中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/4/1~4/8]

巣ごもり景気で、世界の「アプリ総売上高」大幅に拡大 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 巣ごもり景気で、世界の「アプリ総売上高」大幅に拡大

 アプリ市場分析を手掛けるApp Annie社によれば、2021年第1四半期の全世界における「アプリ総売上高」は320億ドル(約3兆5400億円)と対前年同期比で40%増になったとしている。昨年の第1四半期といえば新型コロナウイルス感染症拡大の前夜で、各国が強いロックダウンや自粛要請に入る直前。いまだ終息が見えないなか、この1年でオンラインでのアプリ消費は大きく伸びたことが明らかになった。とりわけ「モバイルゲームや動画ストリーミング、ソーシャルアプリを通じてより多くの娯楽を求め始めたため、消費者が2021年第1四半期に支出した額は、前年同期より90億ドル(約1兆円)増えた」(CNET Japan)とし、巣ごもりの影響が顕著になっている。さらに同社では「2021年通期ではモバイルゲームへの支出額が1200億ドル(約13兆3000億円)に達する」と見込んでいる。

 これだけ急に市場環境が変化すると、アプリストアの手数料に異議を唱えるベンダーが現れることは不思議ではない。また、これ以外にもECやビデオ会議をはじめとして、多くの経済活動がインターネット上で活発になっていることから、近い将来、ワクチン接種の広がりなどで、新型コロナウイルス感染症が一定の終息を見たとしても、ここで定着した習慣は続いていくことになるのだろう。

ニュースソース

  • アプリへの支出額が過去最高、第1四半期は40%増の約3.5兆円に[CNET Japan

2. 続く個人情報流出への懸念と自分を守る再確認

 タスク管理ツールの「Trello」の設定ミスにより、個人情報や組織内情報が外部から誰でも閲覧できるような設定なっていることにより、運転免許証やパスポートの画像、クレジットカード情報、顧客情報、勧誘リスト流出をしている事例が報告されている。これを受け、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)も「公開範囲の設定を確認し、意図せず公開となっている場合は、非公開とする等、適切な設定にしてください」という呼び掛けを行っている(INTERNET Watch)。これまでもCRMソフトウェアの「Salesforce」の設定ミスにより、情報が漏えいしている事案がいくつも報告されているが、本質的にはウェブサービスのユーザー側の設定ミスに起因する。これ以外にも、ファイルを共有するソリューションは一般的に利用されているので、これまでに報告されているもの以外でも再確認をしておいた方がよいだろう。

 また、2019年にFacebookから流出した全世界約5億人の個人情報が、再びダウンロードできるようになっているようだ(INTERNET Watch)。日本人も40万人分が含まれるとされている。これに対処するため、個人情報が流出しているかどうかをチェックするウェブサービスの「Have I Been Pwned?(HIBP)」では、メールアドレスに加えて、電話番号での検索に対応したと発表した(Gigazine)。

 一度流出したものはネットワーク上から完全に削除することは困難なので、もはや流出したという前提でのリスク意識を持つべきだろう。

ニュースソース

  • 内閣官房も注意喚起、複数の「Trello」ユーザーが設定ミスで個人情報を公開か 企業・個人のあらゆる情報がネットで検索可能な状態に[INTERNET Watch
  • Facebookから流出した日本人約40万人を含む全世界約5億人の個人情報が「再公開」[INTERNET Watch
  • 個人情報流出チェックサイト「Have I Been Pwned?」が電話番号での検索に対応[Gigazine

3. 機能が充実する各社のウェアラブルデバイス

 ここのところ、ウェアラブルデバイスの市場が拡大をしていることは各社の市場調査でも明らかになっている。そのようななか、今週は2つの注目すべき製品が報じられている。

 1つはカシオ計算機の「G-SHOCK(GSW-H1000)」で、米グーグル社のスマートウォッチ向けOS「Wear OS by Google」を採用した。防水や耐衝撃性といったこれまでのG-SHOCKの特長に加えて、心拍計測用の光学式センサー、方位・高度/気圧・加速度・ジャイロセンサー、GPSなどが搭載されている。運動中の記録、例えば、走行ルートや距離、速度、ペースなどが計測できるとしている(ITmedia)。

 また、ガーミンジャパンは、2021年4月下旬以降、順次ウェアラブルデバイスに「血中酸素トラッキング」機能を提供すると発表した。「血液中の酸素レベルを知ることで、疲労と回復のパラメーターとして運動を継続するか休憩するかを判断したり、パフォーマンスやフィットネスレベルの向上の基準とすることができる」(ケータイWatch)としている。

 先日も、中国のシャオミが酸素飽和度機能を追加した「Mi Smart Band」の新モデルを発表している(ITmedia)。市場では酸素飽和度を測定する装置の品薄が続いているなか、3000円から4000円程度の価格でこの機能が搭載されたということは画期的といえそう。

 この分野で大きなシェアを持つApple Watchでも、今後発表される新モデルで同様な機能の提供が期待される。今後は各社ともスポーツ、ヘルスケアなどの用途に応じた製品が充実してきそうな情勢だ。

ニュースソース

  • Google「Wear OS」を搭載した初の「G-SHOCK」、5月発売[ITmedia
  • Garminのウェアラブルデバイスで血中酸素測定機能を提供[ケータイWatch
  • 「Mi Smart Band 6」は画面が50%大きくなり、SpO2測定機能付き[ITmedia

4. Clubhouseに「投げ銭」機能追加、段階的に広げる

 音声SNSとして注目されている「Clubhouse」にクリエイター向けの“投げ銭”機能「Clubhouse Payments」が付加されたと報じられている(ITmedia)。決済にはオンライン決済サービスの「Stripe」を利用するようだ。ポイントは決済手数料を取らず、全額がクリエイターの手に渡るというところだ。現在は一部のユーザーに提供されているようだが、段階的にユーザーを増やしていくという手法だ。記事からはどういうビジネスモデルがあるのかは分からないが、この決済システムを普及させるためのマーケティングということか。

 マネタイズの仕組みが実装されたことで、有料のコンテンツや運営に費用が必要な大掛かりな仕掛けのコンテンツが登場する可能性もある。新しいメディア化をしていく上での大きな一歩を踏み出したように感じる。

ニュースソース

  • Clubhouseに“投げ銭”機能 中抜きなしでクリエイターへ送金[ITmedia

5. イベントカレンダー:「Google I/O」「E3」「Build」はいずれもオンラインで開催

 春の展示会、カンファレンスシーズンだが、世界的にも新型コロナウイルス感染症の終息が見えないなか、今年もオンラインでの開催が主流となりそうだ。

 グーグルのデベロッパーカンファレンス「Google I/O」は5月18日~20日にオンラインで開催すると発表された(ケータイWatch)。マイクロソフトのデベロッパーカンファレンス「Build 2021」も5月25日からオンラインで開催される(ZDnet Japan)。すでに発表されている、アップル、フェイスブックのデベロッパーカンファレンスとあわせて注目のイベントが目白押しだ。

 また、ゲーム/エンターテインメントの大規模展示会として知られる「E3」もオンラインでの開催となる(CNET Japan)。

ニュースソース

  • 2021年の「Google I/O」は5月18日~20日、オンライン開催で[ケータイWatch
  • マイクロソフトの開発者会議「Build 2021」、米国時間5月25日よりオンラインで[ZDnet Japan
  • ゲーム見本市「E3 2021」、6月にオンライン開催へ--誰でも無料で参加可能に[CNET Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。