中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/3/24~3/31]

総務省が「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」を発表 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 総務省が「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」を発表

 総務省が「デジタル田園都市国家構想」の実現のための通信インフラ整備計画「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」を公開した(ケータイWatch)。骨子としては「光ファイバー、5G、データセンター/海底ケーブル等のデジタル基盤が不可欠である」という観点から、これらを「スピード感を持って推進」すること、「地域協議会を開催して、自治体、通信事業者、社会実装関係者でのマッチングを推進」すること、そして「2030年代のインフラとなる『Beyond 5G』の研究開発を推進」するという点である。

 具体的に、5G関連においては「トラフィックの増大への対応として、周波数が現状の3倍となるよう、新たな5G用周波数を割り当てる」として、「2.3GHz帯を2022年度の早い段階で実施する」としている。短期的には「2023年度末までには4Gエリア外の人口をゼロとして、ニーズのあるほぼ全てのエリアに5G親局(高度特定基地局)の全国展開の実現を目指す」とし、「2023年度末時点で、5G人口カバー率は全国95%、2025年度末には97%、2030年度末に全国・各都道府県で99%への到達」を目標としている。

ニュースソース

  • 5Gカバー率を23年度末に全国95%へ、政府が「デジタル田園都市国家構想」に向け5G整備など前倒し[ケータイWatch

2.アプリ内課金の縛りからの解放――外部リンク設置を容認へ

 アップルは日本において、コンテンツ配信サービスなどで利用される「リーダーアプリ」に「App Store」外部へのリンクを含めることを容認するとしている(CNET Japan)。つまり、「ユーザーはアプリ外でアカウントの作成や管理ができるようになる」ということで、これまではアプリをApp Storeで配布すると、アップルのプラットフォーム内での課金しか選択肢がなかったが、今後はその縛りがなくなることを意味するという。これは日本の公正取引委員会との和解により2021年に発表された事項であり、今後は、リーダーアプリにおける課金方法の選択肢を広げることになる。

 また、米国では「GoogleとSpotifyが共同で、サブスクリプション料金の支払いについて、新しいシステムを導入すると発表」している(Impress Watch)。こちらも「Google Play以外の支払いも選べるようにすること」で、具体的な導入時期は2022年後半からとなっている。

 いずれも、巨大な市場へと成長した「アプリ」のなかでの「デジタルコンテンツへの課金」について、選択肢が増えることになり、大手IT企業による独占市場であると批判され、たびたび問題となってきた状況から、健康的な競争へと一歩向かう。

ニュースソース

  • アップル、リーダーアプリで「App Store」外部へのリンクを設置可能に[CNET Japan
  • 「GoogleとSpotify合意」でアプリストアはどう変わるのか[Impress Watch

3. 交通関連サービスのトランスフォーメーション

 これほどまでに多くの人がスマートフォンでデジタル情報を活用する社会になって、なんとなくできてもよさそうなのにできていなかった交通関連サービスが充実してきた。

 1つは、Googleマップから新幹線や特急の予約をすることだ。JR東日本は「(同社が提供する)列車予約サービス『えきねっと』とグーグルが提供する『Googleマップ』が連携し、Googleマップで検索した列車をそのままえきねっとで切符を購入できるサービス」を開始した(ケータイWatch)。ちょっとしたことかもしれないが、こうしてそれぞれのサービスが連携することは利便性につながると思う。ほかにも都度アプリを切り替えていたような個別のサービスがつながる可能性はありそう。

 また、東京メトロは「東京メトロmy!アプリ」で、遅延やエレベーターの利用を考慮したルート案内などの新機能を追加した(Impress Watch)。エレベーターを考慮した移動ルートはバリアフリーへ向かう1つの要素として期待できそうだ。

 そして、栃木県日光市の社寺エリアなどの混雑状況をリアルタイムに検知して、配信するサービスも始まった(INTERNET Watch)。「日光東照宮の表参道や、周辺の駐車場などの混雑状況をスマートフォンやPCから確認できる」としている。これは株式会社バカンが提供するサービスで、「対象のスポットに屋外カメラおよびボタン型のIoTデバイスを設置し、AIによる映像解析によりリアルタイムの混雑状況を検知し、配信する。また、ボタン型デバイスにより、工事などをせず簡単に混雑の可視化が可能になる」というもの。これまでもライブカメラなどで状況が確認できる観光地はあったが、こうした仕組みを使って的確な配信が普及してもよさそう。そして、大手コインパーキングのように地図上で(できれば地図アプリで)状況が表示できるようにならないものか。

ニュースソース

  • GoogleマップからJR東の新幹線/特急の予約ができるように[ケータイWatch
  • 東京メトロ、遅延を考慮し、階段を避けるルート案内[Impress Watch
  • 日光東照宮や駐車場で、現在の混雑状況が分かり「密」を避けられるサービス提供開始 有名観光地の混雑状況をリアルタイムに可視化[INTERNET Watch

4. ウクライナ情勢と情報通信サービスのまとめ

 今週もウクライナ情勢をめぐる情報通信サービスの動向をまとめておく。

 米連邦通信委員会(FCC)がロシアのセキュリティソフトベンダーであるカスペルスキーを国家安全保障に対する脅威と見なす通信機器・サービス業者のリストに追加したと報じられている(ロイター)。こうした判断の背景にはウクライナ情勢があるものとみられる。なお、同時にチャイナ・テレコム、チャイナ・モバイルという中国系企業についても、同様のリストに追加したとしている。このリストには、昨年、ファーウェイやZTEらの中国系の5社も認定されている。

 Spotifyはロシアでの同ストリーミングサービスへのアクセスを停止する(TechCrunch日本版)。これはSpotifyが「ロシアで信頼できる独立系ニュースや情報を提供するために、ロシアでのサービス運用を維持することが極めて重要だ」としている一方、「ロシアで新たに導入された言論の自由に対する劇的な規制」が原因であるとしている。

 また、グーグルによれば、ロシアにおいて「Googleニュース」へのアクセスが制限されているということだ(CNET Japan)。

 こうしたロシア政府の情報配信に対する規制を回避する目的で、「Lantern」というインターネット検閲回避サービスが「ロシア政府によるインターネット遮断の影響を受けないP2P型ネットワーク」をロシア国内に構築中だと報じられている(Gigazine)。インターネット上での情報統制とその回避という情報戦が活発になっている。

 そして、ウクライナ支援策としては、SpaceXのイーロン・マスクCEOは衛星インターネットの通信網「Starlink」をウクライナ向けに提供している(Gigazine)。そして、3月19日までに数千台にも上るStarlink用の地上アンテナが提供されているという。こうしたこともあり、激しい戦禍であっても、ウクライナとの通信インフラが完全に途絶えることはないとみられる。

ニュースソース

  • 米当局、カスペルスキーや中国移動を「安保上の脅威」と認定[ロイター
  • Spotify、言論弾圧を受けロシアでのサービスを停止へ[TechCrunch日本版
  • インターネット検閲が進むロシアで検閲回避ネットワークを構築する動きが進んでいる[Gigazine
  • ロシア、「Googleニュース」へのアクセスを制限[CNET Japan
  • 衛星インターネット「Starlink」のアンテナ数千台がウクライナに到着、全世界の加入者数は25万人を突破するも値上げが実施される[Gigazine

5. 日々、深刻化するサイバーセキュリティ問題

 ここのところ毎週のようにまとめている日本国内のセキュリティ問題だが、収束する気配は見られない。広く消費者をターゲットとしたフィッシング詐欺のみならず、自動車関連企業のような国際企業をターゲットとし、その事業継続性にも影響を与えるようなランサムウェア攻撃なども報じられているところだ。

 経済産業省、総務省、警察庁、および内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について」との文書を公表している(INTERNET Watch)。その背景にはウクライナをめぐる情勢も関係があるという見立てもあり、サイバー攻撃に対するリスクに警戒を続ける必要があるということだ。

 フィッシング詐欺として注意すべきは、ファミペイをかたる事案(フィッシング対策協議会)、出前館をかたる事案(INTERNET Watch)、えきねっと、モバイルSuicaなどの交通系サービスをかたる事案(ITmedia)などが報じられていて、ユーザーであれば本物と気付かずにアクセスをしてしまいがちなシナリオである。

 さらに、「ウェブスキミング」という手法(INTERNET Watch)も報じられていて、ユーザーが注意するということだけでなく、安心・安全なインターネット環境を構築するための具体的な技術的施策も必要そうだ。

ニュースソース

  • 現下の情勢を踏まえサイバーセキュリティ対策の強化を、内閣サイバーセキュリティセンターと中央省庁が注意喚起 一般的な対策に加え、ランサムウェア、Emotetへの対策を呼び掛け[INTERNET Watch
  • ECサイトを改ざんしてクレジットカード情報などを窃取する「Webスキミング」に注意![INTERNET Watch
  • FamiPay をかたるフィッシング[フィッシング対策協議会
  • シャープ、Instagramで複数のなりすましアカウント確認、注意喚起[ITmedia
  • 件名『【重要】「出前館」 アカウントの自動退会処理について』、出前館をかたるフィッシングメールに注意 自動退会処理を行うなどとして偽サイトに誘導[INTERNET Watch
  • 交通事業者かたるフィッシングメール相次ぐ えきねっと、モバイルSuica、JR西の成り済ましに注意[ITmedia
  • 電通大がEmotet感染、メールサーバがマルウェア送信に悪用され謝罪[ITmedia
  • Emotet対策、マクロ付きファイルの受信拒否も一手--デジタルアーツが解析[ZDnet Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。