第314回:小型化、静音化されたRAID5対応NAS
バッファロー「LinkStation LS-Q2.0TL/R5」



 バッファローからRAID5に対応したNAS「LinkStation LS-QL/R5」シリーズが発売された。メディアサーバー、Webアクセス、Time Machine、BitTorrentとさまざまな機能に対応しながら、小型化かつ静音化された新製品だ。その詳細に迫ってみよう。





「小さく」「静か」という基本

バッファローの「LS-QL/R5」シリーズ

 企業向けの製品であっても、最近ではサイズや静音性、消費電力などが重要視されるようになってきたNASが、それが家庭用ともなれば、その基準はなおさらシビアにならざるを得ない。

 そんな最近の状況を考慮してか、今回バッファローから登場した新型のNAS「Link Station LS-QL/R5」は、機能だけでなく、実際に家庭内に設置する際のサイズや音が十分に考慮された製品となっている。

 製品としては、3.5インチのHDD(試用機は500GB、7200rpmのHGST HDP725050GLA360を搭載)を4台搭載したRAID5対応NASだが、従来の「HS-DHTGL/R5シリーズ」と比較して約58%の小型化を実現。家庭にも設置しやすいコンパクトさを実現した。


本体正面本体背面本体側面

 もちろん、単に小型なNASということであれば、同社製、他社製を問わずさまざまな製品が存在するが、メンテナンス性を考慮したカートリッジ製HDDの採用、メディアサーバー、Webアクセス、Time Machine、BitTorrentの搭載など、つまり機能的な妥協をすることなく可能な限りの小型化や静音化が実現されているのが本製品の特徴だ。


カートリッジタイプのHDDで脱着が簡単
フロントパネルがマグネット式のため手軽にメンテナンスできる

 特に静音性に関しては非常に高いレベルとなっており、起動時のHDDスピンアップや初期廃熱のための数分間の高速なファン回転などを除けば、動作音はほとんど聞こえてこない。

 RAID5対応NASの場合、複数台HDD搭載製品ならではの「うなり」、さらには廃熱のためのファンの風切り音がどうしても気になる場合が多いが、本製品は本当に静かで驚かされる。

 もちろん、HDDのうなりなどに関しては、個体差もあるので完全にないとは言い切れないが、少なくともファンの音はまったく気にならないレベルに抑え込まれている。

 製品をよく見ると、従来モデルでは内蔵であった電源がACアダプタ化され、その分空いた本体のスペースに92mmの大型ファンが搭載されるようになった。電源が外部になっただけでも廃熱面で有利だが、さらに大型低回転のファンの採用によって、さほどファンを回さなくても十分な熱対策が可能になったのだろう。

 本製品は東芝の液晶テレビ「REGZA」シリーズ(LAN HDD録画対応の上位モデル)の録画先としても利用できるが、テレビの側やリビングなどに設置しても、音に関してはほとんど気にならないレベルと感じた。





メディアサーバー、Webアクセスなどの付加機能が充実

ソニー製のテレビ(KDL-20J3000)とPS3で動作を確認。映像はMPEG-2のみ再生できた

 前述したとおり、本製品は豊富な機能とサイズや静音性を両立させている製品だが、その機能もなかなか個性的だ。

 まずはメディアサーバー機能だが、DTCP-IPにこそ対応していないものの、一般的な写真や音楽、ビデオ映像などをDLNAクライアントから再生することができる。筆者が試した限りでは、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA KDL-20J3000」やプレイステーション 3(PS3)から本製品に保存されたコンテンツ再生できることを確認できた(ビデオに関してはMPEG-2のみ再生可)。

 iTunesサーバー機能も搭載されているので、音楽や写真、ビデオの保存先として活用のしがいがありそうだ。


Webアクセス機能を搭載し、外出先などからインターネット経由で自宅のNASにアクセス可能

 ただし、個人的な要望を言うならば、いわゆるインターネット上のファイル転送サービスのような使い方ができるとありがたい。もちろんWebアクセス機能でフォルダを公開し、公開したいユーザーを登録しておけば似たような機能を使えるのだが、これだと恒久的な公開になりかねない。

 欲しいのはむしろワンタイム、もしくは数週間から1カ月という短期的な期間での公開だ。NASにデータを保存すると、そのURLを自動生成、招待メールを第三者に送信し、ダウンロードしてもらうなど、まさにファイル転送サービスのような使い方ができれば、大容量のファイルの受け渡しがかなり楽になる。

 現状、インターネット上のサービスは、容量の制限、特に1ファイルあたりの容量制限が厳しかったり、満足な速度が期待できないなど、いろいろな不満を感じることが多い。

 送信先ユーザーのアドレス管理、ファイル保存時や更新時の自動通知、ダウンロード履歴管理、さらに安心して使えるセキュリティなどを提供してくれるようになれば利便性はより高まるだろう。NASはLAN上でデータを共有するための機器だが、それをインターネット上にまで拡大できるようになるとさらに面白そうだ。

 このほか、Mac OS X 10.5に搭載された自動バックアップ機能「Time Machine」のバックアップ先として利用できるほか、BitTorrentによるダウンロードにも利用できるようになっている。BitTorrentに関しては、ダウンロード対象があまり一般的ではないのだが、Linuxのisoイメージなどであれば、4GBオーバーのファイルを複数登録し、あとは放置しておけばいつの間にかダウンロードが完了しているので、確かに便利だ。


BitTorrentにも対応。ダウンロードマネージャを利用してTorrentファイルを登録すれば、自動的にファイルをダウンロードできる




パフォーマンスも良好でお買い得

 最後にパフォーマンスについてだが、実用上のパフォーマンスはまったく問題ないレベルだ。Windows Server 2008などと比較すると見劣りはするものの、通常のファイルコピーなどはスムーズに行うことができる。

 付属のCDによる初期セットアップ、さらにはツールによるバックアップ、フォルダ同期などにも対応しており、使いやすさも問題ない。

 2TBモデルで希望小売価格が7万4300円、1TBモデルでも5万8300円と、決して安い投資ではないが、機能や静音性などを考えるとお買い得と言えるだろう。初心者から上級者まで、幅広くお勧めできる製品だ。


関連情報

2008/10/14 11:11


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。