中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/3/17~3/24]
ウクライナ情勢と情報通信業界の動向――デジタル戦の様相も強まる ほか
2022年3月25日 14:00
1. ウクライナ情勢と情報通信業界の動向――デジタル戦の様相も強まる
今週も、緊迫が続くウクライナ情勢に関係する情報通信業界の動向をまとめておく。
ロシア側からの情報をフェイクであるとして遮断するインターネットメディア側と、国がコントロールできないSNSで流れる情報を遮断するロシア側との応酬が繰り広げられている。
メタ(旧フェイスブック)はウクライナ大統領に関するディープフェイク動画を削除したと発表(CNET Japan)したが、ロシア側はメタを過激派と認定し、FacebookとInstagramの利用を禁止した。そして、グーグルなどはロシア政府系メディアを排除した(ロイター)と報じられている。
また、金融分野ではPayPalがウクライナ人への直接送金を可能にするサービスを拡充した(TechCrunch日本版)。
ウクライナのデジタル変革省は暗号資産を合法化すべく動き出している。ミハイロ・フェドロフ副首相によれば「戦争が始まり、暗号資産はウクライナ軍支援のための強力なツールになった。3週間以上続く戦争で、暗号基金は5400万ドル(約64億円)を調達した」としている(ITmedia)。さらに、同副首相は「IT軍」を率いてサイバー攻撃を仕掛けたり、多国籍企業にロシアをボイコットするよう圧力をかけているとされている(ITmedia)。この記事によれば、現在、ウクライナとの通信が完全に途絶えていないのは、「Teslaのマスク最高経営責任者(CEO)に対し、マスク氏が率いる宇宙開発Space Xを通じた衛星回線の提供を呼びかけた。マスク氏はこれに応じ、端末を送った」という背景もあるようだ。そして、そのためのアプリのダウンロード数も急上昇しているという(Gizmode)。
一方で、ロシア軍のウクライナ侵攻をきっかけに、サイバー犯罪集団においても、親ロシア派と親ウクライナ派に分かれる「前例のないイデオロギー分断」が生じているという調査レポートについて報じているメディアもある(ITmedia)。
日々、ニュースで報じられる爆撃の話題だけでなく、可視化されていないサイバー空間での闘争もこれまでにない様相を呈しているといえよう。
ニュースソース
- PayPalがウクライナ人への直接送金ができるようサービスを拡充した[TechCrunch日本版]。
- Meta、「ウクライナ大統領に関するディープフェイク動画を削除」と発表[CNET Japan]
- ウクライナ、暗号資産を合法化[ITmedia]
- ウクライナ侵攻で、闇社会にも分断 親ロシア派と親ウクライナ派に分かれるサイバー犯罪集団[ITmedia]
- ウクライナ副首相のデジタル戦 暗号資産で資金募る[ITmedia]
- グーグルなど米ネット大手、ロシア政府系メディア排除を強化[ロイター]
- ロシアがMetaを過激派認定、FacebookとInstagramを禁止する一方WhatsAppは除外[TechCrunch日本版]
- ロシアからのインターネット接続は維持されている--ThousandEyes[ZDnet Japan]
- ロシアとウクライナ間のサイバー攻撃で利用されるクラウドネイティブテクノロジー[ZDnet Japan]
- Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従[TechCrunch日本版]
- Twitterのウクライナ情勢への取り組み、最新情報[ケータイWatch]
- ロシアのネット遮断で“別のビットコイン”が生まれるは本当? 分断が生むブロックチェーンへの影響[ITmedia]
- 衛星インターネット「スターリンク」アプリが1日で最多2.1万DL達成。過去2週間では9.8万回だって[Gizmode]
2. 「ネットを活用していないシニア層」と「SNSを生活情報の収集基盤とする若年層」
ウイルス対策ソフトを提供するアバストの「シニア層のインターネットの利用頻度に関する調査」によると、「国内の66歳以上の3人に1人(33%)がネットを全く利用していない」ことを指摘している(ITmedia)。一方、NTTドコモ「モバイル社会研究所」の「週1回以上アクセス(視聴)して日常的に生活情報を得ているメディア」に関する調査では、10代から20代のおよそ6割はSNSで生活情報を取得していることを指摘している(ITmedia)。
情報収集のチャネルについて、世代間で二極化する結果となっている。これは想定の範囲内ではあるが、こうした特性がさらに強まると、日常の生活行動様式やコミュニケーションの頻度や内容にも影響が多かれ少なかれ生じていくことになるだろう。
3. 狙われる自動車業界――続くランサムウェア被害
ここのところトヨタ自動車関連の企業がランサムウェアの被害に遭ったことが続けて報じられてきたが、次はブリヂストンの米国事業を統括する子会社がランサムウェアの被害を受けている(ITmedia)。一連の動きは偶然なのか、意図的なことなのかは知る由もないが、大手の国際企業が狙われているということは他社も留意をすべきだ。
また、不正アクセスも続いている。東映アニメーションで不正アクセスを検知し、システムを停止する対応をした。これを受けて、全国公開を予定していた映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」の公開日を延期すると発表している(ITmedia)。森永製菓でも不正アクセスがあったことを発表している(INTERNET Watch)。
そして、フィッシング詐欺も巧妙になっている。ユーザー数も多いモバイルSuicaに関するメールには留意をする必要がありそうだ(INTERNET Watch)。
加えて、ウクライナ情勢に便乗するネット詐欺も報告されている(INTERNET Watch)。
ニュースソース
- ウクライナ侵攻に便乗、SNSやクラウドファンディングなどで寄付を募るネット詐欺に注意![INTERNET Watch]
- ブリヂストンにランサムウェア攻撃 クルマ関連企業へのサイバー攻撃相次ぐ[ITmedia]
- 映画「ドラゴンボール」が公開延期に 東映アニメへの不正アクセスが映画作品にも影響[ITmedia]
- 件名『「モバイルSuica」お支払い情報更新』などのメール、JR東日本をかたるフィッシング詐欺に注意! 「オートチャージの無効を検出」などとして偽サイトに誘導[INTERNET Watch]
- 森永製菓で不正アクセス、「森永ダイレクトストア」顧客の個人情報流出の可能性 流出の痕跡は未確認も「可能性を完全に否定することは難しい」として発表[INTERNET Watch]
4. 今週のNFT動向:ザッカーバーグCEO、InstagramにNFTを導入すると発言
国内外ともにNFTに対する大手企業の動きが報じられている。
海外では、メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグCEOが、InstagramにNFTを導入すると発言したことが注目されている(CNET Japan)。具体的にどのように利用できるのかは明らかではないが、すでに、SNSとしてはTwitterがNFTをプロフィール画像として表示できるようにすると発表している。
また、音楽ストリーミングのSpotifyは、関連する技術者の求人を進めていることから、NFTへの事業拡大を目指しているのではないかとされている(BUSINESS INSIDER)。
国内では、「LINE NFT」が4月13日に開始されることが報じられている。ローンチのタイミングでは「吉本興業やB.LEAGUE、スクウェア・エニックスなど計17コンテンツと連携し、エンターテインメント、スポーツ、ゲーム、アニメ、アーティスト、キャラクター、イベントの計7ジャンル、100種類以上のNFTを発売する」ということだ(CNET Japan)。
また、ローソンエンタテインメントは、SBINFTと提携することで、NFTサービス「LAWSON TICKET NFT」を今春から開始する(ガジェット通信)。そのメリットとして、「実際のイベント会場の座席情報などが記載されたチケットを、保管可能な記念チケットNFTとして販売することができます」としている。
実証実験としては、電通グループ、シビラ、ソニーの3社が、個人の学びや活動実績をデジタル化してNFTで記録し、それを管理することを共同で実施することが発表されている(CNET Japan)。
ニュースソース
- NFTのマーケットプレイス「LINE NFT」が4月13日に開始--2つの課題を解消へ[CNET Japan]
- デジタルチケットをNFT化! ローソンとSBINFTが提携、唯一無二の思い出をずっと手元に[ガジェット通信]
- 卒業証明書をNFTで発行--「学びの軌跡」をデジタルで可視化する実証実験[CNET Japan]
- MetaのザッカーバーグCEO、NFTを「Instagram」に導入すると発言[CNET Japan]
- Spotifyの求人広告に見るNFTへの野心…Web3の経験を持つ人材を募集[BUSINESS INSIDER]
5. 文藝春秋、デジタルに特化する「Bunshun Tech ZERO」を設立
文藝春秋は、「紙媒体の展開を通して蓄積してきたコンテンツ製作のノウハウをデジタル分野に活用することで、新たな情報やエンターテインメントを提供する」ことを目的とする新会社「Bunshun Tech ZERO」を設立した(Web担当者フォーラム)。
これまで、「文春オンライン」「Number Web」「CREA WEB」を展開し、とりわけ「文春オンライン」は2021年8月には自サイトのページビューが6億3094万を記録するなど、ウェブビジネスが急速に拡大していることを踏まえ、技術人材を新会社に集約させるという。
電子コミック以外の分野でも出版業界のデジタルコンテンツ対応が本格化している。
ニュースソース
- 文藝春秋がデジタル関連の開発・ビジネス特化の新会社「Bunshun Tech ZERO」設立[Web担当者フォーラム]