期待のネット新技術
さらに高速化! 40Gbpsもイケる「25G/40GBASE-T」の普及は何年後!?
【10GBASE-T、ついに普及?】(第11回)
2017年11月21日 06:00
1000BASE-Tの10倍速、という高速な有線LAN規格「10GBASE-T」が、いよいよ身近になりつつある。
LANカードは既に100ドル以下のモデルや2万円台のモデルが登場、ハブについても8ポート8万円の製品が国内で発売済み。10GBASE-T標準搭載のiMac Proも12月に発売されるなど、価格・製品バリエーションの両方で徐々に環境が整ってきた。
長らく望まれてきた10GBASE-Tの低価格化だが、技術的には1000BASE-Tから変更された点も多く、設定や活用上のノウハウも新たなものが必要になる。そこで、規格の詳細や現状、そしてその活用方法を、大原雄介氏に執筆していただいた。今回のテーマは「10GBASE-Tの派生規格である25/40GBASE-Tについて」。また、本連載は今後、毎週火曜日に掲載していく。(編集部)
「10GBASE-T、ついに普及へ?」記事一覧
次が10Gbps超えの話。10GBASE-T普及の遅々とした状況に対し、2015年後半あたりから出てきた新しい動きの2つ目は、昨今のサーバーの高速化/高性能化のトレンドを背景にしている。すでに10Gbpsでも遅すぎるという話も当然あり、もっと高速な規格を、というニーズが出たことだ。
10Gbpsでも遅すぎる、データセンターの高速化/高性能化トレンド
これは特にデータセンターなどで顕著で、2006年には「IEEE 802.3 HSSG(High Speed Study Group)」というワーキンググループが結成され、10Gbpsを超えるEthernetの検討が始められた。
もちろんこれは光ファイバーベースがまず先で、最終的には2010年6月に「IEEE 802.3ba」として100GbpsのEthernetが光ファイバーベースで標準化され、ここから1年遅れた2011年3月には「IEEE 802.3bg」として、40Gbpsの光ファイバー接続も標準化されている。
さて、光ファイバーの規格が決まると、後追いでツイストペアの規格が議論されるのは、これまでと同様だ。IEEE 802.3baの標準化作業が終わった段階で、IEEEは「25G/40GBASE-T Task Force」を立ち上げ、標準化作業を開始。最終的には「IEEE 802.3bq-2016」として、2016年6月30日に標準化が完了している。
10nm世代でも厳しい25G/40GBASE-Tの消費電力
この25G/40GBASE-Tも、考え方は2.5G/5GBASE-Tと同じだ(というか、順序的には25G/40GBASE-Tの考え方を2.5G/5GBASE-Tが真似たというのが正しいかもしれない)。「PAM16」を利用した4bitの同時転送と「128DSQ」の変調、LDPCの利用などは10GBASE-Tと全て同じで、異なるのは信号周波数のみとなる。
10GBASE-Tは200MHz相当であったが、25GBASE-Tは500MHz、40GBASE-Tは800MHzとなる。当然こんなに信号周波数を引き上げると、長距離の伝送は難しくなる。これに対応するため、ケーブルはCAT8のみをサポートし、また伝達距離も最大30mに限られている。サーバールーム内のラック間接続に限れば、これでも何とかなるという程度だ。
もっとも、規格こそ2016年に標準化が終わったものの、これを搭載した製品は今のところ全く存在しない。この理由は2つある。1つ目は、10GBASE-Tですらコントローラーの消費電力の多さと発熱に手を焼いているのに、速度を2.5倍ないし4倍に引き上げたら、使い物にならないからだ。
現状、10GBASE-Tのコントローラーは主に28nmプロセスと16nmプロセスの製品が混在している時期であるが、速度を2.5倍なり4倍に引き上げながら、消費電力を同等に抑えようとするなら、14/16nmのFinFETプロセスでは不可能。10nm世代でも厳しく、最低でも7nm世代のFinFETプロセスか、Global Foundriesの提供する12nm FD-SOIクラスを持ってこないと、使い物になる消費電力で25G/40GBASE-Tのコントローラーを作るのは難しいだろう。
現実問題としては、LDPC演算部の並列度を上げるとともに、動作周波数を引き上げるという合わせ技になるだろうが、そう考えるとコントローラーが出てくるのは早くて2019年、現実的には2020年以降にならないと厳しそうだ。
40Gbpsは「Infiniband」で、25G/40GBASE-T普及の見通し立たず
搭載製品が存在しない理由の2つ目は、40Gbps程度であれば「Infiniband」で既にカバーされていることだ。「InfiniBand FDR」だと、1レーンあたり10/14Gbps(実効9.7/13.6Gbps)で、これを4対束ねれば40/56Gbps相当になる。実際、この40/56GbpsのInfiniBandカードやスイッチは既に広く販売されており、価格も(相対的に、ではあるが)手頃になってきている。
InfiniBandには、さらに高速な「InfiniBand EDR」(レーンあたり25Gbps)や「InfiniBand HDR」(レーンあたり50Gbps)も用意されており、これらに対応した製品も販売されている。特にHPC向けに、そのレイテンシーの低さと帯域の広さを買われ、InfiniBandが既に広く普及していることが、25G/40GBASE-T搭載製品がない背景にあるわけだ。
そんなわけで、「今すぐ使いたい」というユーザーは既にInfiniBandに流れるか、もしくは銅線をあきらめて光ファイバーでの接続を利用しており、今のところ「25/40GBASE-Tを待つ」というユーザーの存在はほとんど聞かない。25/40GBASE-Tの普及には、まだまだ時間がかかりそうである。
「10GBASE-T、ついに普及へ?」記事一覧
今回は10GBASE-Tの派生規格である25/40GBASE-Tについて解説しました。次回更新分は番外編として、10GBASE-T対応製品の展開を中心に、ネットギアジャパンにお話を伺ったインタビューをお届けする。