清水理史の「イニシャルB」

10GbE×2+2.5GbE×4で3万円以下! ホームネットの高速化に最適なQNAPのお手軽スイッチ「QSW-2104-2T」

 QNAPから、10+2.5GbE構成のアンマネージドスイッチ「QSW-2104-2T」が発売された。

 計6ポートの小型スイッチで、価格も実売3万円以下とさほど高くない。10Gbps対応インターネット回線や10Gbps対応NASを活用しつつ、ゲーミングPCなどを2.5Gbpsでつなぎたい環境に適した製品だ。

10GbE×2+2.5GbE×4のコンパクトスイッチ「QSW-2104-2T」

スイッチでもラインアップの拡充を図るQNAP

 QNAPのネットワーク機器ラインアップ拡充の勢いが止まらない。

 ここ数年で、NASだけでなく、Wi-FiルーターやSD-WAN対応製品なども発売してきたが、いつの間にかスイッチのラインアップもマネージドからアンマネ、1Gbpsから10Gbps、PoEなどなど、さまざまなラインアップを取り揃えるようになった。

 今回、同社から発売されたQSW-2104-2Tは、スモールビジネスやハイエンド個人ユーザーをターゲットとした製品で、具体的には、合計6ポートあるうちの2ポートが10GbE対応で、残りの4ポートが2.5GbE対応となっている。

 ホームネットワークの10Gbps化や2.5Gbps化を検討している場合に適した製品。RJ45の2.5GBASE-T×4は共通で、10GbEをSFP+×2構成とした「QSW-2104-2S」もラインアップされている。

 このように異なる速度を組み合わせたエッジ用スイッチは、小規模ネットワークや企業向けにラインアップの増えているカテゴリだが、今回のQSW-2104シリーズもこうした市場を狙ったもので、実売価格も10Gbps化ができるスイッチとしては3万円以下と低く抑えられている。

 同社製のスイッチとしては、以前に発売されている白い筐体の「QSW-M2108」シリーズが、同様に10GbpsのRJ45またはSFP+と、RJ45の2.5Gbpsポート(こちらは)の組み合わせとなっていたが、M2108シリーズがウェブUIを利用してスイッチの構成を管理できるマネージドスイッチであるのに対し、今回のQSW-2104シリーズは、こうした設定ができないシンプルなアンマネージドスイッチとなる。

 用途としては、大規模なオフィスのいわゆる「島(デスク群)」へ配置したり、小規模なオフィスや家庭で利用したりするケースが考えられる。

 家庭であれば、2つの10Gbpsポートに、10Gbps対応のインターネット接続回線とNAS、4つの2.5GbpsポートにPCを接続するという使い方が適しているだろう。最近のPCは、ゲーミングPCだけでなく、2.5Gbps対応LANが搭載されることが増えてきたし、USB接続の2.5Gbps対応LANアダプターも安価に入手できるので、こうした環境に適している。

 競合としては、バッファローの「LXW-10G2/2G4」などが挙げられるが、スペック面ではほぼ互角ながら、価格面や利便性は一歩及ばない印象だ。しかしながら、本製品の方がスペック上の消費電力が低いので、発熱などが抑えやすい点は有利と言えるだろう。

QNAP QSW-2104-2Tバッファロー LXW-10G2/2G4
実売価格(税込)2万9480円2万6672円
タイプアンマネージドアンマネージド
ポート数(合計)66
10Gbps22
5Gbps↑(上記で対応)↑(上記で対応)
2.5Gbps44
1Gbps↑(上記で対応)↑(上記で対応)
MACアドレステーブル16K16K
合計非ブロックスループット30Gbps30Gbps
スイッチ機能60Gbps60Gbps
スループット-14880952pps(10GBASE-T)
Jumbo Frame90009000
ファンなしなし
最大消費電力12W18.5W
サイズ(幅×奥行×高さ)34×180×145mm33×180×151mm
ループ検知
節電機能IEEE 802.11azおまかせ節電
LED ON/OFF×

金属筐体で発熱への対策もしっかりした作り

 それでは、実機を見ていこう。

 サイズはコンパクトで、筐体も金属製で作りもしっかりとしている印象だ。1Gbps以上の高速なスイッチだと、負荷が掛かった際の温度上昇が気になるが、本製品はファンレス構造となっており、金属筐体全体で熱を逃がす設計となっている。

正面
背面
側面
底面

 試しに、10Gbpsのインターネット接続回線である「auひかり ホーム10ギガ」と、10GbpsのNAS、2.5GbpsのPCの3台を接続し、日常的に利用してみたが、インターネット接続やNASへのファイルアクセスなど、日常的な利用シーンで特に発熱が気になるようなことはなかった。

 2.5Gbps接続のPCから、10Gbps接続のNASに対して230GBほどのファイルをコピー(合計50分ほど)してみたところ、上面と底面は暖かくなるが(38℃前後)、極端に熱くなるようなことはなかった。外気温が19℃と涼しくなってきた時期ではあるが、想像していたよりも発熱は小さい印象だ。

 スイッチはたいていそうだが、側面にある通気口へのエアフローがきちんと確保されていれば、熱が問題になることはなさそうだ。逆に言うと、側面を壁際に密着させたり、別の機器を並べて配置して通気口を塞ぐようなことは避ければ、安定性に問題はないと考えられる。

 ポートや電源コネクタなどは全て正面側に配置されており、左から電源LED、ループ検知LED、10GbE×2、2.5GbE×4、電源コネクタという配置になっている。

 各ポートのLEDはポート脇に配置されるタイプで、10Gbps(2.5Gbps)で接続されている場合は左側のグリーンが、それ以外では右側のオレンジが点灯する。

 残念ながら、LEDを消灯する機能は搭載されないため、夜間に通信が発生すると、点滅がうっとおしく感じる。個人宅、それも寝室を兼ねるような場所に設置するのは、あまりお勧めできない。

 こうした点は、個人向けというよりも、法人用途の方が重視されている印象だ。

 なお、ループ検知に関しては標準でオンになっており、ループが検知された場合には正面のLEDが赤く点滅し、通信を自動的に遮断する。これにより、接続ミスでもトラブルが発生しにくくなっている。

10GbE、2,5GbEとも速度は問題なし

 スイッチに関しては、単独PCのiPerf3程度でパフォーマンスが問題になることはないが、念のため速度も計測しておいたので参考にして欲しい。

iPerf3テスト
PC→ServerServer→PC
2.5Gbps(PC)-10Gbps(Server)2.282.36
10Gbps(PC)-10Gbps(Server)9.89.81

※PC CPU:Ryzen 9 3900X、メモリ:64GB、SSD 1TB、LANカード:ASUS XG-C100C、OS:Windows 10 Pro ※Server CPU:Core i7 4400、メモリ:16GB、SSD:80GB、LANカード:Startech ST10GSPEXNB、OS:Windows 10 Pro

 PCを2.5Gbpsで接続すると、当たり前だが最大速度も2.5Gbpsとなる。とは言え、回線やNASが10Gbpsで接続されていれば、複数台のPCを2.5Gbpsで接続しても、インターネット接続やNASへのアクセス速度が落ちにくい。

 理想を言えば、やはりPCまで全て10Gbps化したいところだが、コストの負担が大きい。回線とNASのみを10Gbps化して、あとは2.5Gbpsで運用するというのが、現時点での現実的な選択肢と言えるので、そういった意味では購入を検討したい製品の1つではある。

 とは言え、個人用途では、まだ価格が少し高く、LEDのオフができない点が気になる。競合との比較になってしまうと、若干、不利になる面があるとも言えそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。