週刊Slack情報局

「N高」で育まれた「Slackチャンネル文化」、ホームルームから部活・趣味まで5000のパブリックチャンネルでつながる生徒たち&教職員

 教育分野でのSlackの導入事例を紹介するセミナーイベント「Slack教育機関向けウェビナー」が5月14日、Slack Japan株式会社によりオンラインで開催され、N高等学校(N高)での事例について、学校法人角川ドワンゴ学園の吉村総一郎氏(IT戦略部部長)が説明した。

学校法人角川ドワンゴ学園の吉村総一郎氏(IT戦略部部長)

N高の設立当初から導入、「Slackを出たくない」という卒業生も

 吉村氏は、インターネットを活用したN高の活動と、プログラマーでもある自身のバックグラウンドをもとに、授業から課外活動までSlackを使いこなしている様子を紹介した。

 N高は2016年4月設立。通信制の高校で、通学キャンパスもあり、生徒数は1万4702人(2020年4月現在)。Slackは学校設立のときから、生徒向けと教職員向けで利用。最初は盛り上がっていなかったが、いまでは卒業生が「Slackを出たくない」というほどだという。

 約5000のパブリックチャンネルがあり、部活やホームルーム、timesチャンネル(個人のつぶやき)、趣味ごとの雑談などに使われている。

N高でのSlack活用状況

 吉村氏は、SlackがN高の生徒たちのコミュニティとマッチする理由として、趣味でつながれること、教職員がいて安心感があること、ただし生徒の間では匿名性があること、を挙げた。

SlackがN高の生徒たちのコミュニティとマッチする理由

 N高では生徒向けのSlackポリシーを決めて運用している。互いに自主性を尊重し問題は当事者間で解決すること、チャンネルオーナーがルールを定めること、教職員は犯罪などはいつでも通報できることだ。

 同時に、Slackを盛り上げるために教職員が活動している。日々のあいさつや、リアクション、ホームルーム、授業やイベントの案内、生徒指導などだ。

 一方、教職員のルールは企業向けルールに近いものだが、カスタム絵文字などは推奨しているという。

Slackを盛り上げるための教職員の活動

「率先した盛り上げ」が重要、「コードが書ける」と効率アップ

 ここから吉村氏は、各種ボットによるSlackインテグレーションの活用例をいくつか紹介した。自作のものについては、ソースコードも公開しているという。

 生徒の行動向けには、「いいね」をカウントして褒めてくれるボットや、チャンネル参加者増減の報告ボット、NGワードを監視して生徒指導の参考にするためのボットなどがある。

「いいね」をカウントして褒めてくれるボット
NGワードを監視するボット

 教職員向けには、チャンネル内で毎週金曜10時に自動的にペアマッチされ、自己紹介やランチなどをする「Donut App」が、「雰囲気がよくなる」として非常に好評だという。

 また、「Google Calendar App」は、Slack上から出席の予定を変更できたり、会議1分前にZoomのURLを通知してくれる機能を便利に使っているという。

 そのほか、Webhookを使って、Google フォームのSlack通知や、Google スプレッドシートからSlackへの日時指定自動投稿するGoogle App Scriptを便利に使っているという。

教職員をペアマッチする「Donut App」
WebhookでGoogle フォームやGoogle スプレッドシートとSlackをつなぐ

 最後に吉村氏はまとめとして、まず学校とSlackの相性はすばらしいが、文字でのコミュニケーションにハードルが高い生徒もいるので、生徒全員にリーチすることは課題だとした。

 また、N高の経験として、Slackは導入者が率先して盛り上げる必要があることと、ある程度コードが書ける人がいると効率アップできることを語った。

N高の経験から分ったこと

 「Slack教育機関向けウェビナー」では、N高のほか、慶應義塾大学近畿大学京都大学の担当者が登壇し、それぞれ違った導入のアプローチが紹介された。

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能やアップデート内容、企業における導入事例、イベントレポートなど、Slackに関する情報をお届けする。