週刊Slack情報局

「Slackを使ってみるまで分からなかったこと」、KCCSの導入担当者が語る

業務の“カイゼン”にとどまらず、企業の“カルチャー”まで変わる

 Slackの導入事例を紹介するセミナーイベント「Why Slack? 導入事例紹介セッション」が1月下旬、Slack Japanの大阪オフィスで開催され、Slackを活用して業務や働き方の改革を進める3つの企業が登壇した。今回はその中から、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)の導入事例「Slack活用によるカルチャ変革に挑む!」の発表内容を紹介する。

京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)内でSlack導入を進めてきた同社ICT事業本部の慶松寿洋氏

段階的に利用者を増やし、社内に“Slackファン”を増やす

 KCCSは電子情報通信機器機メーカーの京セラグループに属する情報システム企業で、3000人を超える従業員を抱えている。事業は大きく「ICT」「通信エンジニアリング」「環境エネルギーエンジニアリング」「経営コンサルティング」の4つがある。今回、Why Slack?で発表を行った慶松寿洋氏はICT事業本部プラットフォーム事業部に属し、「戦略」と「カイゼン」をミッションとしている。

 慶松氏は、社内コミュニケーションツールとしてSlackを選定した理由に「ツール連携のしやすさ」と「オープンコミュニケーション」を挙げている。「Slackを使う前は、相手に合わせて複数のコミュニケーションツールを使う必要があり、メールも併用していたため、それらと連携できて情報の集約と整理ができる、コラボレーションハブとしてSlackを選定した。業務ではチームプレーが大事なので情報共有が不可欠であり、エンジニアの会社なので自動化も進めたいという点からもSlackは適していた」と説明する。

選定理由として、社内での目標とSlackのコンセプトが合致していたことを挙げている

 ただし、いきなり全社で導入するのは難しいため、2018年2月に100名で使い始めたという。主にプロジェクション管理やツールとの連携に使用されたが、好評だったことを受け、1年後に事業部に所属する約500名に導入した。その際、それまで使っていたチャットサービスを解約したため、当初は戸惑いの声はあったものの、ボットの開発などが始まり、1年経った今ではオープンコミュニケーションにつながったと評価されている。

 それからさらに1年経った現在は、他部門を含む約1200名が利用している。その結果、部門間のコラボレーションが進み、「カイゼンの日常化」「賞賛し合う文化と競争意識」「チームワーク&コラボレーション」の3点で、カルチャー変革がもたらされた。

導入のステップと活用方法などが詳しく紹介された

 カイゼンとは製造業や生産現場の作業を見直す活動を指すが、慶松氏は、Slackを開発基盤ツールと連携することで、締め切りや会議案内などの自動通知といった事務作業が自動化され、さまざまな問題がカイゼンされたと説明する。

 「例えば、Googleスクリプトと連携させてカレンダーに自動でスケジュールを書き込むようにしたところ、忙しさが見える化され自発的に助け合うようになりました。併せて絵文字のルールを作るなど、コミュニケーションが取りやすくする工夫も進んで行われています。」

Slackの導は社内のカイゼンの推進力アップにつながった

気軽なリアクションで交流と活性化につなげる

 さらにKCCSでは、Slackをあらゆる情報を共有できる場にしていった。例えば、資格試験の保有者の状況を公開するなど、これまでは関係ないと思われていたことも共有し、事業内容の進行や社員の活動がどんどん可視化された結果、社内に賞賛し合う文化と競争意識が芽生えた。Slackではリアルタイムにリアクションやフィードバックができることで、周囲からの反響によって若手の間でマインドが変化し、モチベーションが上がるのが分かった。

 影響は上の世代にも広がり、“飲みニケーション”以外の方法で若手との接点を作るのに悩んでいたマネジャー職からは、気軽に接点が作れるだけでなくフラットな関係作りができるのでメンバーとの距離が縮まったと言われるようになった。「コミュニケーションの活性化で、各現場に多く眠っていたアイデアが実現される機会も増えました。そうした効果はSlackを使ってみるまで分からなかった」と慶松氏は言う。

コミュニケーションツールから何でも共有する場にしたことで、新しい社内カルチャーが芽生え始めた

 今後の活用目標としては、現場からボトムアップでアイデアを生みだすだけで終わらせないよう、アイデアを制度化するトップダウンの動きへもこれからつなげていくことを挙げている。コミュニケーションツールとしての効果以外に、Slackを使って業務を1カ所に集中できるようにしたり、カスタム開発で業務効率をあげるのもその1つで、単なるメールからの置き換えではないプラスアルファの活用を目指している。

 慶松氏は「以前に受講したセミナーで、デジタルトランスフォーメーションを実現する最大の障壁は既存の社内文化だと言われた。Slackを活用するとカルチャーが変わるというのは大げさだけれど、確実に影響はあると感じています」と述べ、少しでもSlackを使う人たちを増やすことで、日本企業のカルチャを一緒に変えていきたいと話していた。

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能・アップデート内容などを中心にSlackに関する情報をできるだけ毎週お届けしていく。