清水理史の「イニシャルB」
Windows 11上でクラウドPCへの切り替えが一瞬! 「Windows 365 Switch」プレビューを体験する
2023年9月4日 06:00
Windows 11のInsider Preview Build 23521が8月10日(米国時間)にリリースされ、「Windows 365 Switch」のプレビューが利用可能になった。
クラウド上にホストされたWindowsを利用できる「Windows 365」をWindows 11のタスクビューに統合することで、仮想デスクトップライクにローカルPCとクラウドPCを行ったり来たりできる機能だ。思った以上に快適で、クラウドPCの垣根がひとつ下がった印象だ。
進化を続けるWindows 365関連機能
クラウド上の仮想デスクトップ環境とその管理機能をまとめて提供する「Windows 365」が、着々と進化しつつある。
6月に物理PCをクラウドPCでブートできる「Windows 365 Boot」のパブリックプレビューが開始されたばかりだが、今回、Windows InsiderのDevチャネル向けにリリースされたBuild 23521では、タスクビューとの統合を実現する「Windows 365 Switch」のプレビューが追加された(先行してベータチャネルでも公開済み)。
2022年4月にWindows 365が発表された際、「Windows 365 Boot」「Windows 365 Switch」「Windows 365 Offline」の3つの機能も併せて発表されていたが、そのうちの2つが立て続けにプレビュー段階に進んだことになる。
今回、展開されたWindows 365 Switchは、簡単に言えば、ローカルPCとクラウドPCの切り替えが手軽にできる機能だ。
従来のWindows 365は、ウェブブラウザーで専用のサイトにアクセスしてクラウドPCに接続するか、MicrosoftストアからWindows 365アプリをインストールしてクラウドPCに接続する必要があった。
これに対して、Windows 365 Switchでは、Windows 11のタスクビューに表示されているローカルの仮想デスクトップのひとつとして、クラウドPCを扱えるようになった。
あらかじめWindows 365のクラウドPCをタスクビューに登録しておくことで、タスクビューボタンやショートカットキーの[Windows]+[Tab](タスクビューの表示)または[Windows]+[Ctrl]+[←/→](仮想デスクトップの切り替え)によって、ローカルPCとクラウドPCを一瞬で切り替え、それぞれの環境を行ったり来たりしながらの作業が簡単にできる。
実態はクラウド上の仮想マシンにリモートデスクトップ接続しているクラウドPCだが、体感的にはローカルの仮想デスクトップとほとんど変わらない感覚で、切り替えや操作ができる印象だ。
プレビューなので、まだ未確定な部分もあるが、この軽快感はなかなか感動的だ。
Windows 365 Switchの準備
それでは、実際の使い方を見てみよう。まずは前提条件として、以下の環境が必要になる。
ローカルPC
- Windows 11 ProまたはEnterpriseのバージョン22621.2050/23521以降
- Windows Insider ProgramのBetaチャネルまたはDevチャネルへの登録
- バージョン 1.3.179.0以降の「Windows 365」アプリ
クラウドPC
- Windows 365 クラウドPC環境(ライセンスとプロビジョニング)
- Windows Insider ProgramのBetaチャネルまたはDevチャネルへの登録
今回は、リリースされたばかりのDevチャネル(Build 23521)を利用したが、公式の推奨はBetaチャネルとなっている。なお、Devチャネルの場合、Windows Insiderを解除するにはWindowsの再インストールが必要になるため、初期化してもかまわないテスト環境で試すことを強くお勧めする。
Windows 365のクラウドPC環境については、今回はWindows 365 Enterpriseを利用した。ユーザーにライセンスを割り当てるほか、エンドポイントマネージャー(Intune)にてプロビジョニングポリシーを作成してグループに割り当て、そこにライセンスを割り当てたユーザーを追加するという方法で準備をしておいた。
準備ができたら、実際の作業をしていこう。大きく5つのステップに分けて作業する。セットアップ自体は、非常にシンプルだが、ポイントは「Windows 365 Switch」の機能がロールアウトされるまで待つ必要がある点だ。
STEP 1:ローカルPCをプレビュービルドに更新する
ローカルPCをWindows Insider Programに登録し、プレビュービルドへとアップデートする。なお、Windows Updateの設定画面で「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」が表示される場合はオンにしておくことが推奨されている(DevチャネルのBuild 23521では表示されなかった)。
STEP 3:クラウドPCをプレビュービルドに更新する
上記アプリやブラウザーなどで、Windows 365のクラウドPCに接続し、ローカルPCと同様にWindows Insider Programに登録し、プレビュービルドへとアップデートする。なお今回は、ローカル/クラウドともにDevチャネルのBuild 23521に更新した。
STEP 4:待つ
Windows 365 Switchの機能がロールアウトされるまで待つ。筆者の場合は4時間ほどで有効化されたが、環境によっては24時間かかったという報告もある。気長に待つしかない。
STEP 5:タスクビューにクラウドPCを登録する
Windows 365 Switchの機能がロールアウトされると、「Windows 365」アプリのクラウドPCの設定項目に「Add to Task view」という項目が追加される。これをクリックすると、選択したクラウドPCがタスクビューの仮想デスクトップの一覧に追加される。
ヌルっと切り替えが気持ちいい
以上で設定は完了だ。あとは、タスクビューの画面から、通常の仮想デスクトップと同様にクリックしてクラウドPCに切り替えればいい。
PCを起動した直後や再起動後などは、クラウドPCとのセッションが確立されていないため、リモートデスクトップのセッションを確立するまで十数秒待つ必要があるが、一度セッションが確立されてしまえば、後は快適だ。
ローカルPCのタスクビューを開くと、Windows 365のポリシー名とユーザー名で構成されたクラウドPCが一覧に表示されるので、クリックするだけでクラウドPCに瞬時に切り替えることができる。
同様に、クラウドPCのタスクビューを開くと、「ローカルデスクトップ」が一覧に表示されるので、これをクリックすることで、ローカルPCのデスクトップに戻ることができる。
特筆すべきは、[Windows]+[Ctrl]+[←/→]のショートカットキーがローカルPCとクラウドPCの行き来でも有効な点だ。
自宅のローカルPCで作業中に[Windows]+[Ctrl]+[→]キーを押すと、画面がヌルっと横スクロールして一瞬で組織のクラウドPCへと切り替わる。
クラウドPCでしか利用できない組織内のアプリなどを利用後、[Windows]+[Ctrl]+[←]キーを押すと、サッと自宅のPCに戻るという具合だ。
不具合に注意して使おう
このようにクラウドPCの敷居が一気に下がる印象があるWindows 365 Switchだが、現状はプレビューなので、やはり不具合が発生することもある。
たとえば、今回、本稿の画面で紹介しているビルド23521では、クラウドPCへの切り替え後、タスクビューに「ローカルデスクトップ」が消えてしまう問題があり、たびたびクラウドPCの再起動が必要になった(8月22日時点での最新ビルドとなる23526で問題が解消されていることを確認済み。現在は問題なくローカルデスクトップに戻れる)。
まだプレビューであり、安定して動作するとは限らないので、注意して利用する必要がありそうだ。
サブPCはクラウドで?
このように、Windows 365 Switchは、クラウドPCを手軽に扱え、ローカルとの環境との切り替えがストレスなくできる優れた機能と言える。
1組のキーボードとマウス、ディスプレイで、2台のPCをシームレスに使っている印象で、プライベートと仕事、事務作業と開発など、2つの環境を簡単に使い分けることができる。
企業向けの機能なので、個人で使う機会はなさそうだが、個人でもこのしくみを利用してサブPC(メインPC?)をクラウド上に持つというのは、とてもよさそうに思える。
現実的には料金がネックになるが、リッチなGPU搭載のクラウドPCをサブに持つなどというのは、何とも夢のある話ではないか。個人向けに、そうしたサービスが登場する未来に期待したいところだ。