第348回:ECOモードの活用で未使用時の消費電力をカット

NECアクセステクニカ「Aterm WR4100N」


 使わない時の消費電力を少なくすることで、電気料金の節約やCO2排出量削減に貢献する。そんな無線LANルータがNECアクセステクニカから登場した「Aterm WR4100N」だ。その効果を実際に検証してみた。

常時電源オンの通信機器

省電力機能を搭載したNECアクセステクニカのAterm WR4100N。IEEE 802.11b/g準拠の製品だが、独自の「11nテクノロジー」により最大150Mbps(理論値)での通信に対応する

 以前、我が家に遊びにきた友人が、筆者の仕事部屋を見て「宇宙基地みたいだな」と言ったことがあった。普段は気がつかないのだが、部屋の電気を消すと、そこかしこで無数のランプがチカチカと点滅している。これらランプは、NASやルータ、ハブ、PCなどのインジケータなのだが、確かに暗闇の中で点滅している様子は見慣れないと不思議な印象を受けるのだろう。

 その頃と比べると、使用しないPCはシャットダウンするようになったし、サーバーやNASも夜間はスリープさせるようになり、だいぶ宇宙基地のイメージは薄れたのではないかと思っていたのだが、先日、改めて部屋を眺めてみたところ、そうでもなかった。確かにファンの音や熱は少なくなったのだが、そのかわりにハブやルータなどの通信機器が増えたおかげでランプの数は確実に増えている。しかも、緑や赤に加えて、青と色バリエーションまで増えているのだから、なんとも賑やか状況だ。

 通信機器の消費電力は、PCなどに比べれば確かに少ないが、それでも無線LANルータで5~15W程度、ハブの場合はおおむね1ポートあたり1W程度となっている。このため、ハイエンドの無線LANルータ1台と8ポートハブ1台が動作してれば、それだけでUSB接続型の外付けHDDやシングルドライブのNAS並の電力を消費している計算になる。しかも、これが24時間365日、動き続けているのだから、改めて考えると無視できない存在と言えるだろう。

 そんな中、NECアクセステクニカから登場したのが、「Aterm WR4100N」と「Aterm WR8150N」という2つの無線LANルータだ。「無線LANルータはECOの時代へ」というキャッチコピーが示すとおり、消費電力やCO2排出量に考慮した製品となっている。

 今回はこのうち、小型で低価格なAterm WR4100Nを実際に利用してみた。果たしてその効果はどれほどのものなのだろうか。

11nテクノロジーを採用した小型無線LANルータ

 Aterm WR4100N(以下WR4100N)は、IEEE 802.11b/gに準拠した無線LANルータだ。本体は非常にコンパクトな設計となっており、容量で比べた場合のサイズは、従来製品「Aterm WR4500N」の約35%と半分以下にまで小型化されている。まさに手のひらサイズと呼ぶにふさわしいコンパクトさで、場所を選ばず、どこにでも配置できるようになっている。


Aterm WR8500Nとの比較。半分以下のサイズに小型化されている側面のポートはLAN×3、WAN×1となる。サイズの関係で通常よりLANポートが1つ少ない

 対応する通信規格は前述のとおり、IEEE 802.11b/gであるが、その通信速度は11gの約3倍となる最大150Mbpsとなっている。これは、2チャネル分の帯域を利用するデュアルチャネル、および通信効率向上の技術など、IEEE 802.11n ドラフト2.0で規定される技術の一部を利用しているからだ。

 もちろん、一般的な11n ドラフト2.0に対応した無線LAN機器との互換性も確保されており、接続性も問題はない。300Mbps対応の11n ドラフト2.0製品からMIMOの機能を省略してシングルストリームで通信していると考えれば良いだろう。

 機能面でもかなり充実している。最近の無線LANルータは無線規格以外、上位機種との機能差がほとんどなくなりつつあるが、本製品も同じで、接続設定が簡単にできる「らくらく無線スタート」や「らくらくネットスタート」、ゲーム機の接続に便利な「マルチSSID(ネットワーク分離機能対応)」、URLフィルタリング機能の「インターネット悪質サイトブロック」などの機能を搭載している。

 本体のみの単体モデルの実売価格が7000円前後(安いところでは5000円台)である点を考えると、コストパフォーマンスは高い製品だと言えるだろう。

最大27%消費電力を削減

 では、肝心のエコ機能とはどのようなものだろうか。今回、WR4100NとWR8150Nに搭載されたのは「ECOモード」と呼ばれる機能だ。本体前面に「ECO」と書かれたボタンが確認できるが、このボタンを長押しすることで、消費電力を最大27%削減できるようになっている。

 具体的にどのように消費電力を減らすのかというと、無線LANの電波を停止し、有線LANのリンク速度を10Mbpsに制限、さらに電源以外のLEDを消灯するという仕組みになっている。

 WR4100Nの場合、その消費電力は最大5.5Wとさほど多くないのだが、これらの工夫によって、1.5W前後の電力を節約できる計算になる。実際、ワットチェッカーを利用してテストしてみたところ、通常の消費電力は5~6W(今回のワットチェッカーでは1W単位でしか計測できなかった)だったのに対して、ECOモードに設定すると4Wに低下させることができた。


前面のボタンを長押しするとECOモードに移行。無線が停止し、LANが10Mbpsになり、一部のLEDが消灯するECOモード時の消費電力。4Wと1~1.5Wほどの節約が可能

 もちろん、値としてはごくわずかな低下となるが、WR4100NではこのECOモードをスケジュール設定によって自動的に利用することが可能となっている。設定画面からECOモードの設定を開き、ここに時間を入力することで、毎日、定期的にECOモードへと移行させることができるのだ。

 前述したようにECOモードで削減できる消費電力は1W前後とわずかだ。しかし、例えばこれを夜間8時間、365日にわたって毎日削減できるとすればどうだろうか。塵も積もれば山となる、ではないがその効果は大きくなるだろう。

 また、他の用途への応用も可能だ。特に子どものインターネット利用について何か対策を検討している場合は、使い方によっては有効な対策として利用できる。というのも、ECOモードを利用すると、無線LANの電波が停止する。つまり、夜間などECOモードに自動的に移行するように設定しておけば、この時間帯のインターネット利用を制限できることになる。

 もちろん、有線LANは有効になるので、無線LANに限った話となるが、子どもが夜間に自由にインターネットを利用することに対する一定の抑止になることは間違いない。さらにインターネット悪質サイトブロック機能と組み合わせて使えば、子どものインターネット利用対策としてはなかなか効果的と言えるだろう。


ECOモードはタイマーによって自動的に設定することもできる。無線の電波が停止するので夜間のインターネット利用禁止などの利用制限にも使える

 なお、タイマーを設定した場合、設定した時間になると、特に通知なく、しかも通信状態に関係なく強制的に移行する。つまり、タイマーを設定したことを忘れてインターネットを利用していた場合でも、突然通信が切れることになるので注意が必要だ。

2.4GHz帯での無線LAN利用はもはや限界

 最後に、パフォーマンスについて触れておこう。冒頭で紹介したように、本製品は150Mbpsの通信速度に対応しており、通常の11gなどに比べると高速な通信、および長距離での安定性が期待できる。

 ただし、本製品に限らず、もはや2.4GHz帯の電波を利用する無線LANに関しては、製品の技術というより、もはや環境の方がパフォーマンスに与える影響は大きそうだ。以下のグラフは、木造3階建ての筆者宅で計測した実際の速度だ。1階にWR4100Nを設置し、それぞれのフロアでFTPによる速度を計測した。


サーバー:ATOM330/RAM2GB/HDD1TB/Windows Home Server/IIS FTP使用
クライアント:富士通LOOX R/A70(Core 2 Duo SL7100/RAM4GB/120GB HDD/Windows Vista)

 1階でも最大で40Mbpsとあまり速度が出ていないが、3階では5Mbps前後とかなり落ち込んでしまっている。これは、筆者宅の周辺にアクセスポイントが多いことが影響しているからだ。筆者宅の前には、アパートが数棟並んでいるのだが、今年4月の引っ越しシーズンあたりから、どうやら無線LANの利用者が増えたようで、3階では見えるだけで周辺にアクセスポイントが7つも存在し、特にデュアルチャネルを利用するにあたって空いている無線チャネルを探すことが難しくなってきている。もはや2.4GHz帯は限界かもしれない。

 このあたりの改善策については、また別途機会を設けて検証&レポートしていく予定だが、今回のテスト結果については、あくまでも混雑が激しい環境での参考値と考えて欲しいところだ。


筆者宅3階でのチャネル検索結果。デュアルチャネルで確保できる空きがない上、他の無線LANアクセスポイントの電波も強い筆者宅3階での通信レート。かなり遅い速度でしかリンクしていない

手軽なインターネット利用におすすめできる製品

 以上、NECアクセステクニカのWR4100Nをテストしてみたが、エコという発想はなかなか面白いと感じた。家電ほど消費電力を気にしないPC関連製品だが、これからは家計的にも、環境的にも多少なりともエコを考慮していけなければならない時代と言えるだろう。

 機能や使いやすさを考慮すると、WR4100Nはコストパフォーマンスも高いだけに、手軽なインターネット利用におすすめできる製品と言えそうだ。


関連情報

2009/6/30 11:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。