清水理史の「イニシャルB」
予想以上に便利な記憶域スペースやSkyDrive連携
Windows 8+NUC+Thunderboltで作る自宅サーバー
(2013/1/22 06:00)
20クライアント以下の環境であれば、これはもう立派なサーバーだ。クライアントOSとなるWindows 8でも、記憶域スペースなどの機能を駆使すれば、自宅や小規模なオフィスのファイルサーバーとして立派に活用できる。小型のNUCを利用し、サーバーとして設定してみた。
サーバーとしても使えるWindows 8
市販のNASを購入しようか? それとも自前でファイルサーバーを用意すべきか?
これから、家庭や小規模なオフィスなどのファイル共有環境を用意しようとしている人にとって、その環境をどのように構築するかは、実に悩ましいところだ。
数年前であれば、Windows Home Serverで鉄板と自信を持ってオススメできたのだが、残念ながら初代Windows Home Serverのサポート期限が2013年1月8日に終了してしまった。もちろん、その後継となるWindows Home Server 2011はまだ入手可能だが、こちらも製品末期となるうえ、ラインナップ再編でエントリー向けとして新たに提供されるようになったWindows Server 2012 Essentialsは、機能的に企業向けとしての色合いが強く、価格も参考価格で8万1700円と、個人では手を出しにくくなってしまった。
つまり、使い慣れたWindowsのUIで簡単な設定をするだけで、手頃なPCを、ファイル共有やメディア共有、バックアップなど、さまざまな機能を持たせたサーバーとして活用できるソリューションが、身近に見当たらなくなってしまったわけだ。
では、もはや自分でサーバーを用意することは現実的ではないのだろうか? どうやら、そこまで悲観する必要はなさそうだ。
昨年10月、新たなOSとして登場したWindows 8は、クライアント向けの製品でありながら、ファイル共有を簡単に設定できるうえ、初代Windows Home ServerのDrive Extenderに近い「記憶域スペース」と呼ばれる安全かつ大容量なストレージを構成できる機能や仮想環境を構築できる「Hyper-V」などのサーバー向けの技術も搭載されている。
OSのソフトウェアライセンス条項にも、以下のような記載があり、20台までのクライアントでファイル共有などに利用することも可能だ。
Windows 8 マイクロソフト ソフトウェアライセンス条項 追加条項dより抜粋 |
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「ライセンスを取得したコンピューターでファイル サービス、印刷サービス、インターネット インフォメーション サービス、インターネット接続の共有およびテレフォニー サービスを利用することを目的として、ライセンスを取得したコンピューターにインストールされた本ソフトウェアに対し、最大 20 台の他のデバイスからの接続を許可することができます。」 |
しかも、本コラム掲載からあまり猶予はないが、2013年1月31日までであれば、Windows XP/Vista/7からWindows 8にアップグレードするためのパッケージ版を特別価格(参考価格税込6090円。PC1台につき1ライセンス、個人もしくは組織あたり合計3ライセンスまで)で購入できる。
実際に、サーバーとして運用するには、後述するようにハードウェアの費用が別途かかるが、家庭や小規模オフィスなど、あまり費用がかけられない環境のサーバーとして、これを利用しない手はないだろう。
構成とハードウェアを検討する
それでは、実際の構築例を見ていこう。今回構築するのは、LANでのファイル共有に加え、外出先からサーバーのファイルにアクセスしたり、メディアをストリーミングしたりといったことができるサーバーだ。前述した記憶域スペースを利用し、冗長性を確保しつつ大容量のファイルサーバーとして構成し、SkyDriveアプリを利用して外出先からのアクセスやメディアストリーミングを実現する。
利用するハードウェアだが、Windows XP/Vista/7がインストールされたPCをそのまま流用し、特別価格のアップグレード版 Windows 8を利用するのが、最も元手もかからず安価だ。しかしそれだけでは面白味に欠けるため、今回はNUCフォームファクタを採用したインテルの「DC3217BY(オープンプライス、実売3万円前後)」を利用することにした。
OSは、手元に余っていたWindows 7のライセンスを元に、特別価格のWindows 8のアップグレード版を購入して費用を節約する。事前にWindows 7などアップグレード元のOSをインストールする手間はかかるものの、コンパクトで静音性に優れたNUCは、家庭や小規模オフィス向けのサーバーとして興味深い存在と言える。
同様のインテル製NUCキットには、Gigabit Ethernetを搭載した「DC3217IYE」も存在し、一見、こちらの方がサーバー向けに思えるが、ストレージをUSB2.0でしか接続できないため、大容量化に向かない。
これに対して、今回利用したDC3217BYは、有線LANポートが搭載されていないものの、拡張用にThunderboltが搭載されている。このThunderboltを活用すれば、有線LANやストレージを外部に拡張することができる。今回は、Thunderboltの実用性を探る意味も含め、この形態でサーバーとして構成することにした。
なお、設置場所の心配がないのであれば、小型のNUCではなく、ミニタワーの低価格サーバー機などをはじめから使った方がコスト的にも、信頼性的にも有利だ。このあたりは、設置場所や用途によって慎重に検討するといいだろう。
ハードウェアの準備
それでは、実際にサーバーを構築していこう。まずは、ハードウェアの準備だ。前述したDC3217BYは、CPU、マザーボード、電源、筐体のみのキットとなっているため、メモリとストレージ、さらに電源アダプタに接続するケーブル(3ピンのいわゆるミッキータイプ)を用意する必要がある。
今回は、メモリとして2GBのSO-DIMM×2の合計4GBを利用し、ストレージには128GBのmSATA SSDを利用した。年末以来、PCパーツの相場は若干上昇傾向にあるが、メモリで2500~3000円前後、SSDで1万~1万2000円前後といったところが目安になるだろう。
続いて、ストレージとネットワーク環境を用意する。前述したように、DC3217BYには、有線LANポートがない存在しないうえ、USBも2.0のみの対応となるためサーバーとして利用するには、これらの欠点を解消する必要がある。
そこで、今回は、Thunderbolt経由でネットワークとストレージを追加することにした。ネットワークに関しては、AppleからMac用に販売されている「Thunderbolt-ギガビットEthernetアダプタ(実売2800円前後)」を利用した。利用に際してはいくつか注意点があるのだが(詳しくは後述)、BroadcomのBCM57762チップが採用されており、BroadcomのサイトからWindows 8用のドライバもダウンロードできる。
ストレージに関しては、すべてThunderboltで揃えてもかまわないが、今回は、Thunderbolt+eSATAという構成にすることにした。ThunderboltのHDDとしては、「LaCie Little Big Disk Thunderbolt(500GB×2の1TBモデル、オープンプライス、実売2万円前後)」を利用した。1台で2台のHDDを利用できるうえ(出荷時はMacOS XのRAID0で構成)、背面にThunderboltのポートが2つ用意されており、デイジーチェーンで機器を複数台接続することができる。
一方、eSATAは、LaCieの「LaCie eSATA Hub Thunderbolt Series(オープンプライス、実売1万9800円前後)」を利用し、ThunderboltをeSATAに変換後、2TBの3.5インチ HDDを2台接続した。LaCie eSATA Hub Thunderbolt Seriesは、eSATAのポートマルチプライヤ接続に対応していないため、個別にHDDを接続する必要があるので注意しよう。まとめると以下のような接続になる。
Thunderboltは、SCSIのようにデイジーチェーンで複数の機器を数珠つなぎで接続できるうえ、PCI Expressの技術をベースにしているため、さまざまな機器に対応できるのが強みだ。対応機器が少なく、価格が高いのが欠点で、ケーブル1本で4000~5000円もするのに驚かされるが(LaCie eSATA Hub Thunderboltには同梱されないので別途購入が必須)、10Gb/sの双方向ストリームを2本持つパフォーマンスから、今後の発展が期待できる。
Mac用と思われがちだが、Windows環境でも問題なく利用可能となっており、ドライバなどの導入などは一切必要なく、Windows 8で認識させることが可能だ。Windows向けの拡張インターフェイスとしても注目したいところだ。
Windows 8の環境を整える
ハードウェアの準備ができたら、Windows 8をインストールしていこう。前述したように、アップグレード版のWindows 8を利用する場合は、まずベースとなるOSをインストールする必要がある。DC3217BYは標準でUEFIブートに対応しているので、アップグレード元としてWindows 7をインストールするといいだろう。
Windows 8にアップグレードしたら、最初にネットワークドライバをインストールする。Windows 8では、Thunderbolt自体は何もしなくても認識するが、「Thunderbolt-ギガビットEthernetアダプタ」はInboxのドライバでは対応できないため、別途、ドライバのインストールが必要になる。
Broadcomのダウンロードサイト(http://www.broadcom.com/support/ethernet_nic/netxtreme_desktop.php)から、Windows 8用のドライバをダウンロードし、USBメモリ経由でコピーしてインストールしよう。
なお、DC3217BYのファームウェアが古いと、Thunderbolt-ギガビットEthernetアダプタがスリープから復帰するのに長い時間かかる(正確にはスリープから復帰せずにデバイスとして再接続が行なわれる)ことや、HDMIのサウンドが正常に出力されない場合がある。ネットワークに接続後、すみやかに最新ファームに更新しておこう。
ただし、ファームウェアの更新でスリープからの復帰自体は可能になっても、スリープ中はThunderbolt-ギガビットEthernetアダプタを接続したThunderbolt機器自体の電源がオフになってしまうため、ネットワークは通電しない。このため、Windows 8のホームグループのウェイク機能やマジックパケットなどを使ってネットワーク経由でPCのスリープを解除することはできないので注意しよう。
サーバーとして利用するのであれば、常時電源オンで使うことになるので、電源管理でスリープへの移行を解除しておくといいだろう。消費電力は今回のすべての機器を接続した状態で通常時30ワット、負荷時34ワット、アイドル時(HDDスリープ時)21ワットとさほど高くないので心配ないだろう。
また、ネットワークが認識されたら、その速度をチェックしておくこともおすすめする。筆者が試した限り、Thunderbolt-ギガビットEthernetアダプタでは、下りはFTPで800~900Mbps前後の速度で通信できるものの、上り方向の速度が150~160Mbps前後で頭打ちになる傾向が見られた。
RSSの有効無効や受信ウィンドウ自動チューニングレベル、チェックサムオフロードなどのパラメータを調整してみたのだが、結果的には単純にドライバ、もしくはネットワーク接続を再起動すれば、速度を改善できることがわかった。せっかくのスピードを無駄にするも悲しいので、以下のようなバッチファイルを作成し、タスクスケジューラで起動時に管理者権限で自動実行するといいだろう。
ここから、注意点が多くなるので、以下にまとめを掲載していく、DC3217BYを使う際の参考になれば幸いだ。
- Thunderbolt-ギガビットEthernetアダプタはBroadcomからダウンロード
- DC3217BYでHDMI音声出力やThunderboltのスリープからの復帰が不可の場合はファームを最新に
- スリープ中はThunderboltに通電しないためWOLは使用不可
- Thunderbolt-ギガビットEthernetアダプタの上りが遅いときはドライバかネットワーク接続を再起動
記憶域スペースを作成する
続いてストレージを準備する。記憶域スペースで領域を作成するには未フォーマットのHDDが必要になる。あらかじめディスクの管理で接続したHDDの領域を削除しておこう。
なお、今回利用した「LaCie Little Big Disk Thunderbolt」は、標準でMacOS X向けにRAID0(HFS+)で構成されている。このパーティションはWindowsのディスクの管理からは削除できない場合がある。Thunderbolt搭載のMacから領域を削除するのが簡単だが、環境がない場合は、管理者権限のコマンドプロンプトからdiskpartを起動し、「select disk 番号」で該当ディスクを選択後、「clean」で構成情報を削除しておこう。
ここまで準備ができれば、記憶域スペースを使って領域を作成するだけだ。コントロールパネルの「記憶域」を起動し、「新しいプールと記憶域の作成」をクリックする。PCに接続したHDDが表示されるので、すべて選択し、「プールの作成」をクリックする。
プールの作成が完了すると、記憶域の作成画面が表示される。ドライブとして認識されたときのドライブレターや名前(ボリュームラベル)、回復性の種類、サイズを選択する。
記憶域スペースは、このようにHDDの物理的な構成と論理的な記憶域の構成を切り離し、柔軟な構成をすることができる機能だ。今回の例のように、接続方式や容量が異なるHDDを「記憶域プール」という概念で1つのグループ化し、このプールに対して、実際にPCからドライブとして認識できる「記憶域」を割り当てることができる。
興味深いのは、前述した設定に登場した「回復性」と「サイズ」だ。回復性は、複数のドライブにデータを分散して書き込むことで冗長性を確保する機能となる。回復性のない「シンプル」、同じデータを2台のHDDに保存する「双方向ミラー」、3台に保存する「3方向ミラー」、データから生成したパリティ情報を複数台のHDDに分散して保存する「パリティ」を選択できる。
2台のHDDの故障に対応できる3方向ミラーがもっとも安全だが、5台のHDDが必要になるため、通常は2台のHDDから利用できるミラーを選択するといいだろう。3台以上のHDDが用意でき、パフォーマンスを重視するのであればパリティを選ぶのもいい選択だ。いずれにせよ、記憶域スペースを利用することで、手軽にHDDの故障からデータを保護することが可能となる。
一方、サイズは、物理的なHDDの容量に関係なく設定できるようになっている。たとえば、今回は500GB×2、2TB×2の合計5TBの領域が存在するが、設定時に容量を10TBとすることもできる。いわゆる「シンプロビジョニング」の考え方だ。
もちろん、今回の例で言えば、物理的な容量は5TBしかないため、この容量を超えてデータを書き込もうとすれば問題が発生することになる。しかし、ここで、前述したように論理的な記憶域と物理的なドライブが切り離されていることが効いてくる。つまり、新しいドライブをプールに追加すればいいわけだ。
また、記憶域スペースは、プールに対して複数設定することもできる。このため、たとえば写真や文書などの重要なデータを保存するドライブを双方向ミラーで作成し、一時的にデータを保存する領域は回復性なしの「シンプル」で構成するなど、用途によって回復性を選択することができる。
このように、記憶域スペースでは、OSから使えるストレージの容量と物理的なドライブを切り離して柔軟に管理できる。RAIDのように初期設定で冗長性や容量が固定されてしまうことがないため、ストレージにかかる初期投資や消費電力を軽減できると同時に、段階的なストレージの拡張、さらには用途によって異なる回復性を使い分けることまでも容易にできるというわけだ。
もちろん、個人宅や小規模オフィスでの利用では、そこまで難しいことは考えなくてもいい。単に、容量が足りなくなっても後からドライブを追加したり、違う回復性で記憶域を作ったりできる、と考えておけばいいだろう。
ここまでも簡単にまとめておくと以下の点がポイントとなる。
- Mac OS向けHDDの領域を削除するにはdiskpartコマンドで「clean」を実行
- 記憶域スペースでは、異なるインターフェイスの複数HDDをグループ化して利用可能
- 回復性は、「双方向ミラー(最低2台)」、「パリティ(最低3台)」、「3方向ミラー(最低5台)」が利用可能
- 実サイズ以上の記憶域スペースを仮想的に確保できる
- 容量不足の際などでも後からドライブを追加することが可能
回復性に優れる記憶域スペース
このように、簡単な設定で大容量のストレージ環境を柔軟に構成できる記憶域スペースだが、万が一の障害の際でも、簡単な方法でストレージを回復させることができるようになっている。
以下は、今回構成したNUC+Thunderboltをベースにした回復性の例だ。4台のHDDを記憶域プールとして構成し、その上に双方向ミラーとシンプル(回復性なし)の2つの記憶域スペースを作成した場合となる。
まずは、シンプルの領域に関してだが、故障を想定して1台のHDDを取り外すと、それだけでエクスプローラーからドライブが消去され、アクセスすることができなくなる。元のHDDのデータが無事であれば、接続しなおすことで回復可能だが、故障などでHDD内のデータが破壊されている場合は、この領域のデータは無くなってしまうので注意しよう。
一方、双方向ミラーの領域では、データが2台のHDDに書き込まれるため、1台のHDDを取り外したとしても、問題なくデータにアクセスできる。この際、記憶域スペースの画面からは、「回復性低下」とエラー表示されるが、エクスプローラーからは何の問題もなく、データの読み書き可能だ。
この状態で、元のHDDを再び接続しなおせば、エラーが自動的に解消され、元通りの回復性が確保されるようになる。1台のHDDがない状況で、新たに更新されたファイルがあった場合でも、自動的にミラーが再実行される。うっかり、HDDのケーブルを抜いてしまったり、電源をオフにしてしまったり、といった場合でも安心だ。
もしも、故障などで、取り外した1台のHDDのデータが完全に失われてしまった場合は、上図の最下段右側の方法で回復できる。新たにHDDを記憶域プールへと追加し、記憶域プールの回復性を再確保し、その後で、記憶域プールから故障したHDDの情報を削除すればいい(今回の例ではシンプルで構成した記憶域スペースの削除も必要)。
この際、追加するHDDは元のHDDと同じ容量、同じ接続方式である必要はない。たとえば、2TBのeSATA HDDの代わりに1.5TBのUSB HDDを利用したとしても、データ容量が逼迫していなければ、問題なく記憶域スペースを回復できる。こういった柔軟な回復性は、RAIDでは考えられないメリットだ。
ただし、不幸にも双方向ミラーで2台のHDDが故障してしまうと、その時点で記憶域スペースにはアクセス不可になる。上図の例のように2台以上のHDDを利用している場合、データによっては、故障したHDD以外に保管されている可能性はあるが、それでもストレージとしてはアクセス不可になるので注意しよう。双方向ミラーの場合、あくまでも保護されるのは1台の故障までだ。
ちなみに、記憶域スペースでは、構成情報がすべてHDDに保存されている。このため、構成したHDDを別のPCに接続したとしても、そのPCのOSが記憶域スペースをサポートしており、かつ記憶域プールを構成するHDDの台数が回復性を確保できる台数そろっていれば、特に何の設定もしなくても、ドライブとして認識させることができる。
今回のサーバーのように、OS部分とストレージ部分を切り離して構成しておけば、万が一、CPUやメモリなどPC本体側にトラブルが発生しても、即座にストレージを復旧させることができる。これも記憶域スペースならではのメリットだ。
まとめると、以下のようになる。
- シンプルは1台、双方向ミラーとパリティは2台、3方向ミラーは3台の故障でアクセス不可
- HDDのデータが無事なら再接続で再び回復可能
- 完全にHDDが故障した際は、新HDDを追加してから、旧HDDを削除
- 追加するHDDは、以前と同じ容量、接続方式である必要はない
- 記憶域スペースをサポートし、回復性を確保できる台数があれば、HDDを別のPCに接続しても自動的に認識可能
メディアも共有可能なうえパフォーマンスも十分
記憶域スペースの設定が完了したら、あとはフォルダを共有するだけだ。ホームグループを利用するのが簡単だが、Windows 8/7以外のOSがネットワーク上に存在する場合は、記憶域スペースで認識されたドライブにフォルダを作成し、右クリックして「共有」から「特定のユーザー」を選択して、共有に設定しておこう。
ユーザーごとにアクセス権を設定したいのであれば、他のPCで使っているユーザーアカウントを登録するなどの設定も必要になるが、そうでないなら、このPCのユーザーアカウントをネットワーク上のすべてのユーザーで共有してしまうのが手っ取り早いだろう。他のPCからのアクセス時に、このPCのユーザーアカウントを指定し、資格情報として保存してしまえばいい。もちろん、Guestを有効化し、Everyoneに読み書きの権限を与えるといった方法も利用可能だ。基本的にはホームグループを利用し、どうしてもという場合のみ手動で設定するといいだろう。
もしも、写真やビデオ、音楽などのメディアを共有したいのであれば、Windows Media Playerを起動し、メディアを保存した共有フォルダをライブラリに追加後、「ストリーム」メニューからメディアストリーミングも有効にしておこう。
これで、ネットワーク上の他のPCのWindows Media Playerはもちろんのこと、DLNAに対応した家庭用テレビやゲーム機などからもPC上のメディアを参照、再生することができるようになる。
さらに拡張したいなら、リモートメディアストリーミングを利用してインターネット経由でアクセスできるようにしてもいい。外出先からの再生に関しては、SkyDrive経由で動画をストリーミングすることもできるので、いろいろな方法を試してみるといいだろう。
さて、気になるパフォーマンスだが、ギガビットと高速なストレージを使えるようにしたおかげで、なかなか優秀な結果となった。以下は、ネットワーク上の他のPC(Core i5-3317U/RAM 4GB/1000BASE-T/Windows 8 Pro)から、Crystal Disk Mark 3.0.1cを実行した結果だ。
シーケンシャルのリードで39.88MB/s、ライトで52.77MB/s、512Kのランダムリードで24.18MB/s、ライトで48.09MB/sといった値が計測できた。一般的なNASと同等のパフォーマンスを実現できると言って良い。ネットワーク上の他のWindows 8搭載機から6GBのファイルをドラッグしてコピーしてみたところ、ファイルコピーのダイアログ上で平均して100MB/s前後の値を表示できたので、普段の利用シーンでは、Crystal Disk Mark以上に体感速度は速いと言える。
ちなみに、同じテストをDC3217BYのSSD(mSATA接続)に対して実行したのが、以下の左側の画面で、USB2.0接続のHDDに対して実行したのが以下の右の画面となる。ストレージの接続方式は、予想以上にパフォーマンスに影響するので、できれば、今回の構成のようにThunderboltやeSATAを利用した方がいいだろう。
まとめると以下がポイントとなる。
- ホームグループの利用が手軽
- メディア共有はWindows Media Playerのメディアストリーミングで
- USB2.0ではパフォーマンスを確保できないのでSATA、eSATA、USB3.0、Thunderboltを推奨
SkyDriveアプリでリモートアクセスを実現
スマートフォンやWindows 8搭載タブレットからも、サーバーに保存したデータにアクセスしたい場合は、SkyDriveを活用するといいだろう。
Windowsデスクトップ版のSkyDriveアプリを利用すると、PC上のフォルダをSkyDrive.comと自動的に同期させたり、SkyDrive.com経由で外出先から自宅のサーバーにアクセスしたり、といったことができるようになる。
使い方は簡単で、SkyDriveのサイト(https://apps.live.com/skydrive)から、アプリをダウンロードし、インストールすればいい。初期設定時に、同期フォルダの設定が表示されるので、記憶域スペース上に「SkyDrive」フォルダなどを作成して、共有しておき、ここを同期対象に設定すれば、LAN内での共有と同時にSkyDriveと同期させることができる。
SkyDriveの容量は7GB(従来からのユーザーは25GB)と限られているため、通常の共有フォルダとは別に、同期対象専用の共有フォルダを用意し、同期したいものだけを保存するようにメンバーに伝えておくといいだろう。
外出先からアクセスする際は、ブラウザを利用してSkyDrive.comにアクセスすればいい。同期されたデータにアクセスできるうえ、左側の「PC」一覧に表示されているサーバー名をクリックすれば、サーバー上の「お気に入り」に登録されたフォルダやライブラリ、作成した記憶域スペースを含むドライブにアクセスすることができる。ここからフォルダをたどっていけば、サーバー上の任意のデータにどこからでもアクセスできるというわけだ。
このとき、サーバーを起動させておくのはもちろんのこと、サインインしてSkyDriveアプリを起動した状態で保っておく必要があるので、netplwizを利用して、起動後、自動的にサインインするように構成するなど、工夫をしておくといいだろう。
なお、SkyDriveのアプリは、Windowsストアアプリ、Android用、iOS用なども用意されるが、PCにアクセスする場合はブラウザからのアクセスが必要となる。スマートフォンからアクセスしたいデータは、前述した同期フォルダに保存しておくといいだろう。
このほか、SkyDriveでは、ビデオのストリーミング再生にも対応しており、上記の方法でサーバー上に保存されているビデオデータをクリックすると、その場で映像を再生することができる。
NASやWindows Home Server 2011で提供されているリモートアクセス機能やメディアストリーミング機能を、ルーターの設定やDynamic DNSなどを一切使わずに、ここまで手軽に実現できてしまうのだから、サーバーとしての実用性は高いと言えるだろう。
以下に、この部分をまとめておく。
- SkyDriveで共有フォルダをクラウド上のストレージと自動同期
- 外出先からサーバーにリモートアクセスすることも可能
- 動画ファイルはストリーム再生も可能
まだまだ広がる可能性
以上、NUCフォームファクタのPCに、Thunderboltでストレージを追加し、Windows 8でサーバーとして使えるように設定してみたが、簡単な設定だけで、かなり高機能なサーバーとして使えることがわかった。
自宅内やオフィス内のデータ共有やメディア共有の手段としてはもちろんのこと、外出先からのアクセス手段として利用すると便利だろう。また、今回は詳しく紹介しなかったが、Windows 7やWindows 8のバックアップ先や、Windows 8のファイル履歴の保存先として利用することもできる。
また、Hyper-Vをインストールし、Windows XPなどの旧OSをサーバー上にインストールしておき、リモートデスクトップ経由で利用するといったこともできる。小規模なオフィスなどでは、どうしてもWindows XPの環境を残しておきたい場合もあるので、このような使い方も検討するといいだろう。
このほか、テレビチューナーユニットなどをPCに接続して利用することも簡単にできる。DTCP-IPの配信に対応した製品を選べば、サーバーで番組を録画して、ネットワーク上の他のPCやテレビに配信するといった環境も簡単に構築できるだろう。サーバーOSではなく、一般的なクライアントOSであることがむしろメリットとなるわけだ。
問題は、今回のケースでは、Thunderboltの機器を用意するのに費用がかかりすぎてしまった点となる。よって、低価格で済ませたい場合は、NUC+Thunderboltという構成ではなく、低価格なサーバーPCとSATAの内蔵HDDで構築するといいだろう。いずれにせよ、クライアントOSとしてだけでなく、サーバーOSとしても、Windows 8を楽しんでみることをおすすめしたいところだ。