フリーランスになるなら/なったら必ず読みたい“〇〇の話”
第6回『組合の話』
フリーランスでも加入できる“組合”とは
2019年3月8日 12:00
社会保障の不安も多いフリーランス
※この記事は、「Freeconsultant.jp」の2018年2月23日付コラム記事をそのまま転載してお届けするものです。その後の制度改正やサービス内容の変更などにより、現在とは状況が異なる内容が含まれている可能性もあることにご留意ください。
会社員だった時代にはあまり意識していなかったということも少なくない、社会保険や保障の恩恵。フリーランスになると、そのありがたみをいやというほど痛感させられる機会がたびたびあるものです。たとえば、健康保険や年金の保険料は半額を会社が負担してくれますし、年金は国民年金に加えて厚生年金という2階建てです。
病気やけがで仕事を休むことになったときにも、会社員には所得補償として平均日額の3分の2相当額が支給される傷病手当金がありますが、自営業の加入する国民健康保険では何の所得補償もありません。自身や家族がお子さんを生んだ場合に出産育児一時金を受け取れるのは自営業も変わりませんが、出産にともなって無休で会社を休むことになった場合の保障である出産手当金も、受け取れるのは会社員です。
少ない保険料負担で保障も手厚い会社員に比べて、自営業は高額な国民健康保険に加入を余儀なくされ、年金も国民年金のみ。そのようなことを理解したうえでフリーランスになったという方でも、最初に社会保険料の負担の大きさを実際に目にしたときには驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そして、万一何かあって仕事ができなくなっても何の保障もないということが大半です。
個人で仕事するフリーランスは、多少なりとも仕事の多寡や活動の継続に不安な気持ちを抱えているものですが、加えてそうした負担が大きくのしかかり、保障も手薄ということになると、その不安が大きくなってしまいます。そうしたなかで助けになる可能性があるのが、フリーランスにも加入できる“組合”です。
“組合”加入で保険料負担を抑えられることも
フリーランスが加入できる“組合”にはいろいろな種類があります。基本的には、自分の業種向けに設立されている団体に加入することになりますが、加入前に確認しておきたいのが、「その団体が『文芸美術国民健康保険組合』に加盟しているかどうか」という点です。
「文芸美術国民健康保険組合」、略称「文美国保」は、その名のとおり国民健康保険組合で、文芸・美術・映画・写真などに関する仕事をしている方であればこの健康保険に加入できる可能性があります。文美国保に加入することができれば、その保険料は収入の多寡にかかわらず一定で、その保険料も収入や家族構成によっては国民健康保険に比べてぐっと安くおさえることが可能なのです。
フリーランスにとって大きな悩みの種の一つが、国民健康保険の保険料。これは収入に比例して保険料が大きくなるため、会社を退職した直後には会社員当時の収入をベースに計算されますし、事業が軌道に乗ったあとも保険料が増えることになります。扶養家族がいればその分保険料が増えますし、会社員時代と異なり全額自己負担ですから、その負担はとても大きいものとなるのです。
この文美国保の健康保険に加入するための条件は、文美国保に加盟している団体の会員であること。したがって、文美国保の加盟団体かどうかで、享受できる恩恵が大きく異なる可能性があるというわけです。
Webデザイナーなら「日本イラストレーター協会」
画家やイラストレーター、3DCGの制作やキャラクターデザインといったイラストレーション関連の業種、グラフィックデザインやWebデザインなどに従事するデザイナー、漫画家といった業務に従事する法人および個人事業主が加入できるのが、日本イラストレーター協会(JILLA/ジャイラ)です。
日本イラストレーター協会は、「プロである組合員同士が集まり、より大きな団体として活動する事でスケールメリットを活かし、お互いの事業を『互助』」することなどを使命として掲げています。加入すると、連携したセミナーや講座を割引価格で受講することができたり、文具や画材などを割引価格で購入することが可能になったりします。
そして大きいのは、文美国保の加盟団体であるということ。日本イラストレーター協会の組合員が、確定申告書などで条件を満たす事業を行なっていると証明できれば、文美国保に加入することができるのです。そのほかにも、お得な保険料で所得補償保険に加入することができるという制度もあります。所得補償保険に加入すると、病気やけがで仕事ができなくなった場合に一定期間内の収入源を補う補償を受けることができ、補償の薄いフリーランスにとっては心強い味方になるでしょう。
IT系ライターなら「日本デジタルライターズ協会」
近年増加しているライター業のなかでも、IT分野に関するライティングに従事する個人事業主が対象となっているのが、日本デジタルライターズ協会です。日本デジタルライターズ協会も文美国保の加盟団体であり、会員になることによって文美国保に申し込む資格を得ることができるということになります。
多くの団体で加入を申し込むと、一定の条件を満たしているかどうかという審査を受けることになりますが、日本デジタルライターズ協会ではそれに加えて、協会の理事1人または入会審査委員1人の推薦が必要と、そのハードルが高めに設定されています。
また、日本デジタルライターズ協会では、ライター同士の情報交換やセミナーの企画などを予定しているとしています。会員でなくても参加できる勉強会なども企画されることがあり、2017年に実施された「フリーランスライターのための確定申告 勉強会2017」では多くの参加者が集まりました。
最近注目を集めているのが、「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(フリーランス協会)」です。フリーランス協会は業種を問わず、フリーランスやパラレルワーカーとして働いている方であれば対象となります。フリーランス協会は文美国保の加盟団体ではないため、健康保険加入のメリットは得ることができませんが、所得補償や賠償責任補償を受けられる保険に会員価格で加入することができます。
※みらいワークスが、フリーランス協会と共催したイベントはこちら
加えて、福利厚生サービスを利用することができたり、コワーキングスペースや会計ツールなどの提携サービスを割引価格で利用できるようになったりといったメリットもあります。ほかに加入できる団体がないという方には、所得補償保険に安価で加入できることを中心にメリットとなるでしょう。
どの団体も、加入に際しては本人確認や加入条件を満たしているかどうかの審査を受け、加入後には会費を支払うことが大半です。文美国保の加盟団体で文美国保に加入できることになっても、加盟団体の会費と安くなった保険料のプラスマイナスは確認しておく必要があります。
しかし、“組合”に加入することには、健康保険料の軽減だけではなく、さまざまなメリットがあります。仕事の斡旋を受けたり、イベントで人脈を広げたりといったことが可能になれば、本業への好影響も期待できます。“組合”は安心してフリーランスとして働き続けていくことを助けてくれる存在になるかもしれません。
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