山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
3Gユーザー、3億を超える ほか~2013年6月
(2013/7/12 06:00)
3Gユーザー、3億を超える
中国政府の情報産業省にあたる工業和信息化部(工信部)は19日、3G契約者数が3億を超え3億437万となったことを発表した。2Gも含めた全契約者数は11億6523万(普及率は84.9%)で、3G契約数は全体の26.1%となる。2008年の北京五輪をトリガーに3Gサービスが開始されたので、商用化開始から4年半での数字となる。2G、3Gのデータ通信利用者数は8億1339万。
また工信部はブロードバンド普及状況も発表。ブロードバンド契約数は1億7900万で、うち4Mプラン以上の利用戸数は全体の70.7%にあたる1億2700万、8Mプラン以上の利用戸数は同16.9%にあたる3023万、FTTHの利用戸数は15.7%にあたる2805万となった。
電子マネーの残金を運用するファンドの募集が人気に
13日に、淘宝網で利用される電子マネーの「支付宝」が「余額宝」という新サービスをリリースした。支付宝内のお金を余額宝に移すことでファンドを買えるサービスだ。1元から利用可能で、なおかつ定期などよりも利率が高く、元本割れの危険の少ない運用という魅力から、10日で利用者は150万人を突破した。
運用は支付宝ではなく天弘基金という会社が行い、支付宝は利益の0.25%を受け取る仕組みだ。天弘基金は3月末の時点で、110億元の資金を運用しているが、今回のサービス開始でその倍の資金が天弘基金に流入するのではないかと言われている。
2012年末の段階で支付宝のアカウント数は8億。1日1億580万取引が行われ、200億元以上の電子マネーが動く。これは中国の電子マネーや、第三者支払サービスの中で断トツの規模だ。投資業界にとっては、台風の目ともなるサービスの登場に、「店舗での説明もなく、電子マネーで気軽に買える金融商品はいかがなものか」と危惧する論調も見受けられる。
Kindle登場に中国メーカーも電子ブックリーダーを発表
電子ブック市場が独特な成長を遂げている中国で、6月7日に電子ブックリーダー「Kindle」が発売された。
今回発売されたのはE-Ink採用の「Kindle Paperwhite(849元)」と、タブレットの「Kindle Fire」16GBモデル(1499元)と32GBモデル(1799元)。Kindle Store(Kindle商店)自体は昨年12月13日にスタートしている。中国全土的にはあまり盛り上がっていないようだが、上海など一部の大都市においては、心待ちにしていた消費者により幸先のいいスタートを切ったという報道もあり、上海では1日に300台売れたという。なお、1元は約16円。
スマートフォンやタブレットの普及で電子ブックリーダーにはあまり人気がなく、今年に入って新製品のニュースを見ることはなかったが、Kindle3製品発売と同日に、電子ブックリーダーメーカー最大手の「漢王科技」と、中国書籍系オンラインショッピングサイト最大手の「当当網」が、さらに2日後に電信キャリアの「中国電信」が電子ブックリーダーの新機種を発表した。
とはいえ、電子ブックでもコンテンツビジネスは簡単ではないようだ。当当網ですら、去年の書籍・CD・DVDの売上32億5000万元のうち、電子ブックの収入はわずかに300万元にしかすぎない。当当網の新電子ブックリーダー「都看2」は699元。漢王科技は最初から無数の電子ブックコンテンツをバンドルして電子ブックリーダーを販売する戦略を取る。漢王科技の新電子ブックリーダー「黄金屋乾光」は、2000冊のコンテンツをバンドルし849元で販売する。
「海賊版を気にせずダウンロードする習慣がある中国の消費者に対し、無料で正規版をリリースしお買い得感を与え満足させつつ、いかに有料コンテンツ利用へと誘導できるかが成功の鍵」と複数のメディアは指摘する。中国の若き執筆家たちは、Kindleの登場に、厄介なコンテンツ事情を打開してほしいと期待を寄せるつぶやきを微博で書き込んでいる。
蘇寧電器、同社ECサイトとリアルショップを同価格に
蘇寧電器は同社ECサイトとリアルショップで販売価格を同一にすると発表した。オンラインショッピングサイト同士の競争が激しくなる中、蘇寧電器はリアルショップを武器に差別化を図る。
蘇寧電器は大都市はもちろん、地方都市にも積極的に展開し、5月にはチベット自治区のラサにも1店舗目をオープンさせた。B2Cオンラインショッピング市場でのシェアは、「天猫(44.1%)」「京東商城(16%)」「易迅網(3.8%)」「蘇寧易購(3.5%)」「Amazon中国(卓越亜馬遜、2.3%)」となっており、リアルショップを武器に上位3社に迫る考えだ。
チベット自治区、ネット・電話実名制を強化
中国でのインターネットや電話の契約は原則実名制だが、実名を使わずに登録する抜け穴もある。
実名以外での登録についてはこれまで厳しい取締りは行われていなかったが、チベット自治区では、同自治区の276万戸の固定携帯電話契約者と、146万のインターネット契約者全ての身分確認を行ったと発表した。チベット自治区の上層部は「実名制実施で、スパムメールやデマなどの有害情報を抑え、インターネットの健全化を実現する」「この完全実名制実施後の有害情報は目に見えて減った」と口を揃える。
デマ情報に関しては、今年に入ってからもチベット自治区に限らず、中国全土各地でデマをつぶやいた人を逮捕している。また25日に社会科学院が発表した調査レポート「中国新媒体発展報告(2013)」によると、微博(weibo)から話題となったトピックの3分の1はデマだという報告がなされ、話題になった。
天安門事件の日にネットの不具合が多数
天安門事件が起こった6月4日には、「微博などのSNSのサービスで様々な異常がある」と多くの利用者がほのめかした。
天安門事件の名前や、事件に関連する単語は、「今日(今天)」という言葉さえ書き込みできなくなったほか、チャットや微博で利用する表情などのアイコンのうち、蝋燭のアイコンが消えたなど、ユーザーが発見した様々な違いがつぶやかれた。もっとも、インターネット歴の長いユーザーは「毎年のこと」と動揺はないようだ。
NFCを利用したおサイフケータイ、北京のバスでサービス開始
6月末に上海で開催された「Mobile Asia Expo」で最も話題となったのは4GとNFCだ。4Gについては中国移動(China Mobile)、中国聯通(China Unicom)、中国電信(China Telecom)とも、「TD-LTE」と「FDD-LTE」両方の方式を採用すると発表している。
一方のNFCは、北京ではNFC対応のスマートフォンと、NFC対応のSIMカードにより、北京のバスにおサイフケータイと同様に乗車できるサービスが6月に開始された。スターバックスやドラッグストアなど一部の店に対応していたが、さらに身近な交通手段が対応したことで、NFCが身近になる可能性が高まった。端末については現在HTC ONE、Galaxy S3、S4に加えファーウェイ、ZTEの端末1機種ずつがNFC対応しているが、今秋には20機種のNFC対応端末が発売される予定。
読者への単なる情報か、AppleにNFC対応を促すメッセージなのか、NFC非対応のうちに中国のスマートフォンのシェアを広げようというメッセージなのか、その理由は明らかではないが、様々なメディアで「iPhoneはNFC非対応」とさかんに報道している。
動画レポート発表。有料動画利用経験者は3000万人
CNNIC(China Internet Information Center)は動画サイトの利用状況について調査したレポート「2012年中国網民網絡視頻応用研究報告」を発表した。
レポートによると、動画サイト利用者は3億7200万人で、インターネット利用者全体の65.9%にあたる。利用デバイスについては動画サイト利用者のうち、PCのみでの利用者は50.6%、PCとスマートフォンやタブレットの両方の利用者は45.5%、スマートフォンやタブレットからのみの利用者は3.9%となった。スマートテレビなどテレビからの利用は11.4%で、その内訳は「スマートテレビ(36.1%)」「セットトップボックス(22.8%)」「動画サイトが利用できる機能を備えた非スマートテレビ(18.7%)」「PCの画面をテレビに表示(17.6%)」となった。
動画サイト利用者のうち、8.1%(計算すると約3000万人)が有料で動画を見たことがあるとしているが、そのうち「過去数回支払った経験がある」人が66.7%と多数派で、1週間に1度は有料動画コンテンツを見る人は全体の18.4%、同じく1か月に1度は8.6%となった。
有料動画を利用した理由としては、「さらに多くのコンテンツが見られるようになるから(43.3%)」「無料コンテンツが見つからないから(39.1%)」「より高精細の映像が見られるから(33.9%)」「広告が消えるから(25.7%)」となった。
動画サイトへの支払い形態は「月間利用料(19.6%)」「年間利用料(8.3%)」は少数派で「そのときどきで(75.7%)」と、都度課金が多数を占めた。