「MNP」ガイドライン案を公開――ネットで使いやすく、手数料は原則無料、引き止め禁止[ケータイWatch
  • ソフトバンク宮内社長、「5Gの料金、無制限プランは後日発表。もう少しお待ちを」[ケータイWatch
  • ソフトバンク宮内社長、「iPhoneで5Gに勢い」[ケータイWatch
  • ソフトバンク宮内社長、「ギガ単価、80%以上値下げした」[ケータイWatch
  • KDDI、eSIM活用でオンライン特化のMVNO新会社「KDDI Digital Life」[ケータイWatch
  • KDDI高橋氏「マルチブランドで多様なニーズに応える」――21年3月期第2四半期は減収増益[ケータイWatch
  • ドコモ5G、エリアマップを公開――ミリ波対応スポットも[ケータイWatch
  • ドコモ5Gはすべて新周波数の「瞬速5G」――ミリ波や「Sub6-CA」で超高速通信[ケータイWatch
  • ドコモ吉澤社長、5Gエリア展開について「まずはSub6とミリ波でしっかりと拡大していく」[ケータイWatch
  • ドコモ吉澤社長、総務省のアクションプランについて「意見をしっかりと伝えていきたい」[ケータイWatch
  • 楽天モバイルが契約事務手数料とMNP転出手数料を撤廃し「eKYC」による本人確認による契約も可能に[ITmedia
  • 三木谷氏「いつでもキャリアを乗り換えられる時代に」、楽天モバイルが転入・転出0円などの「ZERO宣言」発表[ケータイWatch

2. 携帯電話事業者の値下げ施策を受け、消費者はどう動くか?

 携帯電話通信事業者の料金値下げ施策が報じられているなか、消費者の意向・動向はどうなっているのだろうか。MMD研究所は「2020年11月通信サービスの利用動向調査」の結果を発表した(ケータイWatch)。この調査の対象は15~69歳の男女4万人で、調査期間は2020年10月16日~10月18日となっている。これによると、現在のメインで利用している通信サービスのシェアはドコモが34.9%、au+UQ mobileが27.6%、ソフトバンク+ワイモバイルが22.7%となっている。そして、新規参入の楽天モバイルは12.3%である。各社の価格戦略で、このシェアがどのように動くかがこれからの焦点となる。

 また、メインで利用する端末の入手方法としては「通信事業者のショップで購入した」という回答が圧倒的に多く、各社がコストダウンの方法として想定していると思われるオンラインで完結する契約や購入プロセスにはハードルがありそうだ。ショップ店頭で、コンサルテーションを受けながらの手続きということなのだろう。コストダウンを実現するためにも、コンサルテーションなしに分かりやすい料金体系、購入プロセスが必要ということか。

ニュースソース

  • 4キャリア+サブブランドのシェアは87.7%、MVNOは12.3%、MMD研究所調査[ケータイWatch

3. トヨタとKDDIが提携関係強化――オールジャパンでのスマートシティ実現が狙いか

 トヨタ自動車とKDDIは新たな業務資本提携を発表した。2000年10月に第二電電(DDI)、KDD、日本移動通信(IDO)の3社合併によってKDDIが発足したときから、トヨタはKDDIの第2位の株主であったが、新たに、トヨタを引受先としたKDDI株式約1830万株(総額約522億円)の第三者割当による自己株式処分を実施する。トヨタによるKDDIの持株比率は12.95%から13.74%へと増加する(ケータイWatch)。

 トヨタは自動車のみならず、スマートシティの構築プランなども発表していて、今後、さらに「街、家、人、クルマそれぞれの間で最適な通信を可能とするプラットフォームの研究開発を共同実施するほか、デバイスからネットワーク、プラットフォーム、サービスを一元化して管理する、高度な運用を可能とする次世代コネクティッドカー向けの運用管理システムを共同開発などに取り組む」としている。なお、本年5月にはNTTもトヨタとはスマートシティプラットフォームの開発ついての協業を発表している(SmartGridフォーラム)。GAFAをはじめ、各国での開発競争が激化するなか、オールジャパンで国際競争に勝ち抜く取り組みの方向性が強まったことを示しているといえそうだ。

ニュースソース

  • トヨタ、約520億円を追加出資しKDDIと新たな業務資本提携[ケータイWatch

4. PayPayテーブルオーダーはニューノーマル時代の飲食店システム

 PayPayが店内注文サービス「PayPayテーブルオーダー」の提供を開始すると発表した(CNET Japan)。当面は大阪府の対象店舗のみだ。これは、PayPayアプリの「テーブル注文」アイコンをタップして起動し、飲食店のテーブルや座席に設置された注文用QRコードを読み取って利用するサービスだとしている。ポイントは「不特定多数の人が触れる印刷されたメニューに触ることなく、自身のスマートフォンに導入したPayPayアプリから注文ができるほか、決済もPayPay内で完了するため、退店時の会計作業などが不要となり、新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症対策にもつながるとしている」という点である。

 ニューノーマル時代における新しい飲食店の注文方法といえよう。こうした方法が定着し、さらに全国への展開されることになるか。

ニュースソース

  • PayPay、店内注文サービス「PayPayテーブルオーダー」を大阪で開始[CNET Japan

5. いよいよAppleシリコン搭載Macが登場か? アップル社がイベントを告知

 いよいよアップル社がアップルシリコンを搭載したMacを発表するかもしれない(CNET Japan)。日本時間11月11日午前3時からイベントが開催される。これは来週の注目イベントである。

 また、アップル社は音楽聴き放題の「Apple Music」、映像サービスの「Apple TV+」、ゲームサービスの「Apple Arcade」、そしてクラウドストレージの「iCloud」がセットになっているサービスである「Apple One」を日本でもサービス開始した。料金は個人プラン(iCloudは50GB)で1100円、最大5人で利用できるファミリープラン(iCloudは200GB)は月額1850円となっている。アップル社が進めるサブスクリプションサービス事業の拡大施策である。今後の普及度合いと、各社の対抗施策などにも注目だ。

ニュースソース

  • 「Apple One」日本でも提供開始、音楽やゲーム、映像、ストレージが月額1100円[ケータイWatch
  • アップル、11月11日に特別イベント「One more thing.」--AppleシリコンMac登場か?[CNET Japan

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。