週刊Slack情報局

近畿大学、全学生・教職員3万6千人にSlack導入。利便性と同時に「大学のブランディング」にも

 教育分野でのSlackの導入事例を紹介するセミナーイベント「Slack教育機関向けウェビナー」が5月14日、Slack Japan株式会社によりオンラインで開催された。慶應義塾大学や近畿大学、京都大学N高等学校の担当者が登壇し、それぞれ違った導入のアプローチが紹介された。

 今回は、近畿大学の事例について、学校法人近畿大学の世耕石弘氏(経営戦略本部長)が語ったセッションを紹介する。

学校法人近畿大学の世耕石弘氏(経営戦略本部長)

「ペーパーレス出願」やっていない大学に「Slackは無理」!?

 世耕氏は、企業の広報部門出身というバックグラウンドを元に、IT化による利便性と同時に、大学のブランディングに生かすことにも着目したアプローチを語った。

 これまでの実績として世耕氏が紹介したのが、入試のペーパーレス出願だ。このときも、手続きの効率化と同時に、大学のイメージ作りも考え、一気に実行したという。「批判的な意見も多かったが、『世の中の課題に果敢にチャレンジする人材が欲しい』というメッセージとともに実行した。その結果、話題になったこともあってか、志願者が激増し、ほかの大学も追従した」と世耕氏は振り返る。そして、「出願を紙でやっている大学がSlackは無理」と、冗談まじりに語った。

ペーパーレス出願で効率化とともにイメージ作り

 そのほか、教科書をAmazonで買えるようにしたことや、保護者向けの出欠照会サイト、VISAプリペイド機能付き学生証、コンビニでの卒業証明書発行、食堂のキャッシュレス化などを世耕氏は紹介。こうした取り組みの結果「改革力が高い大学」で全国1位になるなど、先進的なイメージができたという。

ペーパーレス出願などにより「改革力が高い大学」のイメージができた

Slack導入への決定打となったのは「LINEの誤爆」

 そのうえで、Slackの導入だ。もともと、コミュニケーションツールに課題を感じていたという。電子メールでは宣伝メールが多く、重要な情報が埋もれることが問題だった。また、個人のLINEでもコミュニケーションをとっており、プライベートと職場を間違えて送信する“誤爆”の恐怖を抱えていた。そう思っていた矢先に、実際に誤爆が発生したのが決定打となって、新しいコミュニケーションツールを探した。

LINEでの“誤爆”をきっかけにSlack導入へ

 そこで、Slackが使いやすいと聞いて導入した。同時に、IT業界で使われているツールを大学で使うというブランディングのイメージ戦略も考えていたという。

 導入にあたっては、身の回りから少人数で始めて導入ハードルを下げるという意味で、広報部内だけでスタート。そして、2018年には東大阪キャンパス全職員(約400人)へ導入された。

 さらに、一部学部において全教職員にまで広げることにし、そのことについてプレスリリースも出した。「狙ったとおり、『さすが最先端』などの反応が得られた。特にIT業界の方に評判がよかった」と世耕氏は言う。

Slack導入は身の回りから始めて全職員へ

 Slackを導入してよかったこととして世耕氏は、部署横断型でのチームの立ち上げの迅速化、先に最新動向をがんがん流して意識付けすることによる意思決定の迅速化、チャット感覚のコミュニケーション、Slackがあるからということで固定電話やPHSを廃止してクラウドPBXに移行したことを挙げた。

Slackを導入してよかったこと

 新型コロナ対策においてもSlackが活躍した。テレワークへも問題なくすぐに移行できた。対策会議もSlackで立ち上げて、各種対策をすばやく打った。入学式と卒業式の中止も、早くに決めたため、テレビなどメディアで取り上げられたという。

新型コロナ対策でもSlackが活躍

 こうした流れから2020年には、全学部の教職員・学生に有料アカウントを導入することを決定したと、世耕氏は最後に報告した。

2020年には全学部の教職員・学生3万6000人に有料アカウントを導入

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能やアップデート内容、企業における導入事例、イベントレポートなど、Slackに関する情報をお届けする。