中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/4/8~4/15]

オンライン本人認証「eKYC」の認知はまだこれから ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. オンライン本人認証「eKYC」の認知はまだこれから

 MMD研究所はオンラインでの本人確認(eKYC)についての認知度を調査した結果を発表した(Impress Watch)。それによると、eKYCの認知度は28.6%、利用経験者は12.0%にとどまり、利用経験のある最多の年齢層は20代の19.7%だという。

 eKYCを導入をしているサービスは徐々に増加しているように感じるが、日常的に何度も利用する必要がある手順ではないことも一気に認知が上がらない一因か。一方で、利用した人は「郵送や書類コピーなどの手間が減った」(67.1%)、「スピーディーに手続きできる」(63.3%)、「外出しなくて済む」(59.5%)などのメリットを感じている。懸念点として「個人情報の漏洩の可能性」(41.8%)などが多く指摘されているが、本人証明書類を郵送したとしてもなんらかのリスクは生じるのではないだろうか。

 いずれにしても、当たり前の手順として誰もが利用するようになるにはいましばらくの時間が必要そうだが、それまでに、より分かりやすく、操作上でのエラーの生じないプロセスに練り込むことも期待される。

ニュースソース

  • eKYCのオンライン本人確認利用者は12%。「全く知らない」が7割[Impress Watch

2. 公取委がクラウドサービスの寡占状態に関する実態調査に着手

 公正取引委員会はクラウドサービスを対象とする寡占状態を把握するための調査に着手すると報じられている(ITmedia)。「市場の寡占化が進んでいるとの指摘や、別のクラウドサービスへの移行に時間や費用がかかるため、それが競争を阻害しているという指摘がある」という点が調査の背景としてあるようだ。この対象となるのは具体的にはアマゾンのAWS、グーグルのGCPなどとみられるが、「あくまで市場環境の調査が目的で、特定の企業による違反を調査するわけではない」と公取委の担当者は述べている。なお、このような大手事業者の寡占状態に対する調査はこれまでもEC、デジタル広告、アプリストアなどの分野で行われてきている。

 世界各国では大手プラットフォーム事業者の市場寡占について厳しい目が向けられているが、ユーザー(個人・企業)を不当に自社サービスに縛り付けず、双方の対等な関係のもとで透明性のある健康的な取引関係が維持されていることが重要なポイントとなるだろう。また、市場での競争原理を失なわせないことも長期的な技術革新や市場成長のための要素といえよう。

ニュースソース

  • 公取委がクラウドサービスの実態調査に着手 寡占化にメス[ITmedia

3. NFTを活用する新サービスの計画が続々と発表される

 NFT(Non-fungible token:偽造できない鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ)のプラットフォームやサービスが続々と発表された。

 エイベックス・テクノロジーズは次世代型著作権流通システム「AssetBank(アセットバンク)」の運用を開始したと発表した(Impress Watch)。「知的財産の保有者(IPホルダー)は、制作した楽曲やイラスト、テキスト、3DモデルなどをAssetBankに登録でき、権利の所在を明確にした上で、ライセンスビジネスを展開できるようになる。将来的には、AssetBankに登録された正規のデジタルコンテンツを活用した商品の販売が、どの事業者でも安心して行なえるようになる」というプラットフォームだ。

 そして、出版流通大手のトーハンと電子書籍流通大手のメディアドゥはNFTを活用した「デジタル付録」のサービスを開始すると発表した(Impress Watch)。記事によれば「書店における紙の書籍の販売において、NFTを活用した限定のデジタル付録を提供する。(中略)ファンは手に入れたNFT付きのデジタルコンテンツをコレクションしたり売買したりといった、新しい楽しみ方が可能になる。ユーザー同士で鑑賞や販売ができる『メディアドゥNFTマーケットプレイス(仮称)』も今夏に同時に開始する予定」としている。

 また、GMOインターネットはNFTを活用した事業に参入すると発表した(CNET Japan)。具体的なサービスの内容はこれからのようだが「デジタルコンテンツの決済・流通をカバーするマーケットプレイス「アダム byGMO」の提供を予定している」としている。

 音楽や出版などの分野との親和性が高いということだろう。そして、こうした分野では無体物であるデジタルデータとしてのコンテンツがデジタル基盤の上で新たな価値を創出することになると期待される。そのためには多くの人がその技術的な意味を理解する必要があるのかもしれない。そこで、こうしたNFTに関する新サービスを紹介する記事だけではいまひとつイメージが湧かないという方には「話題の『NFTアート』を実際に購入!世界最大のNFTマーケットプレイス『OpenSea』を使ってみた」という記事(INTERNET Watch)が参考になる。

ニュースソース

  • エイベックス、ブロックチェーン活用の著作権流通システム[Impress Watch
  • 書店でNFT活用の“デジタル付録”集英社や角川など[Impress Watch
  • GMOインターネット、NFT事業に参入--デジタルコンテンツのマーケットプレイスを提供へ[CNET Japan
  • 話題の「NFTアート」を実際に購入!世界最大のNFTマーケットプレイス「OpenSea」を使ってみた[INTERNET Watch

4. 国宝「鳥獣戯画」の徹底解説と鑑賞ができるVR作品を公開

 4月13日から東京国立博物館で開催されている特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」は大変に人気があるようだ。コロナ禍ということもあり、入場は完全日時指定制となっている。

 この特別展に合わせ、凸版印刷、東京国立博物館、文化財活用センターは共同で国宝である「鳥獣戯画」を鑑賞するVR作品「鳥獣戯画 超入門!」を製作したと発表した(ASCII.jp)。東京国立博物館・東洋館内の「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」で公開されている。実物と合わせて鑑賞することで理解がより深まるという趣向である。

 現在、東京都では「まん延防止等重点措置」が適用されていて、都知事からは外出を控えることを求めるメッセージも発出されている。いくつかの博物館や美術館では自宅からの観覧ができるような仕組みに取り組んでいることも珍しくなくなりつつある。今回のVR作品は現地でしか観覧できないようだが、このように人気ある企画展では今後、そうしたデジタルでの企画も期待したいところだ。

ニュースソース

  • 国宝「鳥獣戯画」の徹底解説と鑑賞ができるVR作品「鳥獣戯画 超入門!」[ASCII.jp

5. イベントカレンダー:アップルが日本時間4月21日未明にイベントを開催

 大手IT企業のプライベートイベントが続々と開催される。

 まず、アップル社は日本時間の4月21日未明にオンラインイベントを開催すると発表した(ケータイWatch)。記事ではイベントのロゴマークがペンで描かれたようなイラストであることから、iPad Proの新モデルが発表されるのではないかと予想している。

 また、日本時間4月22日の朝7時からはフェイスブック社のグループ企業であるOculusが「Oculus Gaming Showcase」という初のVRゲームイベントを開催する(ITmedia)。

 さらに、サムスンは「Galaxy Unpacked 2021」を米国東部標準時28日午前10時からオンラインで開催すると発表した(CNET Japan)。招待状には「最も強力なGalaxyが登場する」と記されていることから、ハイエンドの製品であることが予測される。

 一方、新型コロナウイルス感染症の拡大が十分に抑えられていないことから、6月にスペインのバルセロナで開催が予定されているものの、もろもろの懸念がされている「モバイルワールドコングレス(MWC)」の実施に向け、スペイン当局が「出展者、出席者、スポンサー、パートナーを含むすべての登録者がイベントへ参加できるよう、スペインへの入国を許可」すると発表されている(ケータイWatch)。一部の国ではワクチン接種の効果が出ているともされているが、世界から人が集まるリアルな場所を使ってのイベント開催はまだまだリスクが高いのではないだろうか。

ニュースソース

  • GSMA、MWC21バルセロナの国際渡航認証を発表[ケータイWatch
  • VRゲームのイベント「Oculus Gaming Showcase」が4月22日午前7時から開催[ITmedia
  • アップル、4月21日2時~にオンラインイベント開催へ[ケータイWatch
  • サムスン、4月28日に「Unpacked」開催へ--「最も強力なGalaxyが登場」[CNET Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。