清水理史の「イニシャルB」
「UniFi U6 Enterprise」、5万円を切る法人向けWi-Fi 6Eアクセスポイントの実力を検証
2023年9月19日 06:00
Ubquitiから、Wi-Fi 6E対応のアクセスポイント「UniFi U6 Enterprise」が発売された。同社のラインアップの中ではハイエンドクラスに位置づけられる製品だが、法人向けのソリューションとしては、相変わらず格安、いや爆安で、しかも簡単に設定できる。その実力を検証してみた。
もはや法人向けネットワーク機器の価格じゃない!?
日本での知名度はまだ低いが、知る人ぞ知る通信機器メーカーUbiquiti(UniFiは同社製ソリューションのシリーズ名)から、新製品「U6 Enterprise」が登場した。公式ストアでの販売価格は4万8000円。Wi-Fi 6E対応で、4.8Gbps(6GHz)+4.8Gbps(5GHz)+573.5Mbps(2.4GHz)の無線性能と、2.5GbpsのPoE+対応有線ポートを備える高性能アクセスポイントだ。
▼公式ストア
U6 Enterprise アクセスポイント(Unifi Japan Store)
コンシューマー向け製品でも、Wi-Fi 6E対応ハイエンドモデル(Wi-Fiルーター)の実勢価格は4~5万円前後となっているので、法人向け製品としては、激安どころか、爆安と言っていい価格設定だ。
現状、国内メーカーの中小法人向けのアクセスポイントは、同じWi-Fi 6E対応だと2402+1201+573Mbps、2.5Gbps対応のモデルで10万円前後といったところが相場になる。
これに対して、U6 Enterpriseは、5GHz帯と6GHz帯は4804Mbps対応(4ストリーム)と倍増しているにもかかわらず、価格は半額の5万円以下。そう考えると非常にインパクトがある。詳細なスペックを見ていこう。
公式ストア価格 | 4万8000円 |
CPU | - |
メモリ | - |
Wi-Fiチップ(5GHz) | - |
対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/g/b |
バンド数 | 3 |
160MHz対応 | 〇 |
最大速度(2.4GHz帯) | 574Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 4804Mbps |
最大速度(6GHz帯) | 4804Mbps |
チャネル(2.4GHz帯) | 1-11ch |
チャネル(5GHz帯) | W52/W53/W56 |
チャネル(6GHz帯) | 1-93ch |
ストリーム数(2.4GHz帯) | 2 |
ストリーム数(5GHz帯) | 4 |
ストリーム数(6GHz帯) | 4 |
アンテナ | 内蔵 |
WPA3 | 〇 |
メッシュ | 〇 |
IPv6 | - |
IPv6 IPoE(DS-Lite) | - |
IPv6 IPoE(MAP-E) | - |
WAN | - |
LAN | 2.5Gbps×1 |
LAN(LAG) | - |
USB | - |
セキュリティ | - |
VPNサーバー | - |
動作モード | AP |
ファーム自動更新 | 〇 |
LEDコントロール | 〇 |
本体サイズ(mm) | 220×220×48 |
コントローラーの選択肢も多いUniFiシリーズ
U6 Enterpriseのようなアクセスポイントを利用する場合、本体だけでなく、設定や制御のためのコントローラーも「あった方がいい」。
「あった方がいい」ということは、なくてもいいのか? となるが、その通り。なくても使うことはできる。
UniFiの場合、いわゆるコントローラーがなくても、スマホアプリからSSIDとパスワードのみを設定して稼働させることが可能だ。とはいえ、法人での運用を考えると、複数台のアクセスポイントの設定や管理が必要になるので、コントローラーは実質的には必要だと言える。
結局、別途コントローラーを買わなければならないかというと、UniFiの場合、コントローラーはソフトウェアの「UniFi Network Application」(Linux/macOS/Windows)なら無料で利用でき、月々のライセンス料なども必要ない。
社内のサーバーでもいいし、クラウド上のVPSでもいい。インストールするだけで、すぐに法人向けの統合管理が可能になる。もしもインストールが面倒なら、ハードウェアとして提供されるCloud Key Gen2 Plus(3万5858円)を使ってもいいし、ルーターや監視カメラなどのソリューションが一体化されたUniFi Dream Router(3万4998円)を使ってもいい。
近年、店舗やSOHOなどの小規模なオフィス環境でも、コンシューマー向けのWi-Fi機器ではなく、法人向けのWi-Fi機器を使うべきという風潮が高まりつつある。しかし、店舗などで通信機器に数十万円の出費は大きすぎるし、コントローラーやクラウド管理のためのライセンス料などの負担も、毎月となると無視できない。
こうした出費を抑えつつ、ネットワークの分離や監視、セキュリティ対策などを可能にできることが、UniFiシリーズを選ぶ最大の魅力となる。
簡単にセットアップ+インジェクターも2千円と爆安
UniFiは、技術者不要、DIYでも導入できる法人向けWi-Fiを目指した製品なので、セットアップも簡単だ。
今回は、コントローラーとしてUniFi Dream Routerを利用したが、基本的にはU6 Enterpriseを同一ネットワークに接続するだけで、自動的にデバイスリストに表示される。あとは、「Adopt」をクリックしてネットワークに登録するだけでいい。
その後、UniFiのネットワークアプリで、SSIDや認証方式などの設定を行う。SSIDの設定で、「WiFi Band」で6GHzにチェックを付けておけば、Wi-Fi 6Eの6GHz帯も利用できる。
なお、U6 Enterpriseは、2.5GbpsのPoE+によって、電源供給と有線接続を実現しているが、この接続先(U6 Enterpriseに給電できる2.5GbpsとPoE+に対応したポート)が必要となる。
今回利用したUniFi Dream Routerは、有線ポートのうち2つがPoE対応となっているが、これはPoE+ではない。
そこで、今回は、イーサネットケーブルを中継するように接続することで、PoEデバイスに電力を供給できるアダプター「PoE+ Adapter(U-POE-at)」を利用することにした。
ただし、このPoE+アダプターは、公式にはmGig(マルチギガビット)に対応していないため、1Gbpsでの接続までしか「正式には」サポートされていない。保証されるのは1Gbpsまでの接続となることに注意が必要だ。
魅力は価格だけではない、十分なパフォーマンスを検証
肝心のU6 Enterpriseの性能だが、こちらも優秀だ。以下は、木造3階建ての筆者宅にてiPerf3のテストをした結果となる。近距離は有線が1Gbpsまでとなるため、そこがボトルネックになってしまった。しかしながら、長距離での結果は優秀で、3階でも下りで400Mbpsオーバーを実現できている。余裕の帯域を実現できており、空いている6GHz帯のおかげで、2~3階も高速で性能に文句はない印象だ。
小規模なオフィスなら、これ1台でまかなえるが、フロアに複数台のアクセスポイントを設置する場合でも、カバーエリアを広く採れるうえ、6GHz帯のおかげで隣接するアクセスポイントとの干渉を避けやすいのがメリットだ。
上り/下り | 1F | 2F | 3F入り口 | 3F窓際 |
上り | 965Mbps | 660Mbps | 422Mbps | 193Mbps |
下り | 979Mbps | 972Mbps | 663Mbps | 429Mbps |
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/Realtekオンボード2.5Gbps/Windows11 Pro
法人向けの選択肢として要チェック
以上、UniFiの新製品となるU6 Enterpriseを実際に試してみたが、かなり満足度が高い製品だ。
UIの一部が英語だったりして課題もあるが、法人向け製品としては、価格半額で性能は倍という、脅威のコスパの高さを実現している。
DIY色が強いあたりが、米国では熱狂的に支持される一方で、日本では反対にハードルの高さにつながっているような気もするが、実際に使ってみると、初期セットアップは驚くほど簡単だ。
国内での存在感も徐々に高まりつつあり、今年開催されたInterop23では、モバイルコンピューティング(エンタープライズ)部門でシスコと並んで準グランプリを獲得している。
もちろん、設定や運用にはそれなりの慣れが必要だが、慣れで解決できるので、個人ユーザーでも興味がある人はぜひ使ってみることをおすすめする。自宅に法人レベルのパワフルなネットワークを導入できるはずだ。