知って防ごう! スミッシング詐欺
NTTコムオンラインの専門家が解説
企業側にも事情がある!? SMSで情報を通知するワケ&増える「スミッシング詐欺」への対策
2023年12月19日 07:04
SMSを利用したフィッシング詐欺、いわゆる「スミッシング」が増加傾向にありますが、同時に企業のSMS利用も右肩上がりで増え続けています。情報発信や通知などにおいて、電話やメール、メッセージアプリだけではなく、SMSが活用されていますが、企業をかたるスミッシングなどの脅威に対して、現状どのような対策が取られているのでしょうか。
今回は、SMSを活用する企業側の背景や事情のほか、スミッシングへの対策、そして今後の「企業と消費者のSMSコミュニケーション」について紐解いていきます。
SMSは「見られやすい」、多くの企業にとって支持される理由
連載1回目でも説明したように、SMSの送信数は驚くべき勢いで増加しています。2023年度のSMS国内総送信数は38億6000万通になると見込まれ、2026年度には100億通を超えると予測されています。これに伴いスミッシングが増えているわけですが、「やはりSMSを使いたい」「積極的に活用を進めたい」という企業も大幅に増えている状況です。
なぜSMSが企業に支持されるのか。その理由は、やはり「高い確度で見ていただけるから」です。電話だと出てもらえない、メールだと見てもらえないことが発生しがちですが、手元のスマートフォンにメッセージが表示されるSMSなら、ほぼ確実に情報を見てもらうことが可能です。日中はお仕事で忙しく電話に出られない、または知らない番号からの電話には出ないと決めている方や、メールボックスはあまりチェックしないという方に対しても、かなり高い確度でメッセージが届けられます。
例えば、個人のお宅へ工事で訪問する予定日の通知や、料金が延滞しているお客様へお支払いの督促、契約申し込みする際の書類不備の確認など、「確実にお客様と連絡を取りたいとき」に、大いに役に立つのです。
ほかにはアンケートをSMSで送って回収率の向上を図る企業もあります。ワンタイムパスワードの送付も皆様になじみがあるかと思います。
また、相手の携帯電話番号さえ把握していれば送信できるなどの手軽さも企業にとっては大きな魅力です。効率よく、ほぼ確実に、連絡を取りたいお客様にコンタクトを取ることができ、お客様にとっても便利で使い勝手がよい。ほかのツールにはない魅力を持つSMSは、これからも、多くの企業に利用され続けるものと目されています。
企業がSMSを送信する手段は2つある
では、企業は、どのようにしてSMSを送っているのでしょうか?
企業がSMSを送る手段は主に2つ。「スマートフォンを使って1通1通送信する」パターンと、「法人向けのSMS送信サービスを使って送信する」パターンが挙げられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. スマートフォンを使って1通1通送信する
割合としては少ないと思われるのがこの方法です。不動産会社や生命保険会社、何らかのサービスの営業担当者が、自分の顧客に向けてSMSを送信するケースが多いと思われますが、ひとりの営業が手打ちで送れるSMSはそれほど多くないはず。あくまで業務の補助的な位置付けだと考えるのが妥当でしょう。
2. 法人向けのSMS送信サービスを使って送信する
圧倒的に多いのが、「法人向けのSMS送信サービスを使って送信されるSMS」です。例えば、NTTグループでは「空電プッシュ」という法人向けSMS送信サービスを提供していますが、このようなサービスを使えばPCから管理画面を通して、多くのお客さまにSMSを送信することが可能です。また、自社システムなどとAPIで連携させて自動送信を行うこともできます。ほかに、コールセンターなどに電話をかけると流れる「〇〇の人は1をプッシュしてください」などの音声ガイダンス──いわゆる自動応答装置と連携し、例えば「1が押されたらSMSが送信される」といった形で配信されるケースも多くあります。
法人向けのSMS送信サービスは、ここで紹介したもの以外にも数多く存在します。それぞれに特徴があり、機能も多彩です。 2. の説明でも述べた通り、企業の場合は圧倒的にこうしたサービスを利用しているケースが多く、機能を活用した一斉送信、セグメント送信、自動送信など、さまざまな活用が進んでいます。まさに「企業のSMS送信環境が成熟してきた状況」と言ってよいでしょう。
単にSMSそのものが便利であるというだけでなく、送信ソリューションが豊富なところ、送信環境が成熟してきたところもポイントです。環境という面からも、今後ますます、企業のSMS活用が伸展すると言えるのではないでしょうか。
便利だけどスミッシングにも悪用されるSMS、企業の対策と今後の展望は?
企業のSMS利用が増え続けている理由は、ここまでで説明した通りです。それでは、SMS送信の増加に伴って増えているスミッシングに対して、企業はどのような対策を取り、今後のSMS活用に向けて取り組んでいるのかを説明します。
現在、多くの企業が対策として行っているのが、「公式ホームページに情報を掲載すること」です。「支払いを督促する内容の詐欺SMSが出回っている」などと注意喚起を行ったり、「当社から送るSMSの発信者番号は『03-✕✕✕✕-✕✕✕✕』です。これ以外の番号から送ることはありません」などと発信者番号を明記するなどして、積極的に情報を公開する企業が増えています。
また、連載3回目でご紹介したキャリア共通番号「0005」も、対策として有効です。「0005」は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が、厳格な審査を行った上で法人に発行する「お墨付き番号」のようなもの。発信者番号の最初の4桁に0005のついた8~10桁のショートコードでSMSが届いた場合、その送信元は信頼できる法人だと言えます。まだ運用が始まってから日が浅く、それほど多く発番されてはいないのですが、今後は「0005」を取得してSMSを送信する企業が増えることでしょう。
ほかに、「新しいSMS」として注目されているメッセージアプリ、「+メッセージ」を利用する企業も出てきています。「+メッセージ」は、電話番号さえ把握していればメッセージを送信できるアプリケーションです。メッセージ画面の見た目や使い勝手などはSMSに近く、一方で多彩なスタンプが用意されているなどの親しみやすさも備えています。法人の場合は厳格な審査を経なければ登録できず(審査を通過した法人には公式マークが付与されます)、詐欺やなりすましが難しい仕様です。
こうした対策以外にも、フィルタリングサービスなど、さまざまな対策が行われています。
SMSは、電話、メール、郵便物では連絡が取れない方々に対し、ほぼ確実に情報を届けることができる有効なツールです。単にお知らせを送るだけでなく、例えばSMSを通じウェブ会議ツールに誘導して即時に会議を開始したり、自社サービスの申し込みページにつないだり、自社商品のマニュアル動画をご案内したりと、「他のツールやウェブページへ導くハブのような役割」としても有効に機能します。送信ツールの高度化・多様化や企業のアイデアによって、活用の幅は、これからも広がり続けることでしょう。
今回は、ユーザーと企業の双方にとってメリットの大きいSMSを安全に使っていくために、企業でのSMSの送信方法や、安全のための取り組みを紹介しました。ユーザーの皆様も、こうした取り組みが行われていることを知って、安全な利用に役立ててください。
黒田 和宏(くろだ かずひろ) 。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社ビジネスメッセージ・サービス部長/エバンジェリスト。「電話番号の中に、新しいコミュニケーションサービスを創る」をコンセプトにSMS送信サービス「空電プッシュ」を中心としたビジネスメッセージ・サービス事業の責任者を務めるとともに、「空電プッシュ」のエバンジェリストとしてさまざまなセミナー・講演会にて登壇。また、フィッシングに関する情報収集・提供・注意喚起等、対策を促進するフィッシング対策協議会のメンバーとして参画している。音声プラットフォーム「Voicy」の「絶対連絡取りたいラジオ」チャンネルにてSMS情報を発信中。