中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/7/28~8/4]

大手IT企業の決算が出そろう――広告市況の影響を受ける ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 大規模通信障害時の事業者間ローミングを検討へ

 KDDIの大規模通信障害を受け、金子恭之総務大臣は電気通信事故検証会議を可能な限り早期に開催し、速やかに検証作業を進めていく意向を表明した(ケータイWatch)。また、大規模通信障害時にも緊急通報ができる事業者間のローミングを「速やかに検討する」としている(ケータイWatch)。KDDIの髙橋誠社長も、「東日本大震災のあと、携帯電話会社の間で実現できていなかったことのひとつ」とし、「実現する方向で考えたい」とコメントしている(ケータイWatch)。

 もちろん、技術的な課題も多いと考えられるが、将来的にも安定的な情報通信基盤を運用する上で、個別の事業者ごとに「運用の努力する」だけでなく、社会として安定を維持する方法を模索する意義はあるのではないか。

 一方、KDDIが通信障害の“おわび”としてユーザーに返金すると発表したが、これに便乗するフィッシング詐欺には注意を呼び掛けている(ITmedia)。

ニュースソース

  • 金子総務大臣、KDDI通信障害の電気通信事故検証会議について「可能な限り早期に開催」[ケータイWatch
  • 金子総務大臣、大規模通信障害時の事業者間ローミング「速やかに検討する」[ケータイWatch
  • KDDI髙橋社長、大規模障害での緊急通報ローミング「各社前向き、KDDIも積極的に取り組む」[ケータイWatch
  • KDDIの“200円返金”便乗詐欺に注意 本文にリンクがあるSMSはニセモノ[ITmedia

2. 「漫画村」に19億円の損害賠償求め提訴――KADOKAWA・集英社・小学館

 コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、KADOKAWA、集英社、小学館の3社が海賊版サイト「漫画村」の運営者に対し、その損害の一部として、3社・17作品について総額19億2960万2532円の賠償を求める提訴をしたと発表している(Impress Watch)。被害の具体的な規模は次のとおりだと報じられているが、その規模の大きさの認識を新たにさせられる。もちろん、ここに含まれない出版社も少なからず被害があるとみられ、被害全体の規模はこれだけにとどまらないのはいうまでもない。

  1. 「漫画村」の2017年6月から2018年4月までのサイトアクセス総数は5億3781万であったと推計される
  2. アクセスした利用者が1アクセスで漫画コミックス1巻を閲覧したと仮定すると、当該期間で5億3781万巻分の閲覧があったと推計される
  3. 「漫画村」には最大で7万2577巻が掲載されていたことから、1巻あたりの平均閲覧数は7410と推計される(5億3781万巻分の閲覧÷7万2577巻=7410)
  4. 「漫画村」へ掲載されていた請求対象作品の各巻ごとに、平均閲覧数である7410と各巻ごとの販売価額を乗じて全て足し合わせ、作品ごとに損害を算定
  5. 上記4.で求めた作品ごとの損害額を17作品全てで計算した上で足し合わせ、総額を算出

ニュースソース

  • 「漫画村」に19億円の損害賠償求め提訴 KADOKAWA・集英社・小学館[Impress Watch

3. 日本のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算を発表――総務省

 総務省は固定系ブロードバンドインターネットにおけるトラヒック(通信量)の実態を把握するため、インターネットサービスプロバイダー(ISP)9社、インターネットエクスチェンジ(IX)5団体、研究者の協力を得て、年に2回、トラヒックの集計・試算を行い、その結果を公表している(総務省)。それによると、2022年5月の日本の固定系ブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラヒックは「推定で約26.0Tbps(1契約1か月当たり約187GB)であり、前年同月比8.8%増」になったという。

 経年での変化でみると、2020年に急激な増加がみられるが、まさに新型コロナウイルス感染症の蔓延によるリモートワークの増加とタイミングは一致する。今後もリモートワークの定着、動画コンテンツの視聴拡大など、回線ニーズの増加は続くものとみられる。

ニュースソース

  • 我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算[総務省

4. 大手IT企業の決算が出そろう――広告市況の影響を受ける

 先週のこのコーナーでは、メタ(旧フェイスブック)、アルファベット(グーグルの親会社)、マイクロソフト、ツイッターという大手IT企業4社の四半期決算について紹介した。今週はアップル、そしてアマゾンの四半期決算が報じられている。

 それによると、アップルは売上高は前年同期比2%増と、第3四半期としては過去最高の売上を記録したという。また、「アクティブデバイスのインストールベースは、全ての地域と製品カテゴリーで過去最高」となったと発表している。製品カテゴリー別の売上増減率は、iPhoneが前年同期比約3%増、Macが約10%減、iPadが約2%減、ウェアラブル・ホームデバイスとアクセサリーが約8%減、サービスが約12%増としている。ハードウェア売上よりもサービスの増加率が目を引く(ケータイWatch)。

 アマゾンは、売上高は前年同期比7%増の一方、2四半期連続の純損失となった。これには「出資している米電気自動車企業Rivian Automotiveの株価急落」も含まれているとしている。クラウドサービスのAWSの売上高は33%増、営業利益は36%増と好調が続き、主力のオンラインストア(ビデオやゲーム、Kindleなどのデジタルコンテンツを含む)の売上高は4%減となった(ITmedia)。広告収入は18%増と好調だった。アルファベット、メタが広告市況の影響を受けていることとは対照的な結果である。

 そのようななか、メタのマーク・ザッカーバーグCEOは「事業計画があまりに楽観的過ぎた」と従業員集会で自らが見通しを誤ったと認めたことが報じられている(ロイター)。

ニュースソース

  • アップルの2022年度第3四半期決算、売上高は前年同期比2%増[ケータイWatch
  • ザッカーバーグ氏、メタ事業計画が「楽観的過ぎた」と認める[ロイター
  • Amazon、2四半期連続の赤字 AWSの営業利益は36%増[ITmedia

5. お守りをNFT化――検見川神社が開始

 ついにお守りまでNFT化された。始めたのは千葉市の検見川神社と古事記project株式会社。記事によると「もともとお守りは一定期間が経過することでご利益が切れ、そのたびに神社に返納してお焚き上げをするという習わしになっているが、今回の『お守りNFT』は1年たつと自動的にお焚き上げされる機能が組み込まれており、返納が不要という仕組み」だという(INTERNET Watch)。

 また、DAZNは、ミクシィと共同開発・運用を行うスポーツ特化型NFTのマーケットプレイス「DAZN MOMENTS」で「セカンダリーマーケットプレイス」を開始すると報じられている。「保有するNFTコンテンツをユーザー同士で販売、購入可能で、売上金はサービス内通貨の『MIXI CASH』のほか、日本円として銀行口座への払い出しも可能になる」としている(Impress Watch)。

 高級ジュエリーブランドのティファニーは「NFTiff」コレクションを発表した。「米国時間8月5日に250個限定で発売し、価格は1個30イーサ(約650万円)」だという(CNET Japan)。

ニュースソース

  • DAZN、ユーザー同士のNFT売買を今秋開始[Impress Watch
  • 期限が過ぎたら自動的にお焚き上げ。お守りをNFT化して頒布する試み、検見川神社が開始[INTERNET Watch
  • ティファニーがNFTに参入、「NFTiff」を約650万円で発売へ[CNET Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。