ニュース

最大2Gbps超の「Wi-Fi 6E」テスト結果も! 6GHz帯追加の状況をWi-Fi Allianceが解説

 Wi-Fi Allianceは3月11日(現地時間)、「Wi-Fi 6E and 6 GHz Update」と題したオンライン説明会を開催し、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)の拡張規格である「Wi-Fi 6E」について、6GHz帯についての各国の規制や対応製品などの状況を解説した。

6GHz帯を無免許で利用するための検討や許可が各国で進展

 Wi-Fi 6Eでは、5925~7125MHzの6GHz帯が新たに利用可能な帯域として拡張される。これによって、20MHz幅で最大59チャンネル、160MHz幅では最大7チャンネルを確保でき、安定して高速なスループットが得られるようになるのはもちろん、既存の2.4GHz帯域や5GHz帯域の混雑も緩和されることになる。

 あわせて、次世代規格となる「IEEE 802.11be」では、6GHz帯の利用を前提に、320MHz幅の広帯域幅での高速通信を実現することになるが、そちらも最大3チャンネルを確保できる。

Wi-Fi 6Eで拡張された6GHz帯の概要。最大で5925~7125MHzの1200MHzの帯域が新たな利用帯域として拡張され、160MHz幅で最大7チャンネル、IEEE 802.11beで実現される320MHz幅のチャンネルは最大3チャンネルを確保可能に

 Wi-Fi 6Eで拡張された6GHz帯については、世界各国の認可状況が大きく3つに分けられる。1つは6GHz帯の利用に免許を必要とするというもので、これはごく限られた国になるという。

 そのほかの国では6GHz帯を免許不要で利用できるよう検討が進めえられているが、その場合でも500MHz幅のみに制限する国と、1200MHz幅フルで認可を行う国に分かれるのだという。

 EU加盟各国や英国、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ペルーなどは500MHz幅のみで認可の検討が進められ、EUと英国、アラブ首長国連邦では許可が決定している。

 一方、日本や米国、カナダ、韓国、サウジアラビアなどは1200MHz幅で検討を進めており、米国、韓国、ブラジル、チリで許可が決定している。なお、500MHz幅のみ検討している国についても、まず第1段階として500MHz幅のみ認可し、その後で様子を見ながら段階的に認可するというアプローチを取っているとし、将来1200MHz幅での認可を検討する予定である、と説明した。

各国の認可状況。紫色の国と地域では5925~6425MHzまでの500MHz幅、水色の国と地域では5925~7125MHzの1200MHz幅での認可を検討しており、オレンジで囲われた国と地域はすでに許可が決定している

 ところで、6GHz帯は衛星通信や固定マイクロ波通信などで利用されているため、Wi-Fi 6Eでの無免許利用を認可するにあたっては、それら既存通信の妨げにならないように3つのセグメントを設定し、それぞれに条件を設定している。

Wi-Fi 6Eの無免許利用を認可するにあたって、3つのセグメントを設定してそれぞれに条件を設定

 1つめは、「超低出力(VLP)デバイス」。こちらは電波出力を最小限に抑えることで干渉を防ぐというもの。米国ではまだ検討中だが、ヨーロッパ、韓国では14dBm以下、ブラジルでは17dBm以下で認可されている。

超低出力デバイスは、米国ではまだ検討中だが、欧州と韓国では出力14dBm以下、ブラジルでは17dBm以下で認可されている

 2つめは、「低出力(LPI)デバイス」。VLPから電波出力を少し高める代わりに、室内利用に限定するというもの。米国とブラジルでは30dBm以下、ヨーロッパでは23dBm以下で認可されている。

低出力デバイスは室内利用に限定され、米国とブラジルが30dBm以下、欧州で23dBm以下で認定されている

 そして3つめは、「標準出力デバイス」。より電波出力を高めたものだが、既存サービスへの影響を回避する仕組みの導入が必要となる。それは、固定マイクロ波が利用する帯域の利用を避けるというものと、衛星通信への影響を避けるために電波の仰角を水平から30度以下にする、というものだ。

 ただ、固定マイクロ波サービスとの干渉を避けるには、リアルタイムでマイクロ波サービスの状況を入手する必要があり、そこが課題になっているという。

標準出力デバイスは米国では認定済みだが、電波干渉を避ける仕組みの導入にまだ課題が残されているとのこと

 このうちLPIデバイスについては、すでにFCCが認証を受けるためのナレッジデータベースを公開しており、実際のデバイス認証も進められている。標準出力デバイスについても、欧州委員会での検討が順調に進められていると説明した。

低出力デバイスは米国のFCCがナレッジデータベースを公開済みで認証が進められている。標準出力デバイスについても欧州委員会での検討が順調に進められているという

標準出力デバイス向けの仕様書を3月より提供開始

 続いて、Wi-Fi 6E対応デバイスの状況について説明されたが、こちらは1月に発表された内容をほぼ踏襲するものとなった。

 1月に発表されたように、Wi-Fi AllianceはWi-Fi 6Eの認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED 6」を開始。そして、2021年には年間で42億台のWi-Fiデバイスが出荷され、そのうち22億台がWi-Fi 6対応デバイス、3億3800万台がWi-Fi 6E対応デバイスになり、2024年には30%にまで拡大すると予測しているという。

Wi-Fi 6E対応デバイスは2021年に3億3800万デバイスが出荷され、2024年にはWi-Fi 6の中で30%を占めると予測

 Wi-Fi 6Eの認証を受けたチップセットは、Broadcom、Qualcomm、Intel、MediaTekが提供しており、Wi-Fi 6E認証を受けたルーター製品も、LinksysやTP-Link、Netgear、ASUSなどが発表済みだ。

 また、スマートフォンはSamsungの「Galaxy S21 Ultra」、ノートPCではIntelの第11世代Coreシリーズ搭載製品でWi-Fi 6Eに対応し、2021年第1四半期に発売が予定されている。このほかにも、テレビやVR製品などでも2021年半ばには搭載製品の登場を見込んでいるとのこと。

Wi-Fi 6E対応チップセットはBroadcom、Qualcomm、Intel、MediaTekから出荷済みで、これらを搭載するルーターなども発表済みだ

 また、追加情報として、「AFC System to AFC Devide Intercace Specification V1.0」という仕様書の提供を2021年3月に開始していることも明らかにされた。

 AFCとは「自動周波数調整(Automated Frequency Coordination)」のことで、標準出力のWi-Fi 6Eデバイスを屋外で使用する場合に、6GHz帯の既存通信サービスとの干渉を回避するために周波数を自動調整する機能を実現するための仕様書となる。

 具体的には、「AFC System」と呼ばれ、利用可能な周波数帯域を調べるシステムにアクセスし、その情報に応じて利用する周波数帯域を調節することになるという。

「AFC System to AFC Devide Intercace Specification V1.0」という仕様書を2021年3月に提供開始

 また、Wireless Broadband Allianceと共同で行ったWi-Fi 6Eテストの結果についても紹介された。Wi-Fi 6Eに対応したルーターとノートPCを実際に用意し、距離3mと、間に2枚の壁を挟んだ26mの距離でテストを行ったところ、最大で2Gbpsを超えるなど、受信・送信ともに非常に良好な結果が得られたという。

Wireless Broadband Allianceと共同で行ったWi-Fi 6Eのテスト結果。距離3m、壁を2枚挟んだ距離26mのいずれの場合も良好な結果が得られたという