中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2023/7/13~7/19]
画像生成AIをめぐる新たな動き ほか
2023年7月24日 07:00
1. 画像生成AIをめぐる新たな動き
メタは画像からのテキスト生成にも対応した新たなAIモデル「CM3leon(カメレオン)」を発表した(Impress Watch)。これまでにもありがちの「テキストから画像」を生成するだけでなく、「画像からテキスト」の生成もできる。また、従来の手法よりも少ない計算量で学習するにもかかわらず、テキストから画像への生成の性能は優れているとされる。学習した画像のライセンスについては「ライセンスされた画像とテキストデータのみを含むShutterstockデータセットを使用している」ところは、現状の課題の解決を目指しているといえそうだ。
一方、画像生成では先を行っているアドビだが、画像生成AI「Adobe Firefly」のプロンプト入力で日本語を含む100以上の言語に対応した(Impress Watch)。こちらは得意分野を生かし、「テキストから画像」「フォントにスタイルやエフェクトを適用」などの機能を有する。実際の操作を試した記事(ITmedia)も参考になる。
アドビはフェイク画像対策などにも熱心だ。「Content Authenticity Initiative」のメディア向け説明会が開催された(Impress Watch)。一言でいうなら「画像に『来歴情報』を付与することで、コンテンツの真正性を確保するための取り組み」である。もちろん、AIとも関係がある。「このFireflyにおいては、CAIに対応済みであり、『Fireflyで作られた』旨が付記される。そのため、災害情報などで使われた場合、『これは生成AIで作られたものだ』と確認できるなど、『透明性の確保』に配慮し、偽情報対策を取っている」としている。
また、米国のストックフォト大手のShutterstockは同社のプラットフォームにおけるジェネレーティブAI画像のライセンスと使用について、企業顧客に対して完全な補償を提供し、画像の使用に関連する潜在的なクレームから保護することを発表した(The Bridge)。すでに、アドビも同様なサービスを発表していて、画像の商用利用での環境整備が一歩ずつ進む。
ニュースソース
- Meta、テキスト・画像の双方の生成に対応したAIモデル「CM3leon」[Impress Watch]
- アドビ、画像生成AI「Firefly」が日本語プロンプトに対応[Impress Watch]
- 猫を温泉に入れたい──日本語に対応したAdobeのコンテンツ生成AI「Firefly」を試してみた[ITmedia]
- フェイク画像に対抗する「来歴情報」 アドビとCAIの取り組み[Impress Watch]
- ストックフォト大手「Shutterstock」、ジェネレーティブAI推進の立場を継続——法人ユーザに補償と法的保護を徹底[The Bridge]
2.生成AIの利用について、権利者らが提訴
米国では生成AIによって受ける不利益を懸念した人たちが具体的に動き出している。
まずは、米国の作家の経済的地位向上を目的とする全米作家協会(オーサーズ・ギルド)だ(ITmedia)。OpenAIをはじめとする生成AIに取り組む企業のCEOに対して「AIのトレーニングに作家の作品を無断で使わないよう求める書簡」を公開している。これに賛同し、署名した人は8500人を超えると報じている。彼らの主張は「生成AIで著作権で保護された素材を使用する場合は許可を取得すること」「AIのトレーニングに既に使われた著作物に関し、作家に公正な補償を行うこと」「AIの出力が違法かどうかにかかわらず、出力での著作物の使用に対して作家に補償すること」の3点だ。
また、米映画俳優組合(SAG-AFTRA:Screen Actors Guild - American Federation of Television and Radio Artists)も動き出した(CNET Japan)。「AIによってエキストラの映像や肖像が永久に使い回しされる可能性がある」と懸念している。「労働者たるエキストラが自分の仕事に対して得られるはずの報酬を失うことになるため、倫理的に大きな問題をはらんでいるだけでなく、演技の将来性や信頼性に疑問を投げかける」としている。
米国では、こうした業界団体、さらには個人による活動は増加することが予想される。
ニュースソース
- 全米作家協会、生成AI大手に「トレーニングに著作を無断で使うな」公開書簡[ITmedia]
- 米映画連盟、エキストラをAIで複製し永久使用することを提案か--俳優組合はストライキ[CNET Japan]
3. 「Twitterの広告収入は50%減」(イーロン・マスク氏)
Twitterのオーナーであるイーロン・マスク氏が「広告収入が最大50%減少したことに加え、多額の負債を抱えているため、キャッシュフローは依然としてマイナスだ」とツイートしたことが報じられている(ITmedia)。Twitterの大幅な仕様変更など、市場での混乱が続くなか、ユーザーだけでなく、広告主も嫌気が差してきて、Twitterから離れてきているということだろう。プラットフォームが健康的に運営されていることも広告主としては重要な媒体選択の要素だ。CEOに迎えたリンダ・ヤッカリーノ氏は広告業界の専門家といわれるが、その手腕に期待がかかる。
ニュースソース
- Twitterの広告収入は50%減──イーロン・マスク氏がツイート[ITmedia]
4. AP通信とOpenAIが共に可能性を探る合意
AP通信とOpenAIがニュースコンテンツや技術へのアクセスを共有することに合意したと報じられている(ZDnet Japan)。商用コンテンツ提供者との協業が報じられるのはこれが初めてだろう。
記事によれば「OpenAIは、APのテキストアーカイブの一部にアクセスするためのライセンス供与を受ける。一方APは、OpenAIの技術と製品に関する専門技術を活用できるようになる。両組織は、お互いの専門能力を生かしながら、AIシステムの責任ある開発と使用を目指す意向だ」としている。
AP通信はデジタル技術の導入に熱心なようで、そうしたことも積極的にAIの技術を取り入れる背景になっているようだ。
ニュースソース
- AP通信、OpenAIに過去記事を提供--生成AIの活用検討[ZDnet Japan]
5. イーロン・マスク氏が「宇宙の本質を理解する」新会社を設立
テスラ、スペースX、そしてTwitterのオーナーとしてしばしば話題になる起業家のイーロン・マスク氏が新たな会社を設立した(CNET Japan)。社名は「xAI」で、「宇宙の本質を理解する」ことを目指すらしい。しかも、メンバーは「DeepMind、OpenAI、Google Research、Microsoft Research、Tesla、トロント大学の元従業員または職員」12名としているので、錚々たる顔ぶれといったところか。具体的な内容はまだ分からないが、何やらまた一波乱ありそうな予感だ。
ニュースソース
- E・マスク氏、新会社xAIを設立--「宇宙の本質を理解する」ために[CNET Japan]