中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/7/15~7/29]
ソフトバンクが語るBeyond 5G/6G構想 ほか
2021年7月30日 17:00
1. 米国大手IT企業の業績と業界トレンド――半導体不足が今後の課題
グーグル、アップル、フェイスブック、マイクロソフトの四半期決算が発表されている。各社とも好調な数字となっている。その中でポイントとなる数字をいくつか紹介しておく。
まず、アップル社はiPhoneの売上高が前年同期比50%増、Macが同16%増、iPadが同12%増、そしてサービスの売上高は同33%増となり、サービスは同社の売上全体の21.5%を占めると報じられている(CNET Japan)。看板であるハードウェアの売上だけでなく、サービス(コンテンツなど)の売上比率も順調に成長をしている。
グーグルの親会社アルファベットは、グーグルのサービスが全売上高の大半を占めるとともに、YouTubeの広告売上高が70億ドルとなり、前年同期の38億1000万ドルから大幅に増加をしている(CNET Japan)。
フェイスブックのユーザー数は、6月30日の時点の月間アクティブユーザー数(MAU)が29億人と、前年同期比で7%増加しているとしている(CNET Japan)。
マイクロソフトは商用クラウドサービスが堅調で、Azureの売上高は51%増だとしている(CNET Japan)。
一方で、IT業界の懸念材料は半導体不足である。ガートナーは2021年第2四半期の全世界PC出荷台数が7160万台で、前年同期比4.6%増にとどまると発表した。要因としては「世界的な半導体不足による部品調達遅れ」と指摘をしている(日経XTECH)。スマートフォン市場においても「消費は回復しても、世界的な半導体不足により、バックオーダーが増え、出荷台数の増加に影響すると予測」とする分析(ITmedia)も報じられている。
このように、半導体不足の影響による機材調達の遅れやそれによるサービスへの影響、そして各社業績へのマイナスの影響に注視していく必要がある。
ニュースソース
- アップル、「iPhone」などが好調で36%増収--4~6月期[CNET Japan]
- FacebookのQ2決算、売上高56%増--今後の伸び鈍化を予想[CNET Japan]
- グーグル親会社AlphabetのQ2決算、予想を大きく上回る[CNET Japan]
- マイクロソフトのQ4決算、予想上回る--「Azure」など好調[CNET Japan]
- 「半導体不足でPC出荷台数の伸び鈍化」、Gartnerが21年2Q速報[日経XTECH]
- Xiaomi、世界スマートフォン市場でApple抜いて初の2位に──Canalys調べ[ITmedia]
2. ソフトバンクが語るBeyond 5G/6G構想
ソフトバンクはさまざまな最先端技術を体感できる技術展「ギジュツノチカラ」の第3弾「ギジュツノチカラ Beyond 5G/6G編」をオンライン開催した。同社の湧川隆次氏(先端技術開発本部本部長)が「ソフトバンクのBeyond 5G/6G構想と12の挑戦」と題して講演を行った(ケータイWatch、ケータイWatch)。
高速・大容量通信時代のエッジコンピューティングの意味、HAPSやLEOと言われる衛星インフラによる国土カバー率の拡大と、不足する電波の帯域に関してはダイナミックシェアリングなどの電波を柔軟に使える技術について述べた。一般的に、5G、6Gをこれまでの延長線上にある高速通信技術として捉えると、ユーザーにとってコンテンツのダウンロードが速くなるだけのようにも誤解されがちだが、電波の使い方と通信技術の工夫を重ねることで、新たなイノベーションの可能性を多く秘めていると感じることができる。
3. NFTの活用事例と基盤整備動向
引き続き、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を活用する事例を扱った記事が多く見られる。
まず、目を引くのは、画家ピカソの作品の所有権をトークンにより分割所有しようという事例だ(ZUU online)。記事によれば「同作品の評価額は、総額400万スイスフラン(約4億7000万円)。今回、4000トークン発行され、1株所有するための最低申し込み額は5000スイスフラン(約60万円)からだという。販売は7月末を予定している」ということだ。こうした事例は世界で初めてではないかと報じられている。
また、米国Shopifyのオンラインストア上では、NBAのシカゴ・ブルズのNBAチャンピオンリングのデジタルアートなどをNFTで購入することができるという(TechCrunch日本版)。
日本では「ヤフオク!」上でNFTのアイテムを取引可能にすると発表した(INTERNET Watch)。どのようなものが流通するかは不明だが、メジャーなブランドによる基盤が整備されることで、いろいろなユニークなアイデアが登場するものとみられる。
ニュースソース
- ピカソの絵をブロックチェーンでトークン化 所有権を販売へ[ZUU online]
- 「ヤフオク!」でNFTアイテムの取引が可能に、今冬開始 LINEのブロックチェーンを基盤とし、参加のハードルを下げる[INTERNET Watch]
- ShopifyでストアによるNFTの直接販売が可能に[TechCrunch日本版]
- NFTコレクターズマーケットプレイスの立ち上げ計画をDraftKingsが発表[TechCrunch日本版]
- NFT活用でSDGs達成に挑む。Enjinが国連グローバル・コンパクトに会員参加[coindesk]
- IPコンテンツ・100年時代──NFTが新たな可能性を開く[coindesk]
4. 企業によるYouTubeチャンネルの開設が活発
YouTubeというメディアへの注目が高まっていることは言うまでもないが、ここにきて企業のチャンネルについて報じる記事が目に付く。PCだけでなく、スマートフォンや大画面テレビなどの多様なデバイスでのYouTube視聴が定着し、視聴時間も増加していることから、各社とも独自のコンテンツ配信が活発になっているとみられる。
まず、タカラトミーは着せ替え人形「リカちゃん人形」の公式YouTubeチャンネルを開設した(ITmedia)。「製品情報に加え、リカちゃん本人がSNSで集めた視聴者の悩みに答えたり、ヘアメークアーティストの仕事現場を見学したりする動画を配信する」という。
山と溪谷社は山岳誌「山と溪谷」や登山情報サイト「ヤマケイオンライン」と連携し、季節ごとのお勧め登山コース、読図(地図を読み取ること)、ロープワークなどのハウツーや登山用具の選び方や新製品情報など、文字と写真だけでは伝えにくい情報を動画で配信するという(トラベルWatch)。
BANDAI SPIRITSはオリジナルロボットアニメ「境界戦機」の地上波放送後にYouTubeでアーカイブ配信を行う(ITmedia)。
すでに今年の1月に動画配信を開始した投資信託「ひふみ」シリーズを運用するレオス・キャピタルワークスは、同社が運営するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」のチャンネル登録者数が10万人を突破したと発表し、半年で順調にチャンネル視聴者が増加していることを示した(ITmedia)。
そして、YouTubeでは視聴者が応援したいクリエイターに送金する新たな手段として「Super Thanks」を開始した(CNET Japan)。これまではライブ配信などでスーパーチャットという仕組みで「投げ銭」的な機能を提供していたが、すでにアップロード済みの動画でも「投げ銭」が可能になるものとみられる。新たなマネタイズの仕組みが加わったことから、個人クリエイターだけでなく、企業でもメディアプラットフォームとしての取り組みが拡大しそうだ。
ニュースソース
- 「リカちゃん人形」YouTuberに 公式チャンネル開設、お悩み相談やお仕事見学に挑戦[ITmedia]
- 山と溪谷社、Youtubeチャンネル開設。登山ガイド・ハウツー・用具選びを動画で配信[トラベルWatch]
- 新作アニメ放送後にYouTubeで無料配信 10月放送の「境界戦機」で[ITmedia]
- 「ひふみ」のレオス、YouTube「お金のまなびば!」登録者数10万人 開設6カ月で突破[ITmedia]
- YouTube、アップロード済み動画に投げ銭できる「Super Thanks」を提供開始[CNET Japan]
5. さらに進むバイタルのセンシング技術
Engadget日本版が報じたところによると、イギリスのスタートアップであるRockley Photonics社は非侵襲性の血糖値モニターを発表したとのことだ(Engadget日本版)。記事によれば、スマートウォッチの背面から赤外線を照射して血圧や血糖値、血中アルコール濃度などを読み取る次世代センサーを開発したということで、しかもアップルとの間では継続的な「供給・開発契約」を締結しているという。もちろん、これによってApple Watchに採用されることが確定したわけではないが、センシング技術の進歩には目をみはるものがあり、ウェラブルデバイスから得られるデータとそれを分析するヘルスケアの分野はさらに進歩をしそうだ。
ニュースソース
- アップルのサプライヤーが非侵襲性の血糖値測定装置を発表。将来のApple Watchに搭載か[Engadget日本版]