中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/7/6~7/12]

分散型SNSを目指す「Threads」 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. メタが新SNS「Threads」をリリース

 7月6日、メタの新たなSNSサービス「Threads(スレッズ)」がリリースされた(ケータイWatch)。「サービス提供開始からわずか5日で利用者数が1億人を突破し、史上最速ペースで成長したアプリとしての新記録を樹立した」とも報じられている(CNET Japan)。Instagramのフォローを引き継ぐことができるというあたりがユーザーの拡大に奏功したとみられるが、そもそもTwitterに対するさまざまな不満が高まっていたタイミングでのリリースということも背景にありそうだ。

 さらに、日本では日本音楽著作権協会(JASRAC)と利用許諾契約を締結していて、「ユーザーは、個別の許諾なく『Threads』でJASRAC管理楽曲を活用したものをアップロードできるようになる」と発表されている(ケータイWatch)。

 メタの狙いは「優しさが集まる場所にしたい」ということだ(Gizmode)。「Twitterのような炎上するような議論だったり、強めのニュースが並ぶような場所にはしたくない」とそのビジョンが報じられている。例えば、表示アルゴリズムは「Threadsのフィードには政治の話や時事ニュースが流れてくることを望んでおらず、そういった話題は必然的に後ろの方へ行くようになっている」ということだ。こうしたことはSNSの差別化点の1つではあるだろうが、今後のユーザーベースの拡大にどう影響するのかは分からない。

 一方、Twitterを運営するX社は、CEOであるLinda Yaccarino氏が「Twitterのコミュニティは決して真似できない」と強気の姿勢を示し(ITmedia)、さらには「『Threads』めぐりMetaに提訴を示唆」している(CNET Japan)という状況だ。

 そんなThreadsだが、忘れてはならないこともある。それなりに個人情報が収集されているということだ。WIREDでは、スレッズがどのような個人情報を収集しているのかについて、他のSNSと比較している(WIRED)。こうしたことも念頭におき、メタが言うところの「優しさが集まる場所」がなんなのかも考えるべきか。

ニュースソース

  • Metaの新アプリ「Threads」が予定前倒しでサービス開始、Android版も[ケータイWatch
  • 「Threads」、5日で利用者1億人を突破--史上最速ペース[CNET Japan
  • Metaの「Threads」、JASRAC利用許諾契約を締結――管理楽曲を利用した動画や歌詞を投稿可能に[ケータイWatch

・トップが語るThreadsの狙い。優しさが集まる場所にしたい[Gizmode
・「Twitterのコミュニティは決して真似できない」 X社のヤッカリーノCEOがThreadsを敵視[ITmedia
・Twitter、競合アプリ「Threads」めぐりMetaに提訴を示唆[CNET Japan
・メタの『Threads』は、どんな個人情報を収集している? TwitterやBlueskyなどと比較して見えてきたこと」[WIRED

2. 分散型SNSを目指す「Threads」

 Threadsは分散型SNSを目指している。SNS用のプロトコルである「ActivityPub」と互換性を持たせる予定だという(ケータイWatch)。これが実現すれば、MastodonやWordPressのようなActivityPubプロトコルをサポートするほかのアプリとの相互運用が期待される。分散型のSNSは運営会社の一極集中での管理体制を緩和する効果があるとみられる。今後のSNSの長期的な発展のためにはこうした技術の採用も重要な流れとなりそうだ。

 なお、Mastodonの創設者・CEOであるEugen Rochko氏は「Threadsは分散型ソーシャルWebの一部になろうとしているが、Threadsとの通信を許可するかどうかはMastodonの各サーバーの運営者が決定することだ」とコメントしている(ITmedia)。

ニュースソース

  • 「Threadsはメタ初の分散型SNS対応アプリになる」、公式が説明するビジョンや最大500文字などの仕様とは[ケータイWatch
  • MetaのThreads、Mastodonなどと相互運用可能に ActivityPubプロトコル採用で[ITmedia

3. 作家がメタとOpenAIを著作権侵害で提訴

 作家のSarah Silverman氏、Richard Kadfrey氏、Christopher Golden氏は、著作権を侵害されたとしてメタとOpenAIの両社を提訴した(CNET Japan)。

 記事によれば「OpenAIの『ChatGPT』で使われる大規模言語モデル(LLM)とMetaの『LLaMa』用のトレーニング素材として、自分たちの著作権で保護された書籍を使用することに同意したことは決してないと主張」しているという。これらのLLMが、違法性の疑いのある「シャドーライブラリー」と呼ばれるアーカイブのデータを学習したものだと主張している。

 AIがどこから何を学習したのかについての透明性がないということはこれまでも指摘されてきたが、訴訟を重ねるごとに、こうしたことへの説明責任も問われるようになりそうだ。

ニュースソース

  • 作家らがOpenAIとMetaを提訴--著作権侵害で[CNET Japan

4. 魅力的な職務経歴書もAIにお任せ

 人材の流動化を進めるなか、新たなサービスが登場した。

 転職サイト「ビズリーチ」が「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」を開発したと発表している(現在はiOS版のみの提供)。「OpenAIの提供するGPTモデルを活用しており、『ビズリーチ』に登録後、簡単な質問(職種、ポジション、業務のミッション、業務領域)に回答するだけで、業務内容を自動でスピーディーに作成できる」という。この機能を利用して作成した職務経歴書により、スカウト受信数が増加したともいう(CNET Japan)。

 転職を漠然と考えている人の背中を押す効果も期待できそうだ。

ニュースソース

  • ビズリーチ、「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」を開発--質の高いマッチング機会を最大化[CNET Japan

5. Twitterが「コミュニティーノート」を正式リリース

 Twitterはツイートの内容について、ファクトチェックのような機能を提供する「コミュニティノート」機能を日本で提供開始した(Impress Watch)。

 コミュニティノートは「誤解を招く可能性のあるツイートに対し、ユーザーが協力して『役に立つノート』を追加できるという機能」で、「一般のTwitterユーザーがコミュニティノートの『協力者』として登録し、当該のツイートに対して、誤解を訂正する情報を『ノート』の形で返信する」という。「さまざまな視点かつ十分な数の協力者から評価が集まると、当該ツイートにコミュニティノートも表示されるようになる」。すでに、テスト的に運用されていたが、その有効性が確認されたとしている。

 フェイクニュースなどに対する対策としては一定の成果が期待できそうだ。一方、ここのところ話題の「誹謗中傷」的な話題についての有効性はどうだろうか。大きな課題の1つが前進したといえそうだが、さらなる工夫の必要そうだ。

ニュースソース

  • Twitter、ユーザーによるファクトチェック機能 日本で正式提供[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。