山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

中国の専門家は「IPv4、中国で5年はもつ」と予測 ほか~2011年1月


 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を取材拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

中国国内専門家「IPv4、中国で5年はもつ」と予測

 IPv4アドレスの中央在庫がついに枯渇したとのニュースは中国でも報じられた。しかし、中国のIT関連ニュースサイトでは「IPv4でもまだ5年はやっていける」という専門家のコメントを紹介した。

 中国で最高国家行政機関の国務院による「新興産業に関する発展についての決定」によれば、今年からの第12次五カ年計画でIPv6の開発に注力するとしており、ニュースでは「IPv6は中国国内では研究段階にある」と専門家の意見を引用。

 中国では1月19日発表の最新統計では4億5000万人強のインターネット利用者がいる。人口からいってまだまだ伸びると思われ、中国国内でのIPv4割り当て分を使い切るおそれがあるが、昨年中国では「インターネット不良サイト粛正キャンペーン」を実施したり、「個人でのドメイン取得が不可」といった対策を講じて、リソースの急激な増加を抑えている。IPv6が実用段階となるまでは、引き続き各種政策によるIPv4リソースの温存が図られそうだ。

インターネット利用者、4億5000万人に

 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)は19日、2010年末時点でのインターネット利用状況をまとめた「第27次中国互換網発展状況統計報告」を発表、2010年末時点のインターネット利用者は4億5730万人、ブロードバンド利用者は4億4953万人、携帯電話による利用者は3億300万人となった。詳しくはニュース記事(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20110119_421176.html)にまとめたので、そちらを参照してほしい。

淘宝網の登録ユーザー数は3億7000万、日平均で6000万人が利用

 個人も出品できることからオンラインショッピングサイトで最も人気となっている淘宝網(TAOBAO)が、1月6日、2010年の淘宝網の消費傾向について発表した。

 発表によれば、2010年末での淘宝網での登録ユーザー数は3億7000万、商品数は8億。1日平均で6000万人が同サイトを訪れ、毎分平均4万8000個の商品が売れているという。4万8000個の内訳は、アパレルが864点、化粧品が880点、書籍が85冊、携帯電話が36台など。

 昨年、最も売上高が大きかった日は、北京・上海・広州の3都市を合わせた1日の小売り売上額を上回る、19億5000万元(約244億円)を記録した。また、淘宝網の各ユーザーが同サイトを利用する頻度も上がっており、1カ月に5回以上買い物をする利用者は1350万人に達した。地域別で見ると、インターネットの普及が比較的遅れていた内陸部において利用者の増加が顕著であったという。

2009~2010年のオンラインショッピング市場規模と増加率(緑は前期比、青は前年同期比)リサーチ会社iResearchによるB2CとC2Cオンラインショッピングサイトの市場シェア

楽天中国版「楽酷天」にApple旗艦店進出

 淘宝網(TAOBAO)によれば、昨年淘宝網で取り締まったニセモノ商品は6000超のメーカーの1400万点にも上ったという。中国では個人のニセモノや不良品が当たり前にある中で、信頼のあるサイトを求める消費者の声に応え、淘宝網が企業出品専用のオンラインショッピングサイト「淘宝商城」に力を入れることをアピールしたのが昨年末のことだ。

 それと前後して「京東商城」「当当網」「凡客」など、さまざまなサイトが消費者のニーズを受けて目立ってきた。今月に入って淘宝網の兄弟サイトである卸売りオンラインショッピングサイト(B2B)最大手「阿里巴巴(アリババ)」は、同サイトに出店する工場が、まとめ売りではなく個人向けに単品売りするサイト「無名良品」というサイトをスタートさせた。

 こうした中で昨年スタートした楽天中国版の「楽酷天」では、Appleネット旗艦店を出すことをAppleと合意。ニセモノが多く流通するため信頼が重要なファクターとなるオンラインショッピングで、Apple販売代理店ではなく、Apple直営のショップが出店されるということは、確実にホンモノのApple純正製品が入手できることを意味し、楽酷天」の知名度向上にも繋がる。Apple旗艦店だけではまだまだ楽酷天の魅力は乏しいが、目玉ブランドがいくつも集まるようになれば、楽酷天は魅力的なものになっていくだろう。

2010年にスタートした楽天中国版サイト「楽酷天」B2Bの卸売りサイト最大手「阿里巴巴(アリババ)」が開始した、個人向けに単品売りするサイト「無名良品」

グルーポン型サイト氾濫で本家獲得合戦

 1月に発表されたグルーポン型サイトに関する調査レポート「2010年国内網絡団購行業数拠統計分析」によれば、2010年1月に初のグルーポン型サイトが登場して1年弱、グルーポン型サイトは2010年12月末の段階では2612サイトにも上り、市場規模にして25億元(約312億5000万円)に達した。

 年明け以後も新サイトが登場し続けており、既存サイトのシェア争いが続く中で、しばしば目にしたニュースが、グルーポン系サービスでは大きいシェアをもつ「美団」サイトをはじめ何社かが本家グルーポンとの提携交渉を行っているという噂だ。なかでも本命と見られているのが、グルーポン型サイトに未参入でチャットソフトQQで知られる中国ネット界の巨人「騰訊(Tencent)」とグルーポンによる合資会社設立の噂だ。

 騰訊(Tencent)はしばしば後出しで類似サイトをリリースし、中国ではインターネット利用者なら誰もが持つQQのチャットアカウントと連携するサービスとしてトップシェアを獲得している。そうした模倣とゴリ押しでシェアを獲得する手法は、ヘビーユーザーの間で評判が悪いものの、騰訊とグルーポンが手を結んでの市場参入となれば、業界地図が大きく変わることは間違いない。

グルーポン系サービスで、中国で大きいシェアをもつ「美団」サイト

動画共有サイトでの有料映画の配信、海賊版を出させず

 動画共有サイトの雄「優酷網(YOUKU)」と「土豆網(TUDOU)」で初のHDによる有料映画「譲子弾飛」が放映された。利用費は5元(約63円)で48時間、普通語(標準語)版ないし四川方言版を見放題。中国政府知財局こと国家知識産権局も注目する中、放映開始初日には2700人余りがこの有料コンテンツを視聴した。中国のコンテンツには海賊版はつきもので、タイトルで検索するとSDの同コンテンツが確認できるが、とはいえ「インターネットビデオコンテンツ監視プラットフォーム」を導入したことにより、すでに376件の海賊版コンテンツ削除申請を受け入れていると報じている。

百度、てぃえば(Tieba) 中国版にミニゲームを置き好評

 百度は日本にも展開している掲示板サービス「てぃえば(Tieba)」の中国オリジナル版サービス「貼〓(〓は口偏に巴)」に、パズルゲーム・アクションゲームなどのFlashゲームサイトを新設した。掲示板でふだんコミュニケーションしている仲間同士がゲームで交流できるとして好評を博し、サービス開始後数週間で5000万人を超すユーザーがサービスを利用した。百度は中国版「てぃえば」の数千万の利用者を武器に、ゲーム開発企業に開発を働きかける予定だ。

 著名サイトがミニゲームで利用者を引き留めるのは百度だけでない。ポータルサイトはもちろん、変わったところでは国営テレビ「中国中央電視台(CCTV)」のサイト「中国網絡電視台(CNTV)」もミニゲームやミニブログを開設し、利用者を囲い込んでいる。

てぃえば中国オリジナルサイト。右に新たにミニゲームが置かれるようになったてぃえば中国オリジナルのミニゲームサイトcntvミニブログ

百度、時事ワード色が色濃い2010年検索ランキングをリリース

 百度は例年より1ヶ月近く遅れて年始に2010年検索ワードランキングをリリースした。総合検索ランキングは「QQ」「天気予報」「オンライン翻訳」と続いたがそれは大きくは取り上げられなかった。今回はむしろ芸能人の揚げ足取りから生まれた新語や、ネットで誕生した的を得た新語、それに物価上昇や婚活など生活苦に関する新語など、時事ワードのランキングを大きく紹介するランキングへと変貌した。

著名ポータルサイトが連合で春節を祝う

 春節(旧正月)を迎え、著名ポータルサイトや動画サイト16サイトが連合で春節を祝う特集サイトを用意した。各サイトは、春節の知識の紹介や、各地域ごとに異なる春節の習慣の紹介や、春節の記憶を中国のミニブログサービスを通してつぶやき合うサービスを提供している。

 中国ではインターネット利用の中心となっているのが若年層だが、そうしたインターネット利用世代が春節に帰省せず、インターネットを自宅で楽しむという傾向が強まっている。そうした背景と危機感から、こうしたサイトによって伝統行事を若年層にも広め、残そうとしているのかもしれない。

春節特集サイト

増加するフィッシングサイトに対しネット派出所が登場

 2010年から2011年への年越しで「新年」という言葉を巧みに使ったフィッシングサイトが大量に登場した。発表したキングソフト(金山軟件)の最新データによれば、正月三が日で3642サイトのフィッシングサイトが登場したという。

 フィッシングサイトの内容は、激安商品販売や銀行からの連絡などだが、「新年」というキーワードがつくことで警戒心が薄れてしまう消費者は少ないが存在し、通常の3倍もの被害者が出るという。中国人にとっての正月は2月の春節であり、春節後にはより大きな被害発表があるかもしれない。

 詐欺業者が減らない中、広東省深センでは、中国初となるネット派出所が登場した。ネット派出所には44人の警察官が所属。チャットソフトQQのビデオチャット機能などを使い、フィッシングサイトの通報に対処する。

深センにできた中国初のネット派出所

関連情報

2011/2/9 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。