清水理史の「イニシャルB」
スマホもHE160で2402Mbpsリンクの時代へ。「6a」じゃない素の「Pixel 6」で1Gbpsオーバーの世界を試す
2022年8月29日 06:00
Googleのスマートフォン「Pixel」シリーズは、Wi-Fi 6E対応のスマートフォンとして貴重な存在だが、実はWi-Fi 6でも2402Mbpsリンクが可能だ。
諸般の事情で「Pixel 6a」ではなく素の「Pixel 6」とはなるが、スマートフォンでも実効1Gbpsを超えるWi-Fi性能を体験してみた。
おそらくPixel 6aも2402Mbpsリンク可能なはず(予想)
今買うなら、高いコストパフォーマンスで評判の高いPixel 6aを選ぶのが順当なのだろうが、筆者は今回、素の「Pixel 6」を購入した。
どちらにせよ、間もなく登場するであろうWi-Fi 6Eのテスト用端末という位置付けなのだが、当時、Googleが公表していたPixel 6aのスペック表では無線に関する情報があいまいだったため、購入に踏み切れなかったのだ。
現在では、Pixel 6aも無印のPixel 6と同じく、ウェブサイトのハードウェア技術仕様にWi-Fi 6Eなどへの対応が明記されているが、当時はPixel 6の無線スペックに「Wi-Fi 6(802.11ax)および 6E(6 GHz): 2.4 GHz + 5 GHz + 6 GHz、HE160、2X2 MIMO」と詳細に記述されているのに対し、Pixel 6aは「Wi-Fi 6(802.11ax)および 6E(6 GHz)、MIMO」としか記述されていなかったのだ。
液晶やカメラなどの違い以外は、共通と思われる両端末だが、筆者の購入目的が、Wi-Fi 6Eテスト標準機としてだったので、仮にPixel 6aを購入して、HE160に対応していないという状況になると困る。このため、安全を取ってPixel 6を購入した経緯となる。
その後、FCCの認証情報検索サイトから、Pixel 6aもどうやらHE160に対応していることが確認でき、現在ではハードウェア仕様にもHE160への対応が明記されたので、「6a」でも2402Mbpsでリンク可能と予想されるが、確実ではない。今回の記事は、あくまでも素のPixel 6での検証であることをお断りしておく。
80MHz幅と160MHz幅
「HE160」はHigh Efficiency 160の略だ。Wi-Fi 5の時代はHTやVHT(Very High Throughput)という表記だったが、Wi-Fi 6になってHEと表記されるようになった。
5GHz帯や、Wi-Fi 6Eで追加予定の6GHz帯には、20MHz幅ごとにチャネルが設定されており、これを束ねることで速度を向上させることができる。Wi-Fi 6/6Eであれば、標準は4チャネル束ねる80MHz幅で、2ストリームMIMO(同一空間で2系統の電波を多重化する方式)時で1201Mbpsとなる。
国内で一般的なiPhoneについては、iPhone 11~13がWi-Fi 6に対応しており、いずれも80MHz幅対応までで、速度は最大1201Mbpsまでだった。ほかのスマートフォンもWi-Fi 6対応はほぼ80MHzまでの対応で、2402Mbps接続可能なHE160(160MHz幅)対応は、PCのみとなっていた。
これに対してPixel 6シリーズは、前述したようにWi-Fi 6Eに対応しているだけでなく、HE160への対応も実現しており、Wi-Fi性能に関してもトップレベルの実力を持つ1台となっている。
もちろん、その実力を発揮させるには、2402Mbps(160MHz幅)対応のWi-Fi 6ルーターが必要だ。こうしたWi-Fi 6ルーターを使っているのであれば、2402Mbpsでリンクする超高速Wi-Fiを体験できる。ぜひ試してみるといいだろう。
実効1.4Gbps。長距離でも595Mbpsの高速Wi-Fi
それでは実際に、どれくらいの速度で通信できるのかを検証してみよう。いつもの通り、木造3階建ての筆者宅の1階にHE160に対応するWi-Fi 6ルーター(バッファロー「WXR-5950AX12」)を設置し、10Gbpsの有線でテスト用のサーバーを接続。各階でiPerf3による速度を計測したのが以下のグラフだ。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
Pixel 6(160MHz幅) | 上り | 1200 | 813 | 753 | 534 |
下り | 1550 | 1090 | 923 | 595 | |
iPhone 11(80MHz幅) | 上り | 685 | 472 | 390 | 207 |
下り | 774 | 542 | 449 | 297 |
※サーバー(CPU:Core i3、メモリ:16GB、ストレージ:NVMe SSD 1TB、LAN:ASUS XG-C100C(10GbE)、OS:Windows Server 2022)
期待通り、かなり速い。1階の同一フロアでは、実行速度で1.55Gbpsを実現できており、1Gbpsの有線LANを超える速度で通信できている。床を隔てた2階も高速で下りで1Gbpsオーバーを実現できている。さすが160MHz幅利用は強力という印象だ。
もちろん長距離も優秀で、最も遠い3階端でも下り595Mbpsを実現できている。Wi-Fi 6はもともと優秀な規格だが、160MHz幅でフルに実力を発揮させると、スマートフォンでもギガ越えを実現できるというわけだ。
2402Mbps対応のWi-Fiルーターを
以上、Pixel 6でWi-Fi 6のHE160、2402Mbps接続の速度を検証したが、かなり優秀な結果が得られた。間もなく登場するであろうWi-Fi 6Eでの実力も楽しみなところだ。
おそらく次期iPhoneもWi-Fi 6E、HE160に対応してくると思われるので、この機会に家庭内のWi-Fi環境の見直しをしておきたいところだ。Wi-Fi 6E対応が理想だが、すくなくともHE160、2402Mbps対応のWi-Fiルーターを購入しておくことをお勧めする。