第297回:撮影した写真をネットワークで「送る」「見る」
パナソニックの無線LAN搭載デジタルカメラ「LUMIX DMC-TZ50」



 パナソニックからIEEE 802.11b/g準拠の無線LANを内蔵したコンパクトデジタルカメラ「LUMIX DMC-TZ50」が発売された。公衆無線LANや自宅の無線LANを利用して、撮影した写真をアップロードできるだけでなく、カメラ側に写真を表示することも可能な製品だ。その使い心地をレポートする。





デジカメ+通信機能のニーズとは

DMC-TZ50

 デジタルカメラに通信機能は必要か? これはなかなか難しい問いかけだ。

 これまでにも、無線LAN機能が内蔵されたデジタルカメラはいくつか発売されており、撮影した写真を無線LAN経由でPCに転送するという使い方や、インターネット上のオンラインアルバムや動画共有サービスにアップロードするといった使い方が提案されてきた。

 しかしながら、搭載されている機種が限られた一部ということもあり、まだまだ一般的に普及しているとは言いがたい。

 では、カメラ+通信というニーズはないのかと言われると、携帯電話などでは写真を撮ってメールで送る、インターネット上の掲示板などに投稿するといった使い方がごく当たり前に行われていることを考えると、写真と通信を組み合わせたソリューションに対するニーズがないわけでもない。

 もちろん、常に持ち歩いていて、手軽に撮影できて、すぐに送れるという点では携帯電話にかなわないが、これ以外のデジタルカメラならではの付加価値を提供できれば、通信機能付きのデジタルカメラのニーズを発掘できる可能性もありそうだ。

 そんなことを考えていたところ、タイミング良くパナソニックから発売されたのが、今回取り上げるLUMIX DMC-TZ50だ。

 1/2.33型有効910万画素CCD、35mm換算28~280mm、F3.3~4.9の光学10倍ズームを採用したコンパクトタイプのデジタルカメラだが、IEEE 802.11b/gの無線LANを内蔵しており、オンラインサービスとの連携機能を搭載している。同社製のDMC-TZ5をベースにしたモデルだが、同社サイト「LUMIX CLUB」のみで販売されるモデルだ。


正面側面背面

見た目はベースモデルのDMC-TZ5とほぼ同じだが、グリップ部に「WIRELESS」と記載されている撮影モード時はレンズがせり出してくる

自宅や外出先から写真をアップロード

 では、DMC-TZ50に搭載された無線LANで何ができるのかというと、大きく分けて2つの機能がある。

 1つは従来の無線LAN内蔵デジタルカメラでもお馴染みのアップロード機能だ。同社が運営するデジタルカメラユーザー向けのSNSサイト「LUMIX Club Picmate」(無料の会員登録により1GBまでのオンラインアルバムを利用可能)に対応しており、カメラ本体で撮影した写真を無線LAN経由でアップロードできる。

 実際に利用するには、事前の設定がいくつか必要だ。まずは無線LANの設定だが、本体にはBBモバイルアクセスポイントへの接続設定が登録済みとなっており(2009年5月末まで利用可能な最大6カ月の無料アカウントが付属)、これを利用する場合は特に設定は必要ない。

 一方、自宅や他の公衆無線LANを利用する場合は、手動での設定が必要となる。カメラを再生モードにしてから、ダイヤルを「Wi-Fi」に切り替えると設定画面が表示され、接続先のSSIDや暗号キーを設定する。基本的に設定は手動だが、SSIDは検出できるので、表示された自宅のアクセスポイントを選んで、暗号キーを入力すれば設定完了だ。


無線LANの設定は基本的に手動。接続先のSSIDを選択し、暗号キーを入力するというオーソドックスな方式

 暗号キーの入力は、画面上に表示された文字を本体の十字キーで選ぶという方法だ。AOSSなどのように標準で非常に長いキーが生成されるようなアクセスポイントの場合は、ここだけは若干の手間だろう。

 無線LANの設定が完了したら、続けて「LUMIX Club Picmate」にアクセスするためのIDとパスワードを入力する。事前にPCから加入申し込みを行っておき、メールアドレスをパスワードを登録しておこう。


カメラからオンラインサービスを利用するには、LUMIX Club PicmateのIDとパスワードの登録が必要。画面上の文字を十字キーで選んで入力する

 これですべての作業は完了だ。同じく本体ダイヤルを「Wi-Fi」に設定後、「Webアルバム」を選択後、登録したアクセスポイントを選んで接続すると、自動的にLUMIX Club Picmateに接続される。

 あとは送信先のアルバムを選択し、撮影した写真の中から転送したいものを選んで転送するという手順になる。写真はそのままのサイズで送信することもできるが、標準では3MB(4:3サイズ時)にリサイズされる。

 なお、送信先として指定できるアルバムは「LUMIX ALBUM1」から「LUMIX ALBUM5」という名前で固定されている。これらのアルバムは、はじめてDMC-TZ50からLUMIX Club Picmateへのアップロードを実行した際に自動的に作成される。おそらくアップロードするアルバム名を固定することで処理の手間を簡略化しているのだろうが、自分で作成したアルバムにアップロードできないというのは少々残念だ。





カメラのスイッチを「Wi-Fi」モードにする再生モードで電源を入れると無線LANの接続画面が表示される機能を選択。「WEBアルバム」を選ぶとLUMIX Club Picmateにアクセスできる

アクセスポイントを選択
接続完了後、送信か表示かを選ぶアップロード先のフォルダを選択

アップロード方法を選択写真を選んでアップロード

 もちろん、作成された「LUMIX ALBUM x(xは1~5)」のアルバム名は、PC側から変更することができるが、変更してもカメラ側で認識されるわけではない。たとえば、「LUMIX ALBUM 3」を「カメラからアップ」などとPC側で変更したとする。この状態でカメラからアクセスしても「LUMIX ALBUM 3」はそのまま表示され、さらにLUMIX Club Picmate側に新たに「LUMIX ALBUM 3」が作成される。つまり、固定以外の名前では使えないことになる。

 ただし、アルバムの公開設定に関しては変更可能で、標準では限定公開(LUMIX Club Picmate上で招待したユーザーのみに公開)になっているが、インターネット上に公開したり、非公開に変更することは可能だ。


アップロードした写真はLUMIX Club Picmateに固定名のアルバムとして保存される。公開設定も可能




オンラインアルバムの写真をカメラに表示

 ここまでは、従来の無線LAN搭載デジタルカメラでも実現できた機能だが、DMC-TZ50がユニークなのは、アップロードに加えて写真の表示機能が搭載されている点だ。

 アップロードするときと同様に、カメラのダイヤルを「Wi-Fi」に設定後、アクセスポイントを選択してWebアルバムへと接続する。この状態でメニューから「アルバムを表示」を選択すると、アップロードのときにも紹介した「LUMIX ALBUM1」~「LUMIX ALBUM5」というアルバムが表示される。見たい写真が保存されているアルバムを選択すれば、写真をカメラの液晶に表示できるというわけだ。


表示方法の手順はアップロードとほとんど同じ。接続後に「アルバムを表示」を選べば良い。表示だけでなく、削除やURL送信も可能(あらかじめ設定したアドレスにのみ送信)

 無線LAN経由で表示するために若干のタイムラグはあるが、本体の左右ボタンを押して写真を次々に表示していると、まるでメモリに保存されている写真を再生モードで確認しているかのような印象で利用できる。

 アップロードした写真のうち、不要なものを選んで削除することもできるため、カメラからオンラインアルバムの整理も可能だ。

 ただし、ここでもアルバム名が制約となってしまう。アップロードするときと同様に、表示できるオンラインアルバムのアルバム名は「LUMIX ALBUM1」~「LUMIX ALBUM5」の固定となり、ほかのアルバムの写真は表示できない。

 このため、たとえば日付やイベント名などでアルバムを整理しているような場合は、そのアルバムの写真は、この方法では参照できないことになる。

 現状、カメラからアップロード、写真の表示をすることが多い場合は、「LUMIX ALBUM1」~「LUMIX ALBUM5」という5つのアルバムを用途ごとにうまく使い分けるなどして、このアルバムだけで写真を整理するしかないだろう。

 このあたりをもう少し柔軟に利用できるようになれば、もっと面白いことができたのではないかと少々残念に感じるところだ。たとえば、LUMIX Club Picmateでは、特定のアルバムに友人を招待し、自分と友人の複数でアルバムに対して写真を保存することができるようになっている。

 この機能をDMC-TZ50から使えたとしたら、1つのアルバムにいろいろな人が取った写真をすぐに投稿することができる。結婚式などで複数の人がいろいろなアングルから撮影した写真をひとつのアルバムで共有するのも面白そうだし、別々の場所に旅行した人がアルバムを通じて思い出を共有するなどという面白い使い方もできそうだ。





デバイスとサービスの連携に期待

 インターネット上のサービスは、現在、ソフトウェアとサービスをいかに連携させるかが次世代のカギとして考えられている。しかし、単純なソフトウェアではなく、ソフトウェアとそれを動作させるデバイスがネット上のサービスと連携した方が、もっと面白いことができそうだ。

 今回取り上げたパナソニックのLUMIX DMC-TZ50は、その先駆けと言っても良い製品だ。今までのアップロード機能加えてオンラインの写真を参照することができるようになり、デバイスからシームレスにインターネット上のサービスを利用可能となっている。こういった試みは、今後、さらにほかの家電製品にも広がっていくことだろう。

 ただし、製品とサービスを細かく見た場合、いつくかの制約があるのも確かだ。保存先、参照先のアルバムが固定ではなく、動的に指定可能になるなど、もう一歩、先に進めば面白い使い方が提案できそうなのにと、非常に惜しい印象がしてならない。製品としては面白いし、デジタルカメラとしてもお買い得だとは思うが、今後のさらなる発展に期待したいところだ。


関連情報

2008/6/17 11:01


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。