フリーランスになるなら/なったら必ず読みたい“〇〇の話”

第5回『保険の話』

フリーランスのリスクに備える保険を知ろう

さまざまな社会保障が手薄になるフリーランスのリスク

※この記事は、「Freeconsultant.jp」の2018年11月2日付コラム記事をそのまま転載してお届けするものです。その後の制度改正やサービス内容の変更などにより、現在とは状況が異なる内容が含まれている可能性もあることにご留意ください。

 会社員時代、毎月の給与や賞与から天引きされていた、健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料に雇用保険料……。給与明細を見ては「こんなに引かれてしまうのか」と考えたことがある方は少なくないでしょう。確かに、健康に働いているときは健康保険の恩恵を自身が受けることはないでしょうし、老後に受け取る年金はまだまだ先の話。会社を辞めていない方やすぐに再就職する方は、失業給付を受け取ることもありません。

 しかし、これらの保険による保障は、実は非常に手厚いといえます。たとえば、病気やけがをしたときには3割の費用負担で治療を受けることができるだけでなく、傷病手当金などの支給もあります。労災であれば医療費は全額支給です。年金は国民年金と厚生年金の2階建て。そして何といっても、これらの社会保険料の半分は会社が負担しています。失業してすぐに再就職が叶わない場合には、雇用保険による失業給付が当面の支えになるのです。

 一方、フリーランスなどの個人事業主となると、一部の業種を除いて健康保険は国民健康保険の一択です。会社退職後は、それまで加入していた健康保険を任意で継続することもできますが、それも2年まで。国民健康保険には傷病手当金や労災給付などはなく、雇用保険にも加入できませんから万一廃業を余儀なくされても失業給付も受けられません。長期にわたって仕事ができない状態に陥ったときの保障が何もないということになります。

 年金は国民年金のみで厚生年金には加入できませんし、年金不安が叫ばれる昨今にあっては、それすらもどこまで受け取れるかという不安がつきまといます。フリーランスを辞めても退職金を支給してくれるところはどこもありません。そして何より、社会保険料は全額自己負担。重い負担のわりにリスクに対する備えが非常に薄くなってしまうのが、個人事業主のデフォルトの保険といえます。ただでさえ、自由な反面、守ってくれる会社もないフリーランスは、そのリスクに対して保険という備えを検討する必要があるのです。

医療保険――病気やけがを治療する医療費の出費に備える

 誰でも不測の事態で病気やけがをすることがあり、重い病気や入院・手術を余儀なくされるようなケース、長期の通院が必要になるケースでは、医療費や関連費用の負担が重くのしかかります。国民健康保険でも自己負担は3割ですが、4日以上仕事を休んでも傷病手当金は出ませんし、労災補償もありません。

 そうした事態に備えておくための保険としては、「医療保険」や「傷害保険」があります。医療保険は、保障範囲や入院給付日額、手術給付金、掛け捨て型か終身保障型かなどを自身が選んで契約します。入院給付日額は5000円から1万円程度が一般的で、この金額を高くするほど保険料も高くなることになります。さらに心配な方には、がんや三大疾病などの特定の病気に備える保険もあります。

 傷害保険は事故によって必要になる医療費が対象となり、病気は対象外です。その分、年齢にしたがって保険料が高くなる医療保険と異なり、傷害保険の保険料は年齢や健康状態に左右されることもありません。業務の性質上、特にけがのリスクが高い場合などに検討するといいでしょう。

 なお、医療保険(入院保険)は、確定申告の際に「生命保険料控除」という所得控除の対象となります。年間に支払った保険料の金額に応じて所得から一定額が差し引かれ、その分課税対象となる所得が少なくなることで、所得税や住民税の金額が減るというわけです。

所得補償保険――仕事ができなくなった場合の収入減に備える

 会社員時代の健康保険では、業務外の病気やけがによって4日以上会社を休んだ場合には、健康保険の制度として傷病手当金の支給を受けることができます。直近の平均給与の3分の2の額ではありますが、有給休暇がなくなっても収入がいきなりゼロになることは防げるわけです。会社を退職して再就職先が見つからない場合や、会社都合で失業を余儀なくされた場合には、雇用保険による失業給付を受けることが可能です。

 しかし、個人事業主の場合、国民健康保険では傷病手当金の制度はありませんし、雇用保険に加入することもできません。病気やけがで仕事を休まざるを得なくなるとその間の収入はゼロになり、廃業することになってしまってもそれを補う何の手当もないのです。そうなっても、税金や社会保険料、その他の支払いは否応なしにふりかかってくることになります。

 このように、病気やけがで仕事できなくなった場合の収入を補償する保険には、「所得補償保険」があります。病気やけがの原因が業務に関係していても業務外であっても対象となり、そうなった場合にいくら受け取れるようにするかという金額を個人の所得をベースに設定して契約します。

個人年金保険、小規模企業共済――老後や廃業後に受け取るお金を増す

 会社員時代には国民年金と厚生年金の2階建てで加入できていた年金は、個人事業主となると国民年金のみとなり、老後に受け取る年金がそれだけ減ることになってしまいます。会社員であれば定年退職時には退職金を受け取ることも可能になりますが、個人事業主となるとそうはいきません。加齢によって若い頃のように仕事ができなくなればそれだけ収入減につながりますし、老後の心配もおのずと増えることになります。

 この点に保険で備える選択肢には、「個人年金保険」があります。国民年金や厚生年金は国の公的年金ですが、個人年金保険は個人が老後の収入を補填する目的で加入する私的年金です。何歳から受け取るか、どのくらいの期間受け取り続けるか、あるいは一生涯受け取るかといったことを決めて契約する、貯蓄型の保険です。個人年金保険の保険料も、確定申告の際に「生命保険料控除」の対象となります。

 自分で退職金を用意しておこうと思うなら、中小機構運営の「小規模企業共済」を検討しましょう。これは、個人事業主や小規模な企業の役員が事業を辞めたり退職するときに備えて、生活の安定化や事業の再建を図るための資金を準備しておくための共済制度です。小規模企業共済法という法律に基づいたもので、いわば経営者の退職金制度ともいえる制度です。この制度の掛金は自分で任意に設定でき、全額が所得控除の対象となります。

 こうした保険は、保険料を支払うという点で負担のデメリットもありますが、その分何かあったときの支えとなりますし、保険金が所得控除の対象となるものは税制上のメリットも得ることができます。いざというときに困ることのないよう、こうした備えは事前にきちんと考えておきましょう。

 このほかにも、業務遂行中に他人に損害を与えてしまった場合に補償を受ける賠償責任補償保険、自分に万一の事態が起こってしまった場合に残される家族にお金を残す死亡保険などもあります。民間保険以外にも、年金の支給金額を積みますための付加年金や国民年金基金、近年注目を集めている個人型確定拠出年金といった制度も。2017年には、政府によるフリーランス支援の一環として、フリーランスの失業時や出産時に所得補償を受け取ることができる団体保険を損害保険会社と共同で創設するといった報道もありました。こうした動きも引き続きチェックしていきましょう。

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