山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

インターネット利用者、4億人を突破 ほか

2010年4月


 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

インターネット利用者、4億人を突破

 4月22日、中国政府の情報産業省にあたる「工業和信息化部」が2010年第1四半期における情報通信業の最新情報を発表した。3月末時点でのインターネット利用者は2009年末の調査(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100118_343059.html)から2000万人増加し、4億400万人になったことを発表した。この数字は普及率にして30.3%となる。

農村部のインターネット利用実態公開、依然として都市部と開き

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は15日、発展の遅れる中国農村部のインターネット利用状況をまとめた「2009年中国農村互聯網発展状況調査報告」を発表した。

 それによると中国農村部では2009年末の段階で、前年比26.3%増の1億681万人がインターネットを利用している(普及率は15%)という。対して都市部でのインターネット利用者は2億7719万人、普及率にして44.6%であり、地域間格差が改善されていない状況が浮き彫りになった。主に携帯電話利用のインターネットユーザーの急増がこの年のインターネット利用者の増加を牽引した。

 また、中国でのインターネット利用者は全体的に若者に偏っているが、農村部ではその傾向が都市部より強く、利用用途についても、農村部では都市部よりもオンラインゲームや音楽視聴などの娯楽目的の利用が多い傾向が見られた。

都市部と農村部のインターネット普及率には、依然大きな開きがある

中国政府のオンラインゲームの取り締まり範囲がSNSゲームまで拡大

 中国政府文化部は、現在オンラインゲームを運営する6企業に対して行っている「保護者による未成年者のオンラインゲーム監視プログラム(網絡遊戯未成年人家長監護工程)」を36企業に拡大することを発表した。その中にはSNSで農場ゲームなどのオンラインゲームを提供する企業も含まれていた。すなわち今後は、SNSのゲームにも中国政府からの指導が入ることになる。

 また、この中国文化部によるプログラムに参加するには1000万元以上の登録資金が必要であり、過去にこのプログラムにより中小のオンラインゲームベンダーが消えた経緯がある。今回のプログラム改正により、体力のない企業は市場から消えざるを得なくなる。

 新ルールの動きに対し、一部の中国メディアは「開発者が海外に逃げる動きが加速する可能性がある」と危惧する記事を掲載している。

KFC、先着キャンペーン“秒殺”で客寄せも、急遽中止で大問題に

 中国では、マクドナルドと並んで最も人気の高いファーストフードレストラン「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」が、中国の人気ネットサービスで客を引き寄せようとキャンペーンを実施したが、不備が原因かキャンペーンを突如終了させ、インターネットで不満が渦巻いた。

 2009年から「秒殺」という、先着で安価に購入できるサービスがオンラインショッピングサイトで集客効果があるとして話題となっているが、KFCも先着順で特定メニュー半額チケットを配布する秒殺キャンペーンを実施した。ところが、キャンペーン実施後に配布したチケットを無効にしたことから、インターネットユーザーは怒り、掲示板上には不満の声があふれた。インターネットメディアや新聞はこのトラブルを「秒殺門」と呼び、大きく紹介した。その後、KFCが謝罪のコメントを出すことで事態収拾した。

 ちなみに、ネット上ではメディアにも大きく取り上げられた秒殺門(事件)だが、リアル店舗にはその影響は少なかったのか、筆者が見かけた店舗などでは、いつも通り繁盛しているように見えた。

ネットメディア発のKFC秒殺門(事件)、果てはテレビのニュース番組まで取り上げられた人気の秒殺サービス

複数銀行のオンラインサービスを一元化した国営サイトがスタート間近

 「超級網銀(スーパーオンラインバンキング)」と呼ばれる中央銀行による、10数銀行のアカウントを1サイトで利用できるシステムが2010年8月のサービスインを目処に構築されている。このシステムにより、現状では競争状態にない各銀行のオンラインバンキングサービスでの競争が起きることによるサービス改善が期待されている。

 一方で超級網銀のリストには、お金の振り込みで多くのインターネット利用者が利用している「支付宝(Alipay)」などの電子マネーサービスが入っていない。このため、一部メディアでは、インターネット利用者の利用実態に即していない超級網銀の仕様を問題視する記事を掲載した。

青海省地震の哀悼日に多くの著名サイトがモノクロで対応

 多数の死傷者が出た4月14日の青海省地震から1週間、半旗を揚げて国全体が哀悼ムードとなった21日、各インターネットサービスもまた哀悼日を踏襲した。オンラインゲームが1日利用できなかったほか、新聞各紙のオンライン版も哀悼一色に、また各ポータルサイトや、中国国内外資問わず企業サイトもまたトップページがモノクロとなった。ネット上の特別な哀悼日におけるこうした対応は四川大地震の哀悼日に続いて2例目。

モノクロになったポータルサイト哀悼がためオンラインゲーム1日停止の告示

西南部大干ばつと青海省地震にネット利用者から多額の義援金

 中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」の支払いで主に利用される第三者支払いサービスの「支付宝(Alipay)」で、雲南省や貴州省を中心に中国西南部で発生している大干ばつや青海省地震の募金口座を開設。大干ばつ募金を開設した3月24日から4月29日までの1カ月強で約49000件、金額にして合計約460万元(約6440万円)の募金が集まり、青海省大地震においても4月29日までに約53600件、金額にして合計300万元弱(約4200万円)の募金が集まった。

支付宝(Alipay)の義援金募集サイト

中国の検索サービス利用者の検索回数はアメリカより少ないと調査報告

 中国のリサーチ会社のiResearchによる中国検索市場レポートによれば、2009年における検索サービス利用者の平均検索回数は前年度比3.5%増の636回だという。調査では、平均検索回数は848回であったアメリカよりも少ない数だと紹介している。

 iResearchは、中国での検索がアメリカより少ない原因として、中国の検索サービスがまだ発展途上にあると指摘。検索サービス市場でトップシェアの百度中国の検索結果は、googleと異なり、製品名や企業名で検索してもオフィシャルサイトがでないので、筆者自身も不便を感じながら利用しているが、そうしたことが数字に反映されたと思われる。

たとえば、百度では製品名を入力してもオフィシャルサイトに辿り着くのは難しい

「.中国」ドメインが利用可能に

 28日に「.中国」ドメインが利用可能になった。CNNICは「アルファベットの束縛からの解放」「10年来の悲願」と称し、大きくアピールした。上海万博オフィシャルサイトには< http://www.expo2010.cn/ >のほか< http://上海世博会.中国/ >でもアクセスできる(ただし、この原稿を書いている5月7日現在は、理由は不明だが後者の2バイト文字のドメインではアクセスできない状態だ)。

 前述の通り、中国では検索サービスがまだ不十分であるため、直接URLを入力することもままある。Googleが英語の苦手な中国人インターネット利用者を考慮して「谷歌」という中国名をつけたり、パナソニックに社名を変更しても中国では松下電器のままであったりする現状を見ると、今後の中国ドメインの普及次第で、積極的に直接中国語でURLを入力するインターネット利用者がますます増えるかもしれない。

三連休の「労働節(メーデー)」前に旅行用品がオンラインショッピングサイトでバカ売れ

 上海万博が始まる5月1日は、同時に3連休となる労働節(メーデー)の初日でもある。この3連休に旅行に出かける人は多く、そのため4月後半はオンラインショッピングサイトでは旅行用品がよく売れたようだ。オンラインショッピングサイトの「拍拍網」では、4月後半における旅行用品が平時の3倍の売り上げがあったという。

老舗のチャットソフトICQ、それを模倣した騰訊QQが入札もロシア企業が落札

 ネット歴10年以上の人ならば使ったことがあるかもしれないチャットソフト「ICQ」が競売にかけられ、ロシアのDigital Sky Technologies社が3億ドルで買収した。

 中国ではチャットがメール以上に使われるが、そのチャットブームを牽引する「QQ」をリリースする騰訊(Tencent)も競売に参加した。元々「QQ」は「OICQ」という名称で、ICQによく似たソフトであったため、ICQ買収を足がかりに国際展開をしようとしたのでは、という中国メディアの分析も。

 ICQのアクティブユーザー4200万人のうち、半数弱の1850万人が買収した企業のあるロシアでの利用だという。

CNNIC、動画サイトの利用実態を公表

 CNNICは4月7日、動画サイトについてまとめたレポート「中国網民網絡視頻応用研究報告」を発表した。動画サイト利用者は、インターネット利用者と同様に10代~30代がほとんどで、インターネット利用者全体よりも男性の割合が高い。また利用者の半数以上の回線速度が2M(39.8%)ないしそれ以上(14.3%)で、利用頻度はほぼ半数が1日1回(28.5%)ないしそれ以上(19.4%)利用している。

 動画サイト内のコンテンツに辿り着く方法は、検索サイトを使う方法(71.6%)が最も多く、次に知人から教えてもらったURLを入力する方法(53.9%)が続き、動画サイト内の検索サービスを利用する方法(43.8%)や、ブログの動画リンク(41.6%)はそれよりも低い結果に。人気コンテンツ別では映画(77.0%)とテレビドラマ(70.5%)の人気が突出して高く、アニメ(35%)の人気はその半分程度であった。

 なお、2009年からじょじょに動画共有サイトが競争の末、淘汰されていったなか、4月22日には百度が動画サイト「奇藝(QIYI.com)」をスタートした。「奇藝」は昨今の中国政府の方針に合わせ、正規版配信を意識した動画サイトとなっており、筆者がチェックした範囲では、海賊版のアニメコンテンツなどは見つけることができなかった。

動画サイト利用者のネット環境奇藝トップページ

関連情報

2010/5/10 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。