週刊Slack情報局

サーバーワークスがSlackを選んだ3つの理由と、その効果――電話やトイレの見える化も

クラウド連携で「顧客の気持ちが見える」インテグレーションを実現

 Slackの導入事例を紹介するセミナーイベント「Why Slack? 導入事例紹介セッション」が1月下旬、Slack Japanの大阪オフィスで開催され、Slackを活用して業務や働き方の改革を進める3つの企業が登壇した。今回はその中から、株式会社サーバーワークスによる「AWS専業のクラウドインテグレーターがSlackを選んだ3つの理由」の発表内容を紹介する。

株式会社サーバーワークス代表取締役社長の大石良氏

Slackは「働きがいのあるオープンな環境」に必須のツール

 2000年に創業したサーバーワークスは、国内でクラウドサービスが浸透していない2009年からAWSに特化したインテグレーション事業を展開している。世界で2万を超えるAWSコンサルティングパートナーの中でも上位0.3%だけが選ばれるプレミアパートナーに5年連続で認定され、2019年3月に東京証券取引所マザーズ市場に上場している。

クラウドの可能性に早くから注目し、2009年からAWS専業インテグレーターに事業を転換した
2019年3月に東京証券取引所マザーズ市場に上場している

 企業ビジョンに「はたらきやすい会社と社会をIT(クラウド)で実現する」を掲げ、「ITを活用する未知の挑戦者によって既存のビジネスが破壊されるデジタルディスラプションがあらゆる領域で起こり、若手人口も減っている。優秀なIT人材を採用し、育成し、会社に居続けてもらう計画を持っていない会社はこれから成長できないと考えている」と代表取締役社長の大石良氏は話す。

 必要なアクションとして「競争力の源泉になるものにリソースを集中する」「若くて優秀な人材が興味を持って仕事に取り組めるインフラを準備する」「選ばれる会社になるような文化・制度を構築する」という3つを挙げ、それらを実現するためにAWSやSlackは必要であるとしている。

Slackの導入が必要な理由として、ビジネス環境がこれから変化していくことを挙げている

 例として、顧客の1社である琉球銀行の取り組みを挙げている。厳しい状況にある金融業界では支店の統廃合というようなネガティブな対策だけが目に付くが、そうした中で琉球銀行はAlexaを業務に取り入れようとしており、前向きな取り組みで優秀な若手を獲得しようとしている。

 サーバーワークス自身もモデル企業になるよう、働きやすい環境づくりに取り組んでいる。オフィスのファシリティをフリーアドレスにして、集中エリア/コミュニケーションエリアというように目的に合わせてレイアウトしたり、リモートワークやBYODも推奨し、利用者には手当てを支給している。そして2014年4月からコミュニケーション基盤としてSlackを活用している。トップダウンで導入も可能だが、あえて社内に向けてプレゼンを行うことでメリットを知ってもらう狙いがあった。

BIツールとの連携で採算管理も即座に可能、「電話の見える化」への応用も

 大石社長がSlackを選んだポイントは「原則オープン」「SNS誤爆のリスクがない」「豊富なインテグレーション」の3つだ。

 社内の動きが見通せるよう、本質的にクローズドなメールよりSlackのオープンさが最適で、現在はコミュニケーションの9割がパブリックチャンネルで行われ、オリジナルの絵文字は5000以上も作られている。業務とプライベートが切り分けやすいユーザーインターフェースなので“誤爆リスク”も減らせる。

 豊富なインテグレーションは業務の支援に役立てられている。電話メモや議事録を残したり、業務のFAQボットを実装したり、複雑なAWSの値段を回答してくれる「buri」というボットを開発するなど、社員のスキル向上にもつながっている。応用範囲は広がり、プロジェクトの採算管理を自動化するボットも開発されている。

Slackの豊富なインテグレーションを業務に連携している事例が紹介された
プロジェクト採算管理の自動化も行われている

 エンジニアがプロジェクトの開始と終了のときにそれぞれ投稿すると、ボットが自動で作業時間を集計し、「今日は帰宅します」と投稿すると、その日の作業内容がパイチャートで表示される。データはそのままサーバーワークスで使用しているクラウドベースの勤怠管理サービス(TeamSpirit)に送信され、BIツールで見られる仕組みになっている。大石社長は「全てのプロジェクトの採算管理が即座にできることで、赤字発生率が金額ベースで1%未満に抑えられるようになった」と言い、さらに新しい応用も始めている。

 それが「電話の見える化」だ。AWSのクラウドコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」に会社の代表電話を移行し、クラウドのビジネスツールサービスであるSalesforceと連携させて、誰からいつ電話がかかってきて誰が対応したのかをリアルタイムでSlack上に通知できるようした。また、それだけに終わらず、Amazonの文字起こしサービス「Amazon Transcribe」とも連携させて、内容がテキストで分かるようにした上で、クラウドを利用して声の調子から感情を分析して見える化するところまで行い、顧客が怒っている電話がかかってきたらできるだけ早く対応するようにしている。

 業務外で自由に使うことも制限はしていない。「Slackであまりにもいろいろなことができるので最近は調子に乗って、男子トイレの個室とIoTを連携させて、コマンドを入力すると使用状況が分かるようにまでなっています。それも大変好評だったので、さらに予約までできるよう進化して、Internet of Toiletが社内で実現されるようになりました」。

業務以外でも自由に使えるようにすることがコミュニケーションの活性化にもつながっているようだ

 サーバーワークスは徹底したクラウド活用とツール連携により、AWS事業は年45%で成長している。世界60カ国以上で従業員の意識調査を行い、「働きがいのある会社」ランキングを発表しているGreat Place to Workでも2年連続で選出され、社員数も順調に伸びている。大石社長は、Slackの導入は同社の成長につながっており「単なるコミュニケーションツールではなく、イントラネットの代替となる業務アプリのインターフェースとしてSlackへの切り替えをこれからも提唱し、はたらきやすい会社をもっと増やしていきたい」と発表を締め括った。

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能・アップデート内容などを中心にSlackに関する情報をできるだけ毎週お届けしていく。