中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/3/31~4/7]
「Web3.0」を成長戦略の柱に――自民党が提言 ほか
2022年4月11日 06:00
1. 「Web3.0」を成長戦略の柱に――自民党が提言
政府と自民党ではデジタル政策が活発に議論されている。
自民党のデジタル社会推進本部(本部長・平井卓也衆院議員)の下のNFT政策検討PT(座長・平将明衆院議員)が「Web3.0(ウェブスリー)」時代を見据えた「新たなデジタル戦略に関する提言(案)」を取りまとめた(自由民主党)。また、3月29日~31日に開催されたフィンテックコンファレンス「FIN/SUM 2022:Fintech Summit」(金融庁・日本経済新聞社共催)でも、平将明氏がこの案の内容を中心に、NFTやWeb3.0(Web3)について語った(INTERNET Watch)ことが報じられている。この提言(案)の中では「Web3.0時代の到来は日本にとって大きなチャンス。しかし今のままでは必ず゙乗り遅れる」という危機感を示し、国家戦略の策定・推進体制の構築、NFTビジネスの発展に必要な施策、コンテンツホルダーの権利保護に必要な施策、利用者保護に必要な施策、NFTビジネスを支えるBCエコシステムの健全な育成に必要な施策、社会法益の保護に必要な施策という6つのテーマについて提言をしている。
Web3については、いまだ抽象的な概念が先行していると感じている人も多く、技術の発展途上にあり、具体的なサービスとしてに実装はこれからで、そのイメージが十分に固まっていないという見方も多い中、国の施策としてはかなり早いタイミングと感じるが、こうしたことをテーブルに上げることも広く概念を共有する上での重要な活動ともいえそう。
デジタル庁では「デジタルを活用する未来に向けて」というドキュメントを公開している(デジタル庁)。これは「一人ひとりが゙よりよく暮らしていくために、どのようにデジタルを活用していくことができるのかについて考え、話し合い、実践していくための考え方を28のことばでまとめたもの」と説明している。そして「一人ひとりがもつ多様性を出し合い、ともにデジタルを活用する未来について考えていくためのツール(きっかけ)」になることが意図されているようだ。
岸田総理大臣は「地方のデジタル化を進めて都市との差を縮める革新的な取り組みを全国から募集して表彰する「Digi田甲子園」を開催する方針」を示している(ITmedia)。地域間競争の促進か。
さらに、岸田総理大臣は「センサー、ドローン、AI(人工知能)診断、ビッグデータ分析など、あらゆる技術を活用するための『テクノロジーマップ』を整備してください」と、デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)の会合で牧島かれんデジタル相らに指示したことが報じられている(日経XTECH)。テクノロジーマップとは「デジタル技術と規制見直しの関係を整理」したものとされている。
ニュースソース
- 「Web3.0」をわが国の成長戦略の柱に NFT政策検討PTが提言(案)を取りまとめ[自由民主党]
- 「岸田首相の“新しい資本主義”の柱にWeb3.0を」自民・平将明氏らがNFTセッションで提案~「FIN/SUM 2022」レポート[INTERNET Watch]
- 「デジタルを活用する未来に向けて」を制作しました[デジタル庁]
- デジタル化の取り組み競う「甲子園」、岸田総理が開催表明 全国の先進事例を表彰[ITmedia]
- 首相直々で「テクノロジーマップ」作成へ、スタートアップの技術で規制見直しが進むか[日経XTECH]
2. イーロン・マスク氏がTwitterの株式を取得し、取締役に就任
イーロン・マスク氏がTwitterの株式を取得して大株主となり、取締役に就任したと報じられている(ケータイWatch)。その上で、同氏はTwitterのアカウントで「Do you want an edit button?(編集ボタンほしい?)」とツイートした。これに対して、TwitterのCEOであるアグラワル氏は、「マスク氏がTwitter氏で実施している編集機能導入の賛否を問うアンケートを引用リツイートし、『この調査結果は重要になる。慎重に投票を』」とコメントしている(ケータイWatch)。すでに、編集機能の実装が進み、テスト段階にある(ケータイWatch)。一方で、ツイートが拡散されたのち、元のツイートを悪意を持って改変することなどにつながるのではないかというマイナス面への懸念も指摘されている。
3. デジタル化を見据えた企業の協業と組織改革の動向
新年度を迎え、各企業の組織改革が発表されている。いずれもデジタル技術を核とした新製品、新サービス、さらにはデジタルトランスフォーメーションを念頭に置いたものといえよう。
ソニーは「ソニーモビリティ株式会社」を設立し、「モビリティの進化への貢献に向けたモビリティ向けサービスプラットフォームの開発、事業化とともに、自律型エンタテインメントロボット『aibo』やプロフェッショナル向けドローン『Airpeak』、エンタテインメント車両『Sociable Cart:SC-1』などの事業も展開する」としている(CNET Japan)。
トヨタコネクティッドと日本マイクロソフトはAIやIoT、コネクティッドカーを組み合わせたプロジェクトで協業することを明らかにした(ITmedia)。
パナソニック オートモーティブシステムズ(旧 パナソニック株式会社 オートモーティブ社)はパナソニックグループの持株会社制移行に伴う会社分割により、新会社となったことを発表している。「一人ひとりのより良いくらしの実現のため、持続可能なモビリティ社会を創造する」ことをミッションに、「愛を持って人に寄り添い、卓越した技術と知恵で新たなユーザー価値を創造し、より快適で安心安全な移動空間の実現により、人に幸せをもたらし続ける最高のチーム、最高のパートナーになる」ことをビジョンとして掲げている(CNET Japan)。
また、パナソニック コネクトは、B2B向けソリューション事業などを行うことを目的としてスタートした。樋口社長兼CEOは「パナソニック コネクトが持つテクノロジー、エッジデバイス、ソフトウェア、コンサルティング、サービスといったケイパビリティにより、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメントなどのお客さまの現場でお役立ちをし、お客さまと一緒にソリューションを開発、提供していくことになる」と述べた(クラウドWatch)。
ニュースソース
- 「ソニーモビリティ株式会社」設立--AIやセンシング技術を活用、ドローンに「aibo」も[CNET Japan]
- トヨタコネクティッドとマイクロソフト、AIとコネクティッドカーを組み合わせたプロジェクト推進[ITmedia]
- パナソニック オートモーティブシステムズ、新会社として事業を開始[CNET Japan]
- パナソニック コネクト株式会社が発足、2024年度に売上高1兆1700億円を目指す[クラウドWatch]
4. 春のイベントカレンダー:アップル、マイクロソフト、グーグル、メタ、E3
コロナ禍2年目を迎える春のコンファレンスシーズンのスケジュールが決まりつつある。
アップルは、開発者向けコンファレンス「WWDC」を6月6日~10日にオンラインで開催する(ケータイWatch)。OSの次期バージョンの発表などが期待される。
グーグルの開発者向けコンファレンス「Google I/O」は、5月11日・12日に米国カリフォルニア州のリアルイベント、そしてオンラインで開催すると発表している(CNET Japan)。
マイクロソフトの開発者向けコンファンレンス「Build」は、5月24日からオンラインで開催される(ZDnet Japan)。クラウド、アプリ、Windowsなどの新たな情報が発表されることが期待される。
一方、メタ(旧フェイスブック)は開発者会議「F8」を今年は開催しないと報じられている。その理由として「メタバースの構築など、開発を進めている他のプロジェクトに注力する」ことだという(CNET Japan)。
展示会でも、ゲーム/エンターテインメントの展示会「E3」は今年も開催中止を発表している(CNET Japan)。
いまだ国際的にはコロナ禍が収束していないことから、国際的なイベントは開催が困難であるとみられるが、オンラインの方が旅費と移動時間がかからずに、世界中の人が最新情報を入手できるとして、そのメリットに期待している人も増えている。そして、最近では同時通訳のソフトウェアなども一般化しつつあるので、言語の壁も下がってきた。
ニュースソース
- アップル、開発者向けイベント「WWDC」オンラインで6月6日~10日開催[ケータイWatch]
- ゲーム見本市「E3」、2022年は開催中止に[CNET Japan]
- マイクロソフトの開発者会議「Build 2022」、米国時間5月24日~26日にオンラインで開催[ZDnet Japan]
- 開発者会議「Google I/O」、5月11~12日に開催へ[CNET Japan]
- Meta、2022年は開発者会議「F8」開催せず--メタバース構築にフォーカス[CNET Japan]
5. 今週のセキュリティインシデント:デジタル庁で再び漏えいか
この1週間で報じられているセキュリティに関する事案をまとめておく。
デジタル庁に関する事案は2件が報じられている。1つは3月30日に発生している「事業者向け共通認証サービス『gBizID(GビズID)』の不具合により、利用者の個人情報漏洩」があったとされる件(日経XTECH)、もう1つは4月6日に「同庁が運用する電子政府の総合窓口『e-Gov』利用者サポートデスクで、メール誤送信があった」とされる件(日経XTECH)である。いずれもソフトウェアの不具合あるいは運用上のミスとみられ、外部からの攻撃ではない。
また、外部からの不正アクセスの事案として、月桂冠のサーバーへの攻撃が報じられている(ITmedia)。「商品の受発注や出荷に関わるシステムに障害が発生し、販売に影響が出ている」とされている。
さらに、フィッシングメールではファミペイを語る事案が報告されている。フィッシング対策協議会では注意すべきメールの「件名」の例を示している(INTERNET Watch)。
そして、国立がん研究センター東病院では「同病院が研究代表と研究事務局を担当する臨床研究の被験者情報が流出」したと発表をしている(日経XTECH)。こちらのきっかけは「テレワーク中の職員の端末にウイルス感染を伝えるポップアップが表示され、職員がその指示に従うと金銭を要求された」ことであるとしている。
今後もこうした手法での攻撃は続くものと思われることから、全ての組織、個人で一層の留意と対策が必要になる。
ニュースソース
- デジタル庁でまたメール誤送信、問い合わせ対応委託先のNTTデータがミス[日経XTECH]
- デジタル庁の認証サービス「GビズID」で個人情報漏洩、プログラムのバグが原因[日経XTECH]
- 月桂冠に不正アクセス 受発注・出荷システムに障害 販売に影響も[ITmedia]
- 件名『【重要なお知らせ】ファミペイ ご利用確認のお願い』など、FamiPayをかたるフィッシングメールに注意 カードの利用確認などとしてフィッシングサイトに誘導[INTERNET Watch]
- 国立医療機関から被験者情報が流出か、ウイルス感染の偽警告に従い乗っ取られる[日経XTECH]